つけびの村  噂が5人を殺したのか?

  • 晶文社
3.05
  • (16)
  • (84)
  • (128)
  • (51)
  • (25)
本棚登録 : 1244
レビュー : 159
  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794971555

作品紹介・あらすじ

この村では誰もが、誰かの秘密を知っている。

2013年の夏、わずか12人が暮らす山口県の集落で、一夜にして5人の村人が殺害された。
犯人の家に貼られた川柳は〈戦慄の犯行予告〉として世間を騒がせたが……
それらはすべて〈うわさ話〉に過ぎなかった。
気鋭のノンフィクションライターが、ネットとマスコミによって拡散された〈うわさ話〉を一歩ずつ、
ひとつずつ地道に足でつぶし、閉ざされた村をゆく。
〈山口連続殺人放火事件〉の真相解明に挑んだ新世代〈調査ノンフィクション〉に、震えが止まらない!

つけびして 煙り喜ぶ 田舎者

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 7年前、テレビでの報道をよく覚えている。
    のどかな田舎で凄惨な殺人放火事件が起こったことの、そのセンセーショナルな部分だけが取り上げられ、連日ワイドショーに流れていた…そこに横たわる深い闇が怖くてほとんど見なかったけれど。

    この本のことを新聞の書評で読んだとき、テレビ報道とは違い、かなり深く取材していることが分かり、読んでみたいと思った。

    もともと、ノンフィクションの賞に応募するために書かれていた物に加筆されたらしく、少し重複するようなところがあったが、過疎の村の高齢者たち…口の重い人やとっつきにくい人もいる…に根気よく話を聴き、田舎=牧歌的と幻想を抱きがちな我々に、その真の姿を余すことなく伝えてくれている。

    日本の限界集落は1万3千以上あり、それは全体の21.3%を占めるらしい。
    そんなことも念頭に置きながら読むと、消滅を迎えようとしている村々の悲鳴のようにも思える。
    2020.11.18

  • 2013年7月、山口県の限界集落で起こった5人の殺害事件。
    その悲惨さから「平成の八ツ墓村事件」として騒がれた
    犯人はUターンしてきた1人の男性
    犯行の引き金となったのは「村八分」「噂話」だった…?
    この事件を追った高橋ユキさんのルポ

    なんだろう、読みながらこのじわじわくる恐ろしさ
    読んでいてモノクロでしか画が浮かばない
    最初にこの地区を訪れた時の入り口の家からして
    もう怖い。なぜ魔女の宅急便…

    事件を引き起こした保見光成は元々はこの地区出身
    Uターンで関東から帰ってきた
    彼を被害妄想的な精神異常に追い込んだのは村人の噂話だったという

    それがどういうものだったのか?本当なのか?
    を確かめるために著者の高橋さんは実際に何度も地区に足を運び、人々に話を聞くことから始める

    で、話を聞くうちに出てくるのは
    「誰もが知っている誰かの秘密」「噂」
    住民が少なすぎてお互いに知りすぎる色々
    そして娯楽のないなかでのウワサ話
    家族のようでいて他人という独特の近い距離感

    保見光成を狂わせたのは何だったのか?

    そんな中、事件の秘密を知るという人物の
    「事件から10年経ったら話す」という謎の言葉

    そしてついに明かされた事件の真相
    多くの人が拍子抜けするような内容だったと思う
    だけど事件に向き合って一つの決着をつけた高橋さんにとっては大きな真相だったと思う。

    私はある意味それが事件の真相だったというのも納得してしまった。

    人が人を殺す
    それは肉体だけではなく精神を殺すことも意味する

    コロナ禍で田舎暮らしが注目を集めている
    都会でも田舎でも人なしで人は生きていけない
    ただ、田舎は人間関係が狭く、人と人との距離感が近すぎる

    妬み、貧富の差、嫉妬、歪んだ正義…
    噂は時に人を殺す
    ネットの世界でも噂が人を殺す

    それはどこに生きても同じだったのだろうか…

  • 少し興味があったので読んでみた。
    正直犯人は真実を言ってないので着地点はないけれど、
    田舎の山奥、限界集落という枠の中に、
    地元だったとはいえ都会に出て戻ってきたものの、
    根も葉もない噂ばかりが日常のようにはびこってる独特な土地柄に翻弄され、思い込みがどんどん強まってどこかで糸が切れてしまったのか。
    もともと変わり者だったようだが、あの土地が更に犯人を追い詰めたのか。

