ある少女にまつわる殺人の告白

著者 :
  • 宝島社
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本棚登録 : 433
レビュー : 128
  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796680059

感想・レビュー・書評

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  •  タイトルから察するに、「少女が誰かに殺された話」かな、と思って読んだ。序盤は、その推測からもれず、ある少女が継父に虐待された末に殺されてしまった事件が過去にあり、その当時の関係者に、記者か誰かが取材してる形式で物語が展開されているかと思いきや・・・これが8割方間違い!!ラストを読んで、「ええーっ」と、驚いてしまった。

     一番悪いのは、亜紀の母親だと思う。亜紀の母親は、亜紀と児童相談所の職員をだまして、内縁の夫のもとに亜紀をつれて戻ってしまう。自分を守るために、子供を差し出したら駄目だろう。

     暴力は連鎖されていくのが怖い。虐待された子供は、長じて自分の子供を傷つける傾向にある。亜紀が、その連鎖から逃れられていないという描写を読んで、怖くてかなり震えた。
     けれど、虐待したくてしている親なんていないんだよな。何で、こんなことになっちゃうんだろう。
     私は、絶対こうならないっていいたいけど、そんな保証どこにもないところが怖い。ちょっとしたボタンの掛け違えが起こってしまえば、私も弱い誰かを傷付けることになるかもしれない。考えるだけで怖い。

     そんなことに気づいた点においても、この作品は単なるミステリーを超えて、「すごいミステリー!」に分類される作品だと思った。

     しかし、本当に、どうしたら暴力の連鎖って止まるんだろう・・・?

     

  • とどのつまり、美人は得。と言うのは置いておいて…

    すでに皆さんが指摘している通り、東野圭吾さんの「白夜行」「幻夜」に似ている。モノローグ形式は溱かなえさんの「告白」同様、効果的。芥川龍之介さんの「藪の中」にも用いられているこの形式だけど、近年特に多用されているような。

    児童虐待がテーマだけど、一方で「女」の弱さ、ずるさ、恐さも露わになっているように感じた。実際虐待されていた子供が親になったとき、その辛さを誰より知りながら同じことを繰り返しやすいというのは悲しい事実である。

    あんぽんたんの私にあたたかい愛情を注いでくれた両親に改めて感謝し、いつか親になったときに幸せな家庭を脈々と受け継いでいきたいと感じた。

    • まろんさん
      「あんぽんたんの私にあたたかい愛情を。。。」という文章を読んで、
      なんだか泣けてしまいました。

      知的で魅力的なレビューを書かれるhetar...
      「あんぽんたんの私にあたたかい愛情を。。。」という文章を読んで、
      なんだか泣けてしまいました。

      知的で魅力的なレビューを書かれるhetarebooksさんが
      あんぽんたんだなんて、全然思わないけれど
      こういう一文を書かせてしまうご両親も
      素直に書けてしまうhetarebooksさんも
      本当に素敵だなぁ、と思いました。
      私も娘に、財産らしい財産は残せそうにないけれど
      愛情だけは惜しまずに注いでいかなくちゃ!
      2012/07/03
    • hetarebooksさん
      まろんさん
      あたたかいコメントありがとうございます。まろんさんのコメントに私もうるっときてしまいました。
      本当に、溢れるように愛情を与え...
      まろんさん
      あたたかいコメントありがとうございます。まろんさんのコメントに私もうるっときてしまいました。
      本当に、溢れるように愛情を与えてくれた両親なんです。

      大丈夫!あたたかで優しくて、登場人物たちの身になって考えられるまろんさんですから、娘さんにはなおさらしっかり愛情を注がれているはず!

