(あまり)病気をしない暮らし

著者 :
  • 晶文社
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本棚登録 : 315
レビュー : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794970657

作品紹介・あらすじ

誰だって病気になって医者の世話にはなりたくはない。でも病気にならずに一生を過ごすなんて、よほどの幸運に恵まれないかぎり不可能なお話。それでも「できるだけ病気にならないライフスタイル」を教わりたい、という世間様の要望に応えて、ナニワの病理学教授が書いた「(あまり)病気をしない暮らし」の本。病気とはなんだろう、といった素朴な疑問から、呼吸、食事、ダイエット、お酒、ゲノムと遺伝子、がん、感染症、そして医学や研究についての雑談まで、肩の凝らない語り口で解説。『こわいもの知らずの病理学講義』で人気爆発、ナカノ先生による究極の健康本。

感想・レビュー・書評

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  • 前著「こわいもの知らずの病理学講義」もおもしろかったが、これはさらにわかりやすく、楽しんで読めた。「病気ってなに?」と題したまえがきに始まり、うんうん、なるほどねという話題が次々出てくる。第1章の、腸内フローラとハイパーベンチレーションの話だけで、すでに元を取った気になった。その後も、興味深い話ばかり。誰でもできるダイエット法、自分のゲノムを知るということ、アルコール中毒とは?、ガンは予防できるのか、風邪とはなにか、などなど。

    健康や医療についての情報はあふれかえっているけれど、どうも肝心なところがわからなかったり、不安感だけが募ったりすることが多い。その点本書は、まあ人間いずれ死ぬんだし、あまりキツキツ考えずに、そこそこ気をつけて暮らそうかという、ちょっとゆったりした気持ちにさせてくれる。

    これは、著者独特の柔らかい大阪弁の語りによるところも大きいと思う。テレビなんかで耳にする大阪弁には、どうも響きのきついものが多いし、読むにしても、田辺聖子先生がお書きになるような春風駘蕩といった風のものには、最近あまりお目にかかれない。著者の、軽く自分に合いの手を入れながら流れていく文章は、実に私の好みなのだった。

  • 病原性微生物やウイルス、ダイエット、がん、以前から気になっていたオプジーボについての話が分かりやすく書かれていました。(あまり)病気をしない暮らしをするのに特別なことをする必要はなく、手洗いをする、睡眠不足にならない、ストレスを溜めない、社会的ネットワークを広げることが良いそうです。それらのことを守って、今年は風邪を引かないようにしたいと思います。

    p26
    池田は、昆布の出汁の研究から、うま味を感じさせる物質がグルタミン酸ナトリウムであることをつきとめました。

    p36
    腸の中には、なんと、500種類程度、100兆個以上の細菌が棲んでいると考えられています。我々の体を作っている細胞の種類が200、総数がおよそ37兆個といわれていますから、腸内細菌の多さがわかるでしょう。

    p37
    腸内に存在する細菌は、全部ひっくるめて、腸内細菌叢、あるいは、腸内フローラ、と呼ばれます。

    p38
    ふだんから良く耳にするビタミンとは、生きていく上で必要な微量の有機化合物のことです。一部例外がありますが、我々の体はビタミンを作ることができません。ですから、ビタミンCとかは果物や野菜などから摂取する必要があるのです。ビタミンKというのをご存じでしょうか。たとえば、ちょっとしたケガをしても、すぐに血が止まります。それには、血液凝固因子という何種類ものタンパク質が機能します。ビタミンKは血液凝固因子を作る時に必要なビタミンです。

    p40
    腸内フローラというのは、一つの生物ではなく、いろいろな細菌の集合体です。だから、ある生物の全遺伝情報であるゲノムという言葉を使うのはちょっとおかしい、ということになります。そこで、腸内フローラ全体の塩基配列情報のことは、「高次」のとか「超」を意味する「メタ」という言葉をくっつけて、腸内フローラのメタゲノムと呼ばれています。

