イノセント・ゲリラの祝祭

著者 :
  • 宝島社
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本棚登録 : 3194
レビュー : 436
  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796666763

感想・レビュー・書評

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  •  海堂尊の世界も、東城大を越えて、厚生労働省に舞台を移し、いつの間にかスケールの大きな医療小説になってきた。

     『極北クレイマー』とは完全に順序を逆にして読んでしまったが、やはり先にこちらで次に『極北』だったろう。こんなに壮大な構想を『チーム・バチスタの栄光』からこっちまで考えていたわけではなかろうが、医療システムに関する独自の世界観を持っている作者が、厚生労働省がアリバイ稼ぎのようにやっているパブリック・コメントなどよりも、小説のほうがよほどパブリックで広大な影響を与えられると決断し、娯楽小説という大海へ漕ぎ出したのだということがよくわかる。

     それほど小説の背後に大志を抱えているために、本来の小説の醍醐味以上に主張が激しくなってきているきらいはここのところ目立ち始めているかもしれない。しかしこうした形で厚生労働省の官僚たち、国家公務員の独自な暗黒世界にメスを入れ続けるる海堂尊の切り口は、ベテラン外科ドクターのように鮮やかで小気味がいい。

     しっかり固まった、作者から医療へぶつけたい問題意識を、ユーモラスな人物配置と人を食ったような淡々たる文体とで笑い飛ばし、その向うから鋭い視線で睨み倒すというこの独特の空気は、従来の医療ミステリーには全然見られなかったものである。

     叙情に流れることの多い小説家の手を離れ、未だ医療を本職にしながら、現実世界にしっかりと楔を打ち込んでゆく腰の据わった作者の姿勢と、彼の生み出す痛快こそが本シリーズの人気の秘密なのだろうと思う。

     ましてや、政権交代による予算の仕分けが話題となる現在、白昼の元に曝け出されようとしている国家公務員や厚生労働省の内輪の論理が、この小説世界で手厳しく批判される要素までが、びしびしと響き合う。同時代的の作品として厚生官僚たちの見える小説と言ってしまえるだろうか。

     昨年出版された作品ではあるけれども、政権交代の現在に手に取ると、より、なまものとして感じられるものがあると思う。『極北』との読む順序はあながち間違っていなかったのかもしれない、とぼくのなかの読書本能がほくそ笑んでいる気がする。

  • バチスタシリーズで一番難しい。
    最後の彦根の熱弁はなんかスッキリした。

  • 再読。
    完全に伏線本としての機能のような気がする。ミステリーを期待して読むとちょっと期待外れかなぁ。
    ただ、ここがしっかり書かれていることによってアリアドネ等にしっかりつながっていくんだと思う。
    極北クレイマーと多少リンクする部分もあり、今後の期待人物彦根の登場でもあるので、シリーズ好きとしては落とせないところですね。

  • 後半の官僚、法医学者、司法に対する嘲りの言葉がエゲツなくて嫌な気分になった。作者の主張を代弁して、医療側から見た率直な意見なんだろうけど、彦根の圧勝っぷりが素直に受け入れられないものがある。

  • 前作までとは違って病院が舞台ではなかったので、とっつきにくく少し難しかった。

  • お役人の話とか制度の話とかがでてくると、これは本当に今どうなっている問題なんだろうかと不安になる。
    だいぶ話が動いた気がするから続きが気になる。

  • 読む順序が前後してしまったんですが、物語上の『ジェネラル・ルージュの凱旋』と『アリアドネの弾丸』の間に位置する話。この物語の辺りから、おどろおどろしい、魑魅魍魎が跋扈する世界に入って行きます。

    同時に、田口の人物像が変化し始めている気がします。『チーム・バチスタの栄光』から『ジェネラル・ルージュの凱旋』の辺りまでは、人のよい神経内科医と言う感じですが、この辺りから兵藤の扱いに変化を感じます。それまでも、兵藤は、自分の後輩という位置づけは取っていたんですが、どちらかと言うと“外様”扱いだったのに、この辺りからは、“身内”的に位置づけはじめているなど、その心持ちにも変化が見え隠れ。逆に言うと、それぞれの人物のキャラクターが、長く続ける事を前提に確立してきたんでしょうね。

    それにしても、このサーガは、どこまで行くのでしょうか?

  • これより前の作品はドラマや映画で見たからと
    こちらを手にしてみたら、やっぱりこれより前の作品も読みたくなりました。
    さておき小太りな白鳥さんによくぞ仲村トオルさんを選んだなあと感心です。
    私は映像から入ったので、登場人物が(といってもメインキャラの数人ですが)どうしても俳優になって浮かびます。
    ということでかなり美化された白鳥さんとして楽しく読み進めました。

  • 法医学・解剖がテーマのシリーズ第4作。
    ミステリというより、ロジックと作者の主張がメインで、今までの作品とは少々毛色が違うような…。

  • 入院中に病院内で読んだので、より興味を感じて面白かった。
    小説という形をとってはいるけれども、作者の医療や行政に対する考えをぶつけた物で、小説というよりは啓発書って感じ。
    とはいえ登場人物のキャラクターが魅力的で小説としても楽しめた。

    自分の意見や考えを広く公にするために魅力的な小説の状態にして出版するなんて、すごいプレゼン能力の高いやり方だと思う。

    作者は多才な人ですね。

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著者プロフィール

海堂 尊(かいどう たける)
1961年、千葉県生まれの作家、医師。医師としての所属は、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所・放射線医学総合研究所病院勤務(2018年3月時)。
2005年に『チーム・バチスタの崩壊』で、第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、作家デビュー。
同作はのちに『チーム・バチスタの栄光』と改題して出版される。映画・テレビドラマ化もされた代表作となった。

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