- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794969514
作品紹介・あらすじ
2001年に船出した小さな総合書店「ブックスキューブリック」。素人同然で始めた本屋の旅は、地元・福岡の本好きたちや町の商店主を巻き込み、本を媒介に人と町とがつながるコミュニティづくりへと展開した。ローカルブックストア店主は理想の本屋像をどのように思い描き、歩んできたのか。独自の店づくりから、トークイベントやブックフェスティバルのつくり方、カフェ&ギャラリーの運営まで。15年間にわたる本屋稼業の体験をもとに、これからの本屋づくり、まちづくりのかたちを示す。
感想・レビュー・書評
-
たまたまネットで大井実さんのインタビューを読み、「自分の仕事は自分でデザインする」とおっしゃっていたのが気になり、本書を借りてみた。もうそろそろいい歳になってきてこのまま今の仕事を定年まで続けるのかなーとここ数年悩んでいたからこそひっかかった言葉だった。
その大井さんは、出版社などでの業務経験はなく、書店でアルバイトしただけで、福岡市で本屋を始めたという強者。全国チェーンの大手書店にはない魅力がたっぷりな本屋さんのようでとっても行ってみたい。こういう本屋で目についた本を手当たり次第に買ってみたい。切望。
唐突に本屋を始めたように感じるが、当然大井さんはそれまでのさまざまな経験を通して、「本屋の企業」に色々と役立つ知識なり感性なり、人脈なりをストックしてきている。このストックが自分にはないところで、経験が絶対的に少ないことを含め、これまでの自分の守りの人生をちょっと後悔してしまう・・・
こういう、人とはちょっと違う発想をしたり、大胆な行動をしたりする人は概して興味の範囲が広い気がする。大井さんも、読書はもちろん、高校時代のラグビー、音楽、イタリア、オペラ、コーヒーなどと多方面に興味を持ちアンテナを張ってこられたようだ。器用だなーと羨ましいかぎりだ。
大井さんがこのような小さな書店を始めた理由のひとつに「まちづくり」があるようで、そこも興味深かった。これについては大井さんがイタリアに住んでいた時に感じたことが大きなきっかけになっているよう。曰く、東京への一極集中が進み、地方が疲弊して、チェーン店だらけになってどこの地方都市も同じように見えてしまう日本と違い、イタリアでは都市国家的な伝統があり、それぞれの街が小国家みたいに互助的、民主的に成り立っており、地方の独立心が旺盛で、互助的な地域コミュニティーは心地よかった、「ローカル」の原点をみて、美を感じたとのこと。大井さんが本屋を構える福岡市もコンパクトな都会で地方都市としては人気があるようだが、おそらく大井さんは書店経営を通じて、もっとイタリアに近い、ローカルな福岡を作っていきたいんだろうと感じた。
さらに、本屋開業を阻む業界独特の仕組みについても、たくさん言及されており、普段から自分の職場における効率の悪さや仕組みの悪さに辟易している私は、あぁ、大井さんもこんな独特な悪しき仕組みと戦っているんだな、と変に親近感を覚えた。理解したかは怪しいけれど、共感だけはバッチリだった。
大井さんが本書の中で名前を出している、似た感覚で経営されている地方の書店をひとつひとつ巡ってみたい、紹介されている書籍も読んでみたい、そう思った。
(特に「アルケミスト」と「夜と霧」は早く読みたい。超有名で気になっていたにも関わらずまだ読んでいない・・・)
それにしても、人が仕事をする意味も、仕事を作り出す意味も十人十色で大いに刺激を受ける(大井さんだけに)。これから、私も何か見出せるのか、何か夢中になることに出会えるのか、「人生が何をわれわれに期待しているのか」がわかるときがくるのか、楽しみになりました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
福岡の書店、ブックスキューブリックの店主、大井実さんの語る、開業からこれまで、今、これから。
