日本人はなぜ存在するか

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  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797672596

作品紹介・あらすじ

『中国化する日本』で話題の著者による全く新しい日本人論。日本史、国籍、民族などに根拠はあるのか? 社会学、哲学、文化人類学など様々な学問的アプローチを駆使した大学の人気講義を活字化!

感想・レビュー・書評

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  •  教養の講義を豪腕で纏めたもの。ギデンズのreflexivityを軸に社会科学(と人文)のトピックを整理している。
     ひょっとしたら与那覇さんの最高傑作かも、と私は思っている。
     なお2018年に文庫化。


    【目次】
    目次・凡例 [002-005]

    introduction グローバル時代の「教養」とはなにか 007

    Part1 入門編 日本人論を考える
    第1章 「日本人」は存在するか 014
    1.1 文脈によって変わる「日本人」の定義 014
    1.2 見る人がいなくても「夕焼けは赤い」か?――哲学で考える 016
    1.3 「日本人は集団主義的」は正しいか?――心理学で考える 019
    1.4 実験データを読むときの注意点 021
    1.5 日本社会を「集団主義的」にさせているもの 023
    1.6 世界恐慌・太平洋戦争・人種差別をもたらしたメカニズム 025
    1.7 なぜ百円玉より、一万円札の紙切れに価値があるのか 029
    1.8 私たちはどんな時代に生きているのか――社会学で考える 031

    第2章 「日本史」はなぜ間違えるか 034
    2.1 織田信長は「歴史的な人物」か? 034
    2.2 熟達とは「物語」を作れるようになるのこと 036
    2.3 昭和三十年代はなぜ輝いて見えるのか? 037
    2.4 自殺も犯罪も今日より悲惨だった『三丁目の夕日』の時代 040
    2.5 「もはや戦後ではない」の本当の意味 043
    2.6 戦後の「民主化」で選挙権を失った人たち――メタヒストリーで考える 047

    第3章 「日本国籍」に根拠はあるか 052
    3.1 「最初に日本国籍を得た人」の親の国籍は? 052
    3.2 「家」で国籍を決めたユニークなルール 055
    3.3 対外的には「日本人」、対内的には「外国人」 060
    3.4 血統主義の「血統」とは、どの「血」のことを指しているのか? 064
    3.5 「血のつながり」が指す範囲も文化によって違う――民俗学で考える 067
    3.6 「死んだ人が子供を作れる」ルールとは――文化人類学で考える 069
    3.7 私たちが生きるのはすべて、社会的な比喩としての秩序 071

    第4章 「日本民族」とは誰のことか 074
    4.1 なぜ「アイヌ民族」とは言い、「日本民族」とは言わないのか 074
    4.2 日本と中国のあいだで葛藤した沖縄の人々 077
    4.3 ウルトラマンも、正体を隠しながら生きる「マイノリティ」 080
    4.4 ウルトラシリーズの歩みは、いつも沖縄とともに――地域研究で考える 083
    4.5 ふたつの再帰性を組み合わせるシステム 087

    第5章 「日本文化」は日本風か 090
    5.1 「カルチャー」は「古くからある伝統」ではなかった 090
    5.2 『蛍の光』で愛国心を歌った国――カルチュラル・スタディーズで考える 092
    5.3 讃美歌のアレンジで作られた日本人の心の『故郷』 095
    5.4 最初から「純邦楽」ではなかった『春の海』 097
    5.5 タカラヅカの挫折にみる「日本文化」の転換 099
    5.6 「文化になる」のはいいことか? 101

    Part2 発展編 日本人論で考える
    第6章 「世界」は日本をどう見てきたか 106
    6.1 「イメージ」は現実を支配する――比較文学で考える 106
    6.2 「日本人」はハリウッドでどう描かれてきたか? 109
    6.3 日本人女性と結婚した米兵が、差別された時代 113
    6.4 「日本人論が好きなこと」が日本人の個性――比較文化で考える 116

    第7章 「ジャパニメーション」は鳥獣戯画か 120
    7.1 のび太やしんちゃんが世界を救う国 120
    7.2 中世ヨーロッパに「子供」はいなかった? 123
    7.3 手塚治虫が泣いた戦時国策アニメ――新歴史主義で考える 126
    7.4 日本のアニメは「中国起源」?――ポストコロニアリズムで考える 130
    7.5 「世界で通用する」という場合の「世界」とは? 133

    第8章 「物語」を信じられるか 138
    8.1 「日本史」がなくなれば、日本人もいなくなる!?―― ナラトロジーで考える 138
    8.2 奈良・京都ばかりの古代史がなぜ「日本史」になるのか 142
    8.3 もっとも強力な「物語」としての戦争体験 145
    8.4 ゴジラシリーズから、50年かけて失われたもの 148
    8.5 「大きな物語」が終わり、「すべての再帰性」が前面に出る時代 151

    第9章 「人間」の範囲はどこまでか 154
    9.1 再帰的であるということは、「価値がない」ことを意味しない 154
    9.2 「人類共同体」を揺るがすサイボーグたち 156
    9.3 「神は再帰的だ」と喝破したニーチェ ――ポストモダニズムで考える 159
    9.4 「人間の終焉」を予言したフーコー 161
    9.5 なにが「人間らしい」行為なのかを、決められなくなった私たち 163
    9.6 「選ばなければならない」という新しい不自由 166

