「学力」の経済学

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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レビュー : 587
  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799316856

作品紹介・あらすじ

ゲームは子どもに悪影響?教育にはいつ投資すべき?ご褒美で釣るのっていけない?思い込みで語られてきた教育に、科学的根拠が決着をつける!

感想・レビュー・書評

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  • ・本書では「ランダム化比較試験」という実験を使うことで信頼に足りるエビデンスを基に教育効果の因果関係の有無を展開
    ・教育に関しては個人の意見を聞きたがる傾向がであるが、科学的根拠に基づく統計的なデータにより規則性をみつけていく事が本来的には重要である
    ・米国のブッシュ政権時代の「落ちこぼれ防止政策」ではまさに科学的根拠を重要視してきた
    ・科学的根拠に基づく教育政策とは「どういう教育が成功する子供を育てるか」を科学的に明らかにしていく試み
    ・読書や宿題をやるなどインプットにご褒美をあげる方が、成績を上げる・テストで良い点をとるなどアウトプットにご褒美をあげるよりも顕著に学力が向上。分かりやすく具体であることが理由。
    ・子供をむやみやたらに褒めると実力が伴わないナルシストになる
    ・自尊心が高いから学力が高いという因果関係はない。むしろ逆であり学力が高いから自尊心が高い傾向にある
    ・研究結果から、子供の能力(頭がよいなど)を褒めるよりも、努力や具体的に達成したこと(今日は何時間勉強した)ことを褒めるほうが更なる努力を引き出し、困難にもチャレンジできる子に育つ
    ・テレビやゲームは1日1時間までであれば影響はないが、2時間以上は学習時間など負の影響が大きくなる
    ・勉強をしなさい、と言う事は全く意味がないどころか逆効果になるのでやめたほうがよい。一緒に勉強をみたり手間をかけることで効果があり、娘なら母親、息子なら父親など同性の方がより効果が高い
    ・子供の友達の影響は大きい。悪友からのマイナス影響に対して親ができる事は思い切って引っ越しをするという事も選択肢の一つになる。
    ・幼児教育は割りの良い投資であり、就学前が一番投資収益率が高く、犯罪率の低下などの観点からも社会全般にとっても良い投資である
    ・学校は学力(認知能力)だけでなく非認知能力を養う所としても重要である
    ・非認知能力の中でも「自制心」と「やり抜く力」を養う事が重要
    ・自制心は筋トレと同様に反復させることで鍛えられる。例えば背筋を伸ばすことを何度も言われ続けてそれを忠実に実行した子どもの成績は良い影響を与える
    ・しつけ(=勉強をする、嘘をつかない、ルールを守る、他人に親切にする)を親に教わった人は、勤勉性を養えるという理由からそうではない子どもよりも年収が高くなる

  • 育児書は私の経験談的主観の本が多く、なるほどなと思うものもあるが、「本とかね?」と思うものも少なくなかった。本書はデータを元にした教育論書で、今までにあまり無かったタイプの育児論書。納得感も大きい。

    ふと、育児についても考えてみた。このような本を読み、育児の事について考えている時間も育児なのだろう。この知識を生かせれば良いな。

    【学】
    ご褒美は「テストの点数」等のアウトプットではなく、「本を読む」「宿題をする」などのインプットに対して与えるべきだ。アウトプットは具体的には何をやればよいのかわからない。

    自尊心が高いと学力が高まるのではなく、学力が高いという「原因」が自尊心を高める結果になっている

    「あなたはやればできるのよ」などと言って、むやみやたらに子供を誉めると、実力が伴わないナルシストを育てることになりかねません。とくに、子供の成績がよくないときはなおさらです。

    「頭のいい子ね」と元々の能力を誉めるメッセージを伝えると子供たちの意欲を失わせることになる。
    一方「よく頑張ったね」と努力した内容を誉められた子は、2回目、3回目のテストでも粘り強く問題を解こうとチャレンジし続けた。

    最近の研究でも、特に苦手教科の克服には、異性同志の教師と生徒の組み合わせの方が有効である

    人的資本への投資はとにかく子供が小さいうちに行うべきだ(小さいうちに、金、時間をかけろ)

    家計が大学卒業までに負担する平均的な教育費は、幼稚園から大学まですべて国公立の場合で1,000万、すべて私立の場合では2,300万に上がる。子供がいる家庭は、年収の40%を教育に使っている

    ペリー幼稚園プログラム
    未就学児に、少人数制で読み書きや歌のレッスンを平日2.5時間実施、家庭訪問し親にも育児アドバイスをしたところ、40歳になっても継続して、所得が高い、逮捕率が低いなどの効果があり、社会収益率は年率7%~10%にも上がる計算になった

