争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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レビュー : 69
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797672015

作品紹介・あらすじ

一通の手紙が、我那覇のもとに届いた…。彼は、なぜ立ち上がったのか?冤罪事件の真実が、いま明かされる。

感想・レビュー・書評

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  • 元サッカー日本代表のFW我那覇和樹のドーピング冤罪についてのノンフィクションドキュメンタリー。

    「脱稿して改めて思う。我那覇はJリーグと闘ったのではない。Jリーグを救ったのである」

    後書きのこの文章に鳥肌が立った。

    JFAが日本サッカー史に残した「汚点」を、僕らサポーターは正しく理解しておくべきだと思う。サッカーを愛する人ならば必読。

  • 実は我那覇選手とは、自分が実業団選手時代同じ寮だった。(当時は会社のサッカー部からの名残で、プロ選手だったにもかかわらず、自分のような一般社員と一緒に、会社のスポーツ寮に彼らは住んでいた)なので、彼が日本代表に選出されたことは非常にうれしかった。

    ドーピング疑惑の報道やその後潔白が証明された事は知っていたが原因は明らかな誤報による、誤った判断、制裁だったことは初めて知った。
    なので、彼がこのような冤罪で翻弄されて、いた事を知り驚いた。

    なおドーピングの方法やそれを防ぐ手だてなど、非常に高度化した手法で
    細かく規定されている事や、全体を統括する世界的な組織がある事などはスポーツがいかに大きなマーケットであるかの証左でもある事が分かった。

    また、機構側のドクターが本書では主要の悪役として描かれている。
    このドクターの判定により骨折の手術に許可を得るために、手術が開始できなかったり、サッカー以外のスポーツの現場が混乱するエピソードが幾つかあった。
    これを読んで、現在業務で監査の知識を学んだものとして、現場の実情とあまりに乖離した判断をしてしまう事で現場が本来の業務が出来ない様な混乱を生み出す判断をしない様に、しなくてはいけないと感じた。

  • 体調不良でごく普通の治療を受けたはずなのに、スポーツ紙の誤報と直後のドーピング認定で、重い処分を受けた我那覇和樹選手(当時川崎フロンターレ所属)。彼のドーピング取り消しまでの動きを追ったノンフィクション。この本を読みたいのは、「我那覇、かわいそう!Jリーグと日本サッカー協会、カスだな!」とただ悪態をつきたいわけではなくて、誤った処分を公式にされたのち、それを個人の力で撤回させた、そのプロセスに興味があるから。

    この騒動のもとは、つまるところ、当時のJリーグのドーピング対策の最高責任者が、治療に関するルールの改正をチームドクター達に知らせる際にあいまいにしておいたことと、そこを突っ込まれても持論を曲げず、ごり押ししたことに尽きる。何か先入観があっての処分なのかもしれないが、こういう処分には必ず、処分された側に弁明の機会が与えられるはずだし、それが機能していれば、ここまでこじれる話ではなかったはず。なのに事態はそうは進まず、バカみたいにこじれていく。アタマの悪さとプライドが結合すると、これほど厄介なものはないと思う。

    正しくないルール(これには解釈の誤りとか、運用がまずいとか、意図がずるいとかいろいろあるけど、そのあたりをひっくるめて)に異議を唱え、立ち向かっていくことはとても難しい。正直な話、サッカー選手は、試合に直接関係があること以外のルールを読むのはしんどいだろうし、Jリーガーの平均引退年齢が26歳前後であることを考えれば、1シーズンでも棒に振るのは、時間がもったいなすぎる。でも納得はいかない。「出るとこ出てもいいんだよ」と示された仲裁機構は英語ベースでしかも高額の自腹必至。「はいはい、わかりました」で済ませられるものなら、済ませたいことかもしれない。でも、そこをそれで済ませなかったことは、我那覇選手の勇気以外のなにものでもない。彼を囲んだドクター、弁護士のプロ意識と、サポーターのみなさんの熱意にはもうアタマが下がるし、当時の選手会正副会長だった藤田・川島両選手のふるまいが素晴らしすぎて、涙腺のかたい私も泣きそうに…。・゚・(*ノД`*)・゚・。

    J側がなかなかに往生際が悪い(笑)ので、随所で引用されるWADA(国際アンチ・ドーピング機構)の規程を、「自分の英文読解力、おかしいのか?」と不安になりながら読んだ部分もありました。それにしても、まずい訳を作り、そのまま盾にとって抗弁するという幼稚なテクニックを知ったのは収穫かも。「おぬしもワルよのう」の言葉と苦笑いしかありませんが。

    最後は周知の事実のとおりで、『プロジェクトX』的なエキサイティングな内容にイッキ読み!でしたが、もう少しJリーグ側の取材が取れてもいいような気がした(彼らは話したくないだろうけど、明晰な反論があれば受け入れられると思うんだが)し、サブタイトルはなくてもいいんじゃない?と思ったので、☆ひとつ引きました。

