急に具合が悪くなる

  • 晶文社
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本棚登録 : 691
レビュー : 47
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794971562

作品紹介・あらすじ

もし明日、急に重い病気になったら――
見えない未来に立ち向かうすべての人に。

哲学者と人類学者の間で交わされる
「病」をめぐる言葉の全力投球。
共に人生の軌跡を刻んで生きることへの覚悟とは。
信頼と約束とそして勇気の物語。

もし、あなたが重病に罹り、残り僅かの命言われたら、どのよう
に死と向き合い、人生を歩みますか? もし、あなたが死に向き
合う人と出会ったら、あなたはその人と何を語り、どんな関係を
築きますか?

がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者と、臨床現場の調査を
積み重ねた人類学者が、死と生、別れと出会い、そして出会いを
新たな始まりに変えることを巡り、20年の学問キャリアと互いの
人生を賭けて交わした20通の往復書簡。

感想・レビュー・書評

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  • 愛の本より、愛の本だし、友情の本より友情の本だし、哲学の本より、哲学の本だ。
    言葉を通じて、知性というものが、人生にもたらす素朴で深くて美しい意味を持つことを教えてくれる。
    堅苦しい学問の壁を軽々と超えて、出会い、ほとばしる。
    誰かと出会い、誰かと生きるって、最高だな。

  • 読み始めた時はまさか 読み進めるうちに涙が溢れてダラダラと止まらなくなるとは まさか思わなかった。
    大昔、哲学のゼミに入っていたので、二人の禅問答のような書簡を 私もこういう風に思考をこねくり回し、仲間と議論した事があると懐かしく思い出し、楽しく読んでいたのだが、いつの間にかお二人の人間性と「ない事もあり得た、にもかかわらず」深く繋がった関係性にどっぷりと漬かり愛おしく、終わりに近づく書簡が悲しくて切なくてどうしようもなくなってしまった。

    陳腐な悲しい作り物のお話ではない、
    美しい本当の物語だ。

  • 互いに真摯にあろうとすれば、人間って短期間でもこんなふうに深く濃く関わりあえるんだと思った。
    死を前にしてもなお学問しようとする人の探究心や野心、勇気にうたれた。

    ------------------------

    “結局、私たちはそこに現れた偶然を出来上がった「事柄」のように選択することなどできません。では、何が選べるのか。この先不確定に動く自分のどんな人生であれば引き受けられるのか、どんな自分なら許せるのか、それを問うことしかできません。そのなかで、選ぶのです。選ぶとは、「それはあなたが決めたことだから」ではなく、「選び、決めたこと」の先で「自分」という存在が産まれてくる、そんな行為だと言えるでしょう。”(p.229)


    “約束とは、そうした死の可能性や無責任さを含んだうえで、本来取れるはずのない「決定的態度」を「それでも」取ろうとすることであり、こうした無謀な冒険、賭けを目の前の相手に対して、「今」表明することに意味があるのだろうと。
    あなたがいるからこそ、いつ死ぬかわからないわたしは、約束という賭けをおこない、そのわからない実現に向けて冒険をしてゆく。「今」の決断こそ「約束」の要点なのだろうと。だとしたら、信頼とは未来に向けてのものである以上に、今の目の前のあなたへの信であると言えそうです。”(p.164)

  • 医者からホスピスを探すように言われた哲学者と、その哲学者に思索の伴走者として選ばれた人類学者の往復書簡。

    お二人の文章のスピード感がまったく違うのが面白い。磯野さんの豪速球、宮野さんの穏やかさ。
    一般的な死生観から始まり、宮野さんの病状の悪化により緊張感と親密さが増す後半の読み応えたるや。こんなふうに言葉が紡がれる「現場」を目撃できるなんてすごいことだ。

  • こんなにも心揺さぶられる言葉ばかりが散りばめられた本が他に存在するだろうか。

  • 20通の往復書簡を交わす、二人の学者。
    ひとりは乳がんの多発転移を抱えた哲学者。
    そしてもうひとりは、文化人類学者。
    往復書簡を提案したのは、哲学者。
    そして、哲学者から考察を引きずり出し続ける人類学者。

    初めの頃の手紙は、まだ死について一定の距離を置いた状態で始まる。しかし、手紙がやり取りされる期間の中で、哲学者は急に具合が悪くなる。
    そして、20.通の書簡のやり取りがなされ、最後に哲学者が本書の「はじめに」を書いた数日後、哲学者はその生を終える。

    死が可能性ではなく、確実な、かつ、かなり近い出来事、運命として。選択肢ではなく運命として目の前に提示された時に、人は何を考え、そして何を伝えようとするのか?
    しかもその当事者が、普段から普通の人より余計にものを考え、そしてそれを伝えようとすることのプロである哲学者であることに、私は非常に大きな興味を持った。
    それは、死を考えるにあたって、大きなヒントになるのではないかと考えた。