    高校を卒業後すぐに働き始めた人と、大学を卒業してから働き始めた人の間には、生涯年収で一億円の差

  • 「教育経済学者」の著者(慶應義塾大学教授)が、自らの研究と見聞をふまえて書いた一般書。
    データに基づき、経済学的手法で教育について分析する「教育経済学」のエッセンスが、わかりやすく紹介されている。

    4年前(2015年)に出た本で、私は仕事の資料として読んだ。
    30万部突破のベストセラーになっているそうで、昨年には本書のマンガ版(『まんがでわかる「学力」の経済学』)まで刊行されている。

    私は「教育経済学」という言葉さえ知らなかったド素人だが、本書は大変面白く読んだ。

    《教育経済学者の私が信頼を寄せるのは、たった一人の個人の体験記ではありません。個人の体験を大量に観察することによって見出される規則性なのです。》(17ページ)

    著者の指摘どおり、教育や子育てについての日本の論説の多くは、エビデンスを重視する科学的姿勢に乏しい。
    子育てに成功した人(「子どもが全員東大に入った」とか)の体験を綴った本をありがたがって読んだりするわけだが、その個人的体験に普遍性はないのだ。

    《子どもへの教育を「投資」と表現することに抵抗のある人もいるかもしれませんが、あくまでも教育を経済的な側面から見れば、そう解釈できるということにすぎません。》(74ページ)

    本書には〝子どものいる家庭は年収の40%も教育費に使っている〟という、日本政策金融公庫の調査データが紹介されている。これほど多額のお金を子どもの教育に費やす以上、コストパフォーマンスが厳しく求められるのは当然だろう。
    家庭では「投資」という言葉があまり使われないだけのことで、教育費は子どもの将来に対する「投資」にほかならないのだから……。

    《過去日本が実施してきたさまざまな教育政策は、その費用対効果が科学的に検証されないままとなっています。》(116ページ)

    そう指摘する著者は、データ、エビデンスに基づき、さまざまな教育の費用対効果・効率・収益率(!)などについての興味深い話を、矢継ぎ早に紹介していく。
    たとえば――。

    《どの教育段階の収益率がもっとも高いのか、と聞かれれば、ほとんどの経済学者が一致した見解を述べるでしょう。
     もっとも収益率が高いのは、子どもが小学校に入学する前の就学前教育(幼児教育)です。》(76ページ)

    情緒的でキレイゴト満載の「教育論」に慣れた目には、著者の冷徹でクリアカットな語り口が小気味良い。

    教育について経済学的観点から研究する著者は、教育の現場にいる人たちから、しばしば次のような批判を浴びてきたという。

    《「あなたの研究は、子どもはモノやカネで釣れるということを示すためのものなのか」
    「教育は数字では測れない。教育を知らない経済学者の傲慢な考えだ」》(182ページ)

    〝教育は聖域、教育者は聖職者〟みたいな時代錯誤の思い入れを、いまだ強烈に持っている人が多い世界なのだろうな。

    しかし、これからの教育に必要なのは、著者のような視点のほうだと思った。

  • 私は、本書を今国会でも問題になっている統計不正の見地から読み進めました。
    本書でも述べられていますが、政府機関が税金を使って作成した統計内容がすべからくオープンにされていないというのが、不正の温床だと思いました。
    もちろん、細かな聞き取り先や個人情報などに含まれる項目まで開示する必要はなく、いつ、どういう対象を選び母数は何人でどんな質問をし、どんな結果になったのかという最低限の内容はすべて公表すべきです。
    貴重な税金が、どんな調査に使われたのか国民には知る権利があります。
    にもかかわらず、教育委員会や自治体も含め自ら集めた調査データを囲い込み、いい結果だけを出すというような立案者にとって都合のいい政策誘導に利用されかねない(否定できません)状況は問題です。(P138)
    また、日本は少子化ですから、少人数学級による教員の数の増加よりも、教員の質を高めることの方が教育効果が高い(P147)という指摘ももっともで、そのためには教師になる資格制度(教員免許)にこだわらない柔軟な発想(P155)や教師の長時間労働という内容の吟味と改善などは今すぐにでもできます。
    統計をとる目的1つにしても、まずその目標設定が正しいのかどうか、さらに正確なデータ取得のためにはどんな調査方法や内容が最も適切なのか、むしろこうした調査の前提となる枠組みや思想の方がより重要だったりするわけです。
    簡単に統計でだまされないようにするためには、その統計データが正しい手法で行われているのかはもちろん、その統計で何を調査しようとしているのかという大前提に立ち返り、その意味でも客観的に事後チェックできるデータ開示が必要となるわけです。
    国民にとって一連の不正統計問題発覚のメリットは、国や地方自治体から発表される統計データを頭から信用してはいけないという統計リテラシー向上の機会を与えた点ということでしょうか。

