君の名残を (下) (宝島社文庫 488)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (535ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796650779

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった
    歴史&ファンタジー小説
    鎌倉時代成立に向けた物語

    いよいよ下巻です
    平家を攻めた義仲と巴
    その義仲を倒した義経
    さらに義経は頼朝に追われることになるという展開

    そして、その戦場の中で出会う友恵と武蔵
    明らかになる友恵、武蔵、志郎の歴史上の役割

    そして、新たな時代が築かれます...
    そんな中、友恵と武蔵の運命は切なく哀しい

    下巻は、ワクワク、そして目頭が熱くなるシーンも多いです。
    それぞれがそれぞれの運命で時の流れに対峙する姿..
    最後、友恵が残したメッセージが胸打ちます

    さてさて、ちょうど、いまNHKの大河ドラマで鎌倉殿の13人をやっています。
    タイムリーでしたね。

    ということで、とってもお勧め!

  • 北条義時として迎えられた志郎は、幼き頃の記憶が甦る。行方不明になっていた北条の四郎はまさしく自分で、未来へ行って戻ってきたのだと。
    因果は三人をからめとり、やがてあるべき未来へと収束する。
    彼らの役割とはいったい何だったのか。

    行く末を知りながら義仲に惹かれ、その妻となった友恵(巴)。
    己の居場所を失い続け、自身の最期を知りながらもその生き様を見届けようと義経と共に行く武蔵。
    未来から戻ったことで知り得た歴史を導こうとする志郎(四郎義時)。
    三人とも「義」の字が付く人物と関わりがあるのも仕掛けなのかな。

    友恵と武蔵がもたらしたものは剣技という武力。
    志郎と友恵がもたらしたものは皇室は神ではないという概念。
    それが朝廷に弓を引き、新たなる世界の枠組みをつくる助けとなる。
    彼らに時代を超えさせたのは「時」か。都市として生き残ろうとした「京」か。
    友恵と武蔵は最後まで志郎が義時であったことを知らないままだった。

    死は等しく皆に訪れる。それでも生きることに全力を尽くし歴史を作った者たちの物語。

  • 上巻から引き続きだが、下巻では一気に歴史が動き、主人公達も教科書に乗っているような出来事に次々関わっていき、臨場感が増した。行く末が気になり手が止まらなかった。

    運命論や死生観が根底にある中で、「歴史の中で私の人生ってどのような意味を持つのだろう?」と考えてしまった。

  • 木曾義仲が平家を倒し
    源義経が木曾義仲を倒し
    源頼朝が源義経を倒し鎌倉幕府を築いた。

    この時代の主人公達を支えるべく、現代からタイムスリップした三人。その武勇が現代まで伝わっている義仲と義経には、800年後の剣術を。頼朝には、この時代の神の概念を転換させた土地制度などの知力を。

    運命に諍おうとしてきたが、その時の自分の意志さえも予め運命に組み込まれたものだったのではないかと思ってしまう。無力感と共に運命に屈しず、運命を変えることが出来ずとも、それでも己の手で歴史を創っていこうとする友恵。

    歴史の勉強、ファンタジー、人間ドラマ、等など盛り沢山の作品だった。

  • 淡々と切なさを感じ、時というものはいったい何なのだろうと登場人物たちを考えながら、自分が知っているこの時代の歴史と照らし合わせながら最後まで来て、今までのことに気づかされて泣いてしまった。大姫が友恵に義高のことを語るところも涙なしには読めなかった。

    独特の解釈で、タイムスリップという設定を生かして、教科書では試験のためだけに覚えた人々がこれほどに生き生きと描かれている。

    義仲の最期が切ない。兼平、兼光、義経も、巴も、弁慶も。皆が守るべきもののために懸命に生きて、死んでいった。その生き様、死に様に感動する。
    最後の平泉のところは、何とも言えない切なさと納得できる部分があって、休まずに一気に読み終えてしまった。

    何度も何度も生まれ変わって、互いに無意識にその相手を、その名残を探している。そして再び別の時代で、別の名で共に生きる。本当にあったのならとても素敵。自分も誰かの生まれ変わりであったならまた面白い。

    仄めかしていただけだけれど、武蔵が義仲の生まれ変わりなのだろうと感じた時の鳥肌と言ったらなかった。そうだったのだと信じたい。ああ、だからと、すとんと胸に落ちてくるものがあった。

    君の名残を。素敵な題名だと、改めて感じた。

  • もう起きることは決まっている。
    だから読み進むのが辛かったな。
    義仲が死ぬこと、武蔵坊が死ぬこと。
    やっぱり歴史は変えられなかった…。


    『君の名残を』 朝倉卓弥 (宝島社文庫)


    この本は「平家物語」を下敷きにはしているが、歴史をなぞるだけにはとどまらず、作者の静謐でいて温かみのある語り口は“歴史小説”として十分読み応えがありつつも、恋愛小説や青春小説のような柔らかさもあって、私はすごく好きだ。

