- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784796204798
感想・レビュー・書評
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この巻の中の「キリエラ戦記」についての感想。
大きな力を持つ「キリエラ」を巡り、ヒデヨシ達と銀波船長率いる海賊たちが繰り広げる戦いが描かれている。
他の一話完結の話と比べると、ブラックな内容。
ダークファンタジーは、結構好きなジャンルなので、「キリエラ戦記」のような話は割りと好み。
これの前に読んだのが、「アタゴオル外伝 ギルドマ」http://randokukanso.blog79.fc2.com/blog-entry-191.html で、
こちらもブラックな内容だったが、ヒデヨシ達と敵対する相手は「人間」ではなかったため、寓話的な色彩が強かった。
が、キリエラ戦記では、敵対するのは銀波船長という「人間」のため、リアルさ、というか生々しさを強く感じてしまう。
特に印象的なのは、「キリエラ」と双璧をなす「網樹(もうじゅ)」に取り込まれた後の銀波船長とテンプラのやりとり。
銀波船長:(大量の土や植物を食い荒らし、独自の生命体を生み出す「網樹」を指して)
「網樹こそ文明そのものなのさ」
テンプラ:「自然を食い荒らす網樹は必ず滅んでしまうぞ」
銀波船長:「この星の自然を食い尽くしても、網樹はそこで滅ぶ程、未熟な文明じゃないんだ。
この星を覆いつくした網樹を母体としながら、新しい生命循環を続けていくのさ」
テンプラ:「自然が消えても生き続けるなんて、まるで死の文明だな」
銀波船長:「そうとも・・・。永遠に続く死の文明なのさ」
最近のニュースなどの影響を受けた上での解釈だが、「網樹」は、どうしても「アレ」の事を連想させる。
「網樹」の動力源(らしい)ものは「熱の光」
この「熱の光」、中身は誰も知らないが、普段は街の動力源として使っているもの。
ご丁寧に、このエネルギーを「兵器」として使えば、一発で山を吹き飛ばしてしまうほどの威力を持っている、という設定。
そして「キリエラ」は、物質を形作る「旋律」を操る能力を持つハーモニカ。
「キリエラ」「網樹」「熱の光」の3つは、同じ文明が作り出したもので、その文明自身は大昔にすでに滅んでいる。
やはり「アレ」の隠喩、としか思えない。
ラストに救いはあるものの、いつになくブラックな内容だった。
(「アタゴオル」を全巻、読んだわけではないが)詳細をみるコメント0件をすべて表示