経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
4.20
  • (215)
  • (220)
  • (66)
  • (14)
  • (5)
本棚登録 : 2917
感想 : 204
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799313138

作品紹介・あらすじ

コンサルタント、学者、企業家たちは、こうしてビジネスを進化させてきた!ビジネス史を変えた戦略コンセプトを総ざらい。一気読み!経営戦略丸わかり。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 永く書店の店頭で平積みされているだけあって、確かにお勧めできる本です。

    科学の進化はより真理に近い間違いであるというので、最新の理論が現時点で最も良い理論なのかもしれませんが(そうじゃないことも多いですが)、他方学史を辿ることの意義は、最新の理論が背負っているプロセスを知ることです。

    この本では、社会背景に合わせて経営学の考え方やフレームワーク、フレームワークが変わってきたことがよくわかります。テイラーとメイヨーによる大きな枠組み、ポジショニング/ケイパビリティからのアプローチを経て、グローバルとIT化による社会の変化への対応といったここ100年の経営学史が俯瞰できます。

    何よりも大きいのが、当初大企業における経営幹部のマネジメントが中心対象であったのが、スタートアップやソーシャル、あるいは個人の経営戦略にフォーカスが置かれるようになってきており、それこそリンダ・グラットンの『ワーク・シフト』のような自己啓発本としても読まれる本も終盤に登場しています。

    そういう点では、イノベーションのジレンマを克服するためには大企業はグーグルの小プロジェクトのような企業内スタートアップにスポットライトを当てるための知見が揃ってきていると言えるし、しかしながら著者は最終盤に「市場の定義に始まり、市場の定義に終わる」と書いているように、結局は大企業にしてもスタートアップにしてもどこかで戦う場所がクロスするので、結局はポジショニングが大事なのではないかと思います。

  • 経営学というのは比較的新しい学問である。その端緒は20世紀初頭のテイラーにさかのぼる。この本では、テイラーの科学的管理法から、イノベーション、学習する組織、スタートアップあたりまで、百家争鳴の経営理論を、流れるように理解させようと試みている。

    基本的には、ここに出てくる理論、手法についてはオリジナルの本で読んでおくべき。そうしないと、筆者の解釈が刷り込まれてしまい、自分で学ぶと得られたかもしれない発想や着眼が得られないおそれがある。

    その上で、この人の解釈はまあ面白い。科学的に分析できる、ベストプラクティスがある、結局はセンス、などの潮流が巡り巡るさまは、経営理論なんて実務家には必要ないな、なんて感じさせる。ただ一つ惜しい点は、最後のほうで筆者の三谷さんの戦略ツールを自慢げに披露している点である。いろんなツールの寄せ集めで、そぎおとすものもそぎ落とさず、これじゃ使ってもらえないなと感じる。

  • 過去100年にわたる経営戦略全体を俯瞰すると、以下のように推移してきた。
    ①「経営」の定義:テイラー(科学的管理)、メイヨー(ホーソン実験)、フェイヨル(経営管理プロセス)、バーナード(外部環境への適応手段)、ドラッガー(マネジメント)
    ②ポジショニング派(有望な市場を探せ):アンゾフ(アンゾフマトリクス、市場浸透・市場開拓・製品開発・多角化)、チャンドラー(組織は戦略に従う)、アンドルーズ(SWOT)、ヘンダーソン(PPM、スター・問題児・金のなる木・負け犬)、ポーター(ファイブフォース)&(戦略3類型、コストリーダーシップ・差別化・集中)
    ③ケイパビリティ派(企業の強みを活かせ):ピーターズ(エクセレントカンパニー)、ハメル(コアコンピタンス経営)、ハマー(リエンジニアリング革命)、ストーク(タイムベース競争戦略)、野中郁次郎(知識創造の経営)、センゲ(学習する組織)、バーニー(RBV)
    ④一緒にやれば派(状況に合わせた組み合わせ):ミンツバーグ(経営戦略は芸術&創発的)、キム&モボルニュ(ブルーオーシャン戦略)、アンゾフ(戦略経営論)
    ⑤イノベーション派:シュンペーター(イノベーションの原動力は企業家)、ドラッガー(イノベーションと企業家精神)、クリステンセン(イノベーションのジレンマ)
    そして現在、やってみなくちゃ分からない「試行錯誤型」経営が最後の答えであり、具体的な経営戦略は「リーンスタートアップ」、「アダプティブ戦略」の2つである。