    第10章 「正義」は定義できるか 170
    10.1 意識しなくても私たちはなにかを「選択」している 170
    10.2 近代西洋が選んだ「自己決定」と「功利主義」――思想史で考える 172
    10.3 臓器移植のための「公正な殺人」はありえるか?――倫理学で考える 174
    10.4 東洋思想の答えは「もうひとつの選択肢」になるのか 176
    10.5 最後まで、再帰的であり続けながら生きること 180

    further readings もっと学びたい人のために[参考文献] [185-189]

  • 與那覇氏の本は相変わらず面白い。自分達が再帰的に物事を作り出す存在であることを認識することの重要性を感じる。盲目的に信じられている真実が自分達の認識が生み出した「真実」であることが多い、ということだ。

  • 背ラベル:210.04-ヨ

  • 響いたフレーズ
    →人間であるからこそ私たちはどう生きるかと考え、一度その疑問にめざめると、それを心から拭い去ることができなくなる
    それは決して楽しいことだとは言えません。

    学んだ言葉
    →再帰的とは
    もう一度戻る性質のこと。

    私には内容が難しかったです、はい。

  • みんながある行為を「昔からの伝統だ」と認識することによって、それが本当に伝統として継承される。そのように、現状を固定するかたちでのみ催奇性が機能している状態を、社会学では「前近代」とみなします。(中略)ところが近代社会では、再帰性が社会を変化させる方向に作用するようになりました。たとえば、みんなが「去年はこれが流行ったが、今年はあれが流行るに違いない」と考えることで、毎年新しい流行を生み出し、それによって経済を回転させてゆくのが資本主義のしくみです。(p.32)

     あるものを「どこそこの文化だ」と呼ぶのは、それを文化というラベルによって「有標化(marked)」する営為なのですね。たとえば西洋人が「畳は日本の文化だ」というときには、「フローリングの方が『普通』だけど」という価値基準がセットになっている。この場合、あまりにも標準的(だとみなされる)なのでむしろ文化とは呼ばれない、フローリング=西洋風の暮らしの方が「無標(unmarked)」です。(p.102)

  • 本書は、著者が愛知県立大学で教養科目として担当している(た)「日本の歴史・文化」という授業の講義録である。日本の歴史・文化の単なる概説ではなく、哲学、心理学、社会学、民俗学、文化人類学、比較文学など人文系の様々な学問や方法論について、その特徴や切り口を紹介しながら、「日本人はなぜ存在するか」というテーマについて考えるというものであり、「文系学問」オードブルのような内容になっている。
    本書を通底するキーワードは、認識と現実のあいだでループ現象が生じることを指す「再帰性」である。「日本人」や「日本文化」などの当たり前のような概念が、実体があやふやな再帰的なものであることを明らかにしている。
    「教養」の大きな要素は、常識のようなことを絶対視せず、物事を相対的に考えるできるようになることだと考えるので、本書はまさに「教養」を養うための内容になっていると感じた。
    また、本書で紹介されているエピソードには、戦前に内地在住の朝鮮・台湾人に参政権があったこと、ウルトラマンの社会的背景、「故郷」や「春の海」が純日本音楽でなかったこと、アジアで最初の長編アニメは中国で作られたことなど、知的刺激を受けるものが多かった。

  • 日本人はなぜ存在するか 知のトレッキング叢書

  • 歴史学者の大学の講義内容だということだが、この人は本当に歴史学者なのか?と疑いを持たざるを得ない内容。こんな内容の講義を受けさせられた生徒が気の毒になった。

    タイトルと中身が一致していないし、ちょっと調べたらすぐわかるような事で、なおかつそのための歴史資料館も存在する歴史的事実を曲げて記述している個所はあったし、論理的に矛盾していて破たんしている所がある。そうやって何言ってるかわからない内容でも、論理的に破たんしていても自己主張したいことはうかがえる。

    胡散臭いので、図書館で借りたのを後悔した。読んでここまで時間の無駄だったと後悔させられたのは、初めて。そういう意味で稀有な本だった。

    なので、調べたら、大学を退職されていた。納得。

  • 有名人なので読んでみた。文体が最後まで慣れなかった。タイトルが興味をそそるが、哲学方面に流れ過ぎてて、僕の興味と違う方に行ったように思う。

  • 日本人とは、人間とは
    どういう集団が日本人で何が日本人なのか。
    そもそも日本人のくくりがいるのか。
    いろいろ考えさせられる本です。

    認識を通じて現実を作り上げる再帰性を勉強できます。

    文化というのは有標化する行為。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。専門は日本近現代史。2007年から15年にかけて地方公立大学准教授として教鞭をとり、重度のうつによる休職をへて17年離職。歴史学者としての業績に『翻訳の政治学』(岩波書店)、『帝国の残影』(NTT出版)。在職時の講義録に『中国化する日本』(文春文庫)、『日本人はなぜ存在するか』(集英社文庫)。共著多数。
2018年に病気の体験を踏まえて現代の反知性主義に新たな光をあてた『知性は死なない』(文藝春秋)を発表し、執筆活動を再開。本書の姉妹編として、学者時代の研究論文を集めた『荒れ野の六十年』(勉誠出版)が近刊予定。

「2019年 『歴史がおわるまえに』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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