    本書の感想に戻れば、わかりやすい内容という点でも良書でした。

  • 話題の一冊。
    今現在、213レビューがついてて 4.0ポイント超え。
    なかなか無いでしょう。

    教育を経済学の手法で計る、教育経済学が専門の中室氏、"エビデンス" ベースで教育政策を考えましょう、というのが軸。
    "エビデンス"=証拠 ですが、つまりは経験者の成功談や権威の主張に右往左往するのではなく、統計や実験データを基にして教育手法や政策を考えましょうや、という話。

    つかみが上手い。
    「子供にご褒美をやってもいいか」から始まる。
    小さい子の親御さんには参考になると思う。「結果にコミット」は実はうまくいかない 。
    事項の非認知力の話に関連していくが、"プロセス”や”意欲を育てる”ことの方が大事なんです。
    つい、忘れがちですけれど。

    本題は "少人数学級 " の項であろうか。
    40人→35人にしても効果出なかったから、元に戻せや〜 と財務省が文科省にいちゃもんつけたっていうバカバカしい話がありましたが、少人数学級って20人未満のクラスです、よと。
    ここでも、効果があるかないか、という単純な話じゃなくて、学年や地域、親の収入といったパラメータと合わせて、どういう条件で効果を発揮するか?ということをデータから読んで、考えていくべきでしょ、という話。

    少人数学級よりも「教育投資が将来の価値に大きく貢献する」という情報の方が効果がある、とマダガスカルでの実験例を引いてきている。
    なるほど。

    逆に言うと、親が日々の生活に追われすぎて、時間的にも経済的にも子供の教育になど構っていられない、そういう状況はどんどん拡大している場合、少人数学級は最大効果を発揮する、ということだ。
    親をコントロールする方が難しいんだからね。

    次に「良い先生が学力向上に大きく貢献する」という項。
    そうでしょう、間違いない。
    では、どうすれば良い先生が育つのか?
    これはまだまだ計量しづらいようだ。
    そうだろう、良い先生はその人の個性が最大限に発揮されている状態からうまれる。
    個性は計量できない。
    そして、その時その時の生徒の状況を見ての現場での創意工夫が必須でしょう。
    必要なのは個性が尊重される環境と、時間的余裕。
    そこをマネジメントが理解している教師集団は優秀だ。
    本書で面白いのは教員免許の妥当性を問うていること。
    大変なんだよね〜〜 
    教員免許取るの!
    ちょっと見直してみたら?ってことなのかしら?
    そのあたりの事情は全く知りませんが。

    いずれにせよ、日本の状況に関して、データが非公開で考察のすすめようがないこと、実験をできる環境がないことに苦言を呈している。
    確かにね、国立の付属って教育効果をはかるためとかなんとか、そういう名目で作られているはず、なんだけれど 実態としてはお勉強の得意な子を集めて、上位校に進学させるのが目的の集団に化けちゃってる。

    でも、マクロで見れば実験やデータが必要でも、対象にされる子はやり直しがきくわけでなし、こねくり回されてはたまらない。
    個々人としては、こどもの教育にはできるだけ、時間もお金も惜しまず注ぎ込む、という結論にしかならない。
    そして最初にもどる。
    プロセス、そして、意欲を育てることが大事、かな。

  • 子を持つ親として「我が家の子育てはこれでよかったのか?!」と自問自答する日々。
    ゲームって悪影響?とか、ご褒美で釣るのってあり?とか、親なら一度は不安に駆られたことのある帯の謳い文句につられて、『~経済学』という自分にはかなり縁遠いタイトルには目を瞑り、最近あちこちで評判の本書を手にしてみた。

    自分のようなど素人でも理解できるようなわかりやすさで、日本の教育や子どもの学力について、国内外の客観的なデータを引きながら解説されている。
    一部専門家からは問題点も指摘されているようだが、そのあたり、そもそも経済学の何たるかさえ分かっていない自分には判断のしようもない。それでも、家庭環境の及ぼす子どもの教育への影響の大きさと、幼児期の教育━━決して、文字を早くおぼえさせるとか英語を習わせるとかいったことではなく、生きる力、特に自制心とやり抜く力を育てるための教育の重要性という訴えには、大きく合点がいった。著者の言を借りるならば、教育への投資は早いほど良い、ということなのだ。

