転換期を生きるきみたちへ──中高生に伝えておきたいたいせつなこと (犀の教室)

  • 晶文社
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レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794968258

作品紹介・あらすじ

世の中の枠組みが大きく変化し、既存の考え方が通用しない歴史の転換期に、中高生に向けて「これだけは伝えておきたい」という知見を集めたアンソロジー。言葉の力について、憲法について、愛国心について、科学的態度について、弱さや不便さに基づいた生き方について……。若者たちがこれからの時代を生き延びるための知恵と技術がつまった、未来へ向けた11のメッセージ。

感想・レビュー・書評

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  • いつも面白い内田樹の文章は、生徒たちに話を聞いてもらいたいときに使えそうだ。高橋源一郎と鷲田清一も面白かった。白井聡は今回はイマイチ。
    鷲田清一の引用した、べてるの家の設置に当初は賛成していなかった町民の言葉が素晴らしい。
    私たちが、普段の暮らしの中で忘れてきた、見ないようにしてきた大事なものを、精神障害という病気を通して、教えてくれている人たちなんだね。あの人たちは嘘を言ったりとか無理をしたりとか、人と競ったりとか、自分以外のものになろうとしたときに、病気というスイッチがちゃんと入る人たちだよね。…私たちの隣に、そういう脆さを持った人たちが居てくれることの大切さを考えたときに、とっても大事な存在だよね。社会にとっても大事なことだよね。
    人を欺こうが、人を蹴落とそうが、人を言葉で傷つけようが病気にならない、そのことの異様さに気づかせてくれる人。その人たちに感謝できるようになって初めて、上に引いた声があたりに満ちてくるようになって初めて、わたしたちの社会はすこしばかり力がついたと言えるのでしょう。

  • 中高生にとって必読の書であるのはもちろん、私たち大人も読んでおくべき1冊。
    以下、印象に残ったフレーズを。

    「この世に『最低の学校』というのがあるとすれば、それは教員全員が同じ教育理念を信じ、同じ教育方法で、同じ教育目標のために授業をしている学校だと思います(独裁者が支配している国の学校はたぶんそういうものになるでしょう)。でも、そういう学校からは『よきもの』は何も生まれません。これは断言できます。」(p10:内田樹)

    「疑うというのは『排除する』とか『無視する』ということとは違います。『頭から信じる』でもなく、『頭から信じない』でもなく、信憑性をとりあえず『かっこに入れて』、ひとつひとつの言葉を吟味するということです。そうすればおそらくみなさんは『なんとなく、身にしみ入る言葉』と『なんとなく、違和感がする言葉』を識別できるはずです。それくらいの判断力は生物である限りは備わっています。」(p14:内田樹)

    「『わかった』というのはあまりいいことじゃないんです。人間同士では、『わかると、コミュニケーションが終わる』ということになっている。」(p38:内田樹)

    「物理を専門にしておられて、科学についてすばらしい本を何冊も書いておられる山本義隆さんは、何のために勉強するのですかと尋ねられて『自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見を言う。ただそのためだけに勉強するのです』と答えられました。これは、勉強だけでなく、科学という言葉にも、ぴったりとあてはまります。」(P184:仲野徹)

  • 【読書メモ】

    p185
    ・何のために勉強するのですか?
    自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見を言う。ただそのためだけに勉強するのです。山本義隆

    p190
    ・同じことを、違った側面から考える視点を与えてもらうためにディスカッションをするのです。当たり前のことですが、自分は自分の考えに染まりきっています。そこへ、違う刺激を与えてもらって、自分の考えを方向転換させたり、バージョンアップさせたりすることが重要なのです。

    p103
    ・科学がグローバルである最大の理由は、真実をあつかうからということです。

    …科学的な視点は予測できない社会を生きるうえでの全員にとってマストなものの見方なのかもしれない。情緒的に考えたとしても、それを相手に理解できる自分の言葉で伝えて、ブラッシュアップしていかなきゃいけない。誰かが先に答えを用意してくれている時代でないのであれば、自分の考え、意思を言語化して、まず自分を納得させることができなければ、何も頼りにするものがなくなってしまうから。自分を納得させるために、何故自分がそう考え、思ったのか、その前に何が頭に浮かんだのかを自分自身に伝えなければならない。
    科学的なものの見方とは、パラダイムが人間の思考をいかに制限・固定・維持しているかを理解したうえで①まず疑う、②データに基づいて具体的に説明する③合理的に考える④いっしょに考えてグロ−バルに展開してくという流れ。

