宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八 (SB新書)
- SBクリエイティブ (2018年2月6日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
- / ISBN・EAN: 9784797388503
作品紹介・あらすじ
銀河系には約1000億個もの惑星が存在すると言われています。そのうち人類が歩いた惑星は地球のただひとつ。無人探査機が近くを通り過ぎただけのものを含めても、8個しかありません。人類の宇宙への旅は、まだ始まったばかりなのです――。
本書は、人気コミック『宇宙兄弟』の公式HPで連載をもち、監修協力を務め、NASAジェット推進研究所で技術開発に従事する著者が、やさしくかみくだきながら「人類の謎」に挑む、壮大な宇宙の旅の物語です。
人類が解き明かしてきた謎とは? 「地球外生命や地球外文明は存在するのか? これからの宇宙探査はどうなる……? テクノロジーとイマジネーションを駆使して、独自の視点で語るエキサイティングな書き下ろし!
感想・レビュー・書評
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YouTubeの『宇宙恐怖症注意!』という動画(日本語版)が我が家のブームで、2歳の末っ子も「うちゅー、みる!」と言って(わからないなりに)一緒に見ている。
小さい衛星、月から、火星、地球、木星、太陽、シリウス…と徐々に大きくなっていき、直径で太陽の約1000倍(体積だと…10億倍?)のベテルギウスなどの超巨星、さらに無数の星が瞬く銀河系、そして数千億個の銀河系まで。
とてつもなく広く果てしない世界。
最近、ベテルギウスの明るさが急速に変わり…とニュースで見かけたが、その光が地球に届くまでに約700年くらいかかるから、我々は約700年前にベテルギウスに起きた変化を今見ていることになる。
宇宙から見ると、地球が、太陽が、いかにちっぽけであるか、それこそ宇宙の塵のようなものだということがわかる。銀河の広さ、宇宙の広さに、なんか笑うしかないなーみたいな気分になるし、地球外生命体がいないわけないなと思う。
そしてまた、地球というこの小さな星に、こうして生を与えられたことは、奇跡のようなことだなとも。
そんなわけで、宇宙のにわかファンになって借りてきたこちらの本。
表紙は『宇宙兄弟』のムッタ。
著者は、NASAの中核研究機関であるJPL(ジェット推進研究所)で、火星探査ロボットの開発をリードしている日本人、小野雅裕さん。
《宇宙に命はあるのか》
人類が歩んできた宇宙の生命探索の道なき道の歴史を辿りながら、後半はイマジネーションの世界へ誘われていく。
中でもボイジャー1号2号の話はすごく面白い。
予算から天王星、海王星行きを予定していなかったボイジャー2号に、技術者たちの忍ばせた『仕掛け』とは。
ボイジャー1号2号による数々の発見。そして、イマジネーションを働かせて常識を打ち破って立てられた仮説。
木星の衛星イオには、数百もの活火山があり、その火口から休むことなく溶岩が吐き出される、地質学的に生きた星であること。
さらにイオの外側を周回するエウロパが氷惑星であり、その氷の下には海があると考えられること。
蒼く美しい海王星、メロンの皮のような模様の衛星トリトン。
また、系外惑星の探査の歴史も。
世界で初めて系外惑星の探索を始めたマーシーとバトラーが、世界初の系外惑星の発見に遅れた理由。
マーシー達は既にそのデータは持っていたはずなのに、見逃してしまった。
その発見された惑星は、木星ほどの巨大惑星で、中心の星からわずか0.05天文単位の距離を、たった4日の周期で狂ったように公転していたのだ。
マーシー達はたった数日で公転する惑星を全く想像しておらず、知らないうちに太陽系の常識に縛られていた。先を越したスイスのチームは、少しだけ、彼らよりもイマジネーションの幅が広かったのだ…
本書で小野さんが繰り返し伝えようとするのは、イマジネーションの大切さだ。
