ドレの神曲

著者 :
制作 : ギュスターヴ・ドレ  谷口 江里也 
  • 宝島社
4.22
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本棚登録 : 257
レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796675499

作品紹介・あらすじ

14世紀、ルネサンスを喚起したダンテの『神曲』は19世紀、ドレが挿画本にすることで視覚芸術に革命を起こした。スーパースターの共演が、現代のルネサンスマン・谷口江里也の言葉を得て21世紀のいま、時空を超えて蘇る。

感想・レビュー・書評

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  • 恥ずかしながら、学生時代に2回も挫折したダンテ(1265年~1321年)の「神曲」。その後、いつも読もう読もうと思いつつ、深いトラウマに落ち込んだまま時が過ぎていきました。
    何とか愉しく読める方法はないものか? と思いながら、ある日、図書館の書架をふらふら眺めていると、ふっと目に飛び込んできのが、この「ドレの神曲」でした。

    ご存じの方も多いと思いますが、ダンテの「神曲」は、作中主人公のダンテが、1300年の春、深い森の中に迷って獣に追われているところを、偉大な古代ローマ詩人ウエルギリウス(亡者)によって救われ、その後、彼に導かれながら、生き身のままで、地獄、煉獄(れんごく)そして天国を旅していくという壮大な物語です。

    主人公ダンテが遍歴していく中で、ドレがインスパイアされたであろう情景を視覚的に表現した繊細で見事な挿絵がふんだんに紹介されています。豪華な大人の絵本。
    また、肝心の訳は、平明でわかりやすく、注釈も適度なものですので、決してうんざりすることもありません。全体をコンパクトにまとめていて、旨みを逃さず細部を端折り、よくぞここまで抄訳できたものと感動しました。

    芸術家ドレ(1832年~1883年)は、若いころからフランスで活躍し、ユゴーやジョルジュサンド、ボードレールなどと集っていたようです。当時、大流行したドレの挿絵は、「旧約聖書」、「新約聖書」などでも多く描かれていて、このシリーズで出ていますので、ドレの絵に興味がある方は、ぜひのぞいてみてください。イエスがカッコいい男に描かれていますよ。
    ということで、ダンテの「神曲」には興味があるけど、かなり気が重い、あるいは敷居が高いな~と思われている方にお薦めします。

  • 『チェーザレ』シリーズ、2巻・7巻で、「『神曲』、おもしろそう」と思い、完訳版を1冊購入したものの、いきなり取りかかるのはちょっとハードルが高いか、と、ギュスターヴ・ドレの絵を中心に、抄訳がついたこちらをまず読んでみた。
    以前読んだ『いま読む ペロー「昔話」』の挿絵にドレの絵も何点か収録されており、もう少し見てみたいと思っていたので、その意味でもちょうどよかった。

    『神曲』は古典中の古典である。ルネッサンスの導火線となった作品ともいえる。
    深い森の中を迷い歩くダンテが、天界にいるかつての恋人ベアトリーチェの計らいにより、詩聖ヴェルギリウスを導き手として、地獄・煉獄・天国を巡り、その様を語る形式である。
    構築される世界は、キリスト教をベースに、ギリシャ神話も取り込み、そしてまた、当時のイタリアの人々の耳目を騒がせた事件を盛り込む、ダイナミックなめくるめく舞台である。歴史上の人物に加え、ダンテの友人、政敵も登場し、思わぬ罰を受けたり、ダンテに胸の内を明かしたりする。神聖でありつつも三面記事的な匂いも漂う。
    冥界のあれこれに目を奪われ、戸惑うダンテを、ヴェルギリウスは時に優しく、時に厳しく導く。
    その縦横無尽な筆には息をのむ。
    地獄は下へ下へと続く。罪の軽いものから罪の重いものへ。降りれば降りるほど罰は過酷になっていく。
    地獄と煉獄の間では重力が反転する。ダンテとヴェルギリウスは驚くべき方策でこの境界を越える。煉獄にいる人々は地獄の人々ほど罪深くはないが、悪しき性情や習慣といった浄めねばならぬ罪がある。これを償うには長い長い時間、試練に耐え、煉獄の山を登らなければならない。
    その先にあるのが天国だ。もちろん、煉獄からもすべての人がたどり着けるわけではない、至高の場所である。