    「身内で食らい合うのが源氏の常」とはよく言われるが、本当に政権が欲しかったのは頼朝だけで、義仲と義経は、ただ己の正義を貫くために戦っていたに過ぎなかった。
    友恵は、義仲を死なせないために義仲のそばを片時も離れなかったが、やはり歴史は動くべくして動くのである。

    “現代”でお互い思いを寄せていた友恵と武蔵なのに、800年過去を遡ったこの時代で、友恵は義仲を愛し、命をかけて守ろうとする。
    そこのところが初め私はどうしても納得がいかなかったのだが、読み終えた今、そのすべてがすとんと胸に落ちた。

    友恵は、過去に行って歴史上の人物巴御前を演じているんじゃなく、巴そのものなのだ、ということが今やっとわかった。
    武蔵は、友恵の「私の義仲」という言葉にショックを受けるが、成るべくして成り、起こるべくして起こる出来事を目の当たりにし、人間の力では抗えない何者かの意思というものを自身の肌で感じたからこそ、最後に友恵を助け、自らは「武蔵坊弁慶」として死んでいく。

    「何であるにせよ、いずれそれは起きなければならない」

    という「時」の言葉を、武蔵と友恵は度々聞く。
    謎の坊さん「覚明」を媒介して体現される「姿の見えない何者かの意思」、それは「時」であったのだ。

    「もしすべてが定まった筋書きの通りなのだとしたら、今の自分がしようとしていることに意味はあるのか。」

    それは、“現代”から“過去”に運ばれてきた三人に共通する思いだった。

    「なぜ自分たちでなければならなかったのか?」

    志郎はその理由に気付く。

    「自分たち三人は、本質的にこの時代に属していなかった何かを持ち込むために時を越えたのではないか」

    武蔵と友恵は現代の剣術、つまり剣道の技を。
    志郎は皇室に対する考え方を。

    志郎=義時は、天皇が絶対的な“神”であったこの時代に、天皇も自分たちと同じ人間であるという考え方を持ち込んだ。
    朝廷の不可侵性というものを真っ向から否定する。
    結果、主である頼朝は成功をおさめ、鎌倉幕府は成立するのである。

    こういう作者の発想ってすごいなと思う。
    本当にそうなのかもしれないとさえ思えてくるから不思議だ。

    武蔵は死ぬ前に、友恵に、「800年後にまた会える」と告げる。
    でもどうなんだろう。
    800年後にまた、「白石友恵」「原口武蔵」として生まれ、出会い、あるポイントで再び過去へ運ばれる。
    それって輪廻とはまた違うものなんじゃないだろうか。

    違う場所を歩いているはずが、また同じ場所に戻って来る。
    まるでメビウスの輪のように、それは繰り返されるというのか。

    そしてなんと、実は志郎はもともとこちら(北条家)の人間であり、一度“現代”に運ばれ、またこちらに戻ってきた、という事実も明らかになる。

    さらにねじれたメビウスの輪。
    ややこしくなってきました(笑)

    義仲に友恵が必要だったように、そして、義経に武蔵が必要だったように、誰かが誰かのために必要とされているというのは素敵なことだ。
    私は全然運命論者じゃないけど、「すべての人の存在は必然」だという考え方は、すごくいいなと思う。
    私がもし友恵の立場だったら、たぶん同じことをしていた。
    だって、義仲っちかっこいいんですもん。

    この作品の構想は、作者が十年来あたためていたものなのだそうだ。
    思いを込めて大切に大切に紡がれた物語なのだということが読んでいて分かる、とてもいい小説だと思う。

    “歴史”は“人”が作るもの。
    そして、“時”の大きな流れが人を助ける。
    そんなことを改めて感じた物語なのでした。

  • 木曽義仲が大好きな私にピッタリ

  • 長い時間をかけ、ようやく読み終わりました。
    名前しか知らないと言って良いほどの知識しかない平家物語。
    登場人物の名前が覚えられず、これ誰だっけ?と良く分からなくなりましたが
    終盤はかなり盛り上がり、楽しんで読む事が出来ました。

    弁慶かっこいいなぁ。

    平家物語の話の流れもわかった事だし、他の平家物語に纏わる作品も読んでみようっと。

  • 「また会えた」はぜったいうれしいことだと思っていた。なんで会えたのにうれしくなくてむなしいの。

  • 辛くてなかなか進まないのに読むのをやめようとは少しも思わなかった

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著者プロフィール

作家・翻訳家。東京大学文学部卒。レコード会社洋楽部ディレクター等を経て作家に。
著書に『四日間の奇蹟』、『君の名残を』(以上宝島社)、『黄蝶舞う』(PHP研究所)ほか、訳書に『安アパートのディスコクイーン─トレイシー・ソーン自伝』、『フェイス・イット─デボラ・ハリー自伝』(以上ele-king books)、マット・ヘイグ『ミッドナイト・ライブラリー』(ハーパーコリンズ・ジャパン)、テイラー・ジェンキンス・リード『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』(左右社)など多数。

「2022年 『ボクのクソリプ奮闘記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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