さよならドビュッシー (宝島社文庫) (宝島社文庫 C な 6-1)

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796679923

作品紹介・あらすじ

ピアニストからも絶賛!ドビュッシーの調べにのせて贈る、音楽ミステリー。ピアニストを目指す遙、16歳。祖父と従姉妹とともに火事に遭い、ひとりだけ生き残ったものの、全身大火傷の大怪我を負う。それでもピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生する-。第8回『このミス』大賞受賞作品。

感想・レビュー・書評

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  • R3.5.2 読了。

     読み終わったいま思うことは、なんでもっと早く読まなかったんだろうということです。この小説は音楽やクラシックのことを全然知らない私でも読み始めたら、作品に引き込まれるように一気読みしてしまった。
     他の方のレビューにもあったように、ピアニストのコンクールにかける姿勢は、まさにスポコンもの。主人公を応援したくなる。この作品は「このミス大賞」に輝いた作品であるが、私は正直ミステリー要素がなくとも楽しめたと思う。
     途中、火事のシーンから病院を退院するまでのシーンは、主人公のつらさや苦しさにも触れなければならず、読み進めるのが正直しんどかった。
     身体に障害があっても学校でいじめにあっても、ピアノを弾きたいと頑張っている姿には勇気をもらった。岬洋介の存在は本当に大きい。
     ミステリーということで最後に犯人が明かされるが、見事に騙されたという驚きと良かったというホッとした気持ちと悲しみなどが入り混じり、自分の気持ちが作品に追いつかず。カエル男も好きだけど、このドビュッシーも大好きな作品になりました。

    ・「苦難はそいつに与えられた試練や。艱難汝を玉にす。乗り越えられた者は強くなるし、乗り越えられなかった者はそこで押し潰されて終わる。」
    ・「自分の不幸や周りの環境を失敗の言い訳にしたらあかん。前に進むのをやめたらあかん。目の前に立ち塞がるものを恐れて逃げたらあかん。逃げることを覚えると、今度は余計に怖くなる。…(中略)不幸とか、世の中の悪意に負けるんやない。そんなもん、ばあんっと撥ね返してやれい。」
    ・「重要なのはその人物が何者かじゃなく、何を成し得たか。」
    ・「人は誰もが欠陥を持っている。ただその欠陥がなんであるのか、その欠陥が見えるものなのか見えないものなのかという相違だけだ。だから皆その欠陥を修復するかまたは他の長所で補おうとする。」
    ・「全ての闘いは詰まるところ自分との闘いだ。そして逃げることを覚えると余計に闘うのが怖くなる。」
    ・「人を殺すのに刃物は要らない。希望を奪うだけで人間は内側から死んでいく。」
    ・「世界は悪意に満ち溢れている。それは、その攻撃に晒されて初めて気付くことだ。」

  • ドビュッシーの名くらいは知っているし、「くらしっく」なるものと言うことは分かる。が、恐らくハードロック派の私は中山七里作品で無ければこれを手に取っていなかった事だろう。

    義姉妹とおじいちゃまとともに火事に見舞われ一人残った「わたし」。全身大火傷を追うもピアニストとしての夢を諦めず「岬洋介」から技術と精神のレッスンを受けコンクール優勝を目指す。
    しかし自らの身に起こる不吉な出来事、更に重なる殺人事件。「わたし」に起こる数々の悲劇は一体誰が、何の為に起こしているのだろうか。
    ーーーーーーーーーーーーーーーー
    読むからにはと、曲名が出る度普段使用しないYouTubeを酷使しピアノ演奏を聞き、文章が表す小節部分をなぞってみたりした。
    不思議なものです。知識の欠片のない私でも今この中で演奏しているピアニストの情熱と曲が魅せる情景が見える...気が..す....る...。優美な雰囲気に感化された睡魔と共に...。

    睡眠との戦いだけでは勿論終わらない。おじいちゃまの遺産相続の話から始まる彼女の周りで起こる不吉な出来事、殺人事件の真相を忘れたらいけない。
    こちらが本命になるのでコンクール後のラスト数ページは風を切る速さで読了。御子柴シリーズファンとして仇敵岬検事のご子息様の活躍を早くこの目に焼き付けたかったのだ。
    ーーーーーーーーーーーーーーー

    音で表現する音楽家 言葉で表現する小説家、
    そして言葉で音を表現した著者、凄いなぁ。

  • 凄かった!

    音楽の演奏の描写も、
    怪我の痛々しさも、
    ストーリーの展開も!

    素晴らしい作品でした。


  • 今頃になって読んだが、デビュー作からこの筆力とは恐れ入る。あの玄太郎爺さんの孫が主人公なんだねえ。玄太郎爺さんはすぐ死んでしまうのは残念だった。プロのピアニストを目指す遙は、火事に合って全身大やけどを負ってしまい、そこから岬洋介の指導のもと復活を遂げていくが、不審な事故やさらには母親が…。
    ピアノ演奏の描写が凄いな。優れた作家というのは大したものだ。描写にくどいと感じるところもあるけど、気のせいかなあ。今回のどんでん返しは悲しい。

  • クラッシックか…
    サッパリ分からん。でも、この作品は、そんな苦手意識を持たんと読める。
    (前に他の作者で、痛い目に会った…)
    ピアノを弾いている話とか、何かコンサート会場で聴いてるみたい。でも、聴く側にも資格が要りそうな気がするな〜
    曲作成の背景とか…それを理解した上で聴く…更に深く聴ける〜!
    自身で楽器を使う事もらないし、縁遠いわ〜あっ!1つあるわ!三味線弾くのは得意です〜(^^;; (違う意味ですので念の為!)

