「学力」の経済学

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
3.98
  • (289)
  • (455)
  • (217)
  • (35)
  • (9)
本棚登録 : 3415
レビュー : 473
  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799316856

作品紹介・あらすじ

ゲームは子どもに悪影響?教育にはいつ投資すべき?ご褒美で釣るのっていけない?思い込みで語られてきた教育に、科学的根拠が決着をつける!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 話題の一冊。
    今現在、213レビューがついてて 4.0ポイント超え。
    なかなか無いでしょう。

    教育を経済学の手法で計る、教育経済学が専門の中室氏、"エビデンス" ベースで教育政策を考えましょう、というのが軸。
    "エビデンス"=証拠 ですが、つまりは経験者の成功談や権威の主張に右往左往するのではなく、統計や実験データを基にして教育手法や政策を考えましょうや、という話。

    つかみが上手い。
    「子供にご褒美をやってもいいか」から始まる。
    小さい子の親御さんには参考になると思う。「結果にコミット」は実はうまくいかない 。
    事項の非認知力の話に関連していくが、"プロセス”や”意欲を育てる”ことの方が大事なんです。
    つい、忘れがちですけれど。

    本題は "少人数学級 " の項であろうか。
    40人→35人にしても効果出なかったから、元に戻せや〜 と財務省が文科省にいちゃもんつけたっていうバカバカしい話がありましたが、少人数学級って20人未満のクラスです、よと。
    ここでも、効果があるかないか、という単純な話じゃなくて、学年や地域、親の収入といったパラメータと合わせて、どういう条件で効果を発揮するか?ということをデータから読んで、考えていくべきでしょ、という話。

    少人数学級よりも「教育投資が将来の価値に大きく貢献する」という情報の方が効果がある、とマダガスカルでの実験例を引いてきている。
    なるほど。

    逆に言うと、親が日々の生活に追われすぎて、時間的にも経済的にも子供の教育になど構っていられない、そういう状況はどんどん拡大している場合、少人数学級は最大効果を発揮する、ということだ。
    親をコントロールする方が難しいんだからね。

    次に「良い先生が学力向上に大きく貢献する」という項。
    そうでしょう、間違いない。
    では、どうすれば良い先生が育つのか?
    これはまだまだ計量しづらいようだ。
    そうだろう、良い先生はその人の個性が最大限に発揮されている状態からうまれる。
    個性は計量できない。
    そして、その時その時の生徒の状況を見ての現場での創意工夫が必須でしょう。
    必要なのは個性が尊重される環境と、時間的余裕。
    そこをマネジメントが理解している教師集団は優秀だ。
    本書で面白いのは教員免許の妥当性を問うていること。
    大変なんだよね〜〜 
    教員免許取るの!
    ちょっと見直してみたら?ってことなのかしら?
    そのあたりの事情は全く知りませんが。

    いずれにせよ、日本の状況に関して、データが非公開で考察のすすめようがないこと、実験をできる環境がないことに苦言を呈している。
    確かにね、国立の付属って教育効果をはかるためとかなんとか、そういう名目で作られているはず、なんだけれど 実態としてはお勉強の得意な子を集めて、上位校に進学させるのが目的の集団に化けちゃってる。

    でも、マクロで見れば実験やデータが必要でも、対象にされる子はやり直しがきくわけでなし、こねくり回されてはたまらない。
    個々人としては、こどもの教育にはできるだけ、時間もお金も惜しまず注ぎ込む、という結論にしかならない。
    そして最初にもどる。
    プロセス、そして、意欲を育てることが大事、かな。

  • 「データを用いて科学的に分析する」と言う当たり前の方法論が日本の教育分野では全く機能してない事実。教育評論家とか子育て専門家が「私はこう思う」と言う意見をあたかも根拠があるかように報道、結果採用されるなど非常に危険な現状を指摘している。
    海外のデータを元に「子供へのご褒美で釣る」のはいいことなのか、「褒めて育てる」べきなのか、また「学力テスト」では何が分かるのか、「少人数クラス」の有効性等々、数々の疑問を確かなエビデンスで答えてくれる納得の行く内容。子を持つ親として、そして教員免許を持つ私としては日本の教育において実験データを駆使した効果のある施策を望む。それをやってなかった恐ろしさを知ったが…

