深読み日本文学 (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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本棚登録 : 105
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680164

作品紹介・あらすじ

芥川賞選考委員の作家による、異色の日本文学論。「『源氏物語』がつくった“色好み"の伝統」「ライトノベルのルーツ『好色一代男』」「文学とテクノロジー」など、古典からAI小説までを独自の切り口で解説。

感想・レビュー・書評

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  • 深読み、というタイトルからは想像しなかったほど、面白くて読みやすい!
    これを以って文学史とするには……だけど、どのような時代の流れ(や、当時の人々の気質)が、そうした作品を生み出し、受容する土壌となってきたかという所が分かりやすい。

    色好みの文学として『源氏物語』から始まった時は、全容が掴めずにいたけれど。
    漱石の神経衰弱には、「写生文」を書くことでセラピーと成り得たのではないか、というくだりは、なるほどと思わされた。
    態度価値の話も面白くて、なぜ『こころ』の先生は、何もしないんだ!と。それを災害時の自粛モードに重ね合わせてみる。
    まぁ、もっともっと自分への罰する感情は強いのだけど。

    谷崎潤一郎については、書き方酷すぎる(笑)
    79歳まで生きて「老人文学」を成したことは、他の文豪を考えると異例の功績だともある。
    これについては、本当にそうで、最近読んだ丸谷才一の晩年の小説を思っても、やっぱりそこまでを生きてみたいと分からないことはあるのだと思う。
    息子の嫁さんは苦労したんだろうな……。

    太宰治には中二病印。
    でも、「絶望」をポップに扱ってみせるとか、噛みしめると甘いものだ、という言い回しが、めっちゃ分かるわー。
    受験生を絶望に陥れた「トカトントン」、早く読まなきゃと思わされた。

    中上健次を読んだことはないのだけど、語り部通りの話から展開される、イスラム圏の口承情報伝達システムに、懐かしさを覚える。
    ネットワークが今みたいに電気信号ではなく、生身の人のコミュニティに依拠されていたこと。
    いや。今でもそこでは濃密なホットラインが生きて、人と人を結びつけていて欲しい。

    島田雅彦流に切り取られた日本文学史のキーワードは「多様性」。
    自分が読んできた作品を、そういう視点でまとめてみることは、面白い試みだった。
    『日本風景論』は読もうっと。

  • 日本文学の伝統は「色好み」なんだそうです。
    その出発点となった源氏物語は、言うまでもなく光源氏の恋愛物語。
    当時、考えられ得るありとあらゆるパターンの恋愛が網羅されていました。
    なぜ、そんな物語が編まれたのか。
    そこには政治的な思惑がありました。
    それは、天皇を中宮彰子皇后の寝室に足繁く通わせる政治的思惑です。
    その意味で、源氏物語は「天皇のためのポルノグラフィティであった」などと聞けば、俄然、興味が沸くというものです。
    源氏物語から始まる「色好み」の伝統は、後世の作家に受け継がれていきます。
    井原西鶴は「好色一代男」に世の介の54年にわたる性遍歴をつづりました。
    源氏物語は「桐壷」から「夢浮橋」まで54帖で構成されています。
    つまり、井原は確信犯として源氏物語をパロッたんですね。
    文豪・谷崎潤一郎の「痴人の愛」は、15歳の美少女を自分好みの女に調教しようというサラリーマンの男の物語。
    私もドハマりした作品ですが、今なら間違いなく犯罪でしょう。
    実は、この「痴人の愛」も源氏物語がベースになっています。
    10歳の若紫を見初めた光源氏が、育て上げた末に自分の妻にしたというあのエピソードです。
    そんなふうに日本文学の系譜を見て行くのも面白いですね。
    文学なんていうと、敷居が高い感じがしますが、その中心にあるのは、少なくとも日本では「エロ」だということを再認識しました。
    最後の章の「テクノロジーと文学」の章も興味深いです。
    つまり、人工知能に小説は書けるのか、ということ。
    著者の見立ては、約束事の多いエンタメ作品は書けるのではないかというもの。
    「売れ筋狙いで仕事をしているエンタメ作家から、真っ先に人工知能に仕事を奪われることになります」
    ベストセラーと縁のなかった純文学作家である著者のやっかみもあるような……。

  •  直木賞芥川賞選考委員でもある作家島田雅彦氏、彼の独自の思想と観点による日本文学史概論。
     全十章は時代順に構成され、古典『源氏物語』に見る色好みの伝統から、西鶴と近松に見る江戸文学、漱石・一葉・谷崎から迫る近代文学の深奥、太宰と安吾らの作品から感じる戦後日本の精神と文学、そして文学の未来「AI小説」までと内容は多岐に亘る。
     多様な視点と膨大な知識の上に成り立つ歴史観、そして作家の感性から日本文学史を捉え直し、日本文学に通底する日本人のDNAと文学そのものの存在意義を確信に満ちた光で照らし出す新しい文学論。


