自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体 (SB新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797372670

作品紹介・あらすじ

臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心・やり方・ペースの維持が最優先-あなたの身の回りにそんな人はいませんか?あるいは、あなた自身そういう自覚がありませんか?自閉症とアスペルガー症候群の垣根を取り払い、連続した1つの状態と捉えることで、障害の概念を根本から覆す「自閉症スペクトラム」の考え方が注目されています。10人に1人が潜在的に抱える「生きづらさ」の原因を解明するとともに、早期発見や療育、支援の方法まで、多角的に解説します。

感想・レビュー・書評

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  • 「あんた思い通りにならないとよう、かんしゃくを起こして暴れてたな。クラスであんただけやで羽交い締めにしたのは」と昨年、小学校の同窓会で恩師に言われた。同席した同級生からは「キレてよう暴れてたで」とも。
    そのころ僕はみなと同じことが出来ず、ちゃんと並べなかったり、わざとふざけたりしていたし、他の子と同じことを強制されることが嫌で仕方なかった。その一方、地図帳や百科事典、科学などをテーマにした学研のひみつシリーズなどを穴が空くほど読みあさっていた。読んだことでの知識が妙な自信となり、密かにまわりを見下したりしていた。運動も嫌いではなかったが、ソフトボール大会でみんなにデッドボール作戦というのを進めまくり、それで大目玉をくらったりしたこともあって団体で行う球技に苦手意識をいだいた。
    中学校になっても、かんしゃくの傾向はあったけども、表面的には押さえられるようになってきた。本による知識はあっても勉強とは違う。まわりとあわせて勉強することが苦手なのだから、成績は伸び悩んだ。そうしたことから中学生の頃は抑圧傾向にあり、精神的にかなり辛かった。洋楽ばかり聴いてすごしていた。
    大人になっても人の言うことがよく分からず、ちゃんと会話が出来ず、空気が読めず、それでいて自分のペースだけは守ろうとし、しまいには好きなことだけをし、そのまま現在に至る。
    この本を読み、いままでのいろんなもやもやが氷解した気がした。おそらく僕は非障害型の自閉症スペクトラム。なるほどなあ。

  • ASDを扱う本の中では、対象者にかなり寄り添ったスタンスと、具体的支援が書かれている。

    かなり広く浅い範囲まで対象を広げ、「苦手なことは無理して訓練などせず、得意なことを伸ばす」ことに重点を置く。

    また、他の論文や研究結果に対しても鵜呑みに引用せず、解釈の幅があることをしっかりと記載している誠実さもよい。

    子供向けだけでなく、大人に対しても、どのような支援が有効なのかわかりやすく書かれている。

    ただし、この著者が理想とするほど、人間関係や社会は優しくないという現実もある。

  • 臨床を知ってる人じゃないと書けない内容。特性についてだけでなく、自閉に対する捉え方も深刻さがなくフラットなのがとてもいい。「それ分かるなぁ」っていうあるあるも、「そういうことやったんか!」っていう嬉しい発見も沢山ある。本田先生の本はハズレがない。自閉ならこの先生。

  • 「生きづらさの正体」とタイトルにあったので、主に大人の当事者を対象にした本なのかなと思って読んでみたのですが、実際は自閉症スペクトラムの当事者(本書で扱われていたのは主に子供の当事者)に対する支援の重要性について書かれた本でした。自閉症スペクトラムの子供を持つ親の方などにとっては役に立つ本だと思います。しかし、本書で書かれているような、周囲の人々の理想的な支援や理解を当事者が得ることはなかなか難しいのではないかとも感じました。

  • この本は、自閉症スペクトラムの人々とはどのような特徴を持っているかという事から始まり、そのような人々への関わり方や支援の考え方など、極めて平易に解説されている本である。
    私自身も自閉症スペクトラムを疑っており(おそらくそうである)、現在精神科で先生の診察を受けている。その時先生に薦められ手に取ったが、医学の専門知識も必要なく、さっと読むことができる。

    自閉症スペクトラムの人々は世の中の10%を占めるため、概念上は少数派でも、絶対数で言えば決して無視できない人数である事は言うまでもない。また、世の中のほとんどの人は自閉症スペクトラムの人と何らかの形で関わる事があるだろう。

    そのため、当事者もそうでない人も、自閉症スペクトラムの人間について理解していく事が不可欠であると思う。そして当事者にとっては、この本を読むことをきっかけに、自分がどのように生きていくのかに向き合っていく必要があるだろう。
    そのような意味でも、全ての人々にとって必読の一冊だと思う。

