ビジネスモデル全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)
- ディスカヴァー・トゥエンティワン (2014年9月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784799315637
感想・レビュー・書評
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前著の「経営戦略全史」と同様に読み物として良い本。ビジネスモデルの研究史の紹介が少なく、そのためにビジネスモデル同士を横串で比較する視点に乏しいので、そこが強化されればより良かったと思う。
ただ、「コースの定理」の説明を完全に間違えているのがすごく気になった(302ページ)。
R. コースの主要な業績は、The Nature of the Firm(1937)とThe Problem of Social Cost(1960)という2つ論文。この足しても60ページくらいの短い論文でコースはノーベル経済学賞を獲ってる。
このうち、「コースの定理」と呼ばれるのは、取引コストゼロの場合、所有権の配置に関わらず当事者間の交渉で社会的厚生が改善されるという命題で、1960年の論文(の前半部分)で主張されたもの。
ところが、本書では、企業境界の決定要因は企業内外での取引コストの多寡によるという1937年の論文をあげて、これをコースの定理と紹介している。
どちらも確かにコースの主張だけど、「コースの定理」が1960年の方ということは広くコンセンサスを得ており議論の余地はないはず。実際に、1937年を指してコースの定理と呼ぶ例に出会ったことは一度もない。だから、本書でのコースの定理の説明は間違いというほかないと思う。
企業理論や契約理論など経済学・経営学で広く使われる、ごくごく基本的かつ極めて重要な概念なのに、なんで間違っちゃったのだろう。著者は結構な経歴の人だけど、ずっと間違えたまま覚えているんだろうか。
本書の論旨に関わるものではないし、間違いをゼロにはできないけど、これくらいのベストセラーだと間違いがそのまま広まってしまいそうなのが気がかり。ネットで検索した限り、間違いをそのまま引用してる書評やレビューがちらほらある一方で、間違いを指摘しているものは見つけられなかった。もしかして、数千人、数万人単位で間違えて覚えてるかも。
最新の版では直ってて欲しいところです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いろいろなビジネスモデルが端的に紹介されていてサラリと読めるが、ひとつひとつの内容や紹介の順序(というかストーリー性?)はものすごくわかりやすいというわけでもない気がする。
図解などされていればもっと頭に入ってきやすいのかな?一通りのビジネスモデルを軽くおさらいしたい人向けだなと思った。 -
ビジネスにおけるビジネスモデルの考え方の変遷をまとめた本。過去の経営者たちが、誰の考え方や実践をもとに子ビジネスモデルを考えたかなどの関係性にも言及されており分かりやすかった。ただし、内容としては各論の記載が浅く、広く学びたい人にはオススメだが、ある程度知識がある人には物足りない内容であった。
Amazonのロングテイル戦略は、従来は書店の店を無駄に閉める赤字商品であるロングテールを多くとり揃えることによって、全米で1冊保有しているだけの書籍から利益を上げることができる。
Appleでは、スティーブ・ジョブズが「どれだけ良いアイディアを殺せるかが勝負だ」と言った。極端に製品LINEやタイプバラエティーを絞り込むことによって、感性品質の圧倒的向上が実現できた。
知的財産ことこそが競争優位の源泉である。例えばブリヂストン、ジレット、トヨタ、Facebook、クアルコムなどは知的財産を最重要視しており、他者との協業や競争を強力にサポートしている。
村田製作所においては、社長の分身100人が即座に意思決定を下している。商品担当意思決定者達ですら、原則としてどんな交渉でもいちど持ち帰りますと言う対応は許されていない。この意思決定と対応のスピードは村田製作所がもともと時間をかけて築き上げていたものです。これが近年の通信業界やIT業界、電子部品業界のスピード感にマッチしている。 -
図書館で借りた。全体を掴むには適している。
結局は仲介をいかにうまくやれるかということだなぁ -
ビジネスモデルの進化事例
