大人のための怪奇掌篇 (宝島社文庫)

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796665087

作品紹介・あらすじ

死/毒/膿/変異/狂気/憑依/畸形/醜行/拷問/吸血/食人/生贄…まるで悪夢の連なりのような20篇。知的な恐怖と乾いた笑いが織りなす非現実の世界。人生の残酷さや馬鹿馬鹿しさをデフォルメし、見事な仕掛けと隙のない文章、堅牢なエスプリ、通奏低音としてのエロスで描いた倉橋怪奇小説。うれしくなるほどの怖さで20の夜の愉しみを約束してくれる、純文学の香り高い極上エンターテインメント。

感想・レビュー・書評

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  • 短編というにはもっと短い掌編(≒ショートショート)なので、8ページ程度のものが全部で20編。残酷童話のシリーズよりも、怪奇というだけあって怖めだったかも。といってもそこは倉橋由美子なので、どんなにグロい話も上質な印象は崩れないのですけど。

    どれも面白かったですが、個人的には、ベタだけど吸血鬼ものの「ヴァンピールの会」、中国の古い妖怪(?)“飛頭蛮”の血を引く女性の話「首の飛ぶ女」、人間の首から上そっくりな植物のようなものを拾って育てる「アポロンの首」あたりが好きでした。アポロンの首は、もし自分が拾ったらやっぱり育てちゃうかも(笑)。

    ガリバー旅行記のパロディみたいな「オーグル国渡航記」や、タイトルまんまの「カニパリスト夫妻」、アラビアンナイトモチーフの「イフリートの復讐」なんかは、結構ゾっとしました。男の子がお風呂に浸かって居眠りしてる間に溶けちゃって骨だけになっちゃう「事故」は、それでも普通に学校に通って女の子にモテちゃったりするあたりちょっとユーモラスで、他のと毛色が違う面白さがあったかな。

    ※収録
    ヴァンピールの会/革命/首の飛ぶ女/事故/獣の夢/幽霊屋敷/アポロンの首/発狂/オーグル国渡航記/鬼女の面/聖家族/生還/交換/瓶の中の恋人たち/月の都/カニバリスト夫妻/夕顔/無鬼論/カボチャ奇譚/イフリートの復讐

  • 晩年の「酔夢譚」を思わせるショート・ショート.
    隙間時間によむのにピッタリ.
    ブラックなユーモア強め,グロ強め.

  • いわゆるホラーっぽいものは苦手ながら、
    怪奇的とか猟奇的な物語は、恐いもの見たさでやっぱり興はわくもの。

    しかも、この倉橋由美子の20篇のおはなしは上等であった。
    なんだろう、文章のうまさなのだろうか。

    ぐんぐんぐんと引き込まれ、
    そこはかとないユーモアと真実という恐ろしさに愉快であった。

    例えば、「カニバリスト夫妻」

    人肉食の趣味がこうじてテレビ出演などしたという話なのだが、
    実際だったらおぞましいのに、
    昨今のこの世の政界のほうがもっとおぞましく人を食い合っているらしい、と思え。

  • 上品で静かな文体が読みやすく、幻想的な世界にじっくり浸れる怪奇掌編が20編。エロティックな要素、シュールな内容やSF感のあるものまでバリエーション豊か、巧みな語りで飽きさせない。

    特に印象的なのは、首の飛ぶ女、事故、幽霊屋敷、鬼女の面。

    首の飛ぶ女
     恋する相手の元に夜毎に首を飛ばす少女と、首のない身体を観察する義父。その結末は。そして、義父である男の話を聞いた語り手の哀しい決意とは。

    事故
     突発性溶肉症ってなんだ。骸骨になる病気になっちゃったけど、普通に学校に通ってるよ。脆いから気をつけないとね。というシュールな作品。哀しい。

    幽霊屋敷
     ゆっくりと穏やかに進むあちらの世界との交流。

    鬼女の面
     描写が生々しく怖い。自分がつけるのをためらうような鬼女の面を婚約者の顔にかぶせたら。

  • なんとなくきれいなような

     怪奇物語なんだが、ショートショートで余韻を楽しむタイプかな。でも、インパクトが薄くて半分でギブアップ。残念。

  • 怪奇か…。うん、まさに怪奇。予想に反してエロでグロでシュールでそれでいてユーモア。色々なテイストが放り込まれた怪奇短編が20編程ある。現実と非現実の世界を著者のインテリジェンスな筆力が更に大きな世界観を造り上げる。毒気とユーモアがあり、時には寒気のする話のオチも僕的には新鮮だった。また不思議な作家さんに出逢えましたね。

  • 倉橋由美子流アラビアンナイト、もしくは夢十夜(いや20編収録だから二十夜か)。寝しなに読めば夢への入口に誘ってくれること請け合い。ただし悪夢。かなりグロテクスだったりエロティックだったりするんだけれど、この人特有のクラス意識が前面に出ているので品がいい。神話や古典文学の知識はユーモアとして毒盛るからなお一層品がいい。平民の私はもう平伏すしかない。けど本当はちょっと鼻に付いたりもしてる。

  • 買ったまま、数年間放置したまま忘れていた一冊。
    なぜ、読まなかったのか?もっと、早く出会っていたはずなのに……。
    山田風太郎『奇想小説集』(残念ながら、現在手元にはないのであるが…)が好きな自分。方向性や文体は全く異なるが、「ナイナイ」とヒネた見方をせず、物語の世界に身をまかせるという点。目の付け所、モノの見方に独自性があるという点。これらの点には共通性を感じる。
    一篇10p前後で全20篇テンポ感もいい。
    自分のお気に入りは「鬼女の面」「聖家族」「カニバリスト夫妻」。

  • 幻想的な文学の作家と言えば、川上弘美や小川洋子の名が上がるが、その1世代前には倉橋由美子がいた。その倉橋の作風は、古典的な格調とペダンティックな雰囲気とを常に持っていた。これは、世代が古いから古典的であるとか、川上や小川の格調が高くないという意味では決してない。あくまでも、そのようなスタイルということだ。倉橋はまぎれもなく、独自の様式を持っていたのである。本書は20の掌編を収めるが、1つ1つはこんなに短くても、読者を幻想世界、物語世界に誘うことができる。そして、そのいずれにも倉橋の様式が貫かれているだ。

  • 短編20編。
    首の飛ぶ女はとても面白かった。
    飛頭蛮懐かしい。
    エログロではあるが、下品さ、しつこさはなく読み易かった。

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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