    著者は、日本の教育が、思い込みや感情論に支配され、客観的調査がなされないままに進んできてしまっていることを嘆いている。国の施策としては、費用対効果を図りながら統計データに基づいて教育政策を進めていくことが不可欠だというのには全く異論はない。ぜひとも国としてしっかり議論して、より意義のある教育環境を整えてもらいたい。
    ただ、統計的に有意な客観的なデータも、ひとりひとりの個人の前では限界があるのではないかとも思う。本書の中身は確かになるほどとうなずける部分も多いし、ほめ言葉のかけ方などぜひ参考にしたいと思う箇所もあるが、一つの考え方、アプローチの仕方として捉えるにとどめたい。

    子育てには正解はない。
    真正面から子どもと向き合って自分も教えられながら育ち合う、を私個人の目標に、今日もぼちぼちいこう。

  • 「データを用いて科学的に分析する」と言う当たり前の方法論が日本の教育分野では全く機能してない事実。教育評論家とか子育て専門家が「私はこう思う」と言う意見をあたかも根拠があるかように報道、結果採用されるなど非常に危険な現状を指摘している。
    海外のデータを元に「子供へのご褒美で釣る」のはいいことなのか、「褒めて育てる」べきなのか、また「学力テスト」では何が分かるのか、「少人数クラス」の有効性等々、数々の疑問を確かなエビデンスで答えてくれる納得の行く内容。子を持つ親として、そして教員免許を持つ私としては日本の教育において実験データを駆使した効果のある施策を望む。それをやってなかった恐ろしさを知ったが…

    因みに私は褒めて恐ろしく伸びるタイプです(・ω・)

  • 第2章、ご褒美の使い方と第3章、非認知能力と認知能力については発見の多い内容だった。

    ・ご褒美の与え方はテストの点数という目標達成ではなく、本を読む・宿題をするなどの行為に対して与えると効果的

    ・成果目標に対してご褒美を与える場合は、そこまでの至り方を教え、導いてくれる人が必要

    ・ご褒美は、学びたい!という気持ちを失わせるのではないかという疑問に対して、統計的にその問題はない、失わせる事はないというデータがでている

    ・ご褒美そのものについて、小学生の時はトロフィーなど、中高生になってかやはお金にしたほうがいい

    ・ほめられて育ったから自尊心が高い→学力が高い、ではない。学力が高い→自尊心が高い、が正しい

    ・ほめるときは能力ではなく、行ったこと・達成したことをほめることが重要

    ・テレビやゲームは子どもに負の効果を与えない。むしろ学力向上に効果がある

    ・テレビやゲームをやめさせても、学習ほぼ時間は増えない

    ・ただし、時間が長すぎると悪影響がある。1~2時間が適正 

    ・子どもの学習時間を増やすためには、勉強しなさい!ではなく、横で勉強を見ること・時間を決めて守らせるほうが効果が高い。

    ・また、同性の親が関わるとより効果が高い(その他の同居者でもOK)

    ・学力の高い集団にいると、自分の学力も高まる。ただし、差が大きすぎると逆効果。適正な学力幅の集団を作る。そのため習熟度別学級での運営は効果的

    ・クラスで問題児が与える学力への負の因果効果を与える。

    ・一般的に人は教育段階が高くなればなるほど教育の収益率が高くなると信じているが、もっとも収益率が高いのは、就学前教育(幼児教育)である。

    ・非認知能力への投資は、子どもの成功にとって非常に重要であることが多くの研究で示されている。

  • 180903 − 180923

    本を読む子の成績が高いのか、成績が高い子が本を読んでいるのか。
    こういう、ともすれば卵が先か鶏が先か、というようなとても大事なポイントを、今まで気にしなさすぎたよね、と思わされる本。

    確かにエビデンスってめっちゃ大事なんよね。教育については、身近すぎるあまりに、多くの人が感情のみで語りすぎている気がする。私も含めて。

  • 教育経済学者である著者は、日本の教育政策に科学的根拠が必要だと主張する。米国ではそういったエビデンスベーストポリシーを15年以上前からすでに行なっている。本著で紹介されているのは信頼に足るエビデンスである「ランダム化比較試験」を行った実験が多い。巻末には約100件の参考文献が掲載されており、さすがデータを重要視するだけあると思う。「ご褒美で釣るのはありか」「教育にはいつ投資すべきか」「少人数学級の効果」等、科学的根拠を元に分かりやすく説明されていた。

