ルポ 現代のスピリチュアリズム (宝島社新書 310)

著者 :
  • 宝島社
3.00
  • (0)
  • (0)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 24
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796665315

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著者もなかば欝で、自らの心の問題を解決するための研修参加と本を書くという実益を兼ねた取材により成り立っている。明治期の福来友吉の念写の実験、ユリゲラー旋風、清田君のスプーン曲げ、宜保愛子の心霊現象の透視、山川夫妻の翻訳活動などが、ふわふわっと書かれている。
    福来博士以降の何十年もの歳月、スピリチュアル研究にも、さすがに何か動きがあったろうに、何もふれていない。このあたりで新興宗教がはやるのか。

  • 一気に読了。「現代スピリチュアル」と言うだけあって、様々なネームが登場し、そのいくつかには綿密な取材を重ねている。出てくる主なネームとしては、

    ユリゲラー、清田益章、ロバート・モンロー(ヘミシンク)、バグワン・シュリ・ラジニーシ、スタニスラフ・グロフ、ケン・ウィルバー、ニール・ドナルド・ウォルシュ、そして山川紘矢・亜希子など。


    本書のタイトルだけ見ると「現在スピリチュアル批判」ように思われがちだが、必ずしもそうではない。ジャーナリストらしく、極力主観を排し、きちんとした取材を重ねながら、現代の「スピリチュアリズム」について探求している。


    その取材対象として興味深かったのが、かつて超能力少年としてマスメディアに祭り上げられた清田少年、バグワン・シュリ・ラジニーシの著書を日本に紹介した和田禎男、そして日本にスピリチュアル本を次々と翻訳紹介した山川夫妻について。




    まず清田少年については、様々なメディアで取り上げられ、大部分から「インチキ」として片づけられ、その後も麻薬所持で逮捕されるなど、過去の人扱いされ、アンチスピリチュアルの連中からは「してやったり」と思われている。


    私も本書を読むまでは単なるインチキ超能力者とみなしていたが現実はそうでないようだ。ある番組にて動物実験のようにホテルに缶詰めにされ、あまりのストレスのためスプーン曲げさえもできなくなる。それは超能力に限らず、普通の仕事でも調子悪くなることがあると言えばその通りで、その言及がゆえに逆にリアリティを感じさせた。


    結局のところ、「できない」と言うと、プロデューサーから「困る」と言われ、やむなく手で曲げたところ「だけ」をクローズアップされて、いつの間にか「インチキ暴露番組」に変わってしまっていたのが事の顛末である。ある意味、メディアに殺された悲劇の超能力者と言えよう。




    和田氏については、出版社勤務を経て「めるくまーる」という出版社を立ち上げ、バグワン・シュリ・ラジニーシ(オショウ)の本を次々と出版し、日本にも一大ブームを築き上げた。しかしながら出版不況にやられ、和田氏はうつを経験し、今はベトナムでひっそりと年金生活を送っている。




    山川夫妻については第四章がまるまる紙面が割かれいる。大蔵役人だった時に「アウト・オン・ア・リム」を翻訳し、持病の喘息に苦しめられつつ、これからと言う時に大蔵省を去ってしまうが、それがために次々と精神世界の名著を日本に発表し続けるようになる。


    その導きたるや、サンジェルマン伯爵という「精霊」によるものだと言うあたり、さすがは日本のスピリチュアルリーダーである。また、日本に招待したチャネラーの様子が変わっていったエピソードなども裏話的で面白かった。宗像大社にUFOが・・・など個人的に身近な地名が出てきてリアリティを感じた、




    このようにだいたい1970年代から現代に至るまでの「スピリチュアリズム」の系譜を辿りながら、綿密な取材を通じて、いわば「心の時代」を淡々とつづっている。ただ、江原啓之に代表される、昨今のスピリチュアルブームについてはほとんど言及されていないが、実はそのブームなどは、これまでの延長上、おまけのようなものであり、紙面を割くに値しなかったのだろう。確かにそうかもしれない。


    個人的にはヘミシンクのセミナーの話、LSDを覚醒のために研究したグロス博士の話、インドのグルに大量のLSDを飲ませて何ともなかったのを見て傾倒してしまったラムダスの話などが興味深かった。


    まさに「現代スピリチュアルリズム」の系譜を俯瞰するには、非常によくまとまった一冊であった。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

1957年北海道室蘭市生まれ。早稲田大学卒業後、土木作業などのアルバイトを転々とし、週刊誌記者を経てノンフィクション作家となる。スポーツへの造詣が深く、『Number』誌への執筆や野球・ボクシング界に材を取ったノンフィクション、コーチング本を数多く著す。また1998年に自らうつ病を体験してからは精神疾患の分野にも積極的に取り組んでいる。主な著書に『狂気の右ストレート 大場政夫の孤独と栄光』『巨人軍に葬られた男たち』『敗者復活戦』『メンタル・コーチング』『コーチ論』『ラストゴングは打ち鳴らされた』『医者にウツは治せない』などがある。

「2018年 『死が贈りものになるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

織田淳太郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×