- 晶文社 (2025年2月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784794974617
作品紹介・あらすじ
竹端さんは正直な人である。
正直さは研究者にとって必須の知的資質である。
本書を読むと、正直さが知的離陸を可能にすることがわかる。
──帯文・内田樹
ケアから考える家族、学校、社会、制度、そして資本主義。
長らく成果主義と自己責任論の呪縛に苦しんできた著者が、自らの子育て体験を経てケアに目覚めた。その過程で読んできた本、出会ってきた人々とのエピソードで語る、ケア中心社会への見取り図となる思索エッセイ。
能力は個人に備わったものではなく、他者との関係性のなかで立ち上がるもの。能力主義の軋轢に対しては、ケアの精神でときほぐす!
“僕自身が「仕事中毒」だったときには、生産性至上主義の塊で、業績を出すことに強迫観念的に縛られていた。そのことに自覚的になったのも、家事育児に明け暮れた一日が終わって、「今日は何も出来ていない!」とため息をついている自分に気づいた時期からでした。そこから、自分を解放するためにも、少しずつ「能力主義批判」がはじまったのでした。”(「はじめに」より)
【目次】
第1章 能力主義のなにが問題なのか?
学力偏重は「やめたくてもやめられない」アディクション
能力主義をいかに相対化するか
あなたはそのままで生きていい
信頼関係の基本はただ話を聞くこと
第2章 ケアについて考える
「弱さ」を基軸とした強いつながり
「交換」から「使用」への価値転換
ケアの世界は「巻き込まれてなんぼ」
「無力さ」でつながり直す面白さ
「決められた道」の外にある想像・創造力
第3章 家族がチームであること
第一優先は家族、第二優先が仕事
お父さん「も」支える言葉
家族丸抱えと社会的ネグレクト
子どもを中心にする視点
ケアを軸にした社会をどう生み出すか
「まっすぐなキュウリ」こそいびつなのだ
第4章 学校・制度・資本主義
資本主義経済の裏で隠されているもの
「平均の論理」は「社会的排除の論理」
「学力工場」と偏差値序列
チームがあれば孤独は乗り越えられる
隷従しない勇気と決意
シンバル猿にならないために
ゆたかなチームで生きていく
みんなの感想まとめ
ケアを中心に据えた社会のあり方を探る本書は、著者の子育ての経験を通じて、能力主義がもたらす社会の問題点を明らかにしています。成果主義や自己責任論に苦しむ中で、著者は「無力さ」を認め、他者との関係性の中...
感想・レビュー・書評
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めっちゃよかったが、本というよりブログ。読書感想文だった。なのでブクログ読んでるみたいだった。一冊に10ページ以上書かれていることがあり、読みたい本も増えた。
図書館で借りたので書き込みや折り込みができず買えばよかったと、読みながら悔しがる。
違和感を言語化し、失敗もさらけ出し、悩みも迷いも戸惑いも文しながら、でも何冊も本を書いている。
「巻き込まれてなんぼ」というのが、一番好きな言葉だったけど、たくさんいい言葉があった!