    p17
    そもそも特定の個人の成功体験を一般化することはとても難しいことです。

    p18
    日本ではまだ、教育政策に科学的な根拠が必要だという考え方はほとんど浸透していないのです。

    転換期となったのは、2001年にブッシュ政権下で成立した「落ちこぼれ防止法(No Child Left Behind Act)」です。

    次いで、2002年に「教育科学改革法(Education Science Reform Act)」が制定されことによって、自治体や教育委員会が国の予算をつけてもらうためには、自分たちの行なっている教育政策にどれくらいの効果があるかという科学的根拠を示さなければならなくなりました。

    p19
    極端にいってしまえば、科学的根拠に基づく教育政策とは、「どういい教育か成功する子どもを育てるのか」といいことを科学的に明らかにしようとする試みです。

    p21
    因果関係は「Aという原因によってBという結果が生じた」ことを意味します。しかし、相関関係は「AとBが同時に起こっている」ことを意味しているにすぎません。相関関係は2つの出来事のうちどちらが「原因」で、どちらが「結果」であるかを明らかにするものではないのです。「相関関係」があるということは、必ずしも「因果関係」があることを意味しません。

    p24
    私たちは、日常生活でもよく「差」という言葉を使いますが、その「差」が単に偶然による誤差の範囲なのかにはあまり注意を払っていません。しかし、統計的に有意な差があるかどうかを確認することは非常に重要です。

    p51
    子どもをほめるときには、もともとの能力だけでなく、具体的に達成した内容を挙げることが重要

    p73
    経済学では、「将来子どもが高い収入を得るだろうと期待して、今子どもの教育に支出する」のは「将来値上がりすると期待して株を買う」のと同じ行為だと考えます。もう少し経済学的に表現すれば、教育から得られる「便益」から教育に支払う「費用」を引いた「純便益」が最大化するように、家計は教育投資の水準を決定しています。
    これが、1992年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のベッカー教授が提唱した「人的資本論」という考え方です。

    p77
    人的資本投資の収益率は、子どもの年齢が小さいうちほど高いのです。就学前がもっとも高く、その後は低下の一途をたどっていきます。そして、一般により多くのお金が投資される高校や大学の頃になると、人的資本投資の収益率は、就学前と比較すると、かなり低くなります。

    人的資本とは、人間が持つ知識や技能の総称ですから、人的資本への投資には、しつけなどの人格形成や、体力や健康などへの支出も含みます。必ずしも勉強に対するものだけではないのです。

    p86
    非認知能力(自己認識、意欲、忍耐力、自制心、メタ認知ストラテジー、社会的適応、回復力と対処能力、創造性、性格的な特性)は、認知能力の形成にも一役買っているだけでなく、将来の年収、学歴や就業形態などの労働市場における成果にも大きく影響することが明らかになってきたのです。

    p91
    人生を成功に導くうえで重要だと考えられている非認知能力のひとつは「自制心」です。

    p92
    もうひとつの重要な非認知能力として挙げられるのが、「やり抜く力」です。

    p113
    クラスの人数が40人を超えると、クラスを2つに分けることを「マイモニデスの法則」という。これの名付け親はマサチューセッツ工科大学のアングリスト教授で、中世ユダヤ人の哲学者マイモニデスが「クラスあたりの生徒数の上限を40人にするように」と提案したことがもとになっている。

    p119「どういう学校に行っているか」と同じくらい、「どういう親のもとに生まれ、育てられたか」ということが学力に与える影響は大きいのです。

    p139
    教育委員会や自治体が、データを外部に公開することを避け、自分たちだけで分析しようとしている例が散見されますが、政策評価は第三者機関が中立性を担保しつつ行うのが望ましいと考えられます。米国では、大学に加えてアーバンインスティテュートやランド研究所、ブルッキングス研究所のような政府から独立した政策系シンクタンクが政策評価においておおいに活躍しています。日本でも同様に、利害関係を持たない第三者機関による政策評価を徹底する必要があるでしょう。

    p139
    南アフリカは、労働力調査や家計調査などの政府統計の個票データをインターネット上で世界中のすべての人に公開しています。この理由について尋ねたところ、「データを開示すれば、政府がわざわざ雇用しなくても、世界中の優秀なエコノミストがこぞって分析をしてくれる」という答えが返ってきました。

    研究者は、常に「Publish or Perish(出版か、消滅か)」という強いプレッシャーに晒されていますから、情報量が多く、代表性のあるデータであれば、多くの研究者はそのデータを分析して、論文を書きたいと思うでしょう。南アフリカ政府は、その研究者の性質をうまく利用しているのです。

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