  • まぁ絶えず変動する「戦」のお話ですよ、これは。だからどれも学問として成立しない絶え間ない実践話というところが究極的なミソなんでしょう。
    人道的観点などこれっぽちもない、徹底的な生き残りの方策検討。詰まるところリーダーを頂点にした構図を絶対的是とし、そのリーダーがいかに人・物資をすべからくモノとして上手に捉えるか。
    ですから人間の闇とか深淵とか全くスコープ外、ある意味能天気な人達のための深みなどないお伽噺です。ただ厄介なのはこの人たちはほぼすべからくカネを持ってます。まぁそういうことです、世の中というものは。それが嫌いでもどうしようもないってことはあるもんです。

  • とても勉強になった。大きい本屋さんに行っても、経営戦略系の本は有象無象すぎてどれを読めばいいかわかりにくいし、この分野の「流れ」がわからないなあ、とずっと思っていたので、分厚かったけど読んでみることにした。
    この本に書かれていることも著者のバイアスがかかっているようなので(ところどころに著者の個人的な感情が見て取れた)、そのへんは織り込んで読み進めないといけないが、その手間を補ってあまりある、よく整理された内容だった。
    「流れ」を頭に定着させるために、もう一度読んでみよう。そのあとはそばに置いて辞書的に使おうと思う。

  • 経営戦略への扉を開く本。アカデミックな素地をベースにしつつも平易な言葉で、人間ドラマを織り交ぜ面白く書いてある。

    ●感想
     結局、「これをすればうまくいく」という万能の経営戦略はない。実務上は自分の頭で考え、戦略を練るしかない。では、あえて「経営戦略」を学ぶことの意味は何か。それは大きく分けて二つあると私は考える。1つは「新しい選択肢」に気づけること。「安く売る」ことしか頭にない経営者がいたときに「差異化戦略」について学べば、もっと良い戦略を思いつくかもしれない。2つめは「今やっていることをコンセプト化できる」ことだ。「今企業の業務上行っていること」が経営戦略上のフレームワークにあるならば、従業員や役員に理解してもらうために、経営学上の用語を利用できるだろう。業務上のマネジメントの際に、学者やコンサルティング企業が作った整理図やロジックを根拠として使える。勝ちパターンなどを過去の文献に学ぶことができるのだろう。

  • 経営戦略100年史、132名の人物、書籍72冊にわたる経営理論やツールについて、概観を端的に説明されており、充分に自社や顧客をに当てはめて考えながら読める。知っているつもりでも、改めて考えるきっかけにもなる。気になるものは、原典にあたればよいし、とても参考になったと思う。私にとって的確な濃度というか。、そんな感じでした。

  • ずいぶん前にベストセラーになってたものを今更ながら。経営戦略の諸理論を時系列に紹介。テイラーあたりから始まって、ポジショニング派の隆盛とケイパビリティ派の勃興、2大潮流揃い踏み以降の展開、というごくスタンダードな流れでとっつきやすい。また、冒頭に書いてあるようにコンサルティング会社の生み出したフレームワークやツールにも十分なページを割いている点もいい。経営学の標準的な教科書をひと通りやったことがある人には、知識の補完や整理に読いいと思う。

    知らない人や理論がいくつかあったので、まだまだ勉強不足だなと反省。

  • 小難しそうな本だったけど気になってたので読んでみました。400ページ近くあって読書が苦手な自分にとっては読み始めるのに躊躇ってましたが、夢中になって読んでしまった。

    フレームワークや考え方をぐろびっちゃんで習うけど、どんな背景でどんな人が作ったのか、フレームワークの名前になってる人が本来やってたこと(アンゾフとか)、経営にまつわる論争とか100年の時間の流れの中で様々なコンセプトが生まれては廃れ、すべての理論は間違っているとしながらもマネージャーはどれかをえらばなければいけないというのは深いなーとほんと勉強になりました。

    三谷さんの講義受けたことあるけど、講義自体も楽しさとわかりやすさで溢れてて、学びがしっかり伝わるように一味も二味も違う工夫されてたなーと。この本も大した知識ない自分にとってもワクワクしながら読めるのがほんとすごい。
    今学んでることが整理できたし、それぞれの意味合いがわかり、とってもオススメです。

  • 100年にわたる経営戦略史の解説。日常のビジネスに活かすのではなく、知識の一部として。我々が毎日、瞬時に判断する「当たり前の事象」を論理立てて説明しているが、結局は「当たり前」のことなので、読後の率直な感想を一言で表すと「そりゃそうだ」であり、それ以上でもそれ以下でもない。帯の文句に期待しすぎた感あり。デザインは秀逸。

全204件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

金沢工業大学大学院 教授
1964年生まれ。87年東京大学理学部卒業。92年INSEAD卒業。経営学修士。87年ボストンコンサルティンググループ入社。96年アクセンチュア株式会社入社。アクセンチュア 戦略グループ エグゼクティブ・パートナーを経て現職。

「2023年 『マンガ ビジネスモデル全史〔新装合本版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三谷宏治の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×