知の仕事術 (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
3.32
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本棚登録 : 389
レビュー : 44
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680010

作品紹介・あらすじ

反知性主義の流れに抗し、知識人という圧倒的少数派へ読者を導くために、これまでの作家活動から会得した池澤流スキルとノウハウを初公開。現代を知力でサバイバルするための実践技術を学ぶ。

感想・レビュー・書評

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  • 池澤夏樹さんとは2度、お会いしたことがあります。
    1度目は札幌での講演会、2度目は岩見沢での講演会。
    岩見沢での講演会では、主催者の方に案内されて池澤さんの控え室へ行き、ご挨拶することもできました。
    主催者の方は、「末永さんも小説を書く方なんです」と余計なことを云いました。
    芥川賞を受賞してデビューし、その後も数々の小説、エッセーなどを世に出し、さらには世界文学全集、日本文学全集の編集までしてしまう池澤さんからすれば、たかが一地方の文学賞を取ったに過ぎない自分など、小説を書いているうちに入らない。
    私は恐縮しきりで、ひたすら頭を下げるだけでした。
    で、たまたま寄った本屋で見つけたのが本書。
    「池澤さんは、こんな本まで書くのか」と珍しくて手に取った次第。
    「自分の中に知的な見取り図を作るための、新聞や本との付き合いかた、アイディアや思考の整理法、環境の整えかた」(本書そでの説明文より)を分かりやすく教えてくれます。
    それも大変ためになりますが、私は池澤さん個人のこだわりを面白おかしく読みました。
    本書でも書いていますが、池澤さんって個人的なことはこれまでほとんど書いてこなかったのですよね。
    たとえば、池澤さんは喫茶店や図書館では本を読まないそう。
    何故なら「集中できない」から。
    分かります、自分もそうだから。
    気付いたら同じ行をもう一度辿っていたなんてこともしばしばです。
    池澤さんは本をフローとストックというふうに分けて考えていて、たとえば作品を書くために使った本は潔く手放してしまうそう。
    本棚の中身も定期的に入れ替えていると云いますから、なかなか徹底しています。
    私は蔵書が1千冊近くありますが、なかなか捨てられません。
    本書で紹介されている、書評の数々も実に面白い。
    特に、冨山太佳夫評「新グローバル英和辞典」は、それ自体が愉快な読み物でした。
    ものを書く人には、大変にためになる1冊でした。

  • 作家・詩人・翻訳家として知られる著者が、初めて自らの仕事に関わって書いた本。知人に教えてもらって手に取りました。

    池澤さんの時代に対する見方が、「はじめに」(あるいは反知性の時代の知性)に書かれてあります。生きるために大切なことが3つ(①情報②知識③思想)あり、それをいかに獲得し更新するに自らの工夫していること(新聞の活用・本の活用・アイデアの整理と書く技術等)を整理して読者に投げかけていく構成です。

    自分なりに「ものの見方・考え方」を持つこと、そのための知恵や工夫・技術を身につけること・継続させることなど、いろいろと考えるきっかけを与えてくれたように思います。新聞に出る書評記事など、これまでほとんど読まずだったのですが、注目してみようと思いました。

    なかなか面白い本です。みなさんもぜひどうぞ。

  • 池澤夏樹の仕事術。前から仕事の幅の広い人だなとはなんとなく知っていたけど、その仕事が垣間見られた。

    保育園落ちた日本死ね!!!の全文をちゃんと読んだのは初めてだったけど、確かにタイトルだけで受ける印象とは違う。

    生きるためには1.「情報」、2.「知識」、3.「思想」が必要。

    新聞やインターネット、本との向き合い方などなど。「はじめに」だけでも読んでよかったと思える。

  • タイトルはビジネス系のようだが、小説家の「知のノウハウ」なので半分以上が読書に関する内容であった。
    本書が陳腐化しているというよりも、この手の本を何冊も読んできたせいか、新鮮味がなくなってきた。本質的なところは、共通しているところが多いということだと思う。