      ちなみに私が本好きになったきっかけは母だったりします。そのことも母にもらった財産になっています。
      2012/07/03
  • 児童虐待をテーマに扱ったミステリー小説です。

    途中の伏線でなんとなく最後が予想できたりしてしまうので、
    もともとこの手のジャンルが好きな人にとっては
    特に目新しい作品ではないかなと思います。

    逆にそういうジャンルに馴染みが無い人が読む最初の本としてはうってつけかもしれません。
    とても丁寧に書かれた作品だな、という印象を持ちました。

    また、物語の流れを壊すことなく、登場人物の語りから、
    その現場に立つ者の苦悩、児童福祉の問題点、虐待が連鎖してゆくことまで
    言及しているのがすごいと思いました。

    バランスの取り方がうまいです。

    巻末の選評経緯について書かれたなかでも言及されてましたが、
    登場人物によって書き分ける台詞回しの書き方がうまいと思いました。

    ミステリーという枠にはめず、児童虐待を扱った小説として、
    十二分に読み応えある作品だと思いました。

  • 最後の1ページで「こうやって連鎖していくんだな」と思った。

  • インタビュー形式の小説、なんだけどインタビューされた側の『言葉』であるはずの文章が会話口調なんだけど説明くさくてインタビューで答えた言葉っぽくないのが気になった。まぁでも、小説というものはこういうものであるのだろうけれど。

    亜紀ちゃんという少女にまつわる話をあちこちで訊いて回る若い男性。その男性の言葉というのは存在しなくて、ひたすらインタビューされる側の言葉だけ。

    よくある児童虐待の話と思われる話が続くが少しづつ亜紀という少女に違和感を抱き始める。亜紀について語る後半の人物達に言葉は、東野圭吾さんの『白夜行』の雪穂を思わせた。レビュー読んだら、同じように感じた人がやはりいたよう。

    このインタビュー形式の小説というのも湊かなえさんの『告白』に似ているという評を得ているようだけど、私は『告白』も読んだけどそこは特に気にならなかった。




    児童相談所の所長の隈部が、亜紀の家で香穂ちゃんが亡くなってるのを知った時、見た時、亜紀ちゃんに罪を償わせなかったのは本当に正解だったんだろうか。自分を慕う人物を手駒にして使い捨てる亜紀になったのは、どこからだったのか。元々そういう資質を持つ人間だったのか。虐待の連鎖、というのはあるだろうとは思うけれど、元々の美貌はあるだろうけれど、人の心を掴むような言動なんかは母譲りなのかな、元々の資質があるように思える。亜紀はそれを武器に世の中を渡っていったわけだけれど。

    結局、亜紀のしたことは全て、夫にばれてしまった訳で、これから亜紀はどうなるのか、夫はどうするのか。子供を大事に思うならば、このままの状態を続けるとは思えないけれど。夫も精神科医なのに、亜紀の隠された素顔に気付かずに結婚しちゃうとか迂闊すぎる。

    白夜行の雪穂の方がよっぽど用意周到で頭がいい。

    児童相談所の所長は亜紀の小狡さみたいなものに気付かなかったのかもしれないし、亜紀に心酔してる人間も亜紀の黒い部分に気付かなかったかも知れないけど、亜紀の様な子供に対して、一体どうする事が正解なんだろう。所長は亜紀を可哀そうに思って、亜紀がした事を隠そうとしたけれど、それは亜紀にとって本当に良かった事なのか。亜紀が幸せならいいと所長は言っていたけれど、今の亜紀は本当に幸せなのか。傍目には幸せに見えるかも知れないけれど、亜紀の黒い面は増幅されているようだし、今後もこの幸せ(に見える状態)が続くとも限らないし。どこかで亜紀を救う事は出来たはずだけど、それは単に虐待から救う、ということではなくて、亜紀という人間をまっとうにする方法として、どうするのが一体正解なんだろう、と考えてしまう。

  • インタビュー形式である少女について語られる。終盤に向かうにつれ、当初思い描いていたのとは違う展開に。女は怖い。インタビュアーも怖い。2011/547

  • やはり人は、はけ口が必要なんだと感じた。やられたことはやられっぱなしではなく、なんらかの形で何処かにぶつけるしかないのか。
    親の期待やら児童虐待やらいじめやら…ストレスを抱える子供たちに、はけ口や逃げ道を教えてあげるのが先生だと思う。間違ったストレスの解消法は、自分も他人も傷つけるだけだと思うから。でも、教育者を目指している私には、正直そんな自信ない。

  • ある少女にまつわる殺人の「告白」。
    最近流行ってる形式なのかなと思ったが湊かなえに負けないくらいの話題作 ?

