ジッドとその時代

  • 九州大学出版会 (2019年1月12日発売)
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  • 本 ・本 (674ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784798502496

作品紹介・あらすじ

本書は、書簡や日記をはじめとする豊富な未刊文献を駆使して、フランスの文豪アンドレ・ジッドが同時代人と結んだ多様な関係の具体相を鮮明に描き出し、稀代の文学的プロテウスの多面的肖像を活写する、実証研究の画期的成果である。



ジッドがフランス文学史上固有の地位を主張しうるのは、ある文学的戦略を早くから選択し、以後ゆらぐことなくそれを実践し続けたからだ。すなわち、自己を禁忌とする逆説的なナルシシズムを育み、これに縛られ導かれて、ついには禁忌と執着とが混淆し、現実と虚構とが分別しがたい自伝空間を生きる、そして行為と書物とが捻れあい織りなす「生」の総体そのものをひとつの「作品」として提示する、という戦略である。



このことは、ジッドが青年期から愛読していたフローベールの小説美学にかんする次の考察からも窺えよう  「フローベール流の客観性は人間存在を外面からしか眺めようとせず、存在の深奥に到達することはない。私の思うに、小説家にとって真の客観性は別様な働き方をするものなのである。小説家が登場人物になりきらないかぎり、描かれるのはただその輪郭にすぎないのだ」。



じっさいジッド作品の主人公たちの多くは彼自身を色濃く投影した存在であるが、しかし上記の文学的戦略にそって描き出される「自画像」は不可避的に誇張と歪みとを内包する。「ジッドの総体像に迫る」とは必然的に、この誇張と歪みを読み解きながら、彼独自の創造的な自伝空間を検証することにほかならないのである。

著者プロフィール

東京大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。
九州大学大学院人文科学研究院教授。パリ第4大学博士(文学)、大阪大学博士(文学)。
専門はフランス近現代文学。

著 書:André Gide, Le Retour de l’Enfant prodigue. Édition critique (Presses
Universitaires du Kyushu, 1992); Bibliographie chronologique des livres consacrés
à André Gide, 1918-2008. [En collab. avec Claude Martin.] (Centre d’Études
Gidiennes, 2009); André Gide - Paul Fort, Correspondance, 1893-1934 (Centre
d’Études Gidiennes, 2012); La Phalange. Table et index, 1906-1914. [En collab.
avec Claude Martin.] (Publications de l’Association des Amis d’André Gide, 2014).

訳 書:クロード・マルタン『アンドレ・ジッド』(九州大学出版会、2003年)

「2019年 『ジッドとその時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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