    因みに私は褒めて恐ろしく伸びるタイプです(・ω・)

  • 育児書は私の経験談的主観の本が多く、なるほどなと思うものもあるが、「本とかね?」と思うものも少なくなかった。本書はデータを元にした教育論書で、今までにあまり無かったタイプの育児論書。納得感も大きい。

    ふと、育児についても考えてみた。このような本を読み、育児の事について考えている時間も育児なのだろう。この知識を生かせれば良いな。

    【学】
    ご褒美は「テストの点数」等のアウトプットではなく、「本を読む」「宿題をする」などのインプットに対して与えるべきだ。アウトプットは具体的には何をやればよいのかわからない。

    自尊心が高いと学力が高まるのではなく、学力が高いという「原因」が自尊心を高める結果になっている

    「あなたはやればできるのよ」などと言って、むやみやたらに子供を誉めると、実力が伴わないナルシストを育てることになりかねません。とくに、子供の成績がよくないときはなおさらです。

    「頭のいい子ね」と元々の能力を誉めるメッセージを伝えると子供たちの意欲を失わせることになる。
    一方「よく頑張ったね」と努力した内容を誉められた子は、2回目、3回目のテストでも粘り強く問題を解こうとチャレンジし続けた。

    最近の研究でも、特に苦手教科の克服には、異性同志の教師と生徒の組み合わせの方が有効である

    人的資本への投資はとにかく子供が小さいうちに行うべきだ(小さいうちに、金、時間をかけろ)

    家計が大学卒業までに負担する平均的な教育費は、幼稚園から大学まですべて国公立の場合で1,000万、すべて私立の場合では2,300万に上がる。子供がいる家庭は、年収の40%を教育に使っている

    ペリー幼稚園プログラム
    未就学児に、少人数制で読み書きや歌のレッスンを平日2.5時間実施、家庭訪問し親にも育児アドバイスをしたところ、40歳になっても継続して、所得が高い、逮捕率が低いなどの効果があり、社会収益率は年率7%~10%にも上がる計算になった

    高校を卒業後すぐに働き始めた人と、大学を卒業してから働き始めた人の間には、生涯年収で一億円の差

  • 第2章、ご褒美の使い方と第3章、非認知能力と認知能力については発見の多い内容だった。

    ・ご褒美の与え方はテストの点数という目標達成ではなく、本を読む・宿題をするなどの行為に対して与えると効果的

    ・成果目標に対してご褒美を与える場合は、そこまでの至り方を教え、導いてくれる人が必要

    ・ご褒美は、学びたい!という気持ちを失わせるのではないかという疑問に対して、統計的にその問題はない、失わせる事はないというデータがでている

    ・ご褒美そのものについて、小学生の時はトロフィーなど、中高生になってかやはお金にしたほうがいい

    ・ほめられて育ったから自尊心が高い→学力が高い、ではない。学力が高い→自尊心が高い、が正しい

    ・ほめるときは能力ではなく、行ったこと・達成したことをほめることが重要

    ・テレビやゲームは子どもに負の効果を与えない。むしろ学力向上に効果がある

    ・テレビやゲームをやめさせても、学習ほぼ時間は増えない

    ・ただし、時間が長すぎると悪影響がある。1~2時間が適正 

    ・子どもの学習時間を増やすためには、勉強しなさい!ではなく、横で勉強を見ること・時間を決めて守らせるほうが効果が高い。

    ・また、同性の親が関わるとより効果が高い(その他の同居者でもOK)

    ・学力の高い集団にいると、自分の学力も高まる。ただし、差が大きすぎると逆効果。適正な学力幅の集団を作る。そのため習熟度別学級での運営は効果的

    ・クラスで問題児が与える学力への負の因果効果を与える。

    ・一般的に人は教育段階が高くなればなるほど教育の収益率が高くなると信じているが、もっとも収益率が高いのは、就学前教育(幼児教育)である。

    ・非認知能力への投資は、子どもの成功にとって非常に重要であることが多くの研究で示されている。

  • 180903 − 180923

    本を読む子の成績が高いのか、成績が高い子が本を読んでいるのか。
    こういう、ともすれば卵が先か鶏が先か、というようなとても大事なポイントを、今まで気にしなさすぎたよね、と思わされる本。