  • 「非障害自閉症スペクトラム」というとらえ方がよいです。共感。
    それから、自閉症スペクトラムかどうかの質問が単純明快で見事。なるほど。
    ちなみに、二つとも私は「Yes」 disorderがゆるくてもhandicapがきついので、何かと苦労してるし、二次障害もでてきちゃうし。

    もし、まわりの人が活字が苦にならない人なら、この本読んでもらったら、理解してもらいやすいかも。
    自閉症スペクトラムとは何か?から、どんなふう?どうしたら?とか、どのように?どこで?だれに?とか、
    子どものことも成人のことも、対応や考え方などけっこう盛りだくさん。
    むずかしくなくさらっと読める。

  • いわゆる自閉症のみならず、非障害自閉症スペクトラムにも重きをおいて話を展開しており、身に覚えがある人も多いのではなかろうか。
    かくいう私もその一人だったりする。

    特性を知ることは自分を知ることであり、自分がより生きやすく、より幸せになるための最短経路である。
    今困っていなくとも環境が変われば困ることがあるかもしれない。その時のためにも、周りの人への理解という目的でも、本書を読むことには価値があるだろう。

    ✏あるときは仲良くしつつも、別の場面では競争する、という対人関係は、自閉症スペクトラムの子どもたちにとって、矛盾に満ちているのです。

    ✏感覚の異常は、過小評価されがちです。もともと自分の感覚機能を他人と比較することは難しい上に、自閉症スペクトラムの人たちは、他者と自分を比較することへの関心が低いため、他者に比べて自分の感覚機能が異常である、と気づきにくいところがあります。また、周囲の人も、自分にとって平気な感覚がとても苦手な人が存在するということに、ピンとくることが難しいのです。

    ✏自閉症スペクトラムの人は、おそらく潜在的には人口の 10%はいると思われます。ただし、過半数は、成人期には非障害自閉症スペクトラムになる可能性が十分ある人たちかもしれません。典型的な自閉症は、この中のごく一部で、人口の 0・ 3%程度だと思われます。

    ✏幼児期に近い時期の支援者たちがボトムアップで頑張ろうとするのは、目の前の子どもが将来どうなるのかという見通しが持てていないからに過ぎません。

    ✏どんなに小さな年齢であっても、将来どのような状態になる可能性があるか、ある程度の目安を示すことができるのが専門家です。それを念頭に置きながら、トップダウンで育児に取り組んでいく。これが最良の支援です。そして、そのスタートは、早ければ早いほどよいのです。

    ✏自閉症スペクトラムの人たちが物心つくのは、思春期であると考えられます。

    ✏物心がつく前に特訓を強要されると、心の健康を損ねます。

    ✏だから、「一人でできる」ことだけが目標ではなく、「人に報告ができる」、何かあったときに「人に相談ができる」ということが大事なのです。そういう習慣が身につくためには、「何かを人と一緒にやって、よい結果に終わった」という体験をする必要があります。

    ✏子どもが混乱したり、パニックになったりしているときに、「しっかりしなさい」という対応ではなくて、「かわいそうだね」「こんなふうに思っているのだよね」などと共感してあげると、子どもが自分で立ち直る。

    ✏自閉症スペクトラムの人は、うまく育っているとだいたい明るい性格です。

  • 数十年あまりの臨床による経験とデータの積み重ねは説得力に満ちている。乳児健診から、自閉症スペクトラム症の診断が可能で、各年代で適切なサポートを受ければきちんと自立できるとの見解にもおおいに首肯できる。必読かつ貴重な一冊。

  • 思春期前の小学生時代は保護的環境で十分に自信をつけさせるのが良い。人に相談して解決したという経験を積ませる。意欲の貯蓄をしていく。特訓(苦手なこと)はこの時期に不要である。

    特別支援教育(支援級や放課後等デイサービス)など普通級以外の複数の居場所があることが子どものためになっていると実感。インクルーシブ教育は皆が皆同じことをするのが良いわけではない。ASDの子にはその子に合った進捗度合いで教育を受けることがよい。

    とても参考になった。

  • 「その特性をごく簡単に要約すると、『臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強いこと』となります』。まさに自分のことだ。そうかも知れないなとは思っていたが、ぐうの音も出ないほどズバズバ言い当てられた。ショックもあったけど、それでも論述の巧みさと内容自体の興味深さで、読むのを止めることができなかった。こんな素晴らしい本を書いた本田氏自身が自閉症スペクトラムの当事者である、ということが、自分にとってなによりの慰めであり、希望になる。

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著者プロフィール

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授。東京大学医学部医学科、東京大学附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院、横浜市総合リハビリテーションセンター、山梨県立こころの発達総合支援センター所長、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長を経て、2018年より現職。博士(医学)

「2020年 『障害者・障害児心理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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