    ドレはダンテから500年ほど後、アルザスに生を受ける。ミケランジェロの再来とも言われた卓抜した才能の持ち主である。
    本書に収録されたドレの描く絵は、端正で細密である。木口木版と呼ばれる、木質の硬い木の木口を版面に用いた版画である。1861年に発表された「ドレの神曲・地獄篇」は、破格の大きさや価格の高さから、版元が見つからず自費出版を余儀なくされたという。だがこれが大きな評判を呼び、ドレはこの後、古典シリーズをどんどん発表していく。
    いずれもすばらしい絵だが、東洋人である自分は、死者たちの隆々たる肉体に幾分の違和感を覚える。ルネッサンス的ともいえる重量感あふれる均整のとれた体は、目に圧倒的だが、地獄の死者の惨めさをやや削いでいるようにも見える。このあたり、肉体が朽ちることに対しての感覚がそもそも違うのかもしれないとも思う。
    一方で、悪魔の造形や天界の輝かしさは、想像の世界を描き尽くすようで、絵を見る喜びを感じさせる。

    概要ではあるが、ストーリーを追っていくと、ダンテこそがこの物語を一番楽しんだ読み手であっただろうと思えてくる。
    自ら、政敵に陥れられ、深い森の中に迷うような境遇にありつつ、生身は現世にある一方で、心は陰惨な地獄をつぶさに眺め、幾たびの苦難の果てに、輝く天界へと向かう。その先には、永遠の恋人が待っているという確信とともに。

    これはある意味、「行きて還りし物語」のはずである。生者が行くはずのない冥界の有様を現世に戻ってきたはずのダンテが語っているのだから。
    冒頭部は、さまようダンテの前に、あこがれの詩聖が現れるシーンで始まる。しかし、フィナーレは天界の至福のうちに終わる。ダンテがいかにして戻ったか、そしていかにしてこの物語を綴ったか、それは本題ではないことなのだ。
    苦労の果てに天界にたどり着いたダンテの見る光の、なんと輝かしく、なんとまばゆいことか。

    ダンテが『神曲』を書き終えたのは晩年だという。
    彼の魂は、真にベアトリーチェの元に迎え入れられただろうか。
    彼は幸福のうちに息を引き取っただろうか。
    彼が真に天に召されたとき、まばゆい光は脳裏に満ちただろうか。


    *ドレが描く圧倒的な数の(無限を思わせる)亡者や天使の集団は、『芸術の蒐集』を思い出させます。

    *ドレは古典を自らのイラストで飾るという強い意欲があり、他にも「聖書」「失楽園」「ドン・キホーテ」「ラ・フォンテーヌ童話」などの絵を描いています。

    *西洋でも東洋でも、地獄とは下へ下へ潜っていくものなのですねぇ。(cf:『地獄絵を旅する: 残酷・餓鬼・病・死体』)。地獄の描写など、『往生要集』などと読み比べたりしてもおもしろいのかな・・・? ちょっとおいそれと読めるかわかりませんが。

    *いずれにしても、本書は本書で解説も含め勉強になったのですが、そのうち完訳版に挑戦したいと思いますf(^^;)。さて、無事に旅を終えられるか、もしも終えた暁には、またレビューを書きたいと思います。

    • yuu1960さん
      http://booklog.jp/item/1/4041576261
      阿刀田さんによるとダンテはベアトリーチェに2回会っただけ。口をきい...
      http://booklog.jp/item/1/4041576261
      阿刀田さんによるとダンテはベアトリーチェに2回会っただけ。口をきいたことはない。政敵を地獄で苦しむことにしたりと、変な人だったようです。
      でもいつか、神曲に挑戦したいものです。
      2014/12/02
    • ぽんきちさん
      yuu1960さん
      コメントありがとうございます。

      >2回
      あはは。でも何か、わかるような気もします。そうであってこそ、清らかな完...
      yuu1960さん
      コメントありがとうございます。

      >2回
      あはは。でも何か、わかるような気もします。そうであってこそ、清らかな完全な乙女の像が作れたのかも。
      政敵を地獄に堕としたというのも人間くさいというか、ダンテの歯ぎしりが聞こえそうです(^^;A)。
      なんというか、エネルギーのある人だったんじゃないかなぁと思います。
      私も完訳版、いつか読んでみようと思います~。
      2014/12/02
  •  政争に敗れ、国を追われた男がいた。足の行く先、そして心の行く先も判然とせず、迷える彼の前に姿を現したのは、とうに亡くなったはずの偉大なる詩人であった。詩人に導かれ、男は地獄の底へと下り、そして煉獄を通り、天国を目指していく――。

