宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797673821

作品紹介・あらすじ

「ハングリーであれ、愚直であれ」(スティーブ・ジョブズ)
――この言葉は禅の教えだった!

スティーブ・ジョブズの「生涯の師」で、iPhoneやiPodなどの革新的製品の設計思想に
ヒントを与えた日本人僧侶・乙川弘文。
足かけ8年、関係者への徹底的な取材の中で浮かびあがってくる、ジョブズとの魂の交流。
僧侶としての苦悩。

「日本曹洞宗の明日を担う」とまで期待された若き僧侶は、なぜ故郷を捨て、アメリカに渡ったのか?
ある人は「あんなに優れた禅僧はいない」と激賞するが、「女にだらしない、酒浸りの男だった」と
批判する人もいる。──彼はいったい何者だったのか?

そして、スイス山奥での突然の死。その真相は?


一橋大学名誉教授・中谷巌氏も絶賛!


【乙川弘文・略年譜】
1938年 新潟県加茂市「定光寺」の三男として生まれる。
1951年 得度。
1956年 駒澤大学仏教学部に入学。
1960年 京都大学大学院に。
1965年 永平寺に上山、修行僧となる。
1966年 永平寺の特別僧堂生に抜擢。
1967年 渡米し、カリフォルニア州「タサハラ禅マウンテンセンター」を開創。
1970年 最初の結婚。
1975年 若きスティーブ・ジョブズと出会う。
1979年 同州「マウンテンヴュー観音堂」を開創。
1983年 同州「鳳光寺」「慈光寺」開創。
1984年 離婚成立。
1986年 ジョブズとともに加茂市の実家を訪ねる。
1989年 ジョブズの提案で、彼の「ジャックリング」邸に住む。
1995年 再婚。
2001年 コロラド州ナーローパ大学で教授就任。
2002年 スイスにて、娘、摩耶とともに不慮の死を遂げる。


【著者】
柳田由紀子【やなぎだ・ゆきこ】
1963年、東京生まれ。1985年 早稲田大学第一文学部演劇専攻卒業後、新潮社入社。
月刊「03」「SINRA」「芸術新潮」の編集に携わる。
1998年、スタンフォード大学他でジャーナリズムを学ぶ。
2001年、渡米。現在、アメリカ人の夫とロサンゼルス郊外に暮らす。
著書に『二世兵士 激戦の記録――日系アメリカ人の第二次大戦』(新潮新書)、
翻訳書に、『ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ』(集英社インターナショナル)などがある。

感想・レビュー・書評

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  • スティーブ・ジョブズが信奉したという、乙川弘文という僧侶に迫るドキュメント。

    京大の大学院から、永平寺を経て、アメリカで禅堂を開く。酒を飲み、女性と関係を持つ。超リベラルで何でも受け入れ、誰に対しても同じように接する。

    何というか、①こういう人になりたい ②仏教や禅について、もちっと勉強したい という気持ちになった。

    全編インタビュー形式で書かれているので、ちょっと奇異な感じがしたが、これもアリなんだと思う。

  • 時に会ってみないとわからない人がいる。
    書き残した物だけでは伝わらない何か。
    講話を聴く前から、ちょっとした所作や読経など、たちどころに自分のうちに共鳴する部分を見つけてしまう。
    ジョブズも弘文を一瞬で見抜いたのだろう。
    師の「先を見通す力」に惹かれたという証言があるけど、あながち荒唐無稽な話ではない。
    せっかちで、まともな答えが返ってこないと「くだらない」と辛辣に罵詈雑言を浴びせるジョブズが、弟子でさえも何を言っているか判然とせず、スローで、時に5分以上も間が空く話し方しかできない弘文を、会えば独占したのだから。

