ハクティビズムとは何か ハッカーと社会運動 (SB新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797369625

作品紹介・あらすじ

ハクティビズム(hacktivism)とは、ハック(hack)という言葉に、積極行動主義ないし政治的行動主義を意味するアクティビズム(activism)を掛けあわせた造語。
ウィキリークスやアノニマスなどとともに、その潮流と背景について論じる。

感想・レビュー・書評

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  • 2012年の出版。
    当時、注目を集めていたウィキリークスやアノニマスを中心に、ハッカーによる社会運動を考察。
    
    ウィキリークスやアノニマスですら「あったね!」という感じなので、ウィニー事件やsengoku38あたりはもう懐かしい。
    
    DeCSSに関してはパソコン雑誌全体が「悪用禁止!」としながらDVDリッピング、コピーソフトの紹介して盛り上がってましたね。
    
    本書では70年代のカウンターカルチャーから「サイバースペース独立宣言」までさかのぼり「ハッカー倫理」の形成と「ハクティビズム」が国家権力と戦ってきた経緯をみる。
    
    アノニマスもウィキリークスもまだ活動継続中ですが、はたしてハクティビズムは社会を変えたのか。もっというなら「コンピュータは人生をよいほうに変えた」のでしょうか。
    
    以下、引用。
    
    「ハクティビズムとはつまり、自らがつくりあげたツールを用いて社会に影響を与えること、つまり社会をハックするという、ハッカーたちの社会運動なのである。」
    
    『ハッカーズ』スティーブン・レビー 工学社
    
    「④ハッカーは、成績、年齢、人種、地位のような、まやかしの基準ではなく、そのハッキングによって判断されなければならない。
    
    ⑤芸術や美をコンピュータで作り出すことは可能である。
    
    ⑥コンピュータは人生をよいほうに変えうる。」
    
    「答えにたどり着くまでにどれだけ無駄がないか。その発想そのものがどれだけ新しく、独創的なものであるか。そしてその答えにたどり着くことがスリリングであるか。ハックとは、誰もが思いもしなかった方法を編み出すような行為であり、その発想(や数式、プログラミングのコード)の美しさを重視するものなのである。」
    
    「偉大なるプログラマーは、ただ頭を回転させるだけで、答えがわかってしまうのだ。新しい方法で(つまり結局は正しい方法で)その問題を解決する美しいプログラムの書き方がわかってしまうのだ」
    (リーナス・トーバルズ、デイビッド・ダイヤモンド『それがぼくには楽しかったから』小学館)
    
    「ただし彼らは純粋な意味で宗教者や神秘主義者ではない。彼らは合成された薬物であるLSDを利用することで、人間の脳を活性化させるという、神秘主義的な経験それ自体を科学的行為とみなしているという点で、科学的かつ合理的である。」
    
    「こうした暗号ビジネスの高まりに対して、アメリカ政府は民間の暗号技術向上が自分たちの暗号解読の妨げになるという理由から、高度な暗号技術の使用にことごとく反対するようになる。とりわけ海外への暗号技術の輸出に関しては、国内版よりも低い水準の技術でなければ輸出許可を出さなかった。これは、他国やテロ組織の暗号技術向上を避けるためである。」
    
    「あえて違法行為を行うが敵対勢力に物理的暴力を振るうことを禁じた、インド独立の父マハトマ・ガンディーの非暴力主義もまた市民的不服従と呼ばれ、アクティビズムの一例にあたる。」
    
    「DeCSSとは、DVD-Videoのアクセスコントロール技術(Content Scrambling System)を解除するプログラムである。一九九九年当時、LinuxなどのオープンソースOSにおいては、アクセスコントロール技術によって商用DVDは鑑賞できない状態にあった。そこでノルウェーの当時弱冠一五歳であったヨン・レック・ヨハンセンは、アクセスコントロールの解除に成功すると、そのプログラムをDeCSSという名で公開した。」
    
    「ヨハンセンの無罪が確定した最終的な裁判では、合法的に入手したDVDを、製作者の想定を超えた使用方法(Linux上で作動させること)は合法との判断が下された。DeCSSを用いた第三者によってDVDコピーが行われたとしても、その技術を開発した者が罪に問われることはないということである。」
    
    「ちなみに日本においては、二〇一二年六月二〇日に著作権法改正案が可決されたことに伴い、アクセスコントロール技術を用いたDVDのリッピングは違法となった。」
    
    「彼らは二〇〇二年、「Camera/Shy」と呼ばれるステガノグラフィツールを公開した。ステガノグラフィ(steganography)とは日本語でいえば「電子あぶり出し」といった意味で、デジカメで撮影した画像や電子絵画の中に、少量のデータを挿入させておく技術を指し、国際テロ組織アルカイダが連絡手段として利用していたことで有名である。」
    
    「現在ではアノニマス内部に派閥が形成され、それぞれが合法・違法などに分かれて抗議しており、サイエントロジーへの合法的なデモなどに活動を限定した「チャノロジー(Chanology)」といった派閥や、おもにDDoS攻撃など違法な活動が多い「アノンオプス(AnonOps)」という派閥も存在する。」
    

