支配の構造 国家とメディア――「世論」はいかに操られるか (SB新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797398854

作品紹介・あらすじ

映画『新聞記者』異例の大ヒットで注目!
NHK官邸への忖度、官房長官の質問制限、報道の委縮……。その真相は―ー。
「100分de名著スペシャル~メディア論~」気鋭の論客が徹底議論!
名著(古典)を通じ、メディアの本質に迫った『100 分deメディア論』(NHK Eテレ/2018.03)。
放送後、その踏み込んだ発言で話題を巻き起こし、視聴者から再放送リクエストが殺到。
スタジオ番組としては異例となる「ギャラクシー賞」を受賞しました。
放送から1年。
しかし、日本のメディアはさらに深刻の度を増しています。

「まだ語るべきことがあるのではないか」
いまメディアに起きている「恐ろしいこと」とは?
「メディアについてもっと根本的な場所から問い直さなければ、もはや先は見えない」
「まだまだ語るべき事があるのではないか」
そんな思いから、私たち四人は新たな名著を手に、再び結集しました。
今回は映像ではなく活字媒体。

ポピュリズム、ナショナリズム、メディアと権力、表現の自由……
その原因を深くえぐる、忖度一切なしの大提言です。

感想・レビュー・書評

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  • 堤未果、中島岳志、大澤真幸、高橋源一郎の四人が、それぞれ好きな本を持ち寄って、解説した後、その本をめぐって対談するというものである。その選択は次の四冊。実のところどの本も読んでいない。

    堤未果が ハルバースタム『メディアの権力』
    中島岳志が トクヴィル『アメリカのデモクラシー』
    大澤真幸が ベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』
    高橋源一郎がブラッドベリーの『華氏451度』

    NHKの100分de名著で「メディアと私たち」というテーマで四人がやったフォーマットを本で再現したものらしい。そのときのラインアップは、堤 未果─リップマン『世論』、中島岳志─サイード『イスラム報道』、大澤真幸─山本七平『「空気」の研究』、高橋源一郎─オーウェル『一九八四年』。この四冊の中では、 『「空気」の研究』だけ読んだことがある。
    しかし、こうやって再びやってみようとなるのだから、評判は高かったのだろう。集まった四人の社会課題認識と価値観が反=権力という軸でひとつ共通しているのも大きいだろう。

    ■ハルバースタム『メディアの権力』

    『メディアの権力』は、気骨あるジャーナリストとして数々のスクープや著作で有名なハルバ―スタム。ペンタゴンズ・ペーパーのスクープは明らかに現実的な政治に影響を与えた。今の時代にこういう形でレスペクトされるジャーナリストは稀になった。同じポジションの人を挙げよと言われても難しい。それはジャーナリストおよびジャーナリズム自体が社会に占めるポジションがずいぶんと変わったからなのかもしれない。堤が言うように「アサンジやスノーデンにはそうした後ろ盾がない」。あの頃から何が変わったのかと問うが、しかし、別の
    自分の乏しい知識から敢えて挙げるとすると、日本だと清水潔がジャーナリストとしての気骨とともにひとまずの成功と称賛を受けているとは思うが、もう少し個として顔の立つジャーナリストが何人もいるようにならないとジャーナリズム自体が成立しないのではないのかと思う。

    四人の座談会形式の議論でも取り上げられたが、「運命の人」でテレビドラマ化された西山事件の扱いのペンタゴンズ・ペーパーとのあまりにも違いが、政府に対するメディアの姿勢にも影響を与えたことについて深く考えられるべきだろう。中島が指摘するフーコーのパノプティコンによる「まなざしの内面化」が忖度につながるという指摘も目新しさはないが、メディアと権力の議論の中では欠かすことができない視点である。反=安倍政権という単純な話ではなく、今後のメディアのポジションについては客観的な分析と行動が必要なことは明らかで、『メディアの権力』はそのためにひとつの視点を提供してくれる、ということだろう。

