コミュニティ・オブ・プラクティス: ナレッジ社会の新たな知識形態の実践

  • 翔泳社
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784798103433

感想・レビュー・書評

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  • 学習する単位=実践コミュニティとして、コミュニティ的な考えの組織への適合を試みた画期的な書籍であろうと思います。その意味で、『学習する組織』の上位的な位置づけに見えます。コッター言うところの組織におけるインフォーマルなネットワークによって作られた単位が実践コミュニティ(Community of practice)と言えますが、コッターの言う改革のためのネットワークと違うところは、実践コミュニティそのものが学習し、成長し続ける存在としたところで、『学習する組織』と全く同じ主張が見られます。またその単位が、生物の生存のように、誕生→成長→成熟 と段階があると言う指摘も『学習する組織』に共通しています。違いは、本書は組織に置いてどのようにコミュニティを位置付け、どのように扱っていけば、継続的な学習に繋げられるかを論じている点です。『学習する組織』では、学習単位をコミュニティとは限定しておらず、なんだかの組織単位の中における学習のためのツールについて論じていると言う感じでしょうか。しかし、『学習する組織』における「自己実現」を突き詰めると実践コミュニティ的な動きになると言う点で、それぞれ同じ価値基準で組織をミクロとマクロでとらえたような、一つの目標に対する相互補完的な解説の関係のようです。

    本書では、実践コミュニティは、1) 領域 2) コミュニティ 3) 実践と言う3つの構成要素から成り立つとし、各成長段階における、それぞれについての運用方法を提案しています。とりわけ、実践コミュニティをサポートする「コーディネーター」の必要性を説いています。コッター的な文脈であれば、コミュニティ・リーダーがコミュニティを引っ張り、コーディネーターが実組織とのリンクや、ビジネスとの整合性といった、コミュニティの構成員が気持ちよく動けるように、縁の下の力持ちとしてのマネージメント的な役割を実行します。それらを、ゼロックス社や、フォード社と言った事例を交えて解説しています。『学習する組織』もそうですが、これらインフォーマルなコミュニティによる学習単位のアイディアは、寧ろアフターファイブや社内運動会などの<会社以外の>コミュニケーションを重んじてきた日本的企業経営にヒントを得られているように見えます。それらが分析され、こうして米国の企業で、まさに「実践」されて体系化され、Apple、Googleを代表するような米国ビジネスの成功に繋がっているとするならば、とても皮肉なことです。

    本書の最終章では、世界を学習する単位として捉え、世の中を複数の実践コミュニティの集合体とする試みを述べています。そして、最も実践できる単位として企業組織を選んでいる(に過ぎない)とまで言っています。この文章には、個人的にはとても共感しました。社会起業のような実践も、実践コミュニティのインスタンスと考えるのは、私だけではないでしょう。世の中が本当の意味でボーダーレスに学習していく姿になっていくことが、本書の隠れたゴールでありましょう。

  • 企業の内外での実践コミュニティに関する本。

    かなり前にコミュニティ・オブ・プラクティスという概念を知って、それをイメージしながら、会社を超えた実践・学習のコミィニティを作った。

    が、恥ずかしながら、こっちの本は、これまで読んでいなかった。

    遅ればせながら、読んで、今となっては、当たり前な感じかな〜。

    コミュニティの運営の難しさと面白さが、「そうそう」な感じでまとまっている。

    新しい発見はあまりなかったけど、これから何か始めようという人には、参考になると思う。

    この本の良いところは、コミュニティの良いところだけでなく、問題になりやすいところもちゃんと書いてあること。

    そこもしっかりおさえるのは、とても大事。

  • 2007/6/7

    現在,大学で週一回,ビブリオバトルと言う名の,
    書評会と研究会の融合会みたいなことをやっている.
    そこで,Y君が紹介した,コミュニティ・オブ・プラクティスが第一回のチャンプ本に選ばれたので,斜めに読んでみました.

    ハーバードビジネス書なんすが,実践コミュニティという部署を横断した比較的インフォーマルな組織をつくることで,
    知識の伝播と創造を助けようという話.
    僕自身の経験から言っても知識労働者が得る情報は定常業務の中ではいまひとつリッチにならなくて,
    組織を抜けたところに初めて共鳴できる人材がいることが多い.
    そういう意味で重要だとおもう.

    IT使った一時前の形式知一辺倒なナレッジマネジメントに対する対立軸として非常に重要だと思う.
    ただ,本書の言及できている点は実践的であり,深みや理論はそんなにないという感じもしました.
    どーなんでしょうか.
    ビジネス書と学術書はやっぱりベクトルが違うなあ.