  • 塚越さんの記事や論考はいくつかの媒体で読んでいたので、本書はそのまとめ的なものかなと思っていたけど、そうじゃなかった。

    ハッカー及びハクティビズムの歴史と思想を整理することで、ウィキリークスやアノニマスがどのような位置づけで捉えるべきかが示されていた。単に、ウィキリークスやアノニマスの現在の活動を説明するだけでは、見えてこない意義や課題が記述されていたように思います。まさに「目次」の勝利。構成がかなり練られていた印象を受けました。

    アノニマスの活動がただ「危険なやつらが何かしてる」と消化されずに、市民的不服従として正当性を持った活動と認められるには、今の報道のされ方とか、人々の受け止め方とか見てるとなかなか遠いのかなーとも思うけど、この本みたいに意義をきちんと社会に伝えて、もう少し違った見方をみんなができるように塚越さん頑張ってほしいなと思いました。

  • 新書文庫

  • アノニマスの仮面集団は、2006年にイタリアで見たことあります。彼らが有名になる前で、V・フォー・ヴェンデッタが公開された年なので、映画のイベントかと思ってました。
    ウィキリークスやアノニマスの登場前はサイバーテロリズムが世間を騒がしていたので、私の周囲では彼らも同じ文脈で批判されることが多かったように思います。
    コンピュータ発展期にパロ・アルト研究所が持っていた自由で理想的な世界から、アノニマスの活動がもたらす価値観入り乱れた混沌の世界へ。インターネットはサイバースペースを拡大させ、ハッカーの裾野を広げまくりました。そして、年代を経るにつれ西海岸的価値観がいつか陳腐化するのではないかという予感を覚えます。
    インターネットやプログラミングに精通した人たちが醸し出す独特の雰囲気や価値観が、どういった背景から生まれてきたのか。この本は駆け足(新書でやるという試みがわりと無茶なのでは?)ながらも、わかりやすく教えてくれます。

  • 内容がちょっと浅過ぎて残念。
    興味はあるけど、全くの門外漢が入口用?それでもちょっと厳しいかな

  • 知識と根性が必要かも。

    なかなか専門性の高い本だと感じました。一つ一つの言葉に解説はありますが、情報科学系のことに詳しくなければメモしながら読み進むぐらいの慎重さが必要になると思います。

    まず、ハッカーが悪いイメージで捉えられていることを修正し、元々はどういう事例から派生したのかなどの言葉の解説が多いです。例えば、「ハックとは誰もが思いもしなかった方法を編み出す行為であり、その発想の美しさを重視する」と書かれていてそのエピソードなどもかなり詳しく書かれています。

    また、ハクティビズム、アノニマスもハッカー同様言葉の解説などがあり、エピソードが付随されています。

    初心者用と思い購入したのですが、途中難しいことがちらほら書かれています。しかし、筆者の言いたいことは常に一緒なのであまり考えすぎずに読み飛ばしても参考になる部分は多いと感じました。

  • ハクティビズムとは何か、読了。
    予想通りのアノニマス読本。
    でも攻殻SACの笑い男や個別の11人見てないと、リーダーのいない組織って概念自体が理解できないかもね。
    日本人のハクティビズムの到達点が渋谷お掃除オフってのは、頓知が効いてて日本人らしい発想。

  • 社会的・政治的な主張のもとにハッキング活動を行うことを指す"ハクティビズム"について、歴史を振り返りながら考察している本です。よく分析されているとは思いましたが、個人的に一番期待していた第五章の「ハクティビズムはどこに向かうのか」の内容が浅くてガッカリしたため星3つにしました。とはいえよくまとまっていたと思いますので、著者の今後の活動に期待します。

  • タイトル通り、ハクティビズムについてわかる本。

    「Anonymous」 についてふれている部分も多いのですが、決して「Anonymousの本」ではないです。

    これまで自分が読んできたサイバーセキュリティ関連の本が参照されていたりして、この分野の読書は間違ってなかったなあと再認識しました。

    論文調ですが、自分には堅苦しくなく読めました。
    (以上、ブログ全文です。)

    ブログはこちら。
    http://blog.livedoor.jp/oda1979/archives/4325914.html

  • 本書で紹介されてる、「ソニー・ベーターマックス事件」の話は、例え話として今後ドヤ顔で披露していくと思う

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著者プロフィール

一九八四年、東京都生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位修得退学。拓殖大学、学習院大学非常勤講師。専門は情報社会学、社会哲学。ミシェル・フーコー研究のほか、インターネットの技術や権力構造などを研究。TBS ラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!」の「ニュースクリップ」レギュラー(二〇一四年四月〜二〇一九年三月)、NHK E テレ『世界へ発信!SNS英語術』などに出演。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)。共訳に堀内進之介監訳『アメコミヒーローの倫理学』(パルコ出版、近刊)。

「2019年 『ニュースで読み解くネット社会の歩き方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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