    確かにエビデンスってめっちゃ大事なんよね。教育については、身近すぎるあまりに、多くの人が感情のみで語りすぎている気がする。私も含めて。

  • 教育経済学者である著者は、日本の教育政策に科学的根拠が必要だと主張する。米国ではそういったエビデンスベーストポリシーを15年以上前からすでに行なっている。本著で紹介されているのは信頼に足るエビデンスである「ランダム化比較試験」を行った実験が多い。巻末には約100件の参考文献が掲載されており、さすがデータを重要視するだけあると思う。「ご褒美で釣るのはありか」「教育にはいつ投資すべきか」「少人数学級の効果」等、科学的根拠を元に分かりやすく説明されていた。

    p17
    そもそも特定の個人の成功体験を一般化することはとても難しいことです。

    p18
    日本ではまだ、教育政策に科学的な根拠が必要だという考え方はほとんど浸透していないのです。

    転換期となったのは、2001年にブッシュ政権下で成立した「落ちこぼれ防止法(No Child Left Behind Act)」です。

    次いで、2002年に「教育科学改革法(Education Science Reform Act)」が制定されことによって、自治体や教育委員会が国の予算をつけてもらうためには、自分たちの行なっている教育政策にどれくらいの効果があるかという科学的根拠を示さなければならなくなりました。

    p19
    極端にいってしまえば、科学的根拠に基づく教育政策とは、「どういい教育か成功する子どもを育てるのか」といいことを科学的に明らかにしようとする試みです。

    p21
    因果関係は「Aという原因によってBという結果が生じた」ことを意味します。しかし、相関関係は「AとBが同時に起こっている」ことを意味しているにすぎません。相関関係は2つの出来事のうちどちらが「原因」で、どちらが「結果」であるかを明らかにするものではないのです。「相関関係」があるということは、必ずしも「因果関係」があることを意味しません。

    p24
    私たちは、日常生活でもよく「差」という言葉を使いますが、その「差」が単に偶然による誤差の範囲なのかにはあまり注意を払っていません。しかし、統計的に有意な差があるかどうかを確認することは非常に重要です。

    p51
    子どもをほめるときには、もともとの能力だけでなく、具体的に達成した内容を挙げることが重要

    p73
    経済学では、「将来子どもが高い収入を得るだろうと期待して、今子どもの教育に支出する」のは「将来値上がりすると期待して株を買う」のと同じ行為だと考えます。もう少し経済学的に表現すれば、教育から得られる「便益」から教育に支払う「費用」を引いた「純便益」が最大化するように、家計は教育投資の水準を決定しています。
    これが、1992年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のベッカー教授が提唱した「人的資本論」という考え方です。

    p77
    人的資本投資の収益率は、子どもの年齢が小さいうちほど高いのです。就学前がもっとも高く、その後は低下の一途をたどっていきます。そして、一般により多くのお金が投資される高校や大学の頃になると、人的資本投資の収益率は、就学前と比較すると、かなり低くなります。

    人的資本とは、人間が持つ知識や技能の総称ですから、人的資本への投資には、しつけなどの人格形成や、体力や健康などへの支出も含みます。必ずしも勉強に対するものだけではないのです。

    p86
    非認知能力(自己認識、意欲、忍耐力、自制心、メタ認知ストラテジー、社会的適応、回復力と対処能力、創造性、性格的な特性)は、認知能力の形成にも一役買っているだけでなく、将来の年収、学歴や就業形態などの労働市場における成果にも大きく影響することが明らかになってきたのです。

    p91
    人生を成功に導くうえで重要だと考えられている非認知能力のひとつは「自制心」です。

    p92
    もうひとつの重要な非認知能力として挙げられるのが、「やり抜く力」です。

    p113
    クラスの人数が40人を超えると、クラスを2つに分けることを「マイモニデスの法則」という。これの名付け親はマサチューセッツ工科大学のアングリスト教授で、中世ユダヤ人の哲学者マイモニデスが「クラスあたりの生徒数の上限を40人にするように」と提案したことがもとになっている。

