恐慌の歴史~“100年に一度”の危機が3年ごとに起きる理由 (宝島社新書) (宝島社新書 332)
- 宝島社 (2011年11月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784796678094
作品紹介・あらすじ
今巻き起こる経済問題はすべて過去と繋がっている。人気エコノミストがわかりやすく解説する経済の歴史。
感想・レビュー・書評
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新書文庫
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恐慌は、経済活動の過熱や暴走によるバブルが弾け、これに対する自浄作用として起きる。大きな歪みを抱え込んだ経済活動を健全な状態に引き戻す自然な作用である。ところが、昨今では、経済に自己浄化作用と均衡への回帰の力学が働こうとしているのを、無理やり財政出動により、経済を再び山の頂にまでに戻してしまっている。結果として財政赤字を急激に拡大させ、恐慌から解放させるための財政政策が、寧ろ恐慌の懸念要因となっている。日本でも家電エコポイント、エコカー補助金など、高すぎる山に戻るための過剰な支出のしわ寄せが人件費の削減、非正規雇用の拡大を招いている。バランスのとれた経済に辿り着くのを著しく遅らせてしまった。しかも先進国の財政支出による行き場のないお金は、投資資金となり新興国に向かい通貨の乱高下や景気のバブル化を生むことに。金余りの先進国と高金利でバブル化した新興国。財政危機は小ぶりで耐久力が弱い国から始まりイタリア、フランスと核心に近づいている。終着点は米国。米国経済の然るべきダウンサイジングに向けて危機が忍び寄っている。遠く過去を振り返れば遥か未来が見えてくる。本書ではかなりのページを割いて恐慌の歴史を振り返っている。歴史を遡り、見えてきたのは、他国よりも豊かになろうとするのではなく共に豊かになろうへの転換。経済というものは実はない。あるのは人の営み。人々の営みが変われば経済も変わる。金がいくらあっても、そこに善意の欠片もなければ結局は宝の持ち腐れ。金を善行に動かすのは、やはり善意。いくら小難しい理論を並べ立てても、どんなに精緻な数量分析を行っても、厳しい規制を導入しても、人間の心情が曇り、曲がり、ささくれ立っていては、決して状況は良い方向には向かわない。著者は行き過ぎた財政支出を戒めるとともに財政赤字を解消する手立てとして消費増税や所得税の最高税率(1984年はなんと78%。)についても踏み込んでいる。よく言われる増税によるキャピタルフライトについても誰が出ていくのかと笑い飛ばしている。寧ろ富裕層への増税できずに手をこまぬき財政機能を果たすことができなくなっている現状を厳しく糾弾している。過去の様々な恐慌を回顧しながら、健全な経済環境への道筋を示している。将来を考えるうえでの貴重な示唆となった。
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著者のファンです・・・しかもビジュアル面での。個人的に、日本で一番かっこいいオバチャンだと思う。大阪市長が彼女を「紫頭おばはん」とかほざいて嫁に叱られた事件は記憶に新しい。
本題に入ろう(本だけに?)。マクロ経済学の本である。でも読んでいて、山火事の話を思い出した。消火技術が未発達な時代は、一旦山火事が発生すると、木も草も枯れ葉も燃え尽きるまで見守るしかなかった。だが消火技術が発達し、より早い段階での消火が可能になれば、それだけ「燃え残し」が出ることになる。言いかえれば、枯れ木や枯れ葉など山火事の「燃料」を蓄積することと同じだ。些細な影響の蓄積が一定のレベルを超えると様相が大きく変化し(これを自己組織臨界という)、それまでのルールが通用しなくなる。一旦火がつくと取り返しのつかない事態になる。
景気後退も同様に思えてならない。
金融緩和、ケインズ経済学による財政出動、グローバル化による市場拡大、金融工学によるリスク管理・・・お国の台所が火の車になりかけると、あの手この手で火消しにかかる。一定の効果はあったはずだ。だがその裏で、大恐慌の「燃料」は着々と蓄積されていたのかもしれない。そうでなければ「100年に一度の信用収縮」が3年おきに発生している現状を説明できない。
恐慌とは過剰な経済活動を修正する力学である・・・著者はそう定義する。 -
過去数百年に渡って起こる、多くの恐慌とその原因を振り返る。
その途中で、金本位制から管理通貨制に移行したことが、どういう影響があったかも述べられている。
歴史を振り返る、という内容だったのでどうしても単調さを感じてしまった。
それでも、それぞれの恐慌の原因から現在のリーマン・ショックへの影響まで論じられてたのは面白かった。
一極支配がなくなり、基軸通貨の存在意義が薄れていったときに、どういう経済や為替制度が適しているのか、ぐらいまで踏み込んで欲しかった。
保護貿易に走るのでもなく、画一的になるのでもない、地域それぞれの独自性を打ち出し、真の地方分権を目指すべし、という論調も納得はするが、目新しさには欠けていた。 -
タイトルの通り、恐慌の歴史について1800年代から現代までまとめている。多くの国が金本位制を採用していた時代は10年おきに恐慌が起きていたのが、ケインズ以降に管理通貨制になってから恐慌が起きなくなり(100年に1度)、管理通貨制の崩壊と経済のグローバル化の負の連鎖により3年ごとに恐慌がやってくるようになった、と説明されている。時代と現象は正しく説明されているのだろうけど、原因とか因果関係の説明はよく分からない。最終章では、前の著作と同様、今後のグローバル経済における日本の役割について、「地方分権」「グローバル協調」など独自の意見を述べている(が、具体性には乏しい…)。
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浜矩子・著。2011年11月初版、281ページ。
本のタイトル通り。
世界の恐慌の歴史について、丁寧に書いてある。
歴史から学ぶという意味で、とても勉強になる本だが、
もともとこの種の歴史や、経済史に詳しい人にしてみれば、
それほど得るものはないと思われる。
相変わらず、色々な具体例や喩えを駆使して書く文章で、読みやすい。
ただ、著者の近著と内容的にかぶる部分が多いため、
近著を読んだ上では、それほど得るものは多くない。
一番納得したのは、
日本という国が、インフラや教育などの面で世界で最も充実したストックを持つ国になっているのに、
いまだに経済成長への幻想に支出を増やしている、と指摘している点。
提言している社会モデルに関しても、参考になるものが多い。
「他国よりも豊かになろう」とする僕富論から「自国も他国も共に豊かになろう」とする「君富論」への転換。
(以下、引用)
確かに、韓国は輝いている。それは若さの輝きだ。
今の日本に必要なのは大人の輝きである。
若者と同じことができなから歯ぎしりするのは、大人のやることではない。
(引用、以上)
まさに、言い得て妙。
物質的豊かさという意味では、日本は既にこれ以上ないほどに豊かになっているのだから、それを質として高めていくようなパラダイムシフトはどうしても必要なのだと思う。 -
歴史と書いてあるが歴史を紐どくことによる
国際金融・通貨の制度を解説し
今後の指針も提示する本。
さすが怖いおばちゃんが書いてるだけある。W