ほとんど経験の無い状況から、名店と呼ばれる本屋になっていく過程が綴られている。
途中、大切にしたいコトバにいくつも出会った。
その度に付箋を貼っていたら、付箋だらけになった。
やはり、他の本屋さんの考えに触れるのは刺激的。 -
こんな本屋さんが近所にあったらいいな...そんな本屋さんを立ち上げた過程がわかる本です。
本が好きなだけでなく、自分が好きな本を読んでもらうためにはどうすれば良いかというところまで踏み込んで書かれています。
いろいろな本の紹介もあり、この本もほんの案内人として立派に活躍しています。知らない本の事や、読んだけどこんな言い回しがあったっけという点に気づかされます。
ブクログをつけている人はぜひ読んでもらいたい本です。
将来自分たちが読みたい本を読むためにできることを考えるきっかけになればいいですね。 -
アマゾンにゲームを変えられ苦戦する小規模書店。引き寄せられるよに故郷福岡で書店を立ち上げた著者の経験が込められた一冊です。独特な販売方法の書店のルールに振り回されながら、集客の方法を探る努力はあっぱれです。成功する理由はあるが、誰でも簡単に真似はできないと感じた。実際現地に行って来ました。箱崎店のパンは、本と一緒に買う違和感はありますが、美味しいです。
-
本の学校で、大井さんがうきは市のMINOU BOOKSの石井さんと対談されていた。
この本のことは以前から知っていたけれど、長く未読のままであった。
西荻窪titleの辻さんの本を読んだ時にも思ったことだが、店主の思いのこもった小さな書店はとても素敵だ。 -
福岡の本屋さん「ブックスキューブリック」ができるまで。コーヒーが美味しいカフェが併設されている本屋さんなんて、最高。近所にほしい。
書籍のみだと粗利率が22-23%だったとのこと。うーん、これは厳しい。しかも本屋はかなりの肉体労働。情熱がないとやっていけない商売になっている。
地域密着の総合書店をめざして奮闘する著者の巻き込み力がすごい。古本市や作家を招いての座談会なと、魅了的なイベントがたくさん。こういう素敵な本屋さんが生き残れますようにと切に願う。 -
就職して間もない頃、帰省時に福岡の箱崎をそぞろ歩きをしていたら小洒落た本屋さんができているのを見つけた。それがこちらのブックスキューブリックの箱崎店。改めて調べて、本店は2001年に福岡の中心部に近い警固(けご)にオープンした本屋だと知る。当時はまだチェーン系の中規模本屋がそれなりに生き残っていた時代で、こういう小さめかつ洒落た雰囲気の本屋は珍しい存在だったと思う。福岡に帰省した折にはできるだけ立ち寄りたいと思っているお店である。
著者の大井さんは40歳の手前で思い立って仕事を辞め、全くの素人として本の業界に足を踏み入れたそう。本屋を開くきっかけから開店に至るまでの話、今では全国のブックフェスのはしりと言われている「ブックオカ」のこと、そして業界に関する考えなどが、飾り気のない言葉で語られている。
アマゾンなどの台頭ですっかり街の本屋さんは数を減らしてしまったが、こういう風に「本屋は街の文化の中心地」という気概を持ってその場を守っておられる方々には感謝の気持ちしかない。本の中に四日市の絵本屋メリーゴーランドさんや、先日ここで紹介したカフェ本の版元であるクルミドコーヒー/クルミド出版さん、筥崎宮前の屋台「花山」さんなど、知っている名前がポンポン出てくるのも楽しい。
少し前にニュースで見たのだけど、同じ読むという行為でも紙面で読むのとディスプレイ上で読むのでは、使われる脳の部位が異なるという研究結果もあるそう。紙面を読む時には内容を構造として組み立てながら読む傾向があるのに対し、ディスプレイの場合は表面をなぞるような読み方にもなりがちなのだとか。
いずれにせよ紙の本を読む習慣と本屋に通う文化は次の世代に残していきたいものである。うちのボウズはまだ本屋でドラえもんのコミックしか買ったことないけれども。 -
めっちゃ良かった!本屋さんになりたーい❤️