    最後の方では被害者たちが氏神様の信仰心の浅さが理由の1つとあげられてもいる・・・
    著者は何度も現地に足を運んでるし、よく取材されている。

  • Twitterで見て、noteに課金したくちである。書籍化なったと知って即買いした。
    力作である。「結局何もわからん」と怒っている人が散見されるが、それは著者のせいではなく犯人——あるいは事件、あるいは…言ってしまうなら、「村」のせいである。「何がなんだかわからない」ものをありのまま精確に書いたのだから、「何がなんだかわからない」ものになってしまうのは当然だ。

    それに、著者はしっかりこの事件を「解決」している。
    この事件の経過が世間に言われている「Uターン→精神病→妄想→架空のいじめ→犯行声明(「つけびして〜」)→犯行」ではなく、「精神病→Uターン→(他人への)いじめ告発・批判(「つけび〜」)→(犯人への)いじめ→妄想→犯行」であることをつきとめたのだから。
    中でも特に重要な発見は、犯人の精神病が結果ではなく原因であったことだろう。四十歳を過ぎて精神病を発症し、それがために仕事ができなくなり、経済的に立ちいかなくなって故郷に帰った。そこでいじめに遭い、それに囚われ、ますます病を悪化させてしまった。
    そう、他に気晴らしや、あるいはいっそ新天地を求めることができなかったのは、犯人が病ゆえに経済的に困窮していたからだ。そして、彼を狂わせたいじめ——終わらない陰口やうわさ話——の原因もまた、往時を支えた林業や椎茸栽培、竹細工といった産業も廃れ、朽ち果てていく村の困窮が原因だった。
    「田舎はろくな娯楽もない」「いじめられている」。実のところ、「謎に満ちた」この事件のすべては、開巻すぐに紹介される犯人のメモ書きに集約されている。あえて言うなら「たったこれだけ」のことが、大勢の生命を奪い、数知れない人を不幸にした。

    それにしても、著者ははるばる山口県まで取材に行くたびに、こまごまとしたお世話の要領を夫に「申し送りして」、子供を見て「もらって」いる。そうして書いた原稿が陽の目を見なかったことで、「夫も少し怒っている。取材のたびに大きな負担をかけたのだから、当然だ」…。
    ほとんどあきらめかけていた本作が思いがけずTwitterでバズり、各社からオファーが殺到しだした時、「私は子供の卒園・入学準備に追われていた。いまどきの園では卒園にあたり、親が企画運営する大がかりな謝恩会がある。それの役員に当たっていて心身ともに疲労困憊しており、何を考える余裕もなかった」…。
    いずれも男性なら、また女性でも日本以外なら、ありえないことだろう。これだけの枷でがんじがらめにしておいて、「男ほど残業できないからオンナは無能www」とは。男の卑怯卑劣姑息ぶりは、こんなところにも浮き彫りにされている。

    2019/10/1読了

  • noteで購入して読んではいたが、追加取材による加筆部分もあり、パラパラとめくってみて読みたいと思ったので改めて購入。

    内容は…背筋が凍ります。事件そのものというより、閉鎖的な集落の〈うわさ話〉に。それがものすごく気持ち悪い。
    都会の人にはピンとこないかもしれないが、田舎のうわさ話の広がる早さったら想像以上だ。ネットより早いかもしれない。百歩譲って真実ならいいが、そうじゃないことの方が多いから始末が悪い。皆が皆、味方であり敵。目立ったことをすればすぐヤられる。よそ者や成功者は恰好のマト。だから「上手いこと」やらないといけないのだ。妄想性障害を発症していたワタルには、その辺のやりくりが困難だっただろうと推測する。

    読んでいて諸星大二郎の『黒石島殺人事件』というマンガを思い出してしまった。村人たちの共同幻想や、殺人事件だというのにどこか他人事で曖昧な感想しか口にしない点など。刃物で人を刺しても、酔った席でのことじゃけんで済ませちゃうような?