    っと、のだめも顔負けの音楽+スポ根に浸ってしまって満足…
    いやいや、これミステリーちゃうかった?
    何か話のメインは、ピアノって感じやったけど、しっかりとミステリーしてて、更に騙されてるし…(−_−;)

    でも、これからもピアノ頑張ってや!

    「大抵の災難は運命みたいなものだからね。その運命とやらに一矢報いるなんてちょっと痛快だろ?」

  • 見事な緩急。
    それもF1級のスピードと深い呼吸ほどのゆっくりさが何度も繰り返され、これほどクラクラする読後感は初めての体験でした。

    さらに景色や匂いだけでなく、今回は聴いたことなかった曲の音色まで鮮やかに伝わってきて、ただただ圧倒されました。

    いつか映画で憧れた月の光。練習してみようかな。

  • 主人公の香月遥は、富豪の祖父と震災で両親を失った従姉妹のルシアとともに火事に見舞われた…祖父と従姉妹は焼死したが、遥は全身大火傷を負うも一命は取り留めた…。身体は不自由になっても、ピアニストを目指すと誓いピアニストの岬洋介のレッスンを受けながらコンクールに挑むことになる…。と、そんな中、遥が命を狙われるようなことが起きたり、ついには事件が起きてしまう…。
    ピアノにもクラシックにも縁遠い生活をこれまでしてきたので、こういう作品に出会えたのはよかったです!ミステリー的にも、ラスト、えっ?あぁ~そうだったのか、それで、ね!と、ダマされたけど、よく考えれば納得のいくような…そんな展開でした(^^)

  • ピアニスト岬洋介・シリーズ第1作
    資産家の祖父を持つ、ピアニストを目指す従姉妹の二人の少女。祖父の家で思わぬ事故にあい、人生が狂い始める。

    中山七里氏が、音楽に素人でピアノも他の楽器も演奏できないらしいと知って、音楽に素養のない身としては、どんな表現になるのか興味ありでした。
    まあ、作家さんは弁護士でなくても法廷書くし、スポーツできなくても、書いちゃうし、プロなんだからとはいえ、音楽って目に見えないし感性への要求が高そうなので勇気あるなあと。

    テンポ良く事故事件発生し、その間にはミステリを忘れさせる楽曲や演奏への熱意ある表現あり。読み応えありでした。
    題名の使い方もオシャレ。なんだけど、今回は登場人物設定で、トリックというか犯人というか想定内ではありました。すごく上手く話が進んでいたので、途中違うかな?と思うことはあったけど。
    続けて読みまーす。

  • 読んでいく中で、傷つきながらも周りの大人達に厳しいながらも成長していく藻ところがミステリー小説とは思えないほど熱く、青春小説としてとても面白かった。彼女が生きる世界には彼女の気持ちを蔑ろにする人も多い中で、彼女に本気で向き合う人たちが叱咤激励で彼女を導き、それに彼女も奮起して強くなっていくところがとても格好いいと思った。そして彼女がコンクールで見せたパフォーマンスには成長の全てが込められていて物語に没頭してしまった。

     ミステリー小説としては、主人公が遥ではなくルシアであり、彼女の視点で物語が進行しているという事には全く気づくことが出来なかった。そのきっかけも周りの人間達の思い込みによってルシアは『香月遥』として生きなければならないという運命を背負うこととなってしまったことにはとても辛く重たいものを感じた。また彼女の母親も自分で遥だと勘違いしたにも関わらず彼女の正体に気づいて遺産目的だろうと問い詰め、それにより死亡してしまうところは、この真相を知るとなんとも哀れだと思ってしまった。なんというか、この母親も『遥』を蔑んだ同級生と同じく中身から腐り始めていたのかもしれない。岬に真相を暴かれた彼女は罰を受けることになるが、その前のステージに上り、戦友とも言えるドビュッシーと別れるシーンでタイトル回収に鳥肌が立ってしまった。最後にこんな素晴らしいストーリーを作っていただいた中山先生にささやかながらの感謝を届けたいです。

  • 音楽小説のおすすめとして紹介されたので興味を持って読んだ。何度も口に出したくなる弾みのあるタイトルで、ドビュッシーのことはよく知らなかったが好きになった。

    音楽ミステリーと評されていたが、所詮音楽がテーマの物語なんて小綺麗な青春が紡がれているのだろうとたかを括っていたのだが、心の底から読む前の自分のたかをほどいてぶん殴ってやりたいと思った。そこに描かれていたのは紛れもないミステリで、得体の知れない恐怖さえ感じたほどである。いい意味で大幅に予想を裏切られたのである。

    タイトルの通りドビュッシーのピアノ曲が登場するが、あまり聞き馴染みがなかったので聞きながら読んでみた。特に取り上げられるのは「月の光」と「アラベスク」である(正しくはもっとちゃんとした曲名だったと思う)。主人公が言っている通り本当に鮮やかな情景が目に浮かぶようで、こんな曲と出会うきっかけになっただけでも読んで良かったと思えるくらいである。もちろん作品内でとても上手く端的に文章に曲のイメージを落とし込んでいたからこそ、これだけ心が動いたし、これが曲を解釈するということかと新しい世界を除けた気がした。

    最後の最後まで謎の形がぼんやりとしか浮かんで来ず、底しれぬ怖さを感じた。主人公以外の人物もとても魅力的であり、岬先生に対しては主人公たちと同じように憧れの目で見ていた。他の作曲家をテーマにした作品もあるらしいのでどんどん読みたいと思った。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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