正義の正体

  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797671742

感想・レビュー・書評

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  • 「ヤメ検』弁護士の田中森一氏と、佐藤優氏による19時間に及ぶ対談で話した内容を活字化したものです。2008年にこの本は出版されましたが、二人が指摘してきたような世の中になりつつあることを危惧します。

    本書は『闇社会の守護神』の異名を取った「ヤメ検」弁護士の田中森一氏と鈴木宗男バッシングに連座して『小菅ヒルズ』に512泊513日宿泊し現在は作家として活躍されている佐藤優氏が田中氏が19時間に渡って対談で話したことを活字・書籍化されたものでございます。いやはや…。この本は危険です。本当に読んでいて危険なものだと感じてしまいました。

    この本が出版されたのは2008年のことなんですけれど、それから時がたち、彼らの指摘したことが悪い意味で現実になりつつあるということがわかって、なんともいえない気持ちになりました。語られたものをざっとかいつまんで書くと国策捜査とは。外務省と検察庁。お互いの組織の持つ『病理』について。拘置所。獄中暮らしで見聞きしたもの、または自分が体験したこと。日本とロシアの闇社会の違い。お互いの勉強方法から、部下に対する接し方、教育方法にいたるまで、縦横無尽に語られていて、彼らの持つ経験の稀有さや、たどってきた人生の重み、世の中が必ずしも『清い部分』だけで構成されていない、ということを改めてうかがい知ることができて、非常によい読書体験でありました。

    田中氏がバブル時代に付き合ってきた『闇紳士』たちの度胆を抜くようなエピソードや、佐藤氏の語る拘置所暮らしの経験。または検察庁とインテリジェンス業務にかかわる人間の情報収集の違いなどが、つぶさに語られていました。田中氏は上告が棄却されてこの本が出た頃に『お勤め』に入られたそうです。しかし、彼のような存在は『白川の、清き流れに…』というような世の中になりつつある中で、貴重な存在であることは疑いもないと思っていますので、出所後も世のためヒトのためにその力を尽くしていただけるとうれしく思っています。

  • 田中森一氏については、その事件も含めてよくは知らない。ただ以前、『悪党の金言』の中に佐藤優、内田樹といった当時から今に至るまでよく読む著者と並んで出ていたので、記憶していたくらい。本書は佐藤氏との対談。面白かったね。

    エース級の検事であったことと、闇社会の弁護士であったこと。正反対であるようにみえるかもしれないけど、田中氏の中では矛盾しない。わかりにくいかもしれないけど、とおっしゃるが、読んでいくと、あぁ、そういうことなのか、と腑に落ちるものはあった。

    2008年の発行だから、もう10年以上前に出た本だ。佐藤氏の最近の本よりも、面白かったんじゃないだろうか。なんか『国家の罠』を読んだ当時の興奮に近かった気がする。

    佐藤氏については今でも月一冊くらいは読んでいるけど、田中氏についてはよく知らない。検索してみたら、もう亡くなってたことにびっくり。

    なんというか、

    つわものどもがゆめのあと

    といったもの悲しさを感じだ。人はいずれ死ぬというのは、わかっているけどね。

  • オフィス樋口Booksの記事と重複しています。記事のアドレスは次の通りです。
    http://books-officehiguchi.com/archives/4011886.html

    元東京地検特捜部の検事田中森一氏と元外交官佐藤優氏との対談である。二人の対談を通して、国策捜査の作られ方、拘置所暮らしの体験談、検察と外交官の情報収集の違いについて紹介されている。

    この本の後半の第6章では、田中氏と佐藤氏の勉強法が紹介されている。国家試験の受験を考えている人には参考になるかもしれない。また、公務員試験に関することでは、使える人間、使えない人間が語られているので、公務員を目指す人には参考になるかもしれない。

