福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書

  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799311585

感想・レビュー・書評

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  • 先日、国会の事故調査委員会が出した原発事故の調査報告書が出た。そこにはこの事故をしっかりと『人災である』と規定しているという。国会内の調査委員会なので、実はそこまでは期待していなかった。これから概略だけでも目を通すべきだと思っている。

    その前の、五月実は民間が出した事故調査報告書を読んだ。

    この中のものを読んだだけでも、あの原発事故が非常に構造的なものから起こったもので、それは大飯原発が稼動しようが野田がなんと言おうが全然改善されていないということが明らかである。

    私は全国民がさわりだけでも読むべきだと思った。というような感想を読んだ直後に以下に書いた。

    「福島原発事故独立検証委員会調査検証報告書」
    ざーと読んだ。疲れたが、いつかやらねばなぬ事だと思ったので、兎も角、細かい所は飛ばしながら読んだ。急いでいる人は、冒頭の北澤宏一委員長のメッセージだけでもいい。結論の多くはそこに書かれている。あと少し余裕がある人は、最終章「福島第一原発事故の教訓」がいい。此処に所謂全体の結論が書かれている。この報告書全体を通じて、課題、調査内容、結論という風に分けて書いているので、所々むつかしい文章はあるが、総じてわかり易い報告書だったと言っていいだろう。Webで読む事ができるので、多くの人はそこだけ読んだ方がいいかもしれない。検証内容を私は検証しているわけではないし、米国評価には不満がある。しかし、エリートパニック、絶対安全神話、SPEEDI、最悪のシナリオ、原子力ムラ等々の問題にキチンと切り込んでいるのは、評価出来る。

    この大部の報告書をWebで読むのは、限界があるので、私は少し高いが一家に一冊持っていても良いと思う(せめて、1000円以下にはするべきだ)。これから新たな知見が加わった時、それが全体の中でどういう意味を持つのか考え易いからである(例えば東電幹部の証言は拒否されてこの中には入っていない)。

    疲れた。例えば、この様な記述があり、私は暗澹とする。

    福島第一原発は、レベル7の大災害であったにもかかわらず、そして約11万人の人々が今も避難生活を余儀なくされている悲劇であるにもかかわらず、急性被曝による犠牲者はこれ迄存在していない。官邸中枢スタッフは我々のインタビューの中で「この国にはやっぱり神様がついていると心から思った」と思わず漏らしたものである。
    事故から時間が経つにつれて、事故のシミュレーション解析が進み、高温で溶解した核燃料の大半は、原子炉圧力容器を突き破って、格納容器のコンクリート床にまで沈みこんでいることが推定されている。「最悪のシナリオ」にきわどいところまで向かっていた可能性は十分にあった。(396p)

    そのときには、3000万人の首都圏の住民の避難が始まる。その時日本がどうなるのか、想像が出来ない。岡山にいる私も、おそらく今の生活はなかった。一年経って、日本が何も変わっていないのに、暗澹とするのである。

  • 【要約】


    【ノート】

  • 事故の経緯についての周辺からの調査については、とてもきめ細かくまとめられていると思いました。事故調査報告書としては異例の早さで刊行されたので出版された直後に書店で手に取りそのまま読みふけりました。

    独立調査委員会、というのはすなわち民間の事故調査委員会を独自に結成して調査をしているので、公式に発表されたデータに基づくよりほかなく、どこまで掘り下げられるのかという興味のようなものを感じつつ読みました。

    最後まで読み切って思ったのは、民間の事故調査ではどうしても事故の過程で起こった細かな出来事を裏付けるようなデータを手に入れることは難しいのですね。実際に各原子炉がどのような経緯をたどってメルトダウンにいたり、また、水素爆発に至ったのか、それ以前に冷却系がどのようにフォールダウンしていったのかは推測の域を出ないように思いました。

    その代わりなのかもしれませんが、事故に至る組織的な背景や社会的背景、安全神話に関する解析には相当量のページを割いてあるように思い、自然科学的背景よりもむしろ社会科学的な解析に力点が置かれているようにも感じられました。

    実は読み終わってもう1年以上になるのですが、今回レビューを書くにあたってあらためてパラパラと読み返し、もう一度真剣に読みなおしてみようと思い始めたところです。

    まだお読みでない方はぜひどうぞ!