  • 社内コミュニティを構成し、知識経営を推進するための実践的教科書。

    10年ほど前の書籍ですが、社内コミュニティの教科書として、組織の壁を越えられず、従業員同士の有機的な結びつきに課題を持たれている企業にとっては、学ぶべきことが多く記された良書だと思います。

  • 一部で勉強会ブームが起きている今だからこそ、チェックしておきたい、コミュニティ形成の基礎論。

    片手間には読めない、非公式コミュニティ運営方法。
    従来の社内コミュニティは、社内の人間だけが参加していたが、
    この本が提唱するのは社内外の専門家や社員を引き込んだコミュニティをつくり、かつそれを企業の公式組織とリンクさせること
    P22公式組織とインフォーマルネットワークが共存するのが理想

    第一章実践コミュニティについて なぜいま重要か
    P33実践コミュニティとはあるテーマに関する関心や問題、熱意を共有しその分野の知識や技能を持続的な相互交流で深めていく人々の集団
    一緒に仕事はしなくても相互交流に価値を認めるから集まる
    情報や洞察を分かち合って問題解決に
    自分たちの状況や野心やニーズについてはなす
    アイデアの可能性を探る
    P38知識と情報を混同しない
    専門技術の向上には同じような状況に直面する人々との交流が必要

    第二章実践コミュとその構成要素
    P66友人グループとコミュの違いは、
    コミュのメンバーは領域を共有することで知識に対する責任感を覚え、その結果責任をもって実践を生み出す人のこと

    P129コミュの結成前にメンバーのインタビューで、関心事を引き出す
    インタビューはコミュの私的空間を作り始めるチャンス
    一人ひとりの結びつきを作ればそれはネットワークに

    P149コミュの目的をどこに維持するかを常に明確にしておく
    メンバーの負担にならないように
    コミュの役割はそのときに応じて変化していく
    P159加入のプロセスや容量は慣例に
    新しいメンバーに対して説明するのが難点。
    既存メンバーの1人を引受人にし、基礎知識を教えればいい
    P160最先端の問題に焦点を起き続けるべし
    そこでえた知識は体系化する
    コミュニティの司書が必要
    ・関連のある記事や書物、事例、データに目をとおす
    ・データの検討と選択、概論や論評、注釈などの執筆
    ・データをコミュ内で体系化
    ・実践者たちの求めに応じて役に立ちそうな資料を探す

  • 実践によって動的な知識をその身に宿す みたいなイメージを得ることができた

  • 組織のケイパビリティ獲得の手段として戦略的なコミュニティ形成の有効性を説いています。
    ナレッジとは整理された静的な形式知だけでなく、人々の交流の中に動的に存在する暗黙知で構成されるというのは言われてみるとなるほどと感じました。
    とはいえ自社に落とし込んで考えてみると、直接的に収益を産むことはない実践コミュニティの開発に組織がコミットメントするというのはなかなか難しそうです。
    80年代の日本企業の活躍の背景にも同様の実践があったとのことですが、もしかすると分析され体系化されていく中で小難しい解釈として本書に落ちてしまっているのでしょうか。あまり身近な事例としては感じられませんでした。

  • 原題は"Cultivating Communities of Practice"。CoP は開発するものでなく耕すもの!

    社内のナレッジコミュニティ運営者だった2003年に読み、強く影響を受けた本。あらためて読んでも、いまに活かせる示唆がたくさんある。

    2013年の今は企業に閉じない(実践)コミュニティが多く運営されるようになっている。以下に抜書きした点を整理して、それらの活動にも活かしていきたい。

    <キーフレーズ>
    ★実践コミュニティとは何か(p.33)
     実践コミュニティ(コミュニティ・オブ・プラクティス)とは、あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技術を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団である。

    ★構造モデル:「領域、コミュニティ、実践」(p.63)
     実践コミュニティには多様な形態があるが、基本的な構造は同じである。実践コミュニティは、次の3つの基本要素のユニークな組み合わせである。一連の問題を定義する知識の領域(ドメイン)、この領域に関心を持つ人々のコミュニティ、そして彼らがこの領域内で効果的に仕事をするために生み出す共有の実践(プラクティス)である。

    ★コミュニティは学習する社会的構造を生み出す。強く結びついたコミュニティでは、メンバーが互いを尊重し信頼しているために、相互交流が活発で、豊かな関係が育まれる。メンバーは自発的にアイデアを共有し、無知を露呈し、厄介な質問をし、注意深く耳を傾けようという気になる。(略)コミュニティがなぜ重要な要素かと言えば、学習が理知的なプロセスというだけではなく、帰属意識にかかわる問題でもあるからだ。学習には頭だけでなく、心も必要なのである。(p.64)
     #ここ、特に重要。「無知を露呈」できる安心感のないところではコミュニティは育たない!