     古典文学の傑作の一つであるダンテの『神曲』と、それを効果的に図像化したドレの画を用いた大人向けの絵本。ダン・ブラウンの『インフェルノ』から『神曲』に興味を持ち、原作より読みやすいと思われるこちらを読んでみた。
     ただの地獄極楽見物記かと思いきや、自らの苦い過去を地獄を通して振り返り、煉獄を通ることで7つの罪を清め、身も心も軽くして天国へと向かう。その過程は正しく「魂の彷徨」で、基督教色は強いがそれ一色ではないので日本人でも受け入れやすく、重厚で、文学である。
     地獄も天国も己の内に有り。卑小でも存在する自身の信念を見失った時、読み返したくなる書籍の一冊。

  • とにかく絵が美しい。

    15世紀のルネサンス到来に影響を与えたダンテの神曲。
    それをドレの版画を主体に、文章はかなり短くまとめられている。

    地獄の底から天国へ

    本当にその世界を見てきたのではないかと思うほどのダンテのリアリティと、それを再現する19世紀の版画家ドレ。二人の計り知れない偉大さにただただ感動するのみ。

  • 彼の描いた地獄・煉獄・天国が、後の芸術家たちに与えた影響はとても大きいらしい。こんなに具体的に書ききったのは、ダンテが初めてなんやって!

    その500年後、ドレが挿絵を描ききったー!全部版画。星って全部でいくつあるのかわからないけど、その星の数より多いんじゃないか、というくらいの無数の線が、凹凸明暗を織りなして、ダンテの世界観を形にした。版画だから、多くの人の目に触れられたのがとってもすごいよね。

    亡者も悪魔も怖いし、ベアトリーチェは眩しすぎる(絵が)。あの世を旅するダンテは、ちょこちょこ人間っぽい愚かなところを出して、ヴェルギリウス(あのめっちゃ有名な詩人の。世界史で出てくるやつね)に怒られている。キリスト教の世界観なんだけど、ギリシャ神話の神様も出てきて華やか。亡者が語るエピソードには、その時代の実話も含まれているらしい。現代と古典と神と人間が紡ぎあげた神曲。まさにルネサンスや!

    愛と希望と信じる心で、ただ見たままを感じること。そうは言われても、やっぱり余計なこと考えちゃうよなー。

  • PDF

  • ダンテの「神曲」。歴史の教科書にルネッサンスの頃の有名な作品として一行くらいで紹介されている記憶しかない、あの古典作品。意訳が読みやすく、ギュスターヴ ドレの挿し絵が一ページごとに入っており、まるで絵本のようだ。この本を読んで初めて知ったのは、天国と地獄と、もうひとつ煉獄(れんごく)があるということ。ここにいる人たちは天国を目指して煩悩的なものを取り除く修行をするのだけど、ダンテの時代でもギリシャ時代の詩人がいたり、徳の高そうなローマ法王がいたり、天国までは相当長い道のりらしい。そうかと思えば、現世に残された人が故人を思って祈り続けてくれると修行が劇的に短縮されることもあるらしい。ダンブラウンの「インフェルノ(地獄)」は実は煉獄とも多いに関係があることが分かった。インフェルノを読むまでは、ダンテの「神曲」を手に取ろうとも思わなかったけど、良いきっかけになった。

  • 大学時代、学校の図書館で【完全版】を借りて読みました。大きなサイズで見るドレの緻密な版画はとにかく衝撃的で、以来私の中で『神曲』といったらドレ抜きでは想像できない程に。

    1冊6000円の本なんて、貧乏学生の身にはとても手の出せない高嶺の花。
    でも絶対大人になったら手に入れてみせる!って決意してから早15年。
    店頭でこの【普及版】を発見した時は、1ミリの逡巡もなくレジに向かっておりました。恐らく過去最速の衝動買いだったと思います。

    自分の本棚にドレの『神曲』がある……というだけで幸福な気持ちになり、何となく並べっぱなしになっていましたが、昨日読了。

    とにかく、絵も訳文も脚注も全てが素晴らしい。
    孫の代まで大切にします。(でもやっぱり【完全版】も欲しい……。)

  • 確か古本屋で見かけたのはこれだったと思うんだけども、ドレの挿絵と本文が読み易そうで読んでみたいな。いつかまた古本屋さんで見かけたらその時は。

  • 挿絵がメインで文章は分かりやすくまとめられている。ドレの挿絵が素晴らしい。苦悩を乗り越えてダンテが成長していく様が感動的だ。これを機に今度こそちゃんと「神曲」の読破に挑戦したい。

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