    ・人間にはもともと知的好奇心がある。「知りたい」しいという気持ちが、人を動かしている。身体が食べることで新陳代謝を行うのと同じょうに、脳の中は、知的な食べ物の摂取と不要なものの排出によって常に新しくなっている。その入れ替えを意識的に行いたい。生きるためには、軽い順に一「情報」、ニ「知識」、三「思想」が必要だと考えてみよう。
    ・「情報」はその時々に起こっていること、起ころうとしているこし。いわば日付のあるデータだ。たったいまの世の動きを知るにはこれが欠かせない。
    ・「知識」はある程度まで普遍化された情報、しばらくの間は通用する情報であって、普通にものを考えるときにはこれが土台になる。その一方で知識もまた変わりゆくから更新が必要で、古いものは信頼性が低くなる。
    ・「思想」しは、「情報」や「知識」を素材にして構築きれる大きな方針である。個人に属するものもあり、多くの人々に共有きれるものもある。それ自体が人格を持っていて、成長し、時には統合され、また分裂し、人類ぜんたいの運命を導く。「哲学」や「宗教」まで含む大きな器。
    ・これらをいかにして獲得し、日々更新していくか。かつて学んで得た知識を、いかにアップ・トウ・デートしていくか。現代を知力で生きていくスキルを整理してみることにする。
    ・まず日頃からできることとして、日刊紙を読むことを提案しよう。ハは話すときには感情に流されがちだが、書くとなるし論理的になる。紙面に収まる量には制限があるから、どうしてもエッセンスだけを抽出しなければならない。新聞ならば見出しを見た上で、精読に価するかどうか判断して読める。自分の側に判断の余地がある。世の中に向かうしきに大事なのは、「何が答えか」ではなく、「何が問題か」というほうだ。
    ・(直接的な記載はないが著者のお薦めは毎日新聞と思われる)
    ・先に、生きていくには「情報」と苅識」と思想」が必要であると述べた。それらの源泉の一つが本だ。
    ・本を探す手段として、まず新聞広告が役に立つ。各出版社が出しているrx誌がももこれは年間購読しても送料ともで千円程度という価格で毎月届き、けっこう読みでがあるから、お買い得だと思う。集英社だし「青春し読書二角uは「本の旅人「新潮社は「波岐文春は「本の話「講談社は「本一などなど。たいていは自社のその月の刊行物について、誰かが書評やエッセイを書くという記事が多く、後ろのほうはだいたい連載が載っている。岩波書店の「図書一は、自社の本についての文章はほとんど載せていない。
    ・毎日新聞の書評欄は他紙と異なり、書評委員に任期がない。さらに書評も2千字と分量も多く、書評委員自らが書評したい本を探して取り上げる。この方法を四半世紀続けている。書評は日曜版に載っているので日曜版だけでも購入する価値はある。
    ・広く書評を読んでいると、そのうちご贔屓が出てくるだろう。これは本に限らず、芝居を観るのでも音楽を聴くのでも同じで、いわゆる評し呼ばれるものを、最初は広く浅く眺めるのでいい。そうしているうちに、この人はセンスがいいな、という誰かが見えてくる。自分に合う書評家が自然と見つかるものである。
    ・最もアイデアが湧くのは、実は書いているときだ。書くというのはすなわち考えることで、時間をかけて少しずつ構築してくような大きなグランドデザインであっても、書さながら考えることがほとんどだ。
    ・例えばエンターテインメント小説のように、冒頭から読み始めて、読み続けて、読み終わる類いのものなら、電子書籍でもいい。つまり一直線に一回読んでおしまいのものぼ、電子書籍でも読める。一方、行きつ戻りっしながら、中身全体を自分の頭に移す読書をするときはまるで役に立たない。

  • 著者の「知のノウハウ」が書かれた軽いエッセイとして読む分にはいいと思います。しかし、題名の『知の仕事術』をがっつり期待すると肩透かしです。色々とされている著者ですからその術を期待したのですが、私にはそうではありませんでした。

    https://www.kt-web.org/book-report-ikezawa-natsuki-chino-shigotojutsu/

  • 2019年1月22日購入。

  • この本は良い、作家である池澤夏樹氏が自身の技術論を公開してくれており、多くの刺激を受ける。

    新聞の活用法、本の探し方等実用的なノウハウを多く教えてくれる。特に書評については私も本選びの参考にしている。

    やはり定期的にこのような本を読む必要性を感じる。新たな気付き、知的興奮が人には必要と思う。反知性主義に抗していくために。

  • 興味を引かれたところを2点、引用。

    ・「本選びは精錬に似ている」
    世の中に出回る本ぜんたいをざっと眺めて、その中から価値あるものを選び出す行為。それは金属の精錬に似ているという説。全ての本に目を通すことが不可能な以上、何を読むか(=何を読まずに切り捨てるか)を選ぶことは非常に重要な行為。それは主観で構わない。というか、主観にしか意味はない。そうしていかに自分なりに、純度の高い金属を取り出すか。そこを意識すると読書の意味が変わり、密度の濃い読書ができるだろう。

    ・「メディアこそがメッセージである」
    マクルーハンの孫引用。発信するのにどのメディアを選ぶか?そこにこそメッセージの核心が含まれている、意識するしないに関わらず。メディアにはそれぞれ特性があり、そこを見誤ると間違ったメッセージを発することになるだろう。今現在、メディアの中心的役割を担うSNS。著者はSNSはやらないと豪語するが、「メディアこそがメッセージである」ということを踏まえれば、納得がいく。SNSは物事を深く考えるのに向かない。直接的、瞬間的、感覚的に訴えることに向くメディアだと思う。SNSを好むかどうかは個人の自由だが、SNSにどっぷりでは思考力がなくなってしまうことを、この本を読んで体感的に理解した。

  • 非常に心地よく読めた一冊だった。特に文章の美しさが際立っていて、小説でもないのにすらすらと読めた。筆者の仕事の進め方が細かく書いてあったが、この年代の作家さんでも結構最新のガジェットを使い倒していることに驚いた。

  • 著者が日ごろ行っている、情報の入手方法、ストック、フローの考え方、書物の扱いなどなど作家が行っているノウハウというか、神髄を語ってくれている。

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著者プロフィール

池澤夏樹(いけざわ なつき)
1945年、北海道帯広市生まれ。1964年に埼玉大学理工学部物理学科に入学し、1968年中退。
小説、詩、評論、翻訳など幅広い分野で活動する。著書に『スティル・ライフ』(中央公論新人賞、芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『花を運ぶ妹』『カデナ』『光の指で触れよ』『世界文学を読みほどく』『アトミック・ボックス』等多数。また池澤夏樹=個人編集『世界文学全集』、同『日本文学全集』も多くの読者を得ている。旅と移住が多い。
2018年9月から、日本経済新聞にて連載小説「ワカタケル」を連載。

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