    ・消費社会について

    …資本主義がすすみ、消費社会が到来した。最初は「必要だから」何かを求めていたものが、今では「これを持っていると周りから羨望の眼差しを向けられるから」といった“意味”に価値が置かれている。だって、物が溢れる時代に、物をほしがり続けてもらわないと資本主義は回らないのだから。
    しかし、そうした消費社会の高度化が人間精神の在り方に異常を来していると筆者は述べる。「お買い物」の論理を、その論理が当てはまらないもにまで当てはめようとしているからだ。

    選挙の投票や教育はその良い例。
    投票は、投票したい候補者がいないし行っても無駄、という合理的な考えで処理されることがあるが、その危険性はでかい。あなたがほしがるものをお膳立てしてくれるわけではない。あなたが何もしなかった行為そのものが、結局はあなたとあなた以外の人にふりかかることになる。だから、「もっともマシ」だと思う人に投票することが求められる。

    また、教育はお金を払えばすぐに分かりやすい商品価値が返されるものではない。つまり、商品として捉えるならば出来損ない。さらに教育が商品とみなされたが、教育は不可能になる。学ぶ主体が「消費者である」と自己認識している限り、最低限の支出で最大限の有用性を得ようとしている限り、教育は死ぬ。お客様→学ぶ主体


    ・「愛国心」について

    …そもそも「国」をどう捉えるかは3種類ある
    ①外国的に「独立国」として承認されている国家の領土
    ②その領土内に住む国民を特定の政府が統治する国家体制
    ③政府に統治される側の、一人一人の国民の命と生活環境

    時代的背景によって、上記の優先順位は前後する。
    第二次世界大戦で、ドイツ軍に攻め入れられたフランスは、わずか6週間で降伏を宣言した。③市民の命を最優先にし、①領土の半分を失い、③ドイツ寄りの中立の立場をとることになった。

    一方、太平洋戦争中の日本は、軍人や市民の命が犠牲になったとして、早く負けを認めて戦争をお渡せようという空気は起きなかった。なぜなら②天皇とその天皇が統治する国家体制が何よりの崇高なものであったわけで、③はそれを支えるために存在していると解釈されていたから。

    日本で「愛国心」というと、この戦時中のイメージが先行されてしまうきらいがある。なぜなら、平和な時代の③を優先する愛国心(いわゆる新バージョンの愛国心)の概念ができあがっていないから。

    反戦運動をする人に対して「裏切り者」や「売国奴」などど軽々しく言うひとにとっての愛国心は、②と③を最優先にさせたもので、指導者が決めた物事について疑いをかけずに従順に突き進んでくれる都合の良い存在。いわゆる「馬鹿」なのだけれど、そんな存在を刺激するには近隣諸国に敵をつくって、危機を煽れば良い。そういったかれらにとっての愛国心は、本当は国を破滅に導くとも知らずに、彼らはついてくるから。

    「もしかしたら、自分の国の指導者は間違った判断をするかもしれない」と考える市民、そして命を最優先に考える市民にとっての「愛国心」は上の人たちとは違うことを理解しておく必要がある。

    自国の黒歴史、つまり、戦争のために命を落とした人たちの死が無駄であったか、そうでなかったかは軽々しく結論付けられないが、それを決めるのは現在と将来の私達の行動にかかっている。

    P281
    ブレーズ・パスカル「われわれは絶望が見えないようにするために、何か目をさえぎるものを前方においた後、安心して絶望のほうへ走っている」(パンセ)