    ■トクヴィル『アメリカのデモクラシー』

    『アメリカのデモクラシー』が選ばれたのは、デモクラシーがそこかしこで今問題になっているからだ。トクヴィルが予測したように「マスメディア」の存在によって多数者の専制が生まれた。その「マスメディア」は大戦後にテレビというものを得ることで新たなポジションと権力を得て、大衆政治と結託した。そのテレビももはや今のままのメディアのポジションを維持しえないことは明らかだ。今もう一度トクヴィルを読むのであれば、ほぼ二世紀前の彼の時代には考えられなかったインターネットを通じて、多数者の専制というものがどのように変質するのか、という新たな問いを考えるにあたって何かを与えてくれるからだろう。中島が言うように、「インターネットというものがはらむ危うさや限界といった現代的な問題もまた、『アメリカのデモクラシー』を読むことで逆照射」されてくるからだ。

    「逆照射」とまで言うことが適切なのかどうかについては、その中身を読んでいないので自分で評価することはできない。しかし、座談会で盛り上がった言論の自由に関する次のトクヴィルの言葉が、彼がどれほど物事の本質に即して考えていたかの証左のように思える。それは現代に関する分析のようでもあり、また彼の後一世紀ほど後に起こった全体主義の出来事に関する警鐘であり予言であるようにも思える。

    「この自由(※言論の自由)がある国民は、確信に基づき、かつ誇りをもって自分の意見に執着する。彼らが自分の意見を愛するのは、それが正しく思われるからであり、また自分の選んだ意見だからでもある。彼らは正しいものとしてそれにこだわるだけでなく、自分たちに固有のものとしてその意見に固執するのである」

    ■ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』

    『想像の共同体』はベネディクト・アンダーソンの代表作。ナショナリズムの歴史的な起源を中心テーマにしたこの本は、グローバルに情報と経済がつながったこの時代にまた読み返されるべき本のひとつであるだろう。そもそもナショナリズムを生み出す起点となるネーション(国民・民族)は近代の産物であると指摘し、それがどのように生まれてきたのかを理論的に説明したのが『想像の共同体』である。といいながら、読んでいないのは恥ずかしい。それはこの本がまだkindle化されていないからというのが理由のひとつでもあるのだが、出版社は早くkindle化を実現してもらいたい。たぶん、その価値がある本であるはずだ(読んでないけど)。

    四人で「メディア」をテーマにした本を選ぶということだったが、大澤がこの本を選んだのはメディアがナショナリズムの形成に深くかかわったことがこの本の中で詳しく説明されているからであり、メディアとナショナリズムについて、いまいちどその関係を理論的に整理しておくことが今必要だと考えるからだろう。

    新聞や小説がネーションの形成にかかわったという点は重要で、出版技術と資本主義が結びつくことで自然と国語による一体化が進められてきた、と考えるのは、高橋さんはじめこのメンバーには食いつきがよいだろうと大澤が考えたことも想像に難くない。座談会で当然のごとく高橋さんが新聞連載小説家であった漱石を持ち出して、日本近代文学の起源について語り出すのは、しかりといったところだろう。「実は、こういう話を『日本文学盛衰史』という小説で書こうと思っていたときに、『想像の共同体』を読んでみたら全部アンダーソンに先に書かれていて、読まなきゃよかったと思った」と嬉しそうに語る。しかし、「ネーションステイトの起源には近代小説がある」という指摘はまさに柄谷が日本の近代小説に即して語ったことだが、ここに柄谷に心酔しているであろう大澤が柄谷を持ち出さないのが不思議ではある。何か忖度しているのだろうか。

    ■ブラッドベリー『華氏451度』

    高橋源一郎は小説家らしくブラッドベリの『華氏451度』を選んだ。「本を燃やす」のは誰か、というサブタイトルは、本を燃やすのはわれわれであり、われわれが自ら進んでそうするのであり、誰かから強制されてそうするのではないということをその読後に感じさせるための仕掛けだという。どこであっても忖度すべきと感じる空気があるだろうし、その空気を作るのもわれわれであることを忘れてはいけない。
    メディアは本来そこに「なぜ」を突き付けるべき存在であるのだが、われわれの側に立ち、われわれの方向を強化することに回る。メディアの本質と本分とは何か、それを考えさせる議論。そう高橋さんが語ると、ディストピア小説として『1984』よりも『華氏451度』の方が奥が深く、現代の社会の状況をより本質的に示しているように思える。読んでないけど。どうやらこの本はkindle化もされているようなので、ひとまずAmazonで購入。