ブログでもアウトプットすれば本にできる!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者が能力主義とケアに関連した本を読んだ感想が書かれていた。
ケアを仕事にしていることもあり、「能力主義」と「ケア」は常に頭にあるキーワードで、見かけてから気になっていた本。
最も印象に残ったのは精神科医の話。投薬治療をしても治らない患者さんに対して、治し方が分からない、だから治療を続けるしかなかったという告白。
しかし専門職を交えてチームを組み、チームで治療にあたることで治療の道が開けていったと書かれていた。
様々なケアについて書かれていたので、もう一度頭を整理しながら読んでみたい。
著者が読んだ本も読んでみたいと思った。 -
昨年あたりから「能力主義」についての本をいくつか読む中で出会った一冊。一見目新しい内容はあまり無いように思えたけど、気づけば付箋をたくさん貼りながら読んでいた。
能力主義や成果主義、そして自己責任論に無自覚に捕らわれているのは著者だけではないはず。子育てを通じて気づいたケアの価値は資本主義のもとでは「非生産的」とされ、よって子育てに追われた一日を「何もできなかった」と感じてしまう。そう思わせる社会構造そのものを変えていく必要があるのではないか。そもそも生産性とは、能力とはを問い、当たり前に刷り込まれていた視点を見つめ直す機会になる。
特に印象に残ったり、深く頷いた内容
・「無能」は自分には才能がないと自己否定、自己卑下すること。「無力」は自分のアプローチではうまくいかないという「非力さ」を認めること。
・家族のケア機能は実質的に崩壊しているのに、法や制度は家族をアテにして抱え込ませている。その現実こそ「社会的ネグレクト」と言えるかもしれない。
・「問題行動」は生きる苦悩が最大化した人々の、論理的に言語化できないが故の、非言語的なSOSの表現。
・全ての人が「自己の意見を形成する」ことができるよう、応援者がその人の意志形成を応援し続けていく必要がある。それが安心して保証される社会こそ、障害者や子どもの権利が守られ、ひいては全ての人の尊厳が保証される社会である。
・「隷属しないという決意」は、隷従するシステムそのものから抜け出す決意である。
・家族や職場というチームにおいて、お互いを尊重し、話をじっくり聞き合い、共に考え会えるチームを形成していくことは、「一人で出来るもん」という能力主義的個人主義で自ら抱え込み、他者を蹴落とすよりも、遥かに豊穣な何かを生み出すのではないか。
平均を設定してそこから脱落した人を分けたり、排除したりしておきながら地域に戻していこうという理念や「社会的ネグレクト」については、普段の仕事の中でも感じているもやもや感を的確に表してくれていた。
また作中で参考文献になっている本も少しずつ読んでみたい。 -
従来の伝統的な社会では、たとえば、長男が社長を継ぐことに多くの場合、異論は挟めなかった。
ただ、時代が進んで、そんな伝統よりも能力主義が重視されるようになってきた。が、そもそも能力って何か?学歴・資格・成績・・・
あやふやなままな価値観で判断が生きづらさにつながっている感じがする -
勅使川原さんは、コンサル会社で能力開発業務に従事した後、今は独立して組織開発の仕事に従事し、2人の子どもを育てている。ただ、2020年に授乳中の違和感から乳がんが発覚し、あちこちに転移している。そんな闘病中の彼女は、子どもたちにメッセージを残したいと、あえて「自分が死んだ後」の2037年に、成人した子どもたちと対話形式で、この社会に蔓延する能力主義について解きほぐしていく、という体裁を取っている。
この本の中で、組織開発に従事する経験に基づき、勅使川原さんは、社員の性格や能力を分析しただけでは、業績が向上しない、と語る。入試の偏差値はペーパーテストの情報処理「能力」によって決まるが、そもそもそれは個人の表層的な知識や経験、スキルである。勅使川原さんによれば、その下に見え隠れしているのは、意識や意欲、心構えや価値観などの「マインドセット」だという。さらに深層の、普段は見えない部分には「性格特性や動機」などの感情の素が隠されており、これは「若年期に固まり安定、変容はかなり難しい」としている(p175)。
そして、この「若年期に固まり安定、変容はかなり難しい」「性格特性・動機」こそが、本人の生きる苦悩をもたらす源泉であり、実存上の課題だ、と架橋すると、話の見通しがよくなる。職場での不適合、病気や失業、離婚や親族トラブルなど、様々な「悪循環」に襲われたとき、情報処理能力などの知識や経験、スキルではなんともならなくなる。そういう苦境の時こそ、その人のマインドセットが問われるし、それは性格特性や実存的課題と直結している。会社の業績悪化などでも同じで、そのような「ピンチ」の時こそ、表層的なスキルでは対応出来ず、本人の人間性が問われる、というのだ。
だからこそ、性格特性を心理テストで計れば、それで組織開発が出来るわけではない、 という勅使川原さんの話もよくわかる。「性格を把握することは、課題解決の最初の一歩でしかない。知ったうえで、『誰と誰を業務で組み合わせようか?』『どう仕事を割り振ろうか?』といった現場の調整がすべてなんだ」というのは、本人の性格特性を活かしつつ、 それが業績や欲しい成果と結びつくためにどうしたらよいのか、を考えるプロセスなのだという。こういう泥臭い「現場の調整」をしないかぎり、組織の苦境は越えられないのだ、と。
ただ、そうはいっても、僕の中で疑いようのない確信が、子育て当初からあった。それは、業績主義という「正義の倫理」を手放さない限り、妻や娘との「関係性を破壊する」 可能性が高いということだ。簡単に言えば、今までの仕事中心主義で生きていれば、妻や娘に早晩愛想を尽かされ、捨てられるだろう。それはゼッタイに嫌だ! であれば、僕の生き方を変えるしかない。当時の僕には言語化出来ていなかったが、それが「正義の倫理」から「ケアの倫理」へと、自分が大切にする倫理観を変更することでもあったのだ。 そしてこの倫理観の変更は、関係性の変革にもつながる。
お母さんが子育てで困ったら、次の三つの言葉を子どもに尋ねてみて。
「大丈夫?」
「何に困っている?」
「私にできること、ある?」
【参考文献一覧】
第1章 能力主義のなにが問題なのか?
