私たちはどのような世界を想像すべきか 東京大学 教養のフロンティア講義
- トランスビュー (2021年5月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784798701806
作品紹介・あらすじ
★この書籍の小売店頭価格は、2500円+税です。
災害、疫病、環境、科学技術、宗教……
不確実な時代において、
30年後の未来を考えるために。
東京大学の新入生に向けて行われた11のオムニバス講義を収録。
〈世界〉と〈人間〉を学問の最前線から捉え直す!
第1講 「人新世」時代の人間を問う——滅びゆく世界で生きるということ…………田辺明生
第2講 世界哲学と東アジア…………中島隆博
第3講 小説と人間——Gulliver’s Travelsを読む…………武田将明
第4講 30年後を生きる人たちのための歴史…………羽田正
第5講 脳科学の過去・現在・未来…………四本裕子
第6講 30年後の被災地、そして香港…………張政遠
第7講 医療と介護の未来…………橋本英樹
第8講 宗教的/世俗的ディストピアとユマニスム…………伊達聖伸
第9講 「中国」と「世界」——どこにあるのか…………石井剛
第10講 AI時代の潜勢力と文学…………王欽
第11講 中動態と当事者研究——仲間と責任の哲学…………國分功一郎・熊谷晋一郎
感想・レビュー・書評
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難しい本かなと思ったけど、結構スッと読めた。今後の学びについて沢山ヒントがあった気がする。第一章の人新生時代の人間を問う。人新生の資本主義にもあったが、この考え方が理解出来て良かった。他の章だったかもしれないが、日本史と世界史を分けて理解するのではなく、関連付けて世界史を理解する取り組みは既に各所で始まっているみたいだが、自分もそういう学び直しがしたいと思った。最後の章の依存症は依存下手な人に起こる。みんな誰かに依存しており、依存が上手い人の方が安定しているというような話はとてもスッキリ理解出来た。納得した。医者の方がデータはそれを表す人の主張が必ず入るという章があったが、今野コロナの時代の医療関係クラスターの方々の発言を思い返し、何か嫌な気分になった。
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人文科学の力強さ、魅力、所掌の広さを「30年後の未来」というキーワードをもって伝えてくれる。いわば人文の見取り図と評したい。
個人的には人間の泥臭さ、醜さをこそ肯定的に捉えていきたいと常日頃から思っているが、まさにその話が随所に出てくる(章でいうと、9,10、1あたりか)ことにうれしくなった。
AIやスマートシティなどトレンドな言葉が出てきて、それを推し進める側の人間としては、このあたりの「人間」と「システム」の関係についてどう折り合いをなしていくかは継続して考えていきたいと思う。むしろそこを考えるためにその領域で仕事していきたい。 -
東アジア藝文書院が東京大学学部一年生向けに2020年に開講した学術フロンティア講義「30年後の世界へ ―「世界」と「人間」の未来を共に考える」を書籍化したもの。講義の記録動画はUTokyo OCW(東京大学OpenCourseWare)にて公開されています。
これから学びの場に立ち向かう学部新入生にたいし、アカデミックに生きるための技法(アート)として、「問う」姿勢を身につける事へのガイダンスがこの講義の趣旨であるようです。「30年後」をテーマに、わたしたちの未来を考えるための「問い」を各分野の専門家が連続講義で提示していきます。
30年後というテーマで思い浮かぶのは1970年に開催された大阪万博。「人類の進歩と調和」というテーマで開かれたこの万博の30年後は21世紀。高度成長期のまっただ中、前年の1969年にはアポロ11号による人類初の月面到達。皆が希望溢れる21世紀を思い浮かべる時代であった。しかしながら1990年の株価大暴落(バブル崩壊)以降、日本を含む世界経済は長く続く調整期にはいる。政治的にも1989年のベルリンの壁を受け東西ドイツの統一、1991年ソ連邦の崩壊と大阪万博のテーマが前提とする世界は大きく様変わりした。
現在は、このエポックメーキング的な時期から30年を経過したが、この30年間世界はなにやら閉塞感に支配されていたように感じる。コンピュータテクノロジーは大きく進歩し、バイオテクノロジーも想像の域を超える進化を遂げているが、今私たちは14世紀の世界が黒死病におびえたのと同様に新型コロナウィルスにおびえている。
過去に学び、30年後の世界にどう生きるか。30年後も今と同じ社会が続いている時代から、混迷の時代を過ぎて,今日より明日が確実に進歩しているという実感にある時代を経て、不確実な30年。次の30年はさらに不確実性がましている。そんな中で、私たちはどんな世界を描き、どんな世界を造りだしていくのか。「問う」姿勢を身につけ、答えを探り出す技術は、これから学びの深淵に踏むこむ学生だけでなく、すでに人生を歩み始めている人に対しても必要な技術となることでしょう。