辞書に載る言葉はどこから探してくるのか?ワードハンティングの現場から (ディスカヴァー携書)

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799314333

感想・レビュー・書評

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  • 飯間さんは『三省堂国語辞典』の編集者の一人であり、つい昨年『辞書を編む』という本を出して、辞書の編集者がどのような仕事をしているかを開陳したばかりだ。そこでは、正攻法として、本や雑誌からいかにして語を採取するかを語っているが、本書では語の採取が単に書物だけでなく、街を歩いてもとれるのだということを紹介している。これはまさにぼくがやっている方法と同じだ。違うのは、ぼくは街で見る漢字を通し、日中の漢字の意味の違いを追いかけているが、飯間さんは、採取した語を自ら編集する国語辞書に入れようとしている点だ。共通の点といえば、先日のテレビ(2013・1・23?)で飯間さん自身が言っていたが、こうした写真を撮っていると、ときに「誰何」されるという点である。本書はまた、東京の町歩きの案内書でもあり、どの地区では看板、掲示にどのような特徴があるかを語る。いや、それだけではなく、本書の端々には、国語学者としての飯間さんの蘊蓄、分析が入る。たとえば、江戸時代「丼」といえばウナギ丼のことだったとか、エレキギターが登場したことでこれまでのギターは、アコースティックギター、略してアコギと呼ばれるとか。(これには「急行」が出てきて「鈍行」が生まれ、「洋画」の登場で「邦画」が生まれたという鈴木孝夫さんの論考がある。ぼくの家の側を走る渥美線は急行もないくせにホームには「普通」という表示が出ている)、「鮭」とサーモンの違い、「サラダバー」「ジュースバー」のようなバーの新しい用法などなど、なるほどとうなづかされる指摘が各所に見られる。(バーについては中国語の口巴baの意味拡張と似ている。)

  •  言葉を探すのは何もインターネット上だけではない。文化人類学者がフィールドワークをするように、国語学者もフィールドワークをして新語を発見する。探すのも大変だが整理するのも大変だろうなあ。

     「ババ歩き」という言葉が載っている。「ババ」といってもおばあさんやおばさんの歩く姿ではなく、早稲田大学の学生が高田馬場から大学まで歩くことを言う。余談だが、今年の箱根駅伝は総合4位だった。東洋大学、駒澤大学という2つの壁は厚く破るのが難しかった。

     山手線で新橋まで足を運ぶと目立つのが「癒し」だそうだ。指圧、マッサージに限らず「癒し」に満ちあふれている著者曰く「癒しの街」だ。中には「いやし」ではなく、「いやらし」の空間もあったりして。

     明治大学のあるお茶ノ水に目を移してみると、著者はある看板に注目した。それは「楽器の街 お茶ノ水 唯一の/アコギの専門店」だ。「アコギ」と言うとどうしても浮かんでくるのが「越後屋、アコギな商売をするとはおぬしもなかなかの悪よのう」だな。とは言ってここの「アコギ」はアコースティックギターの事で、悪いイメージが漂う方ではなかった。

     言葉というのは、生き物なので移り変わりがある。「ふしぎ発見!」ならぬ「ことば発見!」をしに街に繰り出してみると面白いかもしれない。

    PS 新年あけましておめでとうございます。読者の皆様、今年もよろしくお願いします。

  • ワードハンティング!

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著者プロフィール

香川県生まれ。国語辞典編纂者。『三省堂国語辞典』編集委員。新聞・雑誌・書籍・インターネット・街の中など、あらゆる所から現代語の用例を採集する日々を送る。著書に『辞書を編む』(光文社)、『辞書に載る言葉はどこから探してくるのか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『辞書には載らなかった不採用語辞典』(PHPエディターズ・グループ)、『辞書編纂者の、日本語を使いこなす技術』(PHP研究所)、「日本語をつかまえろ!」シリーズ(金井真紀・絵 毎日新聞出版)など。

「2023年 『けいごって しってる?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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