    ★図4-1 コミュニティの発展段階(p.116-117)
     実践コミュニティは持続的に発展していくものではあるが、われわれはコミュニティの発展には5つの段階があることを発見した。潜在、結託、成熟、維持・向上、変容である。(略)
     コミュニティの発展は個人の成長と同じで、順調に進むことは稀で、痛みを伴う発見や困難な変遷、辛い経験からの学習などを伴うことが多い。(略)本書では、それぞれの発展段階に起こる問題点を、「2つの相反する方向性の間の、緊張関係」として説明する。コミュニティが発展するためには、これらの緊張関係に、一つ一つ順に取り組んでいかなければならない。
     #以下は、図4-1 中の各段階での「発展を促す緊張関係」。なるほど!!
     # 潜在…発見/想像
     # 結託…孵化させる/今すぐ価値をもたらす
     # 成熟…集中/拡張
     # 維持・向上…所有/受容性
     # 変容…終わらせる/存続させる

    ★コミュニティを立ち上げて、組織内のさまざまな領域を担わせるだけでは十分ではない。立ち上げたコミュニティが有効に機能しなければ、意味がないのだ。(略)戦略的な知識推進活動に取り組んでいる組織のほとんどが、コミュニティを構築し維持する能力を持つことの必要性を理解している。このような支援は2つの側面から与えなければならない。それは、支援専用のユニット??われわれは「支援チーム」や「コーディネーター・コミュニティ」と呼んでいる??を作ること、そして教育を行うことの2つの側面である。(p.297)
     #ここで、コミュニティ・マネージャー・コミュニティの価値が出てくる!!


    <きっかけ>
     1回目は、各社のKM推進者4人で集まった頃に読んでいたのを覚えている(2003年1月に読了の記録あり!*)。2003年に読んだ本のうち個人的ベスト(えぇ本 of the Year)に選ぶほど影響を与えられたみたい。
     その後、周りに薦めまくって誰かに貸したところ行方不明になり2冊目を購入。いまも、コミュニティ運営についてのバイブルだと思っている。

    *…2003年1月当時のメモ(PalmV で移動中にメモしたもの)
    ---
    ■コミュニティ・オブ・プラクティス/ウェンガー他 -1/?
    ・デザインの3要素
    領域
    コミュニティ
    実践
    ・超える
    ・育成の7原則
    進化を前提とした設計
    内部と外部の視点
    さまざまなレベルの参加
    公と私の空間
    価値に焦点をあてる
    親近感と刺激
    リズムを生み出す
    ・発展段階
    潜在、結託、成熟、維持・向上、変容

    ・プロセスとプラクティス
    ・実践こみゅにてぃの効果
    デトロイトの自動車
    ボストンのフルート
    ・CoPの繁栄
    自発的かんよ
    内部の指導力の芽生え
    ・競争相手の存在!

    ・野村さん監訳!!
    ---

  • 「実践コミュニティ」=共通の専門スキルやある事業へのコミットメント(熱意や献身)によって『非公式』に結びついた人々の集まり。プロセスは予め計画可能。プラクティスとはプロセスとプロセスの間に行う仕事。

  • 既存の組織をまたいで、「有志」が「実践する」コミュニティを作ることの事例や、あり方を書いた本。
    この本での実践コミュニティはどちらかというと「共通の技術基盤を持っている技術者が集まる」的なものを想定して書かれている感がありますが、有志活動にも十分通じるものがあります。
    コミュニティを意味のある、継続的なものにするには放し飼いじゃだめで、
    ・4章に書かれている「コミュニティの発展と初期段階」では、
    参加者に価値を提供できると認識されること(機会を逃さない)
    ・6章の「分散型コミュニティという挑戦」では、物理的距離が離れたコミュニティの難しさと必要なしかけ(上下関係を取り払い、F2Fの機会をつくる)
    ・7章の「コミュニティのマイナス面」では、コミュニティで起こる不調:コミュニティは参加者とそうでない人の間に境界を作るので、それが過度に排他的になったり、既得権益抱え込み集団になったり。
    あたりの観点は「コーディネーター」がいないとうまく回らないよね、改めて思いました。

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