    長崎のある少女への虐待事件から起きた悲しい事件をめぐり、関係者たちがインタビュー形式で当時の事件の裏側を告白、真相の錯綜、そして事件の、本 当 に 、悲しい実態が明らかになっていく。

    児童虐待というただ重いテーマだけではなく、加害者と被害者の悲しい関連性や、周囲の人間で被害者を助けることができなかった人たちの後悔の念などよく斬り込んで描かれていると思った。児童福祉の実態を表しているだけでなく、現場の切羽詰まった感じがとても伝わる。


    入江くんぐらい報われたっていいのに!

  • 2011年『このミス』大賞優秀賞受賞作品。
    初、佐藤青南作品。

    展開の仕方は『告白』のようでしたが、私はこちらの話の方が引き込まれました。
    自分には見えていないだけで、実際はすぐ近くで同じようなことが起きているかもしれない。
    恐ろしいですね。。
    亜紀が事故に遭った理由を知った時は胸が締め付けられる思いがしましたが、
    後半に亜紀の本質が見えてくると、亜紀に対しての気持ちがガラッと変わりました。
    まるで『白夜行』のよう。
    そうやってしか生きていけなかったのだろうけど・・・やはり恐ろしい。
    最後もぞっとしましたね。。
    悲しいですが、こういうことは繰り返されてしまうのでしょうか。。

    【「亜紀ちゃんの話を、聞かせてください」10年前に起きた、少女をめぐる忌わしい事件。児童相談所の元所長や小学校教師、小児科医、家族らの証言を集める男の正体とは…。哀しくも恐ろしい結末が待ち受ける!】

  • 第9回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞受賞作。
     
     児童相談所の所長の隈部は、友人で小児科医の相良(さがら)から、自分の患者で身体のあちこちに不自然な痣や骨折の痕がある少女の面談を依頼される。虐待を疑っているのだ。そしてそれが、”ある少女”・長峰亜紀との出会いであった。 
     
     正体不明のある男が様々な人物に取材をしている形式で物語は進む。最近この形式の話を読むことが多いので、このインタビュアーが誰なのかがミソになるのはわかっていたつもり。それでも最後まで正体にはなかなか気づかなかったくらい、書き方はうまい。しかしそれが明かされた時にまた、さらに亜紀ちゃんが可哀想になってしまう。疑われてて・・・でもやっぱりやってしまってて。虐待の連鎖についてはわかっていても、そこから対象の子供を救いだすことのなんと難しいことか。こうやって読んでいる分には母親がありえないと思うけど、逃げることもできずに暴力をふるわれ続けたら自分もそうせざるをえなくなってしまうんだろうかと思うと怖い。昔から過酷な環境で生活せざるをえなかった亜紀ちゃんが身につけた知恵や、周りを(意図して?)犯罪者にしてしまう程のある種危険な魅力・・・「白夜行」の雪穂や「幻夜」の美冬を思い出した。罪に問われず大人になった亜紀ちゃんは、果たしてこれで良かったのだろうか。

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著者プロフィール

佐藤 青南(さとう せいなん)
1975年生まれ。男性。
熊本大学法学部に入学するが途中で除籍し、上京してミュージシャン活動を行う。『ある少女にまつわる殺人の告白』で第9回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し、2011年同作でデビュー。2016年、『白バイガール』(実業之日本社)で第2回神奈川本大賞を受賞。

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