     私にとって日本文学は茫洋たる大海と同じである。文学史の概要を言葉の上で理解することは海の広さと形を地図で確認することと同じように難しくはないが、その実態を体感的に理解するにはその広さと深さの前にただただ立ち尽くすしかなかった。
     本書はそんな大海にいくつかの島を用意し、先導者として航路を示してくれる。本書で紹介され論じられている『源氏物語』、井原西鶴、近松門左衛門、夏目漱石、樋口一葉、谷崎潤一郎、『日本風景論』、『代表的日本人』、『武士道』、『茶の本』、太宰治、坂口安吾、これらの書と文学者の著書をまずひとつの目指すべき島として日本文学「海」の航海を改めて始めてみようと思う。本書にはそれぞれの島の案内図と見所が記されているのだから。
     また本書は、文学作品とはそれぞれの作家の単なる創作物ではなく、そこには日本人の価値観やその時の社会情勢、経済や歴史や精神との深い結びつきがあることを教えてくれる。文学の最奥部を見つめ、文学からしか抽出できない「人とは何か」「私達とは何か」というテーマに対する答えを導き出そうとする著者の姿勢を感じ取ることができる。

     筆者の言葉では、文学とは
    「権力による洗脳を免れる予防薬であり、そして、求愛の道具」であり、
    「好奇心を鍛え、逆境を生き抜く力を与え」てくれるものであり、
    「路傍に咲く一輪の花のように、悪人の心には情を、絶望する者には希望をもたらす」
    ものだという。
     日本文学の価値を再発見できる一冊である。

  •  芥川賞選考委員でもある(が、当人は芥川賞を取れなかった)著者による、独創的な日本文学案内。
     
     『源氏物語』から説き起こし、終章ではAIによって小説が書かれる未来にまで言及している。1000年を駆け足でたどった日本文学史の概説書としても読める。

     おそらく著者の大学での講義がベースになっているのだと思うが、語り口調に近い文章で書かれており、わかりやすい。内容的にも、大学生くらいが読んでちょうどいい感じ。

     夏目漱石・樋口一葉・谷崎潤一郎について、各一章を割いて論じた中間の3つの章が、とくに面白かった。
     わけても一葉についての章は、“一葉が作家としてどう優れているのか?”が、本書を読んで初めてわかった気がする。

     帯の惹句「常識を揺るがす新しい読み方。」はいささか大げさだが、随所に卓見がある良書には違いない。
     
     ただ、隙あらば内容を現政権批判に結びつけようとするような箇所も散見され、そのへんの“要らざる政治色”は読んでいて辟易としたが……。

     以前、当ブログで島田の『小説作法ABC』を取り上げたとき、私は次のように書いた。

    「本書を読んで改めて感じたのは、島田雅彦は作家としてよりもまず評論家として、ひいては文学研究者として非常に優秀であるということ。いまや島田も作家兼大学教授だが、最初から文学研究者としてアカデミズムの道を歩んでいたとしても一家を成した人だと思う。
     逆に言うと、評論家肌、研究者肌だからこそ、島田の小説はあまり面白くないのかも」

     本書からも、まったく同じ印象を受けた。

  • 世代が近い作家の書く日本文学史であり、その上の世代が書く物と共通するものもあるが味付けは違い、自分自身としては共感しやすかった。文学は、その書き手が生きている政治、経済状況、また世代によって、異なるものであることを基本に著述されている。古典であればあるほど、本来の日本人らしさが如実に現れるところもあるが、それすら、その時代の政治状況が反映されている部分がある。源氏物語もしかりである。最後に多様性があるから、文学は成り立つものであり、多様性がなくなることは文学の危機状況になる。本書を通じて著者の現代の政治状況に対する危機意識が通底して述べられでいた。

  • 最初のほうの、エロの章は面白い。源氏物語はあまり興味なかったが、この本をきっかけに、谷崎版で読もうかと思った。最後のAIの章は、わかるけど、不要な章だなあ。

  •  そう深くは、ない。
     文学史としては、割と常識的かな。
     ただ、高校レベルから離れている人には、けっこう面白いと思う。

  • 源氏物語、好色一代男、漱石、一葉、谷崎、太宰、安吾、、、AI

  • ちょっとアッサリ。

  • 17/12/15。

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著者プロフィール

島田 雅彦(しまだ まさひこ)
1965年東京都に生まれ、東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業。1983年在学中『海燕』掲載の『優しいサヨクのための嬉遊曲』でデビューし芥川賞候補。1984年『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞受賞。『僕は模造人間』(1986年4月)『ドンナ・アンナ』(1986年9月)『未確認尾行物体』と、郊外の新興住宅を舞台にした若年層の生活を、奇抜な語彙を用いつつ軽妙な筆致で描く作風で、新世代の作家として注目を浴びる。1987年までに6度芥川賞候補となり最多候補記録。1992年『彼岸先生』泉鏡花賞受賞。『忘れられた帝国』(1995年)、『自由死刑』(1999年)2003年には「自らの代表作とすべく書いた」という『無限カノン3部作』(『彗星の住人』『美しい魂』『エトロフの恋』)を完成。2006年『退廃姉妹』で伊藤整文学賞受賞、2008年『カオスの娘』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2016年、『虚人の星』で毎日出版文化賞受賞。1998年近畿大学文芸学部助教授に就任。2003年法政大学国際文化学部教授。2000年から2007年まで三島由紀夫賞選考委員、2010年下半期より芥川賞選考委員となる。

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