名前のない女たち―企画AV女優10人の人生

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796670081

感想・レビュー・書評

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  • お金がない、綺麗じゃない、親がいない、人とうまく話をすることができない。

    何かが欠落しているからこそ、その空白を埋めるために、アダルトビデオによって得られる沢山のお金や、人との接触の機会を求めるというのは、AV女優になる動機として、一つの十分な説明になる。

    他方、抽象的で漠然とした満たされなさだけがあり、または、そもそも満たされなさすら感じていなくても、女の子は、アダルトビデオに出演することがある。

    それは、夢へと近づくための一つの階段であり、くすんだ色の生活に彩りを添える職場であり、空白のままだったプライドを満たす環境でありうる。

    AV女優という職業は賤業であり、世の中の不幸を背負った人間が行き着く墓場である、などと言えば、それは明らかに事実を誤っている。
    それでも、その職業が、他にはない、何かしら特別な空気をまとっているように見えるのは、見るものの偏見に過ぎないのだろうか。

    「斎藤つかさは体を切り売りすることに疑問を抱き苦しんでいたけれど、飛鳥みどりは何も考えていない。たぶん何百人と存在するAV女優の中では、飛鳥みどりのようにアッケラカンとしているコが大多数である。楽しいから、続ける。
    ただそれだけのことなのだ。」(P.99)

  • この本は、10人のAV女優へのインタビューをまとめた対談本です。
    どうしてその仕事を選んだのか、AVという仕事についてどう思っているのか。赤裸々に語られる彼女達の言葉は、最初はかるくふわふわしています。
    いかにもAVで出ている女の子。「だってあたしセックス好きだし」
    「楽しいよ~」「きゃははは!仕事にはすぐに慣れたね」可愛くて、おバカで、軽いオンナノコ。
    しかしだんだんと薄皮をはぐようにして、彼女たちはAV女優という顔を脱ぎ捨てた、自分をさらしていきます。

    その様子が観客として、ただの読書として見ている分には、とても興味深かった。興味深かったけれど…
    怖い。
    とても怖かった。
    この本に出てくるのは、AV女優という肩書を剥いでしまえば、本当にどこにでもいるオンナノコばかりで、つまり彼女達はいつでも私の隣にいる可能性があるということ。そして何より、道さえあれば「女性」であるというだけでその世界に、足を踏み入れる可能性が自分にもあるということが怖かった。

    ただ「元公務員の女」は格好良かったです。
    どうせなるなら、あんな「女」になりたいもんです。

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著者プロフィール

1972年生まれ。ノンフィクションライター。AV女優や風俗、介護などの現場をフィールドワークとして取材・執筆を続ける。貧困化する日本の現実を可視化するために、さまざまな過酷な現場の話にひたすら耳を傾け続けている。『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)はニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞ノミネートされた。著書に『新型コロナと貧困女子』(宝島新書)、『日本の貧困女子』(SB新書)、『職業としてのAV女優』『ルポ中年童貞』(幻冬舎新書)など多数がある。また『名前のない女たち』シリーズは劇場映画化もされている。

「2020年 『日本が壊れる前に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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