    p41
    ビタミンKのことを少し書きましたが、赤ちゃんは腸内フローラが未発達なので、十分なビタミンKが作られません。また、母乳にもあまり含まれていません。なので、新生児にはビタミンKの投与が必要なのです。

    p107
    いまでは、この「胎児期における低栄養状態は、何十年もたってから、心筋梗塞、動脈硬化、糖尿病、高血圧など、さまざまな生活習慣病のリスクになる」ということは、確かな事実としてひろく受け入れられています。

    p109
    エピジェネティクスの定義はいろいろあるのですが、ざっくりと、DNAの塩基配列の変化なしに細胞がある状態を記憶する現象、と言うことができます。

    p110
    妊娠の初期に、低栄養状態にさらされると、その状態にあわせて適応する。いいかえると、少ない栄養で生きていくのに適した細胞から成り立った体になるのです。

    p128
    吸収されたアルコールがいつまでも血中に留まるわけではありません。アセトアルデヒドという物質に代謝されていきます。じつは、このアセトアルデヒドというのがくせ者なのです。アルコールが気持ちよくさせてくれる効果をもたらすのに対して、心拍数の増加、頭痛、吐き気、発汗、顔面紅潮といった、お酒による楽しくない作用のほとんど、さらには酒飲みの大敵である二日酔いもアセトアルデヒドのせいなのです。
    もちろんアセトアルデヒドも代謝されます。ありがたや、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)という酵素様のおかげをもって、酢酸へと分解されていきます。

    p129
    ALDHの活性には、NN、ND、DDと、遺伝的に決定された三つのタイプがあります。Nはnormal(正常)のN、Dはdeficient(欠損)のDです。NNタイプの人はアセトアルデヒドを速やかに代謝できるので、不快な思いをすることが少ない、いわばお酒に強いタイプです。それに対してDDタイプの人はアセトアルデヒドを分解する能力がほとんどなく、酒を飲むと苦しくなるので、下戸にならざるをえないタイプです。そして、NDタイプがその中間。

    p155
    ついでにいうと、漢方薬である五苓散は二日酔いに効くとされています。うれしいことに、このお薬は、体の中の水の分布をただすことによって、悪心、嘔吐、頭痛といった悪酔いや二日酔いの症状をすべてやわらげてくれるそうです。

    p160
    がんゲノムをはじめとする、これまでのがん研究から、がんの発症に直接的に関係する遺伝子変異と、そうではない遺伝子変異があることがわかっています。そして、がんの直接的原因になりうる遺伝子の変異が「ドライバー遺伝子変異」、それ以外が「パッセンジャー遺伝子変異」と名づけられています。

    p161
    そのDNAの複製の際に、どうしても変異が生じてしまうのです。その頻度はとても低いのですが、ゲノムの文字は60億個もありますから、総数でいうと結構な数になってしまいます。その際、どの遺伝子に変異が生じるかはランダムなので、運悪くドライバー遺伝子に変異が生じることもあります。そして、それが、一個の細胞の中で蓄積していくと、がんが発症するのです。
    ヒトが生きるには、細胞が分裂し続けなければなりません。歳をとればとるほど、当然、細胞分裂の回数が累積してきます。それは、先に書いたような理由で、遺伝子変異の数かま増えるということを意味します。その結果として、複数のドライバー遺伝子に変異が生じてらがんになってしまう、ということなのです。
    他にも、炎症がおきたときに作られる活性酸素や、アルコールが代謝されて産出されるアセトアルデヒドも変異を引き起こすことが知られています。

    p165
    ピロリ菌は、細胞に突然変異を直接引き起こして胃がんを作るのではありません。そうではなくて、慢性炎症を介して胃の発がんを促進します。
    どういうことかというと、まず、慢性炎症がおきると胃の粘膜上皮細胞の増殖が促されます。そうなると、細胞分裂の回数が増えます。細胞分裂が増えるということは、DNAの複製回数も増えるということなので、突然変異が多くなって発がんのリスクが高まるのです。

