世界が絶賛する「メイド・バイ・ジャパン」 (SB新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797363074

作品紹介・あらすじ

日本のモノづくりは新しいステージに突入した。「クール・ジャパン」の称号を勝ち得たいま、どこで作られたか(メイド・イン・ジャパン)ではなく、誰によってつくられたか(メイド・バイ・ジャパン)がより重視され、日本独自の文化的背景を持つ製品やコンテンツが世界で絶賛されている。日本のモノづくりの何がウケているのかを紐解いてみると、我々が気付いていなかった、世界市場における新たなビジネスチャンスの発見にもつながるだろう。戦略的に商品機能に込めるべき日本らしさを5つの商品企画ビジョンに抽出し、多くの具体例を用いてわかりやすく紹介する。日本の強みを再確認できる手引書。

感想・レビュー・書評

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  • 日本のアニメなどの「オタク文化」が海外からも注目させて久しい。本書はなぜ日本人だけがそれらの特異な文化を生み出すことができるのかを掘り下げている。富や情報の水源地を押さえるのが得意な西洋人に対してクルマや携帯端末など人間が実際に触れる「モノ」作りを得意とし、尊敬する下地が日本人にはあるという。また梱包用の発砲シートをプチプチと呼ぶ感性をはじめとして、女性的、子供っぽさ、優しさのベクトルに傾きがちなのも我々の文化の特徴である。筆者は西洋=世界標準としてこれらを嘆くのではなく、我々の強みとして、得意な分野で伸ばしていこうと提案する。「痛車」「姫電」など受け入れがたいと思っていた「オタク文化」をちょっと見直してみようと思った。

  • 川口さんの講演を以前に受けました。視点が面白く大変参考になります。

  • 10年ぐらい前の本だが、日本のものづくり精神に根付くところの色んなジャンルの捉え方がいい。
    というのもまぁ、自分も、現在ものづくり系エンジニアを職務としており、、この筆者に共感するような、まだまだ日本捨てたもんじゃなく、イイところをもっと良くしていこうよ、そのために、まずは伝統なり伝承なりを知るところも大事…そんな気持ちになれた。
    ので、細切れな話が多く、だいぶ読むのに手間取ってしまったが、総じて、イイ、未だに未来的に思える話もまだまだあったと思う。
    逆に10年前で、まだ実現化できていないことも全然多いんだな…というのが、ちょっとまだまだ日本として残念なのかもしれないと思わんでもないところであった。

  • モノつくり総合力についての内容が妙に納得しました。

  • <目次>
    はじめに
    第一章 極東・偏狭国のポップ・カルチャーが世界を救う
    第二章 技術とサブカルの相乗効果
    第三章 いじられる前提の商品設計
    第四章 心の安寧のための道具
    第五章 技術は弱者のためにあり
    第六章 あちら側技術とこちら側技術
    第七章 真のクールジャパンの完成形

  • クールジャパン。
    サブカル、ものづくりの面から書かれた一冊。

    今や日本のアニメは、ジャパニメーションと呼ばれ、日本発信の大きな産業になっている。その一方で、良い歳したオッさん達が電車の中でジャンプ辺りを読んでいるのを見ると、まだ卑下された目でみられがち。
    しかしながら、現代じゃ高尚な趣味とされてる、歌舞伎や浄瑠璃、大和絵なんかも、当時は大衆娯楽だったわけで、数百年後にはアニメや漫画が高尚な文化に昇華されるかもしれないね。

    ものづくりについては、中々面白い解釈だった。
    日本人は、道具を擬人化する質があると。鋏やとんかち、櫛など。
    あくまでも、目的に到達する手段ではなく、身体の一部と捉える。

    また、愛着という面では昭和レトロな時代には、女性達は黒いリンリン電話にフリルの手芸をくっつけて、平成のギャル達は通信手段の携帯、スマホをデコ電にして、果てには文章すら、デコメに昇華する。電話のデコレーションから漏れ出して、それがそのままネイルへ溢れ出す、と。

    日本人独特の道具感ってのは、道具を冷たい無機物としてではなく、擬人化されたパートナーとして捉える八百万的な世界観があるんだろうね。

    ハードをソフトに広げる感性は日本人特有のもの。

  • 20160213読了

  • 現在の日本という国についてのSWOT分析をするならば、機会と強みを語るにあたって本書を外すことはできないだろう。日本だけが到達できるかもしれないブルーオーシャンが「サブカルチャー」の世界を中心に広がっている。一方で、多くの「旗艦船」は「メインカルチャー」であるレッドオーシャンに留まり続けていることも事実。克服すべきとされていた弱みが実は強みだったという逆説的な意味も含め、眉をひそめて悲観論ばかり語る輩に是非読んで頂きたい一冊。

  • チェック項目4箇所。サブカルをきっかけに日本に興味を持つ人たちが世界中で増殖しています、どんな入り口からでもよいでしょう、つかみはOK、興味さえ持ってもらえれば、大仏様からてんぷら、すき焼き、フジヤマ芸者に、武士道、侘び寂びといったクラシックなカルチャーの品質の高さにも気付いていただけるはずです。勝負観:仕事観より以前の勝負観についても独特の精神性があります、「判官びいき」と言うように、敗者の美学、滅びの美学を潔しとする感覚です。老人や障害者、病人などが使う車椅子とよく似た外観の車両、「ベビーカー」の業界にも、新しい風が吹いています、ここ数年、ベビーカーのトレンドが変曲点を迎えているのです。・人を見守る電気湯沸かしポット:一人暮らしの老いた母親がお茶を淹れる動作をポットの使用履歴から推測し、異常行動があったら東京の長男の携帯に自動通知される、ポットの動作ログ情報には安否確認という価値が含まれていた。