中村高康『暴走する能力主義―――教育と現代社会の病理』ちくま新書、2018年
マイケル・サンデル『実力も運のうち――能力主義は正義か?」鬼澤忍訳、早川書房、2021年桜井智恵子『教育は社会をどう変えたのか――個人化をもたらすリベラリズムの暴力』明石書店、 2021年
勅使川原真衣『「能力」の生きづらさをほぐす』どく社、2022年
第2章 ケアについて考える
岡野八代『ケアの倫理――フェミニズムの政治思想』岩波新書、2024年
ジェイソン・ヒッケル『資本主義の次に来る世界』野中香方子訳、東洋経済新報社、2023年
大熊一夫『ルポ・精神病棟』朝日文庫、1981年
三好春樹『介護のススメ!希望と創造の老人ケア入門』ちくまプリマー新書、2016年
第3章 家族がチームであること
針具有佳「デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果が出せるのか」PHPビジネス新書、2023 年
木村泰子刊『お母さんを支える言葉』清流出版、2024年
中村佑子「わたしが誰かわからない――ヤングケアラーを探す旅』医学書院、2023年
池田賢市『学びの本質を解きほぐす』新泉社、2021年
磯野真穂『他者と生きる――リスク・病い・死をめぐる人類学』集英社新書、2022年磯野真穂・宮野真生子『急に具合が悪くなる』(晶文社)、2019年
第4章 学校・制度・資本主義
ナンシー・フレイザー『資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか』江口泰子訳、ちくま新書、2 023年
藤井渉『ソーシャルワーカーのための反『優生学講座』――「役立たず」の歴史に抗う福祉実践」 現代書館、2022年
クリスティ・クルツ 『学力工場の社会学――英国の新自由主義的教育改革による不平等の再生産』 仲田康一監訳、明石書店、2020年
斎藤環・水谷緑『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』医学書院、2021年
森川すいめい『感じるオープンダイアローグ』講談社現代新書、2021年
エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ『自発的隷従論』西谷修監修、山上浩嗣訳、ちくま学芸文庫、2013年
田野大輔『ファシズムの教室――なぜ集団は暴走するのか」大月書店、2020年
天畠大輔『しゃべれない生き方とは何か』生活書院、2022年
おわりに
厚東洋輔『〈社会的なもの〉の歴史――社会学の興亡1848-2000』東京大学出版会、2020年
内田樹編『日本の反知性主義』晶文社、2015年 -
まさに娘がインフルエンザで出席停止、幸い回復したけどケア以外に何もできない、という状態の時に読んだ。
なんというナイスタイミング。
何もできないんじゃないじゃん、ケアをしてるんじゃん…。
能力主義、ケアといったことを中心に、著者が読んだ本について自らに引き寄せた思考で書いている。
能力主義が染みついた著者が、子どもが生まれたことでケアというものに直面し、そこから自分と向き合っていく、それが丁寧に書かれていてあちこち頷きながら読んだ。
これは読まなきゃと思った本ばかりで、案内としても良かった。 -
著者は精神障害は福祉の研究者でありながら成果主義のもと、学歴偏重、家父長制に基づいた能力主義から脱却できなかった状況を子供が生まれたことを契機にケアの世界に目覚めた様子を、書評という形で綴られた書である。著者の考えることと共通するのか私も同じ所を読み、同じ感想を持っていたので、著者の考えに共感した。先に読んだ勅使河原氏と同じように現在の能力主義に疑問を持っている著者であるが、本書は勅使河原氏より社会福祉寄りの考えが中心となった書であった。なお著者と勅使河原氏は対談もされているようであった。
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知人とやっているクローズドの読書会でみんなで読んだもの。竹端さんのブログが元になっており、能力主義やケア、その周辺の話題をテーマごとに編集し直して適宜加筆修正されています。竹端さんと同じように子育ての経験や家族との関わりから能力主義の歪みについて感じるところのある方もいれば、わかってはいるけれどその呪いから抜け出すの難しいよね、という話だったり、そもそも社会の構造として子育てをし始めるまでケアの重要性に気付く余地がないということが問題だよね、など色々みんなで話しました。本の感想が軸になっており読みたい本がけっこう増えたのでがんばって読んでいきたい。特に磯野真穂さんの『他者と生きる』はなるべく優先度上げたい。積読の山の前で悩むけども。
