辞書に載る言葉はどこから探してくるのか?ワードハンティングの現場から (ディスカヴァー携書)
- ディスカヴァー・トゥエンティワン (2013年12月27日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784799314333
作品紹介・あらすじ
「ワードハンティング」とは、獲物をねらうハンターのように、「まだ辞書に載っていないことばはないか」「意味が変わってきたことばはないか」と、ことばを探すこと。著者は、本や新聞・雑誌、テレビやインターネットから新しいことばや用例を探すのに飽き足りず、「街の中のことば」を調べようと、デジタルカメラを持ってワードハンティングに出かけた。それぞれ特徴ある24の街で、看板やポスター、値札などから生きたことばを採集、撮った写真は3000枚超に。本書ではそれらの中から選りすぐりのことばを紹介。常に変化していく日本語の最先端の様子を生き生きと伝える。
感想・レビュー・書評
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「なんとも奇妙な本ができました。いわゆる『路上観察』の本のようでもあり、東京お散歩ブックのようでもあり、日本語エッセー集のようでもあります。しかしてその実態は、というと、国語辞典のための用例採集の記録、としか言いようがないものです。」
そもそも著者の本を読むきっかけはNHKラジオ第1の「すっぴんインタビュー・アンコール」を聴いたからなのだが、まさしく本書はこのインタビューで話していた「言葉の収集」の話である。
「辞書を作るため」というだけあって、さすがに着眼点がおもしろい。
例えば「きゃべつ」。何の不思議もない言葉であるが、本来は外来語だからカタカナ表記の「キャベツ」と書く。それをひらがなで書くというのはつまりそれだけ日本語の中に定着している、というわけだ。
本書を通じてこんな感じで、「なるほど」「へー」と言った感じで思わず読み込んでしまった。
【引用】
この条件(辞書に新しい言葉を採用するにあたっての条件)に当てはまるにせよ、当てはまらないにせよ、街で実際に使われている言葉には、それぞれ独特の魅力があり、輝きがあります。(P11)
「メガ」より遅れて、今また、インターネット方面から「ぐう」ということばが広まりつつあります。「ぐう畜」(ぐうの音も出ないほどの畜生)、「ぐうかわ」(非常にかわいい)など、程度の大きさを表します。(P56)
中野区と新宿区にかかる淀橋は、昔から「ヨドバシ」と呼ばれてきました。ところが、古い石の親柱には「よどはし」と彫ってあります。「ど」にしか点がありません。これも、「ヨドハシ」と読ませたいわけではなく、「橋」であることがぱっと分かるように、「はし」には点を打たなかったのでしょう。現代仮名遣いになれた私たちは、常に発音のとおりに書き、書いたとおりに発音すると思っていますが、実際はそうでないことも多いのです。(P69)
一般に、人の呼び名というものは、段々と手垢がついてくるものです。尊称だった「貴様」が、時代が下るにつれて罵倒語になったのは典型例です。(P75)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
周りをよく見て流れがちな言葉について少し考えたりしてみようと思った。面白いなぁ言葉。
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飯間先生のアクティブさ。
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国語辞典の改訂作業をするために、筆者は日々街中で「ワードハンティング」をしています。ワードハンティングでは、1ヵ月で約400語の言葉を記録するのだそうです。この本では、実際にその様子や筆者がどのように言葉と出会っていくかを知ることが出来ます。普段目にしているはずなのに、流してしまっている言葉も、もしかしたらまだ辞書には載っていないのかもしれないと考えると、私自身もワードハンティングをしてみたくなりました。
新しい言葉を採用する際の2つの条件
1)その言葉が、世の中に多く使われていること。多数の例が集まること。
2)その言葉が、この先もある程度長く使われると見込まれること。一時的な流行語でないこと。 -
著者は、小型辞書の雄、“三国”こと三省堂国語辞典の編纂者。たまにtwitterでもお名前を見かける。
三国の新しいバージョンに載せる言葉を採取するための街歩き紀行的な文章でもあり、採用すべき言葉にどんな語釈を当てようかと試行錯誤する作業を横から覗き込ませてもらっているような、そんな感じが楽しい。街中でつい変わった表記の看板を見つけてしまう体質の持ち主としても興味深かった。
辞書のボリュームを考えると、面白いエピソードがまだまだありそう。もっと読みたかったので☆3です。 -
辞書に載る言葉はただ座っているだけで集まるものではなかったのですね。
街に出て生きた言葉を拾う。気長で大変そうな半面いろいろと街遊びもできる面白そうな役割。
ただどこまで辞書という物を信頼すればよいのだろうか。そこに不安要素を見いだしてしまった。 -
大変面白く読ませてもらいました。
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国語辞典の編集者を主人公に据えた三浦しをんの小説「舟を編む」以降、注目が集まるようになった辞書の世界。本書は三省堂国語辞典の編集委員が辞書に載せる言葉をどうやって「ハント」しているのかを、東京町歩きと絡めながら綴ったエッセイっぽい本です。
読み終えて「言葉って生き物なんだなあ」ってことを強く感じました。増えたり、消えたり、変わったり。それぞれの言葉の成り立ち(例えば「ふわとろ」は「ふわふわ」と「とろとろ」という二つの異質な擬音をくっつけてできている言葉で、こういう作り方の新しい擬音が増えてるとか)も簡単に触れられていて、面白いです。
ところでこうやって辞書に載せる言葉を探したり、言葉の意味が変わっていないか目を光らせることを「ワードハント」と三省堂国語辞書の初代主幹は名付けたそうです。なぜに「国語辞典なのにカタカナ表現?」と思ったけど、日本語で表現すると「言葉狩り」になってしまいものすごく別の意味に・・・。こんなところも言葉の面白さですね。