NHKスペシャル 生活保護3兆円の衝撃

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796697132

作品紹介・あらすじ

終戦直後を超える非常事態!働かないのか?働けないのか?悲鳴を上げる自立・就職支援の現場に密着。受給者の実態から貧困ビジネスの闇まで制度の矛盾を浮き彫りにする出色のドキュメンタリー。

感想・レビュー・書評

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  • NHKスペシャルをもとにした、「働く世代の生活保護受給者」に焦点を当てた本。
    若い世代の生活保護受給者に対する厳しい見方に貫かれており、少し偏見も入っているのではないかと感じる部分もあったが、生活保護という制度自体が、受給者の働く意欲を奪っているという側面がよくわかる内容になっている。また、生活保護受給者を食い物にする貧困ビジネス業者の酷い実態も知ることができた。
    生活保護の改革案として指摘されている、「生活保護から抜け出すインセンティブを付与する」という方向性、期限とプログラム強制の実施、凍結預金口座の設置といった具体案も納得できた。ただ、それだけで根本的に問題が解決できるかは微妙なところだと思うが。

  • p.204「稼働層を生活保護に取り入れたのは間違いでした。リーマンショック直後には緊急避難的措置としてやむを得なかったとは思いますが、それを、その後に出た通知などで、なかば恒常的なシステムにしてしまったのは間違いです。生活保護を受給する前の仕組みとして、第二のセーフティーネットがつくられたのですが、それが機能しないまま、結局は、生活保護ですべてを受け入れているというのが実態。これは問題です。」
    「だからといって、今、生活保護を受けている稼働層を追い出せというわけではない。無理矢理制度から外してしまうと、本来受けるべき人まで受けられないという状態になる。不正受給や受けなくてもいい人を厳しく審査するシステムは必要ですが、それだけではなくて、自分から進んで自立するインセンティブ(動機づけ)が、制度として必要です。いわゆるアメとムチが必要なのです」

    p.212「稼働世代で生活保護を受けている人の多くは、職業訓練を受けていない人が多い。日雇い労働から生活保護にはいってきたひと、学校卒業後、派遣労働ならまだしも、アルバイトやフリーターの経験しかない人、そうした人たちかが生活保護受給者のなかに多くいるわけで、雇用する側からすれば辛い仕事しか用意できない。実際には、単純で長時間にわたる肉体労働しかないような状態にかり、業種の幅が狭すぎる。それでも働けと言って働けばいいが、特に若い人は将来にわたって働き続けなければならないから、どうしても“自分に合った仕事”というのを選びたいし、そういう意味で最低賃金は、生活保護受給者の自立を阻害するナンセンスな制度と言える」

  • NHKスペシャルの番組をそのまま本にしたようである。もう少し追加の情報があるかと期待したが、番組を見たことがあるので、見たことのある話題ばかりだった。

  • 生活保護の知識が殆ど無かったので勉強になりました。お金が絡む制度が出来ると悪用する組織が出てくるのは世の常。現場と政策とのズレの対策は難しいと思いました。

  • NHKスペシャル ―
    http://tkj.jp/book/?cd=01971301

  • 「この国の底が抜けた」という1文で始まる。
    日本という問題先送り思考停止のツケの結果が底から確実に来ている。
    …というか、この現象(働く世代を生活保護で受け止めることを決めた)、きっかけは厚生労働省の一課長の「通知」であったことというのが、なんというか。
    それほどに簡単に決められたなら、修正することも簡単に動いてみやがれと言いたくなるがそうならないところが…、何ともため息しか出ない。
    サクっと1日で読める。

  • リーマンショック以降、稼働世代でも生活保護を受付けるようになり、貧困ビジネス業者も増加・巧妙化した。いったん入ると抜けだせないような仕組みになってしまっている。

    様々な補助金の情報がいきとどいて、如何にそこから儲けられるか、になっている。
    外にパイを広げられないから、中で如何に巧く立ち回るか、になってるのかな。

  • 貧困ビジネスはそのうち1兆円ビジネスになり、そのすべてが反社会的組織に流れる予感。もちろん1兆円の原資は全て税金。そこへさらに、就業可能層の非就業手当がのしかかる。いずれも、数年前の就業可能者への生活保護拡大の影響。

  • 去年の5月以降とくに生活保護に関するネガティブな報道が相次いで、これでは生活保護に本当に救われている人への偏見をも生みかねない、と危惧していたけれど、実状としてやはり制度にも大きな問題があることがよく分かった。すごく分かり易かった。
    ある記者が「5円玉の穴を通して社会を見るのが記者の仕事」と言っていたが(それにはすごく共感したわけだけど)、まさにこの本の中の生活保護での取材活動も同様だった。ただし、やはり5円玉の穴を通して社会の全体を見るのは無理なわけで、報道にはやはり多面的に、かつバランスのとれたものが求められるだろうな。そう考えると、マスメディアの組織力というのはとても重要。
    まあ多面的に捉えたとして、あくまでパーソナルなアプローチの蓄積だからそれが問題の全容かと言えば分からない、だから継続的にアプローチかけなきゃいけないんだろうな、記者の仕事というのは。

    この本の中では、とくに「就労支援が成功しそうな事例」を取り上げていたのが重要だったと思う。若く就労意欲があるにもかかわらず、就労にたどり着かない。これがこの問題にある普遍性をもたせたとおもう。つまり金銭的支援ではどうにもならない、また現行(この取材当時)の就労支援は実効性が希薄ということ。

    研究、理論の追究は「かすみを掴むようなもの」と研究者志望の友人がいっていたが、現場から社会をみるというのもほとんどそれと同じな気がするんだよな。本当の社会の姿なんて全然見えてこないでしょうに。アカデミズムとジャーナリズムの不可分性を感じました。

  • コレを読んで思ったのは、ベーシックインカムは、やるべきではないという結論。人間は働かずに済むと、当初の働く意欲の有無にかかわらず、殆どの人が働く意欲をなくすという事実。

    この事実を知るだけで、この本を読んで良かったと思う。こと生活保護の問題については、不正受給が話題に上がるが、むしろそのことよりも、人間の本性として生活保護というある意味「ベーシックインカム政策」は、その人の労働する意欲(生きる意欲と言い換えてもいい)を蝕んでいくという事実だ。

    このことに関して本書で紹介されているケースワーカーは「受給者が生活保護から抜け出せるかどうかは半年間が勝負。半年を過ぎると殆どの人は生活保護から抜け出せない」という。そしてその裏付けとなるデータもある。

    派遣切りが話題になる前の、働ける世代への受給の実質的禁止、をしないと、ますます労働意欲をなくしてしまう若者が増えてしまうという恐怖を、この本によって知り得た、非常に興味深い本だ。

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