  • 国策捜査とは何か、検察とは、国家における『正義』の捉え方とは。
    元検察官・田中森一氏と佐藤優氏の対談。

  • 国策捜査に踊らされた二人の対談。雑誌の企画みたいだけどいい人選だと思うし、出てくるネタで出版できないような話も多かったと思うなかここまで出せただけでも評価できるのではないでしょうか。個人的には刑務所というか拘置所の生々しい話であったり、小渕首相が意外とすごいという話が興味深いものでしたが、こういうのを参考にするような人生にしないように、ですね。まずは。

  • 一番印象に残ったのは、検察の考え方を田中さんが佐藤さん相手に語る第1章。
    国策捜査と国策不捜査から始まって、起訴されたら勝てない理由、裁判官の考査基準に「検事から控訴されないこと」がある等が書かれている。

    また、防衛庁からみの捜査で、GEを巻き込む恐れがあり、それは米国のFCPA(外国公務員腐敗防止法)の適用を誘発してしまう恐れがあつたため捜査がうやむやになった[逆ロッキード]という指摘は重要。

  • この本を読みながら、「正義とは何だろう」って考えさせられた。
    田中氏は「国の体制を守ること、組織を守ることこそが正義と考える上の人たち」と述べていますが、怖いなと正直思いました。
    ただ、彼らの言う正義がそういうものであるのならば、権力者たちのあの振る舞いが、哀しいかな、納得できるものでもあります。

    この本もそうですし、「国家の罠」もそうですが、日本という国には人権なんて存在しないのではないかと、読んでいてそう思いました。

    衝撃だった言葉・・・
    田中氏:
    結局、調書というのはいかようにも作れてしまうもの。それに苦分けて裁判官には「検事から控訴されないのが、いい判事」という縛りもある。そういったものがすべて合わさって、刑事事件の99.9%が有罪という数字が弾き出される。国策捜査とか検察の捜査というものは往々にして冤罪事件が多いということは明白だけど、真実を裁判で解き明かそうなどというのはしょせん幻想にすぎないといこと。

  • 「反転」を読んでから読んだほうが良かったかな。
    図書館にあるかなぁ。

  • 所謂国策捜査による検察の恣意的な起訴により有罪となり、長期間獄中生活を強いられたという共通境遇を有するお二人の19時間に及ぶ対話がまとめられた本である。

    序章の『「反転」が暴露した「正義の正体」』に始まり、六章にわたり、項目ごとに一般人が日頃まったく経験しない異次元の話が興味深く対談されている。

    対談の中身を総括すると、どちらも機関としての国家が果たすべき機能を機関員の一員として十分認識し、すばらしい業績を発揮されたと思う。

    しかしながら、価値観の相違と言うべきか、危険な「場」に居合わせたくない官僚からは、まこと煙たがられていたのだろう。

    結果として、不本意な獄中生活となってしまった。

    普通の人間ならば、精神に異常をきたすところだが、強靭な精神、ぶれない正義感を持って耐え、獄中生活を奇禍として、有意義な時間の使い方の展開に転換してしまうという能力。

    とにかく、面白い、あっという間に読破できるすばらしい対談本である。

  • 面白かったなあ。それにしても語学にはセンスが必要とか1日に15時間は勉強したとかやはり自分とは遠いものも感じさせられた。

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著者プロフィール

田中森一(たなか・もりかず)

 1943年、長崎県に生まれる。岡山大学法文学部在学中に司法試験に合格。1971年、検事任官。大阪地検特捜部などを経たあと、東京地検特捜部で、撚糸工連汚職、平和相互銀行不正融資事件、三菱重工CB事件などを担当。その辣腕ぶりが「伝説」となり、名声を博す。1987年、弁護士に転身。2000年、石橋産業事件をめぐる詐欺容疑で東京地検に逮捕、起訴され、無罪を主張するも実刑が確定。4年8ヵ月の獄中生活を経て、2012年11月に出所。
 著書には30万部のベストセラーになった『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』、共著に『検察を支配する「悪魔」』などがある。

「2013年 『塀のなかで悟った論語 現代人を癒す24の答え』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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