  • 内田樹『身体に訊く』-言葉を伝えるということはどういういことか
    加藤典洋『僕の夢』-中高生のための「戦後入門」
    高橋源一郎『表と裏と表』-政治の言葉について考える
    平川克美『人口減少社会について根源的に考えてみる』
    小田嶋隆『13歳のハードワーク』
    岡田憲治『空気ではなく言葉を読み、書き残すことについて』
    仲野徹『科学者の考え方』-生命科学からの私見
    白井聡『消費社会とは何か』-「お買い物」の論理を超えて
    山崎雅弘『「国を愛する」ってなんだろう?』
    想田和弘『「中年の危機」にある国で生き延びるために』
    鷲田清一『社会に力がついたと言えるとき』
    以上11人の寄稿文
    内田樹氏の以下の呼びかけに対応して書かれたもの
    『刻下我が国の政治・経済・メディア・学術・教育・・・どの領域を見ても、「破綻寸前」というのがみなさんの現場の実感ではないかと思います。・・・・私たちが果たさなくてはならない最優先の仕事は「今何が起きているのか、なぜそのようなことが起きたのか、これからどう事態は推移するのか」を責任をもって語ることだと思います。』

    各11編の寄稿は、それぞれとても意義ある内容だと思いました。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/517599

  • 結構難しい本。これを読む中高生はすごい。
    いじめはあるけど、いじめはない。
    本当に何でもそうなんだ。ちゃんと見ないと、
    何にも見えない。

  •  中学生、あるいは高校生ぐらいの読者を対象にしているシリーズの一冊。ほかの出版社の、ぼくは気に入っている「よりみちパンセ」のシリーズより少し年上の読者が想定読者か?
     内容は、あれこれあるのだけれど、高橋源一郎の、アメリカの大統領だった、オバマの広島訪問演説に対する解説(?)が俊逸、さすが「ゲンちゃん」という内容で、記憶に残った。
     内田樹の編集方針も悪くない。学校の先生方も通勤電車で、一つずつお読みになればいいのではないでしょうか。ここで、さまざまに指摘されている社会の変化の中で、教育が、それはあかんやろ、という方向を支えていることに、ギョッとなさるかもしれない。

  • 個人的には内田樹さん、白井聡さん、想田和弘さんの文章が印象に残りました。

  • 中高生向けだが大人も是非。内田樹「身体に訊く」加藤典洋「僕の夢。中高生のための「戦後入門」」高橋源一郎「表と裏と表。政治のことば」平川克美「人口減少社会」小田嶋隆「13歳のハードワーク」岡田憲治「空気ではなく言葉を読み、書き残すことについて」仲野徹「科学者の考え方。生命科学からの私見」白井聡「消費社会とは何か」山崎雅弘「国を愛するってなんだろう?」想田和弘 「中年の危機にある国で生き延びるために」鷲田清一「社会に力がついたと言えるとき」

  • 中高生に『ミライの授業』と併せ読んで欲しい。

    本書は、大人が読んでも考えさせらえるものである。
    「転換期を若い人が生き延びるための知恵と技術」について、親子で一緒に考えてみてはどうだろうか?

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著者プロフィール

1950年東京都生まれ。神戸女学院大学名誉教授。思想家。武道家(合気道7段)。道場兼舞台兼私塾「凱風館」館長。専門は現代思想、武道論。東京大学文学部卒。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程修了。『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書、第6回小林秀雄賞)、『日本辺境論』(新潮新書、第3回新書大賞)をはじめ多くのベストセラーをもつ。単著に『そのうちなんとかなるだろう』(マガジンハウス)、『困難な結婚』(アルテスパブリッシング)、対談書に『14歳の子を持つ親たちへ』(新潮新書、×名越康文)、『荒天の武学』(集英社新書、×光岡英稔)などがある。

「2020年 『街場の親子論 父と娘の困難なものがたり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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