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ビジネスモデルは結局ケーススタディどまり?流行したビジネスの仕組みを紹介。大きなストーリーやメッセージがあるわけではないがビジネス教養としては面白い
●本の概要・感想
ビジネスモデルの全史をメディチ家から現代のアップルやグーグルまでの選定になぞった本。ケーススタディが中心である。「イノベーションのジレンマ」の実例紹介本のようなものか。チャレンジャー企業がいかにして新しいビジネスの仕組みを確立したかが語られる。
本書の理解が足りないのかもしれないが、三谷氏が「どういう基準」でケースの選択を行ったのかが不明である。本書の取り上げられるケースはITバブル時代以降のIT系のモデルを取り上げられることが多い。したがって、「全史」と銘打ってはいるが、取り上げるビジネスモデルの多くは現代のもの。昭和時代に日本を興してきたようなケースは紹介されない。「銀行」とか「商社」とか「テレビ」とか「自動車産業」といったビジネスについては触れられていなかった。あくまで、著者が独自に選んだ産業と事業について紹介してく本。
*ビジネスモデルが新しく生まれるとき
・どんなビジネスモデル変革も、既存のビジネスを上回る新しい付加価値を提供することで生まれる。既存ビジネスを超える付加価値を顧客に提供する必要がある
・そのうえでチャレンジャーのビジネスがきちんと利益を生み、継続的に発展していく必要がある
→まぁこのあたりは競争戦略論でさんざん議論していることではあるが...
*「ビジネスモデル論」の面白み結局のところ、何なんだろう?
戦略論の面白みはその取扱いのしやすさだと思う。「ブルーオーシャン戦略」とか「ポジショニング戦略」とか「コアコンピタンス」等と企業の勝つ要因を概念化して、いろんな企業家が真似できることである。そのような概念に基づいて定量分析をして、企業の勝つ法則を新しく見つけること。戦うための引き出し増やしていけることが面白い。
一方で、「ビジネスモデル」とは企業家にとってのインプリケーションが弱いように思える。紹介されるものが具体的すぎて、取扱いにくいからだ。本書の「ビジネスモデル」への迫り方も、徹頭徹尾ケーススタディである。その時代に流行ったビジネスの仕組みが解説されている。戦略論よりは具体性があって面白いが、どう取扱うか、というところまでは記述されていない。
著者は経営学研究の文脈において「ビジネスモデル研究は金の鉱脈だ(虚うろ覚え)」というようなことを言っていたのだけれど、どう重宝されるかがいまいちイメージできなかった。確かに読み物としては面白いのだが、これは科学的研究にはなりえず、あくまでビジネスを知的に面白がりたい人のためのアート系の話であるように思えた。ビジネスモデルは法則を解き明かさない。あくまである成功しているビジネスの仕組みを解説しているだけである。もちろん、そういったケースを多く知っていることが、知恵を結びつけるように思う。でも、上手くいっているビジネスモデルは結局のところ戦略論やマーケティング論で解説できるのではないのかと思う。ただ、具体的なビジネスモデルとして解説するよりも、最初から戦略論やマーケティング論の文脈で流行しているモデルを解説したほうが、取り扱いやすいのではないか。
もちろん、そもそもビジネスモデル論議が抽象化自体を試みていない仕組みであるし。そのように取り扱われることを志向していないのかもしれないが。 -
経営戦略論の始まりから現代に至る経緯を人物や具体例を交えて説明している。組織論から、ポジショニング、ケイパビリティなどを経て、70年代に世界を席巻した日本企業の戦略を捉えようとしている。
コアコンピタンス、ブルーオーシャン戦略などから、イラク戦争における「強い組織」の失敗から現場型の高速試行錯誤経営の強みを説明するに至っている。
B3Cの分析モデルなど、日々の考えを体系化してくれており面白い。 -
320ページから323ページにビジネスモデル革新の系譜という年表(14cから2010まで)を含んだまとめがある。そこで知らないビジネスモデルや語があれば、目次を辿って読んでみるぐらいで良かったかもしれない。
あくまで本書は全史かつ代表的なビジネスモデルを取り使っているため、ウェブサービスの取扱は少なく感じる。紹介されたウェブサービスにはクックパッドやeBay、Googleなどがあった。 -
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