"確かに人類は太陽系の八つの惑星全てに探査機を送り込んだ。しかし、銀河系にある惑星の数は約一千億個と言われている。人類はまだ、その一千億分の一しか知らないのだ”
"イマジネーションとは見たことのないものを想像する力だ。常識の外に可能性を見出す力だ。翼を持たぬ人間が青い空を見上げて飛ぶことを夢見る力だ。目には今存在するものしか映らない。だが、目を瞑り、常識から耳を塞ぎ、代わりに想像力の目をイマジネーションの世界へ向けて開けば、今ないものを見ることができる。現在だけではなく未来をも見ることができる。"
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宇宙に関心があるかと言われれば無かった。生命なんていないと思っていたからだ。ところが本作を読むと「もしかしたら・・」と思わされてしまった。
本作は技術者の開発に賭けるノンフィクションさながらのドラマでいきなり心を掴んでくる。2人の技術者のどちらが先に人工衛星という宇宙への一歩を踏み出すのかという物語だ。
生命を産み出す条件は2つあるという。水と火山による熱だ。木星と土星のいくつかの衛星でそれらが発見された。それだけでなく、一つの銀河には1,000億の惑星が存在し、銀河もまた1,000億ある。つまり、確率的に考えれば地球で起きた現象が1,000億×1,000億の惑星の中にあるかもしれないというのである。
宇宙という未知と出会って己の無知を知らされた。2020年火星に探査ローバーを送るということで私も今からワクワクしている。知ることはワクワクの一歩だと改めて感じさせてくれた一冊だった。 -
2020年12月10日読了。
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NASAの研究機関JPLに現役で勤務されている小野雅裕氏による宇宙探査の最前線を描いた本書。
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人類がいかにして宇宙を目指すようになったのか。
どうして携帯もカーナビも無いような時代に、アポロは月へ行くという大事業を成し遂げる事が出来たのか。
太陽系の8つの惑星やその衛星がどのような星なのか。
そこには『何かいるのか。何がいるのか。それとも我々は孤独なのか。』
系外惑星の探査、地球外文明とのコンタクト…
等々、書き切れない程の内容が詰まっている。
その中で、著者が始めから終わりまで伝えている事は『イマジネーション』の大切さ。
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●「SFの父」と呼ばれたジュール・ベルヌの『地球から月へ』という本を読んだ三人の少年がイマジネーションの力に突き動かされ、空を目指すようになり、やがて「ロケットの父」と呼ばれる研究者となった。
●アルバート・アインシュタインの言葉
「イマジネーションは知識より大事だ」
知識を身につける事は大事だけれど、その知識を学ぶ原動力となるものこそがイマジネーションなのだと思った。
●宇宙への旅を可能にしたロケットの原点は、ナチスドイツ・ソ連・アメリカが戦争で人の命を奪うために創り出したロケット兵器だった。
●ソ連は人類史上初の人工衛星『スプートニク』を打ち上げ、「地球は青かった」と名セリフを言った初の宇宙飛行士ユーリィ・ガガーリンを宇宙へと送った。
●アメリカのNASAは『アポロ8号』を月軌道へと打ち上げ、『アポロ11号』で人類初の月面着陸を果たした。
●アポロ計画にはおよそ40万人もの人が関わり、技術者や科学者や宇宙飛行士だけではなく、縁の下で支える事務員や建設作業員、運転手など多くの無名のヒーロー達の力で成功を収めた。
ケネディ大統領がNASAに視察に訪れた時、清掃員に「あなたの仕事は?」と聞くと、その彼は誇らしげに「私は人類を月に送るのを手伝っています!」と答えたという。
●有名なCEOが行う華々しいプレゼンテーションではなく、日々技術者が向かう散らかった机こそが、未来が生まれる現場である。
