クレイジーフラミンゴの秋 (GA文庫 よ 1-2)

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  • ソフトバンク クリエイティブ
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797340600

作品紹介・あらすじ

学校なんかバッカみたい。先生もバッカみたい。クラスの子たちもバッカみたい。ママもパパもバッカみたい。そして、そんなことばっか考えてる自分が一番、バッカみたい。…ってなこと思ってる晴ちゃんは十三歳、中一の女の子。もちろん、だからって変な子って呼ばれて浮きたくないし、教室の隅っこで地味に一般庶民やってたのに、たった十三票で学級委員になっちゃった。文化祭前の騒がしい学校でやる気のなさそな担任と無意味なやる気だけいっぱいのクラスメイトを抱え、新米リーダーは無視され嫌われこき使われて、もう泣きたいことばかり。おまけに、なんだか最近、気分まで変。ずっと昔の中学で、ちょっと変わった一年生の、今も昔も変わらない「おんなのこものがたり」。

感想・レビュー・書評

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  • 10数年ぶりに再読。

    1979年の中学生が主人公の小説。子どもでもなく大人でもない、自分が何者かも分かっていなかった時代の、ほんの少し何かに気づき始めるひとシーズンを描いている。
    このレーベルとしてはかなり毛色の違う作品で、ライトノベルというよりは、あの時代に少年少女だった大人に向けたジュブナイル小説、といった感じだろうか。

    今作ではたくさんの洋楽が登場し、物語に彩りを与えている。
    中でも、ビリー・ジョエルの『Piano Man』やサラ・ヴォーンの『A Lover’s Concerto』は印象的で、当時は何度も繰り返し聴いた。
    今でも耳にすると、この小説が思い出されるほど、好きな歌になっている。

    あとがきには、次作を執筆中であることが明記されているが、今日に至るまで出版はされていない。それが残念でならない。

  • 『クレイジーカンガルーの夏』のスピンオフの位置にある作品。これまた、挿し絵が一枚も無くライトノベルの要素がほとんど無い作品。
    『カンガルー』に出ていた関西弁を話さない優等生男子と一緒に学級委員になった自分に自信が無い女子、菅野晴が主人公で、この子の中学校生活での色んな思いを読み進める。
    全編にこの子が好きな洋楽が登場しており、それが良い味わいを出している。物語の時代が1979年なので、60~70年代の洋楽であるので、これ等を知っている人は乗り楽しめる。『ピアノ・マン』のコーラス場面はテンション上がる!後半の『シーズ・リービング・ホーム』の場面はぶっ飛んだ。

    自分には相容れない描写が多々あるけど、中学生の淡くて苦い心を描いた佳作だとは思う。

  • 実家にあった

  • 1979年の女子中学生の群像劇。面白い。クレイジーカンガルーの夏の姉妹編。カンガルーの男子中学生らを別視点から読むことができたのも楽しかった。聡明さと幼さのアンバランスさ、それゆえに頑固な主人公は可愛らしく思える。友人への思い、親への思い、教師への思いに揺れる多感な心。どんなに頭の良い子でも、人気があっても、問題児であっても、受け持つ教師によって、中学生たちの評価は大きく変り、彼らの精神と今後の人生に多大な影響を与えているのだろうという事が窺えた。心の傷も、幸福も、人生の糧にして強く生きられたらいいのに。

  • 三度楽しめる、三度楽しんで欲しい物語だと思います。
    劇的なドラマではないけれど、誰にでもこの物語の片鱗を味わった経験があるはず。共感と世界観に浸れる作品です。

    同著者の『クレイジーカンガルーの夏』を随分昔に読んでいて、スピンオフのような続編のようなこちらも購入したのですが、何年も本棚で眠ったままでした。ちょっと遠出する際に目に留まって持ち出して、夢中になって読了。

    「目線が上手いなあ」と思わせる描写力が印象的です。
    主人公の晴(はる)は、人生で言うところの思春期に片足を踏み入れたくらいの、十三歳の女の子。風景や香り、周りの人間の仕草、そして物語のキーである音楽。すべてが、くどいくらいの描写力で、でも実際にこの年齢の、この立場の女の子だったらこれくらい吸収しているだろうなという目線で描かれています。そして描写する言葉が綺麗。ほぼすべての登場人物が関西弁ですが、「原風景」「懐かしさ」を読者に伝える重要な役割を果たしています。各人物のキャラクターも書き分けも秀逸で、まるでノンフィクションドラマのように、全員が生きていました。