    ここまでは、本書を紹介してくれた書簡の一人の当事者である磯野真穂氏がラジオで語ったことから考えた、本書を手に取った理由。

    そして、実際に手に取った本書。
    とても明るく、楽しい。そして真剣な言葉を通じた二人のやりとり。
    本書の内容について、私の薄っぺらい感想を書きたくはないと思った。しかし、二人の書簡を読み進めていって、何故か涙が流れ出すのを止められないような記述が、私にはありました。 
    _________ _________ _________ _________

    本書を私は二度繰り返して読んだ。
    一度読了した直後に、また最初のページに戻り、結末に何が起きるか知っている状態で、読み直した。
    それは、おそらく本往復書簡の当事者たちが、経験したプロセス。
    読み直した時に、書簡が書かれたときに意図された言葉を超える意味があったことに気がつく。
    そんな気がした。

  • データ分析関連の知り合いが、分析する人は読んでいたほうがいい、とおすすめしていた本。

    人類学者と、がんを患った哲学者の書簡のやりとりを書籍化したもの。
    がんになることで生活の選択肢が狭められ、それによりどういった行動・治療法がどれくらいの確立で病状を悪くするのかを医師から語られ、どう選択していくのかその悩む過程も描いている。

    分析する側だと、統計的に無慈悲に数字を表すことができるけど、個人レベルの視点に立つと選べる選択肢は1つしかないし、確率を気にし始めると人生の幅も狭められてしまう。
    治療に合理的な人生が、求めるべき人生なのか。。。

    実際にそういった状況にならないと、差し迫った意識として理解はできないかもしれないけれど、気持ちを少しでも理解できたような気がした。

  • こんなに生きてる言葉に触れたことはない。すごく強い力のある言葉。スゴ本。

  • 【急に具合が悪くなる】
    宮野真生子(哲学者)磯野真穂(人類学者)による、急に具合が悪くなる、と宣告された哲学者と、人類学者による10の往復書簡。
    このような設定で生まれた本はなかなかないと思う。(設定という言葉が適切かわからないが、生まれてしまったというニュアンスのある『状況』よりも、作られたというニュアンスのある『設定』というほうがしっくりくる)
    死が近づくにつれ、人類学者の語りは抽象的になり、一方で哲学者の語りは実の側に振れていくような。
    文中、「治ったら一番に何がしたいか」という問いかけをテレビで見つけ怒り、は、「この問いは治らねば一番にしたいことはできない というメッセージを暗に発している」、という話から、ラーメンを食べる要介護老人の動画を思い出した。いつだって、素直に一番にしたいことを選んで行うことが一番であるはずなのに、それを狭める「わかりやすいリスクだけ目の前に出して、乱雑に可能性を切り捨てた物言い【=「(弱い)運命論的な選択」はなるほど、と。
    また、代替医療をめぐる考え方についても、私自身がある種、宗教心のように「標準医療」信じることが必要、と考えていたが、それは不十分な考え方で。結局リスク〈かもしれない〉の選択のなかで身動きが取れなくなり、疲弊してしまうことは避けられないよう。立ち向かう鍵は、きちんとコミュニケーションをとること、なのかも。
    他にも、偶然性に溢れた世界の素晴らしさとか(哲学者は九鬼修造、偶然性を研究した哲学者の研究者)ハードな話題の中でだんだんと見えて来る、生きることとか。

  • この書簡の最後がどうなるか、それを知っているが故に残りのページ数が少なくなるに連れて、胸が苦しくなった。
    生と死を彷徨い、すっかり諦めてしまいたいと思いながらも、自身の言葉を引き出していた宮野さんのエネルギーに終始圧倒させられる。
    生きること、死について、そして人との出会いについて考えさせられた。
    「下手すると関係性が壊れて書簡自体が終わるかもしれない」
    「関係性を真剣に作ろうと思ったら踏み込むことも時には必要なんじゃないか」
    そんな思いで書いたと、後に語る磯野さん。
    でも、きっと宮野さんはそこまで踏み込んでくれる相手だと感じ、磯野さんを伴走者として選んだのだろうな。

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著者プロフィール

福岡大学人文学部准教授。一九七七年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程(後期)単位取得満期退学。博士(人間科学)。著書に『なぜ、私たちは恋をして生きるのか』(ナカニシヤ出版、二〇一四年)、共著に『急に具合が悪くなる』(晶文社、二〇一九年)、『愛・性・家族の哲学』シリーズ全三巻(ナカニシヤ出版、二〇一六)。論文に「九鬼周造の存在論理学」(『西日本哲学年報』第19号、二〇一一年、西日本哲学会若手奨励賞受賞)、「個体性と邂逅の倫理―田辺元・九鬼周造往復書簡から見えるもの」(『倫理学年報』第55集、二〇〇六年、日本倫理学会和辻賞受賞)、他。

「2019年 『出逢いのあわい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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