ゴッホの復活

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  • 情報センター出版局
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784795847729

作品紹介・あらすじ

日本人はいつから「美への誇り」を失ったのか。58億円で落札されたあの『ひまわり』は贋作である!完璧な推理と説得力で、真のゴッホ像を取り戻す。「日本推理作家協会賞」受賞作家、渾身のノンフィクション!

感想・レビュー・書評

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  • 『ゴッホの遺言』『ゴッホの証明』に続く、ゴッホ作品研究の1冊。
    数ある「ひまわり」の真贋は、いかに?

  • 本書を読もうと思ったきっかけは、名探偵コナン業火の向日葵を観たこと。その映画で、ひまわりの真贋論争があることを知りました。
    この著者は、2枚目『芦屋のひまわり』と5枚目『東京のひまわり』はゴッホ作ではないと主張しており、『芦屋のひまわり』を非常にこき下ろしています。
    私の感想は、この人犯人と一緒のこと言ってる!です。(もちろん著者を犯罪者扱いしている訳ではない。映画はフィクションと理解しています)
    ひまわりについてよく知らなかったので、『芦屋のひまわり』『東京のひまわり』真贋論争が本当にあると分かって面白かったです。


    それぞれの章の内容↓

    1章 ひまわりについて。

    2章 『芦屋のひまわり』は造形上、ゴッホ作でない。

    3章 シカゴ美術館の研究では、使われたキャンバスから『東京のひまわり』『横顔の男』を真作とした。しかし『横顔の男』は歴史的には贋作とされており、ゴッホとは思えない。

    4章 ゴッホの生きた時代について。

    5章 二枚の『ジヌー夫人』について。メトロポリタン美術館のものは真作。オルセー美術館のものは贋作。

    6章 アルルで育まれたゴッホの絵の系譜は二つ(リアリズムの系譜・ゴーギャンの絵画からの系譜)あり、やがて融合した。

    7章 『東京のひまわり』は真作でない。

    8章 造形の観点から、『東京のひまわり』はゴッホ作でない。

    9章 1.ゴッホは作品の損傷を少なくするため、完全に乾く前に丸めてテオに送っていたと考えられる。『東京のひまわり』には丸めた跡がない。アルル時代の大きな作品は30号Fサイズ。『芦屋のひまわり』と『東京のひまわり』のみ40号。
    2.『十二輪のひまわり』『十四輪のひまわり』のレプリカは、そらぞれオリジナルと重ねると輪郭線にズレがあるが、『東京のひまわり』とオリジナル『十四輪のひまわり』は輪郭線がほぼ重なる。

    10章 1.『東京のひまわり』は背景の最初の色と、修復した色が同色。修復した人が作者なのでは。そしてそれはシェフネッケル(『東京のひまわり』を売却した画商)ではないか。
    2.ゴッホがキャンバスに使っていた麻布を梱包にも使用していたとしたら、シカゴ美術館の研究(キャンバスに使われた麻布が同じ)は作品の真贋を保証するものではなくなる。

  • 専門家としての知識による論理的な考察、さらには作品としての優劣評価を加え、非常に説得力とゴッホ愛に溢れる内容であった。

  • ゴッホにいつまでだまされ続けるのか。を読んだ感想。
    終始著者の趣味、研究の成果発表を読んでいるような感覚であった。前半は。
    「贋作を摑まされる」
    私は絵の価値や善し悪しが全くわからないのだが、特化した人間たちであっても贋作を摑まされることがごく当たり前にあるというまさに芸術とはなんぞやを改めて考えさせられたし、贋作を作る過程や想いや人物の話もあり非常に興味深かった。

  • ひまわりの絵の数は、十数枚程度であって、それほど多くないことを本書で知りました。
    ゴッホというと、なにか「ひまわり」が代表作のように思っていました。

    東京のひまわりが贋作かどうかが、大きな主題になっているようです。

    ヨーロッパでは、美術館で模写をすることによって芸術の腕を磨くことができる。
    芸術を学ぶ基本だと思う。

    模写したものを、誰かが贋作だとして売れば、いつのまにか贋作作家にされてしまう。
    贋作か模写かは、お金の問題であって作品の問題ではない。

    初めから贋作として売ることを前提として書いたとしても、描く上では模写する部分はある。

    ゴッホのファンですが、贋作かどうかには興味がなく、ゴッホに関する情報として勉強のために読みました。

  •  3部作の最終巻です。東郷青児美術館所蔵のゴッホの「ひまわり」は贋作だということを証明しています。

     自分自身も、実物を見たときはただただ気持ち悪さだけが残ったのを覚えていますが、贋物ならしょうがない。友達からも、あれを見て感動したと言う声は聞きません。シカゴ美術館の科学的調査も、筆者の言い分を信じるならば、とてもいいかげん。

     58億円も出してオークションで競り落としたから、美術館側はひくにひけないのでしょう。


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著者プロフィール

1947年生まれ。画家、ゴッホを中心とした絵画研究。東京芸術大学油画専攻卒。大阪中の島美術学院講師、北海学園大学建築学科教授を経て、2006年より愛知県立芸術大学美術学部教授(2012年退官)。個展多数。著書:『ゴッホの遺言』(情報センター出版局、1999。第53回日本推理作家協会賞・評論その他部門受賞)『ゴッホの証明』(同、2000)『耳を切り取った男』(NHK出版、2002)『色彩浴』(ポーラ文化研究所、2003)『ゴッホの復活』(情報センター出版局、2007)『完全版・ゴッホの遺言』(中公文庫、2009)『ゴッホの宇宙(そら)』(中央公論新社、2010)『「ゴッホ」にいつまでだまされ続けるのか』(情報センター出版局、2011)『フェルメールの仮面』(角川書店、2012)『先駆者ゴッホ』(みすず書房、2017)ほか。

「2017年 『先駆者ゴッホ 印象派を超えて現代へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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