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この本を読んで、「能力主義からの距離の取り方」と「ケアの本質」、そして「自分の意思を取り戻すための内面的な闘い」に強い共感を覚えた。
日本で「普通の人」として生きることがいかにレベルの高いことを要求されるか、自らもそれを無意識のうちに目指しながら、うまくはまらないことに苦しんできたか、その呪いを今どこまで解くことができたか、どの部分でまだ解けていないか、こどもに対して、その呪いを引き継ぐことをしていないか、といったことを考えた。
コスパ至上主義だと、ケアしケアされながら生きていることを忘れてしまう。今後も忘れたくない考え方だ。 -
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書名が提示する課題に対するまとまった論考というよりは、その課題について折に触れて考えてきた研究者の読書エッセイ(ブログの採録+加筆)。
このテーマではいろんな人がいろんなことを言っているので、そこに著者による主張が一冊加わるより、いろんな人のいろんな言説を俯瞰する内容の方が必要ということかもしれない。
俯瞰というには著者の子育て経験からの語りが色濃く(ブログだから当然だが)、ケアを語るとやはり自分に返ってくるのだ、お前の生活は、生き方はどやねんと必然的に問われることになる、恐ろしいテーマだなと思う。 -
現代社会、昭和脳引きずりからの脱却、令和脳への一旦リセットについて思いを巡らせました
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能力主義について、さまざまな角度から考察することができる良書。
著者自身が試行錯誤されてきた軌跡がよくわかり、共感することも多かった。
特に現代日本の教育システムに対する考察にはとても考えさせられた。
周囲に忖度し、自発的に奴隷になっていないか、自分に問うてみよと思った。 -
能力主義、生産性向上主義を追い求めた筆者が子育てというアンコントロール下で気付く不自由な社会。
常々モヤモヤしていたことがある。
日本はなぜ幸福度がこんなにも低いのか。
自分自身のことを考えても、
不幸ではない。
しかし、幸福だと断言することもできない。
それが何なのか。
自由とは何か。
知らず知らずのうちに、私たちは、不自由な人間を量産している。
そりゃ、幸福度低いわ! -
タイトルを見て「キャリア形成」を語る本なのかなぁと思って手に取った。
読み終わった今、何の本とジャンルをつけるのは個人的には難しい気がした。
しいて言えば1冊1冊についてがとても丁寧な書評を集めたものとでも言えばいいか。
だけど、なんか毎日もやもやするんだよなと感じているのなら、手に取って読んでみると共感できたり、いやいや違うとか思ったりいろんな発見がありそう。
個人的には「読み物」として読んだ感じ。 -
タイトルに惹かれて買ったがタイトルが中身を表現していない。
中身はブログの記事を、本にまとめるために選定して書き直した程度であり、タイトルから想像できる内容からはほど遠い。
各内容も、難しく書いてはいるが薄く感じた。 -
子育て真っ只中の著者が、それまで陥っていた業績主義、生産性至上主義に気づかされて、無能と無力の違い、問題の外在化の考えにハッとされられた経験を語る「『無力さ』でつながり直す面白さ」の項目が大変印象的だった。子育て以外にもいろんなものに読み替えて当てはめられそう。
私は子育てしていないので、子育ての大変さは分からない。想像するしかない。だから、ちょっと他人事感のある項目もそこそこあった。子育て真っ只中の人には共感できるところも多そう。
専門職に限らず、タイトルにピンと惹かれた人は、得るものが多い良書だった。 -
かなりよい本だった。
社会福祉学の大学教授が、子どもをもって世話に追われて1日何もできなかったと落胆する。これってめちゃくちゃ能力主義じゃんという自覚から始まっているから信頼できる。
著者プロフィール
竹端寛の作品
