カール・ロジャーズ入門―自分が“自分”になるということ

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  • コスモスライブラリー
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784795223653

作品紹介・あらすじ

『抑圧家族』で育てられたロジャーズの人生そのものが『真の自分自身になる』というテーマをめぐって展開されていた。人間・ロジャーズに焦点を当ててその生涯と思想形成の歩みを解明すると共に、彼の理論と実践のエッセンスを分かりやすく説いた格好の入門書。スピリチュアルな次元に足を踏み入れた後期の思想・実践や東洋思想との関連にも光を当て、カウンセリングの新たな地平を切り開く。

感想・レビュー・書評

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  • 現代日本の心理療法の世界にカール・ロジャーズが与えた影響は大きい。来談者 中心療法というその方法だけでなく、その人間観、人間関係論、教育論など、多く の面で彼の思想から学ぶべきことは、なお多い。この本は、ロジャーズの生き生き とした人間的な側面を伝えるという意味でも、かっこうの入門書だ。

    ロジャーズの著作としては、岩崎学術出版社から『ロージャズ全集』全23巻が 出版されたが、高価ですでに入手しにくい。インターネットで検索すると、ロジャ ーズが書いたもので手に入りやすいのは晩年の主著『人間尊重の心理学―わが人生 と思想を語る』 (1984、創元社)くらいか。その意味でも諸富氏の入門書は貴重だ。

    私自身は、サイコセラピーを専門にするものではないが、ロジャーズから実に大 きな影響を受けてきた。またロジャーズに影響を受けたことが、その後仏教や精神 世界に関心を広げ、それらを学んでいく上での、重要な踏み台となったと感じる。 ロジャーズを学び、またカウンセリングを体験的に学習することが、「自分が"自分" になる」過程であった。まさに自分自身の中の成長しようとする《いのちの働き》 が、ロジャーズに共鳴していた。

    諸富氏のこの本は、私もその虜となったロジャーズの魅力を充分に伝え、さらに ロジャーズ晩年のスピリチュアルな次元への目覚め、トランスパーソナリストとし てのロジャーズにも触れており、学ぶところが多い。

    「自分が"自分"になる」ということの真意は、ロジャーズの次の言葉に端的に示 されている。 「私が自分自身を受け入れて、自分自身にやさしく耳を傾けることができる時、そ して自分自身になることができる時、私はよりよく生きることができるようす。‥ ‥‥言い換えると、私が自分に、あるがままの自分でいさせてあげることができる 時、私は、よりよく生きることができるのです」

    こうして、現実の、あるがままの自分を心の底から認め受け入れた時、どのよう な変化が生じるのか。これもロジャーズ自身によって次のように表現されている。

    1)自分で自分の進む方向を決めるようになっていく
    2)結果ではなく、プロセスそのものを生きるようになる
    3)変化に伴う複雑さを生きるようになっていく
    4)自分自身の経験に開かれ、自分が今、何を感じているかに気づくようになって いく
    5)自分のことをもっと信頼するようになっていく
    6)他の人をもっと受け入れるようになっていく  

    こういうあり方自体が、きわめてスピリチュアルな方向を指し示している。しか もロジャーズは、来談者中心のカウンセリングでの、クライエントの変化そのもの から、こうしたあり方を学んでいったのだ。

    諸富氏によるとヨーロッパ諸国では後期ロジャーズの影響が比較的強く、ここ数 年とくに、スピリチャリティーの観点から、ロジャーズの思想と方法を再発見しよ うとする動向が高まっているという。

    そうした動向の中心人物が、英国のブライアン・ソーン教授だという。彼はいう、 「セラピストが、宇宙で働いている本質的に肯定的な力を信じる能力と信念体系を 持つことが、クライエントの癒しに深い貢献をもたらします。」 ロジャーズ自身 が「治療的関係について、その関係はそれ自体を超えて、より大きな何ものかの一 部になる」と述べているから、こうした展開があって不思議ではない。

    ロジャーズの基本的な仮説のひとつに「実現傾向」概念がある。あらゆる生命体 は、自らの可能性を実現していうようにできている。この世におけるすべての《い のち》あるものは、本来、自らに与えられた《いのちの働き》を発揮して、よりよ く、より強くいきるように定められている。ロジャーズは晩年に、この《いのちの 働き》が、宇宙における万物に与えられていると考えるようになった。

    こうした思想は、日本人の感性にきわめて自然に受け入れられやすい。だからこ そ、ロジャーズは日本で何の抵抗もなく受容され吸収されてきたのだろう。しかし、 であるとすれば逆に彼にただ感性で共感するだけでなく、その理論としっかりと向 き合い対話することが必要だと、私は感じる。それが、私たちの思考の暗黙の前提 となっている何ものかに、しっかりとした理論的な表現を与える作業につながって いくだろう。

    ロジャーズの魅力を、たんにカウンセリングやセラピーの世界だけに閉じ込めて おくのは、あまりに惜しい。

  • 後半は荒く読んでしまったのでレビューできないが、人の役に立とうと立たまいと、あるがままの自分でいて良いのだと、アナ雪そっくりな文言がいろいろ。偉大なる先人の教え。

  • カール・ロジャーズはカウンセリング理論の発展に大きく貢献し、クライエント中心療法を考案した人である。
    この本の前半は、ロジャーズの生涯を生まれる前から追うことにより人物像を描き出し、後半からはそのカウンセリングの理論を彼の境遇と関連させて説明している。

    現在はロジャーズの療法は古いそうだが、それまで「患者」と呼んでいたのを「クライエント」と変え(臨床心理学ではクライアントと書かないらしい)、その人の力を信じて受容、共感、一致するのが大切というのは今でも多くの場面で通用している考えだろう。

    全体的に筆者の解釈が含まれていて、純粋にロジャーズの考えを知るには使いづらいが、入門としてはとても分かりやすい。巻末のロジャーズをもっと知るための参考文献もありがたい。(でもどれも入手困難または高い)

  • ロジャーズの生涯を詳細に掘り下げ、彼が始めたクライエント中心療法が生まれる経過が詳細に書かれている。

  • ロジャーズの生涯とその著書について網羅されている感じ。諸富さんの本はどれも読みやすい。これもとっても読みやすかった。はじめの方に書いてあるとおり、初心者にも読みやすく、既に少し勉強している人にも物足りなくない内容。少し古い本だけど、なかなか価値のある本だと思います。

  • 著者の諸富先生には千葉大学で、道徳を教わりました。自分の偏屈な価値観を揺さぶられた思い出があります。
    カール・ロジャーズ自身の抑圧された幼少期こそが、真の自分探しに目を向けるきっかけになったんだな〜と思いました。
    教育においても彼の思想は広く受け入れられてると思います。
    悩める青少年にぜひ読んでほしいです。

  • んーっ。悪い本ではないのだけれど、入門と言うより、評伝と言った方が正確かも。360頁も費やしていながら、副題に掲げられたテーマも深くは掘り下げられていないし、心理学史におけるロジャーズの理論、実践の意義も触れられていないし。版を重ねている本だけに、残念な点が目立ちました。

  • 「ロジャーズ入門書」としてはかなりの良書。

  • 抑圧家族に育たなければ、来談者中心療法に至らなかったのかなぁ~と思えば、悩み、苦しみも人生に必要なものなのかもしれない。自身の中年期の危機に際して、弟子のカウンセリングを受けるあたりが、好感持てますね。

  • ロジャーズの生い立ち、基本的な考え方、臨床の場での取り組み方などが余すところなく書かれています。

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著者プロフィール

明治大学教授

「2018年 『孤独の達人 自己を深める心理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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