  • 日本の文化を土壌にして生まれた技術やコンテンツなどがどのように生まれているかを知りたくなり手に取る。

    日本人の感性や物への愛着、考え方などがどういう商品を生み出すことになり、どう評価を受けているかを受けているか、またこれからの日本の未来の発展のためにどういった手段でコンテンツを生み出すかなど、コンサル企業に努める筆者が述べている。

    同じ技術を開発しても、その技術を使ったアプリケーション(応用)は他の国とは一線を画している。
    たとえば音声認識の技術が、欧米ではうそ発見器に、日本では感情を伝えて相手との親密なコミュニケーションの促進につながるなど。
    時代は成熟し、世界全体がある一定水準の生活ができるように豊かになりつつある今、過去の産業革命で世界の発展に貢献した自然科学の時代ではなくなりつつあり、人間の心を満たすための技術やサービスが求められると述べる。

    そういったモノやサービスを世に発信していく上で、日本人の感性は非常に強みになるという。


    ・モノに愛着や親しみを持つ、弱い者を救う感性


    厳しい環境で生き延びてきた西洋の人々は侵略や略奪を行う必要があったため、強いものが生き延び弱い者は淘汰されてしまわないように自立するように教える風土がある。

    一方、様々な天災を怖れる人々が島国で共同で暮らす日本では、調和を重んじる。
    自然と調和するためにアニミズムという物や自然のものすべてに霊魂が宿るとし、弱い者を救済する”ヘタレな”風土があると述べる。
    ロボット工学、障害者支援のエンジニアリング、はたまた幼女が強い力をもって世界と立ち向かうアニメなどにそれは表れている。


    古来より、日本の文化として価値のないものに価値を見出したり、一つの行動それ自体が目的になることが多い。 例として茶道や歌を詠むことなど。
    ここでも、西洋では物は特定の「手段」に用いるためにあるが、日本では道具を使うこと自体が手段になることが多い。

    前述にあるアニミズムからモノへの愛着が強く、自分でモノをカスタムし目的として楽しむ傾向がある。
    例えば車の改造、携帯電話のデコる文化などは、個人が自分の好きなような多様な嗜好から生まれている。

    欧米の思想では世界を客観的にとらえ、自然を絶対的に自分達で制御しようとしたがるから、研究も理論が上の風潮がある。
    合理的に考えることで資本主義が正当化されやすく、実利に基づく行動が多い。
    そういった中で合理性を突き詰めれば、効率や利益率の追従を求め、大量に生産し大量に売る方向に発展したのも納得する。

    これからの未来、大量生産・大量消費による利益重視のビジネスモデルでは、人々の幸福は満たすことは難しくあるという。
    多様な価値観に対応できるような考えに、これからの未来のモノ作りのヒントがあると考える。

    「 モノ作りで、嬉しさや機能でいかに脳の汗をかくか 」という筆者の表現には非常に好きでした。


    ・実学主義で物を作る職人気質

    日本人が持つ、自分の才能や技術を世に問うことで、利益よりも名誉を欲する職人気質。

    技術と芸術、理論と実践の境界が曖昧になっている日本では、実践を重視しモノ作りにおける設計や開発のプロセスで強みを持つ。


    この二つの特徴が合わさったからくり人形について、筆者は未来のヒントがあるという。

    からくり人形を作る技術は西洋でも日本でも同じように発達していた。
    違いはその人形の表現である。

    西洋は顔の細かい部分にこだわり、情報量を付加しまくることで似せるが
    日本は極端に少なく一つの動作に人間らしさや感情を凝縮することで表現する。

    そもそも必要のない機能をモノに持たせ、それを実現することで評価を得ようとする職人気質。

    日本の未来のものづくりの方向性を示している。

    個人的な意見。
    大流行したLINEなどはスタンプに「可愛い」などの感性や「凝縮」といった概念が大きく貢献したと考える。
    コミュニケーションの負荷を最小限に抑え、最大限の情報を付加してコミュニケーションすることができるのは、流行するのも当然だろう。

    日本のモノ作り自体がマンマシンインターフェイスと相性がいいことに非常に共感をする。
    成熟した世界では人の幸福に心の充足があり、多様化した嗜好には画一したモノでは流行らない。
    それはITの分野でもオープンソースなモノ作りが行われていたりすることからもそうだろう。

    こだわりを重視して、それを自由に育てる環境があれば、まだまだ日本のモノ作りは明るいと思う。
    その環境を用意するにはもちろん精神的・経済的に豊かでなければならないし、資本主義の世界でそれに抗い続けることは大変であるかもしれないが、
    大切なことは長い歴史の土壌の上にある文化は、自分達の感性に基づいて自分達日本人で判断するべきであり、安易に欧米追従型をするような考えで、自らその稀有で貴重な文化を見捨てるようなことだけはしてほしくないな、と思いました。社内公用語英語など。

    未来へのヒントがちりばめられている本でした。

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著者プロフィール

盛之助代表取締役社長/「メガトレンド2016-2025全産業編」著者慶應義塾大学工学部卒、イリノイ大学修士課程修了。技術とイノベーションの育成に関するエキスパート。技術開発戦略を文化的背景と体系的に紐付けたユニークな方法論を展開する。戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルにおいて、アソシエート・ディレクターを務めた後に株式会社盛之助を設立。国内のみならずアジアや中東の各国の政府機関からの招聘を受け各種コンサルティングを行う。日経BP社 日経BP総研 未来研究所アドバイザーも務める。

「2017年 『メガトレンド 世界の終わりと始まり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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