    ■まとめ

    『支配の構造』というタイトルについては、誰が決めたのだろうか?おそらくはこの本のテーマを位置付けるのであれば、政府の横暴てあるよりも。メディアの不作為であるはずだ。それは、最後に森達也が二度も言及されることから、おおよそ確信をもってそう言うことができる。『支配の構造』というのはイデオロギーの匂いだけを濃くしてしまい、何か本質を表現していないように思えた。

    議論は楽しかった。集められた本もそれぞれとても魅力的だ。集められたメンバーもそれぞれ素晴らしい。それでも、何か引っかかるものがある。まず、彼らが対峙しようとするものに対して、彼らの言葉な何らかの影響を持ちそうに思われないこと。そして、そこには彼らが決して多数にならないこと。彼らの意見が反対されているからではない。そうであればまだよい。彼らの言葉がどこにも届かないことがより深い問題である。メディアを考える場合、そのことを考えざるを得ない。どこかしら自分事化になっていない、という印象がぬぐえないのだ。そういう自分も。

  •  なかなか骨太の内容の本なんだが、とても読みやすい。
     4名の論客が、マスコミとメディアと世論の関係について、実に刺激的に論理を進めてくれている。しかも、その論理を進める際に引用しているのが、ちょいと昔の本なのだから、おもしろい。
    ・ハルバースタム著『メディアの権力』
    ・トクヴィル著『アメリカのデモクラシー』
    ・ベネディクト・アンダーソン著『想像の共同体』
    ・ブラッドベリ『華氏451』
     それぞれの方の文章の後には、その内容に関する座談会の様子も収録されていて、これもまた私たちの理解を助けてくれる。
     ここにあげられている本も読みたくなったなあ。

     まったく本書の内容の紹介にはなっていないな。
     

  • 推薦者による解説から4人の対談形式で本を色々な切り口で語るのは古典のブックガイドとしては新鮮で面白かった。

  • ●ハルバースタム メディアの権力
    ●ペンタゴンペーパーズは、米国史上唯一の「メディアが終わらせた戦争」でした。この世界にはメディアが始めた戦争はたくさんあるけれど、終わらせた戦争は、一体いくつありますか?
    ●アメリカ人の事実を追及しようとする姿勢のレベルが違う。ジャーナリストの情熱!

  • 歴史的名著を読み込んで現代の大衆やメディアを斬る構成がとてもよかった。歴史的名著を読み込むことで人間の精神の深淵に迫ることができるということが大変勉強になった。安倍一強体制のもとで安倍忖度全体主義のムードが日本全体を覆うなかでも、メディアに対して決して希望を失ってはいけない。

  • メディア支配は進んでいる。安倍は危険。NHKは対抗できるか? 最近の10代は活字を読まないらしく今後も期待できない。
    メディアが死んだ今、行くところまで行って破滅しないと復活は無理だ。処方箋は?

  • 東2法経図・6F開架:070.1A/Ts94s//K

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著者プロフィール

国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。 ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。 米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、 現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。 「アメリカ弱者革命」で日本ジャーナリスト会議黑田清賞。 2008年「ルポ貧困大国アメリカ」(3部作)で中央公論新書大賞。 2009年に同著で日本エッセイストクラブ賞。 2010年「岩波書店100周年?読者が選ぶ岩波本」で著書二冊がトップ10入り。 多数の著書は海外でも翻訳されている。 「沈みゆく大国アメリカ」「政府は必ず嘘をつく」「社会の真実のみつけ方」「日本が売られる」など著書多数。

「2019年 『支配の構造』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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