    「まぬけの増殖」を嫌い、会社にはAクラスの人間だけが必要だと考えていたジョブズにとって、弘文の周りの弟子たちには我慢ならなかったことだろう。
    引き離すように自らの邸宅に師を住まわせていたのも、それがあったからだろう。
    弘文の最初の妻が、ジョブズやアップルに禅の影響なんてないと考える理由として、
    「そうじゃなければ、あのデキそこないの弟子たちとスティーブの差を説明できないもの。同じ師匠に学んで、どうしてあんなに違うのよ!」
    と証言しているが、思わず笑ってしまった。

    「人は、必要な時にしか心の扉を開けないけど、弘文のドアはいつでも開いているんです。その扉の中に、僕らあつかましいアメリカの若者がわんさか飛び込んで、弘文をアメリカにとどまらせた。しかもハリエットという強烈な個性の女性まで現れて結婚へと導いた。僕らやハリエットが、日本の弘文をアメリカに引っ張り込んでしまったのは否めないと思います」。

    由緒あるお寺の次男坊として生まれ、京大大学院から永平寺の雲水となった異色の経歴。
    指導層が唸るほど読経がうまく、書も達人級の腕前。
    貫主から将来の永平寺を背負って立つ指導者に育てようと、とりわけ目をかけられていたが、アメリカに旅立つ。
    本書はそんな禅僧弘文の生涯を、関わりのあった人たちの話を集めた証言集の趣。
    通常のノンフィクションと異なり、作者の視点というろ過を受けていないので、話を聞いた彼らの弘文像は時に食い違うが、かえって生々しくて面白い。
    日本語がわからない証言者が多いので、加工しても気づかれない利点も。

    1ジョブズ「永平寺で修行したい」
    1弘文「ここにないものは永平寺にもない」

    2京都御弓師「先生、ひどいじゃないですか」
    2弘文「ええ、遅れちゃいました」
    2御弓師「あんた、もう二、三日経ってますって!」

    3役人「僧侶だと証明しろ」
    3弘文「私がここにいること」

    証言した誰もが、彼のその後の愛くるしい笑顔が忘れられないと答えている。

  • 私の掌にあるこのiPhone、データの読込や再起動を行うときに「グルグル」する。

    321ページ、「弘文の魂はジョブズに、ジョブズの魂はアップル製品に取り移り、今、世界中で円を描くように息づいている」

    このiPhoneのグルグルと共に、柔和な風体で地獄に落ちた弘文さんや、宗教経験の中で生まれた人々の興奮や喜び、そして家族の悲しみや怒りを含めたすべての事象が、私の掌の中で円を描いているような気がして、なんだか不思議な気分になりました。

  • 弘文の生の足跡を丁寧に追った
    作者の努力に感謝。

    極力私感を抑え、インタビュー形式でまとめられた良書である。

  • 素晴らしい本です、面白かった。
    スティーブ・ジョブズの生涯の師と言われる、日本人僧侶、乙川弘文。
    謎に満ちた生涯を、8年かけて取材しています。
    関係者への取材とインタビューから浮かびあがってくるその生涯。
    インタビューからなる本文は、弘文の生きざまを描き出していきます。
    弘文の生きざまももちろんですが、本書の構成も素晴らしいです。
    まるでミステリを読んでいるように、手が止まりません。
    彼はいったい何者だったのか。
    最後の最後で、解き明かされます。

    「澤木興道老師が、『坐禅をしてもなんにもならん』と語っているけれど、なんにもならないのになぜするのか」ですって?
    ははは、あなたと話していると、なんだかアメリカに戻ったみたいだな。あなた、アメリカ人みたいな問いを投げかける。
    おっしゃるとおりです、坐禅をしてもなんにもなりません。そして、「なんにもならない」からこそ坐禅をするんです。たとえば、「悟りのためにする」と言う人がいますが、それではすでに目的を握りしめてしまうわけです。人は普段、目的があって生きています。頭で考える知的な自分がいます。それが普通です。だからこそ、「なんにもならない」ことをするのです。そうやって、大宇宙に心身をまかせて、自分が天地自然の一部であることを感じられれば、そこから自分を見つめ直すこともできましょう。 ー 299ページ

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