昭和ノスタルジー解体: 「懐かしさ」はどう作られたのか

著者 :
  • 晶文社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794969965

作品紹介・あらすじ

ゼロ年代の〈昭和ノスタルジー〉ブームは、なぜ世代を超えた一大ブームになり得たのか――。高度成長期が終焉を迎えた一九七四年にマンガ『三丁目の夕日』が連載開始。そこから映画「ALWAYS 三丁目の夕日」が公開される二〇〇五年までの約三十年間に、昭和を愛好する文化がどのように形成されてきたかを、マンガやテレビ、雑誌、広告、おもちゃ、音楽、映画、ファッション、レジャー施設など幅広い領域に目を向けながら考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 読み応えあり、骨太の教科書です。
    70年代、80年代、90年代、2000年代、
    それぞれで「ノスタルジー」がどのように
    捉えられていたか。
    年代ごとを総合的に俯瞰した図表は
    もはや宝物です。
    「キープオン」で文化をつなげていこうとする
    姿勢に敬服。
    参考書籍のうちサブカル系の雑誌が大量に含まれているのが
    すごい。全部目を通したからこその
    骨太解説本です。

  • 中村草田男が「降る雪や明治は遠くなりにけり」という句を詠んだのは昭和6年、1931年のことだったとのこと。明治が大正になった変わったのは1912年だったので、29年前を憶う俳句なのでした。明治百年、1968年ぐらいからの振り返りなのでは?と勝手に思い込んでいたので、戦前の句であることにビックリしました。第二次世界大戦を経なくても三十年近くの明治、大正、昭和の移り変わりは市井の人々につっては十分に激動だったのでしょう。元号がふたつ変われば「一番新しい歴史」になるのかも知れません。翻ってこの5月に改元し、昭和、平成、令和という時間経過を持って令和にとっての昭和は、昭和にとっての明治と同じ近接ヒストリーになりました。今、我々がなんとなく持っている明治イメージが司馬遼太郎なり、大河ドラマなりで形成されたファンタジーであるのと同じように、昭和ノスタルジーも作られた記憶であることを丁寧に論証するのが本書です。「ALLWAYS〜三丁目の夕日」とかナンジャタウン、新横浜ラーメン博物館がどんどん出来ていった頃のなんとなくの共通イメージとしてのCGっぽいロケセットな昭和感が現在放送中の朝ドラ「なつぞら」などのビジュアル、トンマナを決めていることを思うと、江戸時代とか明治時代と同じように昭和時代もひとつの鋳型に流し込まれるような気もします。そういった大雑把な流れだけではなく、本書のユニークさは、著者の執筆動機が90年代の「渋谷系」のレトロ感がどうしてあんなにカッコ良く感じたか?という個人的な好奇心を起点としているので、論点視点の細かさ、幅広さ、深さです。そこら辺がこの本を、「あるある」読書でも満喫出来る仕組みにしています。由紀さおりのピンクマルディーニのみならず、竹内まりやの「PLASTIC LOVE」(ずぶずぶに昭和ではないけど達郎が昭和から一貫して算出してきたポップスとして…)が世界に発見されたりして、昭和、あるいは昭和が産み出したサブカルチャーは今や、日本の資源になっているようにも思え、とても満喫いたしました。

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著者プロフィール

1972年生まれ。埼玉県出身。茨城大学人文社会科学部教授。
専門はメディア史、戦後日本文化史。
主な著書に『昭和ノスタルジー解体』(晶文社)、『発掘! 歴史に埋もれたテレビCM』(光文社新書)など。

「2020年 『失われゆく仕事の図鑑』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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