    小さい子供さんがいたのに遠くまで足を運び渾身のルポを完成させた著者に敬意を表します。

  • 山口県にある、住人わずか12人の限界集落。
    ある男の手によって5人の男女が撲殺され、家を焼かれたという実際の事件を追ったルポ作品。
    彼の手によって残された、不可解な俳句や、著者にあてた手紙、周辺人物の話を通して、郷に存在していた「うわさ話」と彼の凶行の間に存在する、確かな関係性に焦点を当ててゆく。
    このルポでは、犯行に及んだ原因を、郷の住人がしていた「うわさ話」だとしている。妄想性障害を患う犯人は、そのうわさ話が、自分への中傷だと思い込んでしまい、近隣住民を次々と殺害。下着姿で山中に佇むところを、警察に発見される。
    もともとの疾患があるかは別として、最近、うわさ話が驚くほど人を簡単に闇に引き摺り込み、時には命が失われてしまうといった、悲しい場面を沢山目にする。学校や、ママ友、そしてSNS。
    実際にはたった数行の文章というとても少ない情報量をもとに、人は簡単に善悪や要否を判断し、自分とは無関係の個人を激しく攻撃してゆく。
    犯人が人を殺めてしまった事実は決して許されることではないが、そういった殺意は、なんの前触れもなく自然と個人の中に生まれるものではなく、周囲の無自覚かつ、無遠慮な干渉が、それを引き起こしうる要因として確かに存在しているのだということを、改めて思い知らされる。

    と、色々考えることはあったものの、この作品の半分くらいの内容は、事件を考察する上で蛇足と感じた。
    事件内容や犯人の思考、様子に関してはとても興味深かったのだが、著者がこの郷を訪ねた際の、家々などを表す描写に「不気味」といったような主観が入ってしまったり、犯人からの手紙に対して「妄想」と切り捨てず、もう少し冷静な考察があっても良かったのではないかという、残念な感じがあった。
    時間の空いたときに淡々と、一気に読み進めてしまうと良いかも。


  • 2013年、山口県の小さな集落で起きた連続殺人放火事件のルポ。

    都会から故郷へと戻った男は、なぜ5人もの住民を殺したのか?

    結論から言うと目新しい事実は出てこない。しかし、田舎特有の排他的で、少しのはみ出し者が孤立を深めていく様子がありありと想像できた。

    事件のあった金峰地区は当時、8世帯14人しかいない。すぐに噂話は真実かのように広まる規模だ。
    井戸端会議のような雑談でも、マジョリティ=大きな声となり集落の中ではスタンダード化していく。

    住民と馴染めずにいた男は、そうした周囲の声に不安を覚え、自分への敵意であると妄想を強めていったようだ。
    救いの手を差し伸べてくれる仲間は1人もいない。どれだけ孤独だったことか。

    死刑囚となった男は“妄想性障害”を患っていたと推定されている。事件が起きる前に救える手立てはなかったのか、考えさせられた。

    残念だったのは著者の取材姿勢。取材に応じてくれた瞳の大きな遺族男性を「出目金のよう」、事件と関係がない住宅の外観を「不気味」、と表現するなど失礼な書きぶりが目立った。

    傍聴マニアとして重ねてきた経験から、刑法39条「心神喪失者と心神耗弱者の責任能力の規定」に関して問題提起するなど、高い倫理観を備えている方だと思っていた。それだけに余計、残念だ。

  • 「平成の八墓村」と騒がれたこの事件。「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」の張り紙が不気味で、本当に横溝正史の小説みたいやなぁと思ったのを覚えている。もう7年前の事件なのかぁ。
    村八分にされた犯人が復讐のために5人を殺した事件だと記憶していたけど、著者が村で地道な取材を続けていくうちに、村八分の事実はなかったことがわかってくる。代わりに、次から次へと出てくるうわさうわさうわさ……。そのうわさが犯人の妄想性障害に拍車をかけ、凶行へと走らせた。5人の命を奪ったことは許されることではないけど、人のうわさ話(悪口)しか娯楽がないような閉鎖的な村で、都会から帰ってきた犯人はさぞ生きづらかったことだろうと思う。精神が病んでしまう気持ちはわかる。
    事件の話とあわせて、村の歴史や、限界集落の現在なども語られていて、なかなかおもしろいルポルタージュだった。
    グーグルストリートで、まだこのつけびの張り紙を見ることができる。ゾッとした。

