ギリシャ語の時間 (韓国文学のオクリモノ)

著者 :
制作 : 斎藤 真理子 
  • 晶文社
3.60
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本棚登録 : 116
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794969774

作品紹介・あらすじ

ある日突然言葉を話せなくなった女。
すこしずつ視力を失っていく男。

女は失われた言葉を取り戻すため
古典ギリシャ語を習い始める。
ギリシャ語講師の男は
彼女の ”沈黙” に関心をよせていく。

ふたりの出会いと対話を通じて、
人間が失った本質とは何かを問いかける。

★『菜食主義者』でアジア人作家として初めて英国のブッカー国際賞を受賞したハン・ガンの長編小説

★「この本は、生きていくということに対する、私の最も明るい答え」――ハン・ガン

感想・レビュー・書評

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  • 中動態を使ってみたくなる。

    はじめは小説を読んでいるつもりだったのに、古典ギリシャ語講師の男性の回想あたりで、気がついたら詩を読んでいた。

    現在パートの話がなかなか進まないのですが、『人と人が出会って影響しあって成長する物語』に慣れてしまっていて、
    または 現在からちょっと先の未来までを描く物語に慣れてしまっているから、そんな風に感じるんだと思う。

    登場する女性も、男性も、積み重ねた過去のなかを繰り返し生きている。知らない人と出会うということは、そのひとに連なるたくさんの、誰とも共有してない過去の先端(今の自分)だけが少し触れあうというだけで、何も分かりあってないし、互いのことを何も知り合っていない。

    そんな出会いかたをよく書いたなあ、と思いました。

  • 読みやすい物語ではない。語り手も時間も場面もあちこちにとぶ。散文詩とまでは言わないがそれに近いところもある。ただ、作者の語りたいことや思いは一貫しているので、それにのることができれば、読み心地は悪くない。
    ふたりの登場人物はどちらも、生々しい事物が言葉(不確かな意味)をまとった現実の世界との関わりに苦しんでいる。女は、生身の世界をゆがめながら増幅する自らの言葉を怖れている。心がハウリングを起こすことを怖れている。男は、形而上の言葉の世界に拠り所を求めるが、それと生身の世界との乖離に苦しむ。ふたりが抱える困難は、失明・失語症そのものというより、それを契機に向き合わざるをえなくなった、自分と他者、自分と世界との折り合いのつけ方だろう。
    その途上でふたりを結びつける役割を果たしているのが、今は誰も日常的に使うことのない、生身の世界をすでに失った、古典ギリシャ語だ。古典ギリシャ語とギリシャ哲学に関する挿話が、ふたりの世界との格闘の中に効果的に織り込まれている。

  • うーん、韓国文学って初めて読んだんですが、またテンポ?ってーか雰囲気ってーか・・・ちょっと違うんだな・・・

  • 最初から最後まで納得がいかなかったし、読み返せば読み返すほどにイライラする。
    そもそも心因性で声が出ないという主人公に対し「言葉を失っている」という書き方はあまりに雑ではないか。

    書くことも読むことも聞くことも、ひいては「著者が書いている」通りに「言葉で思考している」にもかかわらず。
    そこに対してのエクスキューズも一切ない。エクスキューズがないのは良いとしても、ただ単に設定として利用していたのだろうなという印象。確かに声の出せない女と目の見えない男性のプラトニックで詩的な関係はロマンティックだものね。
    「しゃべることができない」だけでは「言葉を失った」ことにはならないだろう。言葉を失っている状況を言葉で描写するという試みがされているわけでもない。

    そうなってくるとボルヘスの使われ方も癪に障るというものだ。中動態に関してもそう。たんなる盛り上げ装置かよという印象。カラオケのタンバリンか。

    静かに呼気を抑えた筆致は結構好きで、『菜食主義』も面白く読んだけれど、なんか中身スカスカなのでは疑惑があるので、もう読みません。

    でもこの本に対するもやもやというか納得のいかなさをどうにかしたくて、失語症と中動態に関する本を買い、そちらは楽しめているので良かったことにする。

  • 分からない。。。

  • 久しぶりの読書。
    設定からもっと劇的な展開みたいなのを期待してしまったので、想像より淡々と進む物語にちょっと肩透かし感もあったけれど、良い読書だった。この人の書く世界観好きだなあ。
    韓国文学、やはりあなどれない。

  • 目が見えなくなっていく遺伝的な病気を抱えたギリシャ語講師の男性と、言葉を話せなくなり古代ギリシア語(死滅した言語)を習いに来た女性。それぞれの過去と、お互いなくしてきたものから少しずつ何かが生まれそうな気配。
    途中から夢中になって読みました。静かだけれど余韻の残る話。
    숲 スプ(森)主人公の好きな文字。
    ラストにまた出てきてその余韻を残す。
    そしてラストから話の始まりにつながる…そうしてゆったりと2人は少しずつ深いところから出られるようになるといいな…と思えるラストでした。

  • もやもやとくぐもった声で朗読するのがきこえてきそうな
    どんより曇り空がひろがっていそうなイメージがたえず続く

    最初は読みにくくなかなか読めずにいたけれど
    言葉を失った女、視力を失う男の世界にひきこまれる

  • 夢をみていた。〈かなしいゆき〉が瞼に、喉に、心に降る夢を。雪は音を吸いこむ。降り積もるほどに白い沈黙は深まり、行き場のない声は凍りつき、物の輪郭が崩れるみたいに言葉の意味が失われていった。感覚を閉ざした私は眠りの冬の住人だった。
    けれども、季節は必ずめぐるから、目覚めの春は訪れる。祈りにも似た小さなぬくもりが肌をつたう。夜明けの森のように開かれる瞳。吐きだす息は風になる。いま静止していた音が揺れた。こぼれ落ちるあなたのまなざしを受けとめよう。
    〈かなしいゆき〉は愛しい美しい雪。すべての色を集めた光の色だった。

  • 薄緑色のデザインが美しい装丁。
    読書会の課題本でした。

    ある日突然
    言葉を話せなくなった女。
    すこしずつ視力を失っていく男。

    詩的でとつとつと物語は紡がれる。
    わたしには最後まで2人の、顔が見えてこなかったけど、美しくなく汚い部分も読み取っていた人もいて。

    そんなに簡単なことではありませぬ。か。

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著者プロフィール

1970年、韓国・光州生まれ。延世大学国文学科卒。
1993年に季刊『文学と社会』に詩を発表、
翌年のソウル新聞新春文芸に短編小説「赤い碇」が当選して文壇デビュー。
2005年に『菜食主義者』で韓国で最も権威ある文学賞とされる李箱文学賞、
2016年にイギリスのマン・ブッカー賞国際賞を受賞。
小説や詩のみならず、絵本や童話の創作や翻訳も多数手がけている。
韓国小説文学賞、今日の若い芸術家賞、東里文学賞など受賞多数。

「2018年 『そっと 静かに』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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