    それとは別に、慢性炎症になると、活性酸素の量が増えます。活性酸素というのは、酸素分子から作られる、過酸化水素などの反応性の高い分子のことです。活性酸素は、さまざまな細胞機能を活性化するという好ましい働きもしてくれるのですが、量が多くなると、いろいろな悪さもします。その悪さの一つが遺伝子変異の誘発なので、活性酸素も発がんの要因になるのです。

    p169
    ドライバー遺伝子の中には「がん抑制遺伝子」というのがあります。その遺伝子に異常があると、細胞増殖のブレーキが効かなくなり、がんになりやすくなってしまうのです。ヒトパピローマウイルスは、がん抑制遺伝子に由来するタンパク質の機能を失わせるタンパク質を産出して、せっかくのブレーキを働きにくくします。そのようなメカニズムを介して、感染した細胞をがんになりやすくするのです。

    p197
    血管が詰まって酸素がいかなくなり、組織が死んでしまうような場合がネクローシスです。ネクローシスは必ず何らかの病的異常によって引き起こされます。それに対してアポトーシスな、病的な場合もありますが、免疫反応のように正常な生体反応においても生じる細胞死です。
    免疫というのは、細菌やウイルスなど、外からやってきた異物=非自己をやっつけるメカニズムです。免疫に関係する細胞は何種類もあるのですが、主役のひとつはリンパ球とよばれる細胞で、そのうちメジャーなものはT細胞とB細胞です。これらの細胞の表面には、異物を認識する受容体があります。
    その受容体は、それぞれが特定の異物を認識するのですが、外来性の異物はどんなものがやぅてくるかわかりません。ですから、ものすごくたくさんの種類の受容体が必要です。細かい話は省きますが、そのために「遺伝子の再構成」とよばれる現象があります。1987年に利根川進先生がノーベル賞を受賞されたのは、その分子メカニズムの解明によるものです。
    この遺伝子再構成により、T細胞もB細胞も、じつに多くの種類の受容体を作ることができるのです。しかし、ひとつ困ったことがあります。それは、遺伝子の再構成はランダムに生じるので、非自己である異物だけでなく、自己、すなわち、自分の細胞が作る物質に反応する受容体も作ってしまうのです。
    自己を認識するような受容体ができてしまうと困ったことになります。というのは、自分の細胞を異物として認識して攻撃してしまうからです。実際にそのような病気があって、自己に対する免疫が生じてしまう、という意味で、自己免疫疾患といいます。膠原病もその一種です。そのような状態にならないように、自己に対する受容体を発現した細胞には死んでもらう必要があります。アポトーシスは、そういった不要な細胞を殺すため、すなわち、からだを正常に保つための細胞の死に方でもあるのです。

    p201
    PD-1はT細胞の表面にあって、T細胞の機能を抑制する、ということがわかったのです。ですから、PD-1がなくなるとT細胞が暴走して自分の細胞を攻撃し、自己免疫疾患が生じてしまうのです。

    p203
    抗体は、体内に侵入した異物を認識するタンパクで、リンパ球のひとつであるB細胞から分泌されます。PD-1に対する抗体は、PD-1と結合して、PD-1とPD-L1との結合を妨げることができます。かくして作られたのが抗PD-1抗体であるニボルマブ(商品名:オプジーボ)です。

    p231
    中途半端な抗生物質投与によって薬剤耐性が生じやすくなります。だから、不要な抗生剤の投与などは避けなければなりません。いまだに、風邪で抗生剤を処方されたりする先生もおられるようですが、後の項でも述べるように、風邪はウイルスによって引き起こされる病気ですから、抗生物質など絶対に効きはしません。それどころか、中途半端な投与によって何らかの耐性菌を作ることになりかねないのです。

    p257
    200種類もあるウイルスのうちどれかに感染して風邪をひくと、そのウイルスに対して免疫ができます。しかし、原因ウイルスは総数200種類もあるので、ひいてもひいても、別の種類のウイルスによる風邪をひくのです。
    少し意外かもしれませんが、統計的には、歳をとればとるほど、風邪に罹りにくくなることが分かっています。これは、いろいろな種類のウイルスの風邪に罹って、それらのウイルスに免疫ができていくためと考えられています。