    まずは晴の目線で見て欲しいから、中学生で一度。そして晴のような経験もひととおり終わり、大人の世界を分かり始める、私のような二十歳前後の年齢になってから二度目。そしてこの本のすべてを理解できるのは、きっと、原田先生と同じくらいの年、三十代になって三度目を読んだときなのではないかなと思いました。私はあと一度、この物語を楽しめるわけです。今から楽しみ。

    登場人物がとても多く(それもリアルで良い点なのですが)、人によってあだ名、名字、名前と様々な呼び方が飛び交うので、人物のフルネームをメモしておいた方が分かりやすいです。その手間を考えて星四つの評価です。

  • スピンオフ作品なのにこちらのほうがいい。
    生徒と先生の関係。
    先生の立場以上に生徒の微妙さが絶妙。

  • なし

  • 中学生だって、恋をする。遊びなんかじゃない、おままごとでもない、ほろ苦い、決して報われる事などない、大人の恋を。

  • 『クレイジーカンガルーの夏』のスピンオフ作品。前作は夏休みの男の子たちの物語だったが、こちらはその夏休みが終わった直後2学期の始業式から3学期の始業式までを女の子の視点で描いている。舞台は同じ場所なので、前作の登場人物たちもちらほらと登場するが、前作を読まなくても多分読めるだろうと思う。ただ前作のネタバレは多少あるので、私は順番に読むのをオススメしますが。なりたくなかったのになってしまった学級委員、くだらないことばかり言う女子たち、くだらないことですぐ衝突する男子たち、自分をまったく理解してくれずイライラさせられっぱなしの親、そして自分自身、周りのものみんな「バッカみたい」と感じつつも、なぜか不思議に心を騒がす存在がある・・・。潔癖で無垢で、もう自分は子供じゃないと思っていたけど本当はまだまだ子供だった時代のことが懐かしく思いおこされれる。物語のなかで主人公の晴は、11月の夕暮れの空が好きだという。すぐに闇に包まれてしまう前のほんの一瞬の美しい空。多分13歳という季節は、その夕暮れの空と同じで一瞬で過ぎ去ってしまうものなのだと思う。その一瞬の煌めきを凝縮したような物語だ。物語の中にはたくさんの音楽が登場し、巻末に音楽リストがついているので、音楽に詳しいともっと面白かったかなと思う。でも、前作同様ためらわずに面白かったと言える作品だった。

  • この作品は前作「<a href="http://paradise-city.jugem.jp/?eid=60" target="_blank">クレイジーカンガルーの夏</a>」のスピンオフ作品。<br>
    とはいえ、前作から読んでいるひとにもそうでないひとにも充分読み応えのある作品になっている。<br>

    今回の主人公「菅野晴」は中学1年生の少女で、優等生の両親に育てられたせいもあり、いまひとつ自分に自信が持てない。<br>
    学校と家庭の日常を平穏に暮らしたければ、自分の心を無防備に露わにせず上手に振舞う必要がある。しんどいけれど、そうしないと尚面倒なことになることも察しがつくから・・・。<br>

    そんな日常の延長は合唱コンクールを契機にして、晴を含む彼らに現実と向き合うとはどういうことなのかを気付かせていくのだった。<br>
    その風景の先に広がるのはビリー・ジョエルの「ピアノ・マン」。<br>
    たぶん私は今後ピアノ・マンのイントロを聴くと、この美しい反逆のシーンを思い浮かべるだろう。<br>反社会的な態度を取るだけが反逆ではなく、しなやかに挑戦することもその手段であるということ。ロックの本質は、そこにあると思う。サラ・ヴォーンの「ラヴァーズ・コンチェルト」、YMOの「RYDEEN」、ビートルズの「SHE'S GOING HOME」ブルース・スプリングスティーンの「RACING IN THE STREET」・・・ここでは紹介しきれない挿入歌の全てが、単なる演出上のB.G.M.でなく作品のストーリーとしっかり切り結んでいるのが素晴らしい。<br>
    うーん、やっぱりこれはサントラが欲しいですね マジで(笑)

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