  • 非常に興味深く読みました。
    最終章の「全電源喪失を起こした11日から、(中略)破局に至るすべての種はまかれたと思われる」というショッキングな記述のように、初日の時点ですでに取り返しのつかない状況が起こってしまったこの災害について、安全管理、組織、社会の3つの視点からの分析と示唆が述べられています。
    結局のところ、それら3つの視点においてどれもがこの災害を引き起こすべくして起こったのだ、というふうに書かれていますが、共通している背景は「原発は絶対に安全である」という本来存在するはずのない、「安全神話」があったのだと思います。好む好まざるを問わず「安全神話」が(結果として)官民共同で作り上げられ、それを崩さないための新たなプロパガンダが作られ、さらには隠蔽までが生まれ、それが世に晒されたとしても、地域に根ざした原子力ムラに依存せざるを得ない住民は無下に原発を拒否する事もできず、「致命的な事故は起きないのではないか」という心理を作り出し、やはり「神話」は「神話」として塗り固められていく・・・という、まさに負のスパイラルが、誰にも止められない状態になってしまっていたのだと思います。
    こういった状態は、このようなプラント災害とは関わりがなかったとしても、一般企業のコンプライアンスや安全対策にも示唆を与えることと思います。
    そして、一刻も早く、地域住民の方々がもとの生活に戻れるようにできる限りのことをするとともに、祈っていきたいと思います。

  • 内閣府や国会の事故調とは別の,民間による調査報告。事故の技術的側面だけでなく,各機関の対応(含リスコミ),歴史的・構造的要因の分析も含んだ幅広い内容。
    事故当時の政府要人や,政府職員・専門家など,約三百名へのインタビューをもとに,事故の原因を究明していく。かなり大部で,くまなく読みこんだわけではないけれど,五月雨式の報道を通してしか触れられなかった事実を,まとまったかたちで見ることができたのは良かった。
    官邸の介入はかなり「想定外」のことだったらしい。撤退拒否のように,それがいい方に作用したことも,福一に乗り込むみたいに,悪い方に作用したこともあった。菅さんは慌てふためいて張り切り過ぎてしまったという感じだろうか。
    あと,オンサイトでの自衛隊・警察・消防の活躍(主に放水)も「想定外」。彼らはあくまでもオフサイトでの後方支援の役割を担うはずだった。オンサイトの対応は東電自身が行なうことを想定。結果的には,実力を有する組織された部隊が,臨機応変に活用されたということか。
    SPEEDIについては,事前の防災計画で十分に活用されず,事故発生後の緊急時対応では価値が認められなかったにもかかわらず,社会的に過度な期待が集まってしまったことがまずかったと評価。このことが,政府不信を増長してしまった。
     なんにしても,これだけの事故だったのだから,ぜひとも教訓を学んでいかないといけない。

  • この手の報告書にしてはとても読みやすいです。

  • こっちも目を通しておこう

  • 福島原発事故の報告書は、国会事故調、政府事故調と、この民間の独立検証委員会の報告書の3種類あります。この本はその3つ目の報告書です。400ページ以上あって、けっこう読むの大変でした。ちゃんとした報告書だけあって内容はちゃんとしています。(当たり前か。) でも東京電力は協力しなかったそうで。残念な対応ですね。
    原発事故から2年が経ち、すでに色々なことが語られていますが、やはり思うのは現在の日本には原発のような危険なものを管理する資格も能力も無い、ということでしょう。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:543.5//F84

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