  • いわゆる科学を一般向けに書いたような本。

    生理学を学んでいたので、内容に驚きは少なかった。
    けれど、生理学の基礎知識があまりない人には是非読んでほしい一冊。
    なぜなら、分かりやすく面白い上に、考えさせられる部分があったからだ。
    ゲノムのこと、癌のこと、風邪のことなど身近だけど知らない故にあまり考えないテーマが多いのではないだろうか?
    どんどんと進歩が進む医療分野のことは知っておいて損はないと思う。
    例えば、自分の遺伝子解析をしたいか?
    結果を知っても対処はできないかもしれないけどそれでも良いか?
    出生前診断すべきか?
    などと言った問いだ。

    日本の研究分野はどうなるのかなとも思った1冊。

  • 病理学の教授が、書いた医療エッセイ。

    とても軽快な文章ですいすい読めて、内容も面白かったです。

  • 風とインフルエンザの違いが分かった気がする。でも、コロナってなんだ?

  • うーん、面白いのは面白かったけど、後半ダレた。特に大学事情うんぬんの番外編は別の本で読みたかったかも。ともあれ、お医者様に誠意を持って共感してもらうと、風邪は1日早く治るそう。こういう話はいいのよ、うん。裏表紙のカット、何じゃこりゃ?と思ったけど、もし今後、この本のことを思い出す機会があったら、間違いなくこの「キッチキチ〜ダイエット」だわ。こういうネイルアートって既にある気もするが。

    2018年現在で、国立大学の学費は年間54万円だそう。

  • 現代の医学で分かっている範囲で謙虚に、飄々と病気、がん、遺伝子、微生物などについて語られてありよかった。

    遺伝子とプライバシー、子供の権利に関する話、微生物学における生物の定義など、議論が分かれているものはしっかりと書かれており信頼できるなと感じた。

  • 平易な言葉で患者さんに説明できるように使うために研修医の先生に読んでもらうのも良いかもしんない。そろそろ外来研修はじまるし。

  • 読みやすくおもろく書かれているけれど,現状判る医学の限界をきちんと詳らかにしている.結局まだまだ判らないことだらけなので,そのときの最新情報を基に自分で取捨選択するしかない.

  • 微生物病の研究を経た大阪大病理学の教授が著者。
    前作同様、豆知識だったり有益な無駄話がふんだんに盛り込まれてて飽きない文章の構成になってる。
    こういう本を読んでると、幼き頃に夢描いてた医学の道を歩まなかったことの後悔がでなくもない。こういう先生に出逢いたかったものだ。

    著者も幾度となく言ってるが、本書のタイトルに対する明確な答えを提示していない。
    その理由としては、経歴にも書いた通り本書は微生物、病理、人の身体のつくりを研究してた方が書いているので、その対処法もそこの分野(原理的なこと)に関連した内容になってるから。

    個人的には3章と4章が面白かった。
    3章がゲノム、将来どのようなことが医療に起きるか。
    4章がアルコール、アル中とはなにか、アルコールを飲むとどのようになりどのような考え方ができるか。

    総評としては、やはりタイトルへの明示的な解がないこと、衝撃的な内容がなかったことを考えると、前作の良さを再認識しまた読み直したいと思う。

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著者プロフィール

仲野徹(なかの とおる)
1957年、「主婦の店ダイエー」と同じ年に同じ街(大阪市旭区千林)に生まれる。大阪大学医学部医学科卒業後、内科医から研究の道へ。ドイツ留学、京都大学・医学部講師、大阪大学・微生物病研究所教授を経て、2004年から大阪大学大学院・医学系研究科・病理学の教授。専門は「いろんな細胞がどうやってできてくるのだろうか」学。2012年には日本医師会医学賞を受賞。著書に、『幹細胞とクローン』(羊土社)、『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』(学研メディカル秀潤社)、『エピジェネティクス』(岩波新書)、『こわいもの知らずの病理学講義』(晶文社)など。趣味は、ノンフィクション読書、僻地旅行、義太夫語り。

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