●イマジネーションとは見た事の無いものを想像する力。常識の外に可能性を見出す力である。
今、存在するものしか見えなければ、新技術は決して生まれない。
●人類は太陽系の惑星全てに探査機を送ったが、この銀河系には約1千億の惑星があると言われている。人類はまだ1千億の8しか知らない。
●地球をテニスボールの大きさに縮め、掌に置いたとすると、太陽系の一番遠い惑星・海王星は23kmの距離にあるバスケットボールである。
掌の上のテニスボールと23km先にあるバスケットボールの間に広がる虚空が我々が生きる太陽系空間。
●無知の自覚は無知を克服する出発点。
知らないと言うことを、まずは知る。
●地球外生命探査におけるリスクは、地球から持ち込んだ微生物によって異世界を汚染してしまうリスクである。
地球の生命体が他の天体に持ち込まれ、繁殖してしまったら、現地の生態系を破壊し、発見された生命が地球外生命なのか、地球の生命なのか区別がつかなくなってしまう。
そして、2度と元に戻す事は出来ない。
その逆も然りで、他の天体からの『逆汚染』のリスクもある。
外来種による生態系の破壊などよく耳にするが、宇宙規模でも同じ事が言える事を今まで考えた事がなかった。
●かつて新大陸を発見して乗り込んできた人間が持ち込んだ病原菌が原因でパンデミックが起きたり、逆に新大陸からの新種の病気が流行したりと、未開の地・未知の病原菌に対するリスクを過去の過ちから学び、宇宙条約で『宇宙空間の有害な汚染・地球外物質の導入から生じる地球環境の悪化を避けるように』と定められている。
コロナ禍で未知のウイルスの脅威を目の当たりにしている今だからこそ、未開の地・宇宙には恐ろしいリスクが潜んでいるかもしれないと思ってしまう。
そういう面から先日、『はやぶさ2』が持ち帰ったリュウグウの試料もとても慎重に扱われるのだろう。
●1つの銀河には1千億の惑星があると言われている。
東京ドームを天井までピンポン球でいっぱいにする数は約270億個。
銀河にある惑星の数は東京ドーム4つをいっぱいにするピンポン球の数くらい。
さらに宇宙には1千億の銀河があると言われている。
1千億の1千億倍の世界。
地球はその中のたった1つにすぎない。
●太陽系の境界『ヘリオポーズ』を超え、星間空間に入るボイジャーには「宇宙人への手紙」が積まれている。
地球外知的生命に出会った場合、その文明は我々よりもはるかに多くの事を知っている文明に間違いない。それならば我々のユニークな面を伝えるべきだ、という観点から文字による手紙ではなく、金メッキを施された『ゴールデンレコード』に音楽や様々な音を録音して宇宙へと送った。
「人類のベスト盤」ともいえる27曲が収録されており、バッハ、モーツァルト、ベートーベンなどのクラシックから、ルイ・アームストロングのジャズや様々な世界の民族音楽が収められている。
ビートルズも収録するつもりが、レコード会社の権利がおりず実現しなかったらしい。
音楽だけではなく、55ヶ国語の挨拶や、地球の様々な音(風、雷、虫の鳴き声、クジラの歌、列車や飛行機の騒音等)も収録されている。
まさに『The・地球の音』
宇宙人に音楽を送る。人類の想像力と創造性・言葉や方程式では表現出来ない意識や感情を伝える素晴らしいアイデアだと思う。
●宇宙人が地球の文明に気づくとすると、ラジオやテレビの電波を受信する事による可能性が高いのだという。
東京タワーのような電波塔から全方位に電波は発信され、空を抜け宇宙まで飛んで行く。
人類初のラジオ放送は1906年のクリスマスイヴにアメリカでクリスマスキャロルが放送された。
電波は電磁波の一種なので、光の速さで進む。
2020年現在、その電波は地球から114光年の位置を飛んでいる。
もし地球から100光年の位置に宇宙人が存在して、その放送を聴いてすぐに返事の電波を送ったとしても、まだその星から14光年しか進んでおらず地球に届くまで、あと86年かかる。