    • ヨナキウサギさん
      我那覇選手のあれこれを(メディア情報としては)知っていたはずなのに、ここまで硬派の物語であったということに、恥ずかしながら無自覚でいました。...
      我那覇選手のあれこれを(メディア情報としては)知っていたはずなのに、ここまで硬派の物語であったということに、恥ずかしながら無自覚でいました。「ガナハ」って九州人にしてみれば(少なくとも私には)親しい名のはずで、もっとちゃんとレポートを追うべきであったと、Pipoさんのご感想に、背中を押されました。
      読みます、これ。
      私は涙腺の硬軟がちょっとオカしいので、どこで号泣するか、わかりませんが。
      2012/03/09
    • Pipo@ひねもす縁側さん
      ヨナキウサギさん:

      我那覇選手はこの騒動の最中に、私の地元のチームに移籍してきたんですね。心身共に大変だったろうし、チームもいつも弱く...
      ヨナキウサギさん:

      我那覇選手はこの騒動の最中に、私の地元のチームに移籍してきたんですね。心身共に大変だったろうし、チームもいつも弱くて、活躍できなかったんですけど。

      彼がCASに申立するのを知ったとき、「準備費用と時間、どうすんだ?」と思ってぞっとした記憶はあるのですが、内情がここまでのものだったとは・・・その末に彼の勝ち取ったCAS裁定は世界のよき判例となっているのですが、それは彼の絶頂期ともいえる数年間のキャリアの犠牲の上にあるので、なんとも言い難い気分です。

      判官びいきを感じる点もいくつかあるように重いますが、読んで損はないと思います。お時間があれば、ぜひ。
      2012/03/09
  • 当時、さしてサッカーに感心が無かった自分はこの件に関してスポーツ新聞の見出し程度の知識(=フロンターレの我那覇がニンニク注射とかでドーピングに引っかかった...らしい)しかなかった。その裏で、我那覇が私財を投げ打って自身の無実を証明するためCASに提訴していた...。その、舞台裏の戦いが綿密な取材を基に克明に記されている。

    「権力を持っている人の責任」とは何かを改めて考えさせられた。保身という魔力に取り付かれずに権力の座に座り続けられる人はごく限られた人だけなのかもしれない。

  • 泣いた。
    我那覇選手が戦って、そして勝ったから、それだけじゃない。
    途方もない、何より理不尽な戦いに対して、たくさんの人が立ち上がった。立ち上がったすべての人が、「自分のため」でなく、「誰か」のため」、「サッカー界、スポーツ界」のために。
    ドクター、選手会、政治家、本人、先輩、サポーター。遠回りはしたが、最高の結果を得た、奇跡と呼んでいい物語。
    これからも様々な問題は起こるだろう。でも、サッカー界はもう大丈夫だ。
    こんな人たちがいるんだから。

  • 2007年、スポーツ新聞の誤報に端を発した川崎フロンターレの我那覇和樹が被ったドーピング冤罪。本来選手を守るべき組織が、自らのミスを認めることなく面子を守るためだけに、正当な医療行為をしたチームドクターと選手をドーピングだと断定、処分を下す。

    およそサッカーを愛する心の欠片もない上、医師としての資質も問われる一人物に全てが委ねられる権力構造の矛盾。

    権力が対面を保つ為に詭弁を弄して罪状をでっち上げていく様は、佐藤優氏の「国家の罠」を想起させ、背筋が凍る。

    「争うは本意ならねど」、真実を知る為に、こんな経験を他の選手にさせない為に、ひとり立ち上がり数千万とも言われる高額の費用をかけ、スポーツ仲裁機関に訴えた我那覇を、Jリーグ全チームドクター、選手会、サポーター、地元沖縄の有志らサッカーを愛する人達が支え、結果潔白を勝ち取ったのが救いである。

    「我那覇はJリーグと闘ったのではない。Jリーグを救ったのである」
    あとがきでの著者の言葉が全てを物語る。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「権力が対面を保つ為に詭弁を弄して」
      今の日本をそのまま表しているなぁ、、、
      「権力が対面を保つ為に詭弁を弄して」
      今の日本をそのまま表しているなぁ、、、
      2013/06/27
  • この一冊が一つの物語として完成されている。ドーピング冤罪事件を通じてサッカー協会の体質を明らかにし、筆者の怒りと、我那覇選手が争うことを望まないという思いとのバランスを上手くとりながら紡がれた名作

  • 新聞に「我那覇ドーピング」の文字を見つけたときは本当に驚いたけど、それがこのようなことだったとは。
    選手生命は長くはないのだから、Jリーグにもクラブにもしっかりした組織運営をお願いしたいです。

  • 川崎ファンとしては、我那覇選手がこの騒動でパフォーマンスにも影響したであろうことが残念であった。経緯を知れば知るほどかわいそうだなと思うと同時に、我那覇選手の芯の強さに感銘を受けた。

  • Jリーグ川崎フロンターレに所属した我那覇選手のドーピング問題について取り上げた意欲作。
    巨大な組織が陥った構造的な問題点の指摘と、そんな中でも良心と正義感によって行動する達を、丹念な取材によって取り上げている。

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著者プロフィール

1962年愛知県生まれ。中央大学卒。ノンフィクションライター。東欧やアジアの民族問題を中心に取材、執筆活動を続ける。おもな著書に『オシムの言葉』(集英社文庫)、『蹴る群れ』(集英社文庫)、『徳は孤ならず』(集英社)、共著に『さらば、ヘイト本!』(ころから)など。

「2017年 『無冠、されど至強』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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