沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史

著者 :
  • 集英社インターナショナル
3.80
  • (29)
  • (42)
  • (34)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 357
感想 : 37
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797671858

作品紹介・あらすじ

月刊「PLAYBOY」誌上に長期連載。沖縄の戦後六十余年を作ってきた群雄たちを活写して、戦後日本を逆照射する衝撃の大型ルポルタージュ。沖縄列島を一個の肉体と見立て、その肉体が戦後に演じ、あるいは演じさせられた悲劇と喜劇、まばゆい光と濃厚な影があやなす南島奇譚ともいうべきドキュメントである。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 上巻と下巻に分かれる大作。ただ、個人的に読むべきところがあるのは、上巻の前半部分。後半は聞き書き感が強すぎた

  • 奄美大島から戦後、生きるために沖縄に渡った人の話を聴いたことがある。あまり表だって語られることはないが、沖縄では奄美差別があったという。この本に登場する清真島のことを知ったのは、奄美大島に縁のある人の話題から。彼とシマ唄の掛け合いをした翁は、昨年92才で旅立った。いろんな史実と、本人を知る人の話を照らし合わせながら、歴史を紐解いていく時間が貴重な経験となった。

  • 圧巻の650ページ。やっと読み終えた。
    沖縄を利用してきたアメリカ、日本、そして沖縄自身。考えさせられる巻末。かなり読み応えあった。

  • 差別されたものは、必ず差別する。

    他人にされたことを他人にしてしまうのは人間の性なのかもしれないが、その結晶が琉球空手とエイサーであるなら、苦難が無い文化には深みも無いということなのかもしれない。

  • 戦後沖縄を躍動した人々の群像を、丁寧な聞き書きをもとに書き起こした良書。全編を貫く筋立てがあるわけではなく、多面的な視点でいままで光の当たらなかった部分に明らかにしていく。

    「返還される見込みのない軍用地」が高値で取引され、その借地権で国から莫大な補償を受けている人々もいて…というくだりに怒りを覚える。不労所得者と日本政府、そしてアメリカに。既得権益を持った資本家が米軍に依存した経済からの脱却を渋って地域が分断される。土地所有って、やっぱりあらゆる諸悪の根源なんじゃないか、と思ったり。

    一方で、低迷する沖縄経済の起爆剤としてカジノを建設する、という話は結構古くからの既定路線なんですね。知らなかったけれど、沖縄は戦後ずっとピカレスク・ロマンを地で行く武闘派たちが血を血で洗った土地柄だそうで、案外受け入れられているのかもしれないけれど…うーん。

  •  これこそまさしく、だれにも書かれたくなかった物語だったろう。
     毎度のことながら、この著者の自らの足で書くルポルタージュには脱帽するのみ。

  • ジャーナリズムの本質を見た気がする。多数の人に直接取材して、それを線で結びつけてストーリーにする。すごいね。
    伝聞は得てして誇張も混じっているだろうけれども、戦後沖縄のリアルを知るためには一度は読むべき本。沖縄のイメージとはかけはなれた、ヤクザや闇市場など裏の世界が生々しく描かれている。ぶっちゃけ、沖縄で生まれ育ったぐらいじゃまったく知らない世界だった。

    「琉球処分」は教科書として読むべき本だと思ったが、こちらは沖縄を考える社会人としての必読書だろう。
    琉球王国→琉球処分→沖縄戦→戦後史、と考えると、琉球王国についての史実を描いた良書に会えばそれなりに一貫して理解することになるだろうか。

    もうひとつ考えたのは、自分が偉くなったとして、はたして佐野さんに興味を持ってもらえるような人物jになれるだろうかということ。もちろんなる必要はないし、生い立ちは今更変えられないのではあるが、人間的に魅力的というのは一体どういうことなのかは考えさせられた。

  • 沖縄の戦後史について書かれた本は少ない。与那国での密貿易時代を扱った傑作「夏子」はあるものの、沖縄戦について、何十冊と書かれていることと比べるとごくわずかである。

    本書はそういう意味では貴重な記録だろう。月刊誌への連載を元にしており、取材を途中であきらめた感じのところもあるが、面白い。特に沖縄ヤクザのあたりは白眉だろう。芸能以降は物足りない。

  • こんど沖縄に旅行する。沖縄は初めてなので楽しみ。なので事前準備で本を読んでおく。

    面白いことは面白いし、これだけのルポタージュが読めるのは実にありがたい。
    十分面白かったのだけど、それだけに注文も一つ。それはヤクザの書き方について。
    ヤクザを、そういった存在を成立させる構造として捉える方法と、エモーショナルに書く方法がある。後者は実話系になりやすい。著者は前者で書こうとしているのだけど、後者に流されているように思う。もったいない。

    構造として捉えきれていないから比較ができない。
    比較の不足が、この本で最も不満なところだった。
    ヤクザは「戦後社会」の裏面史なのだろうけど、例えば表社会における役割や、住民の受容は、本土と同じなのか違うのか。例えば宮崎県と沖縄県は構造が違うのか。こういうのが「逆照射」ということになると思う。

    それはすごく読んでみたい。知りたい。
    そしてそれは、日本の戦後も、著者の言うとおり満州も、たぶん韓国や中国やベトナムやアメリカも照射するだろう。
    「芸能界とかどうでもいいからさ! そんなとこ書いている場合じゃないだろ!」というのが感想でした。

  • 切り口。語り口が好き。

全37件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1947年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。編集者、業界紙勤務を経てノンフィクション作家となる。1997年、民俗学者宮本常一と渋沢敬三の生涯を描いた『旅する巨人』(文藝春秋)で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年、『甘粕正彦乱心の曠野』(新潮社)で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。

「2014年 『津波と原発』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐野眞一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×