  • いやーっ、ここまで低レベルのノンフィクションは初めて読んだかもしれない。
    これは、ノンフィクションですらない。
    中傷ビラか、便所の落書きに例えられるレベルのネットの書き込みと大差ない。

    実際に現場周辺を歩いて地元の人の話を聞いてるみたいだけど、ただ聞いた話を漫然と並べて、それから浮かんだ作者の憶測を書くだけ。
    きちんと検証するようなことは、全くない。
    とにかく底の浅さばかりが目につき、読んでいて不快感ばかりが増していく。

    構成も文章も雑すぎて、尻切れトンボの話は多いわ、それが突然別の場所で似たような話を蒸し返すわ、etc.etc.

    あげくに取材中に遭遇したことへの個人的な感想がやたらと顔を出し、事件についての取材の様子を書きたいのか、取材で苦労している自分を書きたいのか、どっちなのかと聞きたくなることもしばしば。

    途中、結論めいた感じで村の様子を批判的に書いているが、それって村の人から噂話を聞いて回ってるだけで勝手に結論めいたものを書いて垂れ流している自分の行為が、似たようなものという自覚はあるのだろうか。

    あげくに愚痴や不満混じりの自分語り(自己憐憫の臭いがぷんぷん)が出てくる。
    だが、それを読んで、この本のひどさに納得がいった。
    シロウトの野次馬に、ちゃんとしたノンフィクションを期待するのが間違いだ。

  • 2013年に8世帯14人の限界集落で5人が殺害された「山口連続殺人放火事件」を調査したルポタージュです。

    事件発生当時、被告・ワタルの自宅前で「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」という五七五調の貼り紙が認められます。一見、犯行声明か予告と受け取れるこのフレーズが実は事件とは関連がなく、過去において郷内の異なる場所で発生したボヤ騒ぎを暗示するものだったことが、本書の開始から間もなくして読者の知るところとなります。そして著者の関心は、村人たちによって証言されるワタルの常日頃からの異様な言動から、徐々に事件の舞台となった郷そのものを覆っていたある種の不穏さ、そこに蔓延していた一種異様な空気感へと軸足を移します。

    「うわさ話ばっかし。うわさ話ばっかし」

    ワタルが事件直後の失踪中にICレコーダーに残した言葉は、取材が進むにつれて明らかになる郷の過去のエピソードや村人たちの関係性と事件への思いを知るにつれ、実感をともなうようになります。本書を通読したのちに、冒頭にある事件当日の再現描写に改めて目を通すと、そのシーンの見え方が変わっています。

    ----------
    【補足】
    本書はその取材進行の経緯を原因として、前後半ふたつに分かれた構成となっています。

    <前半>
    「夜這い」をテーマとした雑誌の取材依頼からスタートし、後に著者自身が事件への関心を強くしたところから個人での取材に移行しています。収監されて妄想にふけるワタルへの面会と手紙によるやりとりを主とする章で締めくくります。

    <後半>
    やむなく取材を終了した後に記事を個人としてウェブに掲載したところ、時を置いて著者の期待を大きく上回る反響が広がり、これを受けて書籍化が決定したところに後半が始まります。そして書籍としての完成を目指して追加取材分が綴られたのが後半です。最高裁判決を扱う終章では、著者なりの事件への理解が提示されます。

    この構成に対する所感として、前半が巧妙な導入と緊張感ある引き締まった進行によって引き込まれるのに対し、後半は紙幅稼ぎを疑いたくなる不要と目される情報(「チームつけび」の存在、「レンタルなんもしない人」のカメオ的な登場、別件の取材、実りの少なかった取材にもとづく章、など)までもが詰め込まれ、前半とは対照的な間延びした調子に落ちてしまった点について残念に思いました。

全159件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

高橋 ユキ (たかはし ゆき)
1974年生まれ、福岡県出身。
2005年、女性4人で構成された裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成。現在はフリーライターとして、裁判傍聴のほか、様々なメディアで活躍中。

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
濱野 ちひろ
砥上 裕將
凪良 ゆう
ヨシタケシンス...
劉 慈欣
佐藤 雅彦
辻村 深月
宇佐見りん
村田 沙耶香
能町 みね子
有効な右矢印 無効な右矢印

つけびの村  噂が5人を殺したのか?を本棚に登録しているひと

ツイートする
×