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長々と書いたが、この本を読んで思ったのは、結局の所、宇宙の誕生・宇宙人の存在・系外惑星の事や宇宙に関わるほぼ全ては解明されていないのだと思う。
人類が月に立ってからたったの50年で、宇宙の138億年という歴史を知るなど到底無理な話だ。
この本に書かれているほとんどの事が、〜かもしれない・イマジネーションでしかないのだが、そのイマジネーションこそがロマンであり、これからの宇宙探査の鍵なのだろう。
何も分かっておらず、分からないが故にイマジネーションは膨らむ。
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現代社会は、インターネットやテレビやスマホ・SNSの存在で常に何かしらの情報が押し寄せ、人が自ら頭で考えイマジネーションを働かせる事が減っている。
少しの空いた時間にも片手にはスマホを持つ人がとても多い気がする。
著者は、時にはスマホをしまい、夜空を見上げてそこに輝く星や月を見て色々な事を想像して欲しいと締め括っている。
自分はふとした時に、星や月を眺める事が結構あるのだが、これからは更に感慨深くイマジネーションを働かせて空を眺めてみようと思った。 -
長い間、積読状態だったこの本をようやく読み切ることができました。
ロケットを初めて作る話から始まり、月面着陸のプロジェクト、そして宇宙に生命を探す旅…。
こういうテーマの場合、難しいことを難しく描写されていることが多いのですが、
著者はちゃんと素人でも理解できるようにかみ砕いて書いてくれています。
そして、文才もある!
著者の文章が詩的で、思わずのめり込むようなストーリーがあって、夢と希望のある物語になっています。
著者の宇宙に対する深い知見と底知れない好奇心が爆発したとっても素敵な本でした。 -
イマジネーションあふれとても面白かった。数千億の銀河のなかに、きっと何処かに命はあるね。これからの宇宙探査が楽しみだ。
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これまで宇宙物理学の理論のほうばかり読んできたけれど、技術開発は「政治」が大いに関わっているぶん、よけいにドラマチックだ。おまけに、筆者の筆致がドラマチックなので、ぐんぐんと読まされてしまう。
本書を読んでいちばんよかったと思うことは二つある。
一つは、地球とは別の、地球に似た星で、生命が誕生していたと仮定した場合、その誕生がわずかでも遅れていた、あるいは進んでいた場合、その差は膨大な時間の経過を経た末に、途方もない差を生み出すだろうとの知見。を知れたこと。
つまりそれが意味するところは、もし生命誕生が遅れた星では、地球よりもだいぶん文明が遅れている(つまりコンタクト不可能)し、誕生が早かった星においては、確実に人類よりも進んだ文明が築かれているだろうこと。
二つめは、生命の定義というのは、そう簡単ではないということ。なんとなく、動物や植物や微生物やに似ている存在であれば生命を持っていると断定できると思っていたけど、生命の定義は、宇宙規模になると、もっと抽象的になるのだな、ということ。
常識を破るには、妄想も時には有効だなと実感。それが結果的に、想像力として評価される。ほんとに必要なのは、「妄想力」 -
「イマジネーションがあれば何でも実現できる」
と著者は言う。
今の時代、イマジネーションの前に
好奇心に乏しくなっていないか、
自分の楽しいをもっと追求したい。 -
ここまでワクワクして読めた新書は少ない。
現代の宇宙研究が到達している世界。
これまでの軌跡、その先の展望について
見事に読者を取り込みながら語られている。 -
【あってほしい!】
人類の宇宙に対する歴史がよくわかりました。
読んでいておもしろいです。
ホーキング博士が亡くなりましたが。。。
理論物理学は頭で考える世界で、現実を直視する世界には勝ち目がありません。
見えてしまった瞬間、理論的にどうこう言っても現実の勝ちです。
これからどんどんいろいろなものが見えてくると思うと、ワクワクします!!
著者プロフィール
小野雅裕の作品