    p119「どういう学校に行っているか」と同じくらい、「どういう親のもとに生まれ、育てられたか」ということが学力に与える影響は大きいのです。

    p139
    教育委員会や自治体が、データを外部に公開することを避け、自分たちだけで分析しようとしている例が散見されますが、政策評価は第三者機関が中立性を担保しつつ行うのが望ましいと考えられます。米国では、大学に加えてアーバンインスティテュートやランド研究所、ブルッキングス研究所のような政府から独立した政策系シンクタンクが政策評価においておおいに活躍しています。日本でも同様に、利害関係を持たない第三者機関による政策評価を徹底する必要があるでしょう。

    p139
    南アフリカは、労働力調査や家計調査などの政府統計の個票データをインターネット上で世界中のすべての人に公開しています。この理由について尋ねたところ、「データを開示すれば、政府がわざわざ雇用しなくても、世界中の優秀なエコノミストがこぞって分析をしてくれる」という答えが返ってきました。

    研究者は、常に「Publish or Perish(出版か、消滅か)」という強いプレッシャーに晒されていますから、情報量が多く、代表性のあるデータであれば、多くの研究者はそのデータを分析して、論文を書きたいと思うでしょう。南アフリカ政府は、その研究者の性質をうまく利用しているのです。

  • リンゴとオレンジを比べても意味がなくランダム化比較試験が重要であり、日本は教育政策を決める際に経済学的視点が抜けているという主張。
    ・今勉強しておくのがあなたのためを伝えるのが効果が一番高い
    ・目先の利益を用意してインプットを褒める
    ・能力ではなく努力を褒める
    ・小学校就学前の幼児教育がいちばん投資回収率が高い
    ・学力をつける過程で得られる非認知能力(特に自制心とやりきる力)が重要
    ・先生の質が大事

  • 非認知能力の話は、成績や学力が下がったらとりあえず塾に行かせる傾向の多い日本ではかなり軽視されてると思うんですがどうだろう。要するにどれだけ勉強できてもやる気とコミュニケーション能力に欠けてたらなんの意味もないよね、という話なのですが。ご褒美のあげ方や学力テスト、教員免許の話はふむふむ、と納得したしおもしろかった。恣意性云々はさておき、教員や親など教育関係者は一読して損はないかと。

  • 経済学の視点で教育を見た本。
    巷で言われていることは本当に教育としての効能があるのか科学的に実験し、思考した。

  • 個人的な体験で語られがちな教育の分野に関して、経済学者がデータを基にして、既存の教育に関する通説(ご褒美で子供を釣るのはまずい?ゲームをやると暴力的になる?)の是非を主に統計データから判断しようとするもの。

    要点は以下の通り

     因果関係と相関関係を混同しないように
     短期的かつ行動に対しての報酬(ご褒美)が最も動機づけとしては強い
     ゲームが子供の行動に悪いとは言い切れないゲームは1日1時間程度であれば問題ない。ただし、長時間の場合は悪影響が見られる。
     子どもの学力に影響力が大きいのは学校教育以上に、親の年収と遺伝
     子供の友達(学力が高い子)の影響力は学力が近いときのみ有効。また悪い行動は非常に感染しやすい
     学力以外の非認知特性(自制心、やり抜く力、勤勉さ)は学力以上に重要
     小人数よりも教員の質をあげるほうが費用対効果は高い
     日本の教育に関してはエビデンスに基づいたものが非常に少ない

    ある程度関心があったんで知っていることも多かったし、内容に関しては7~8割がた同意。

    データから通説の是非を検証しようとする姿勢はいいのだが、統計の基本的に見方にそれほど熟知しているわけではないのでどの程度正しいのかはちょっと不明。

    また筆者も言っているがほとんどがアメリカのデータであるだけに日本で同内容のことがいえるかどうかは疑問点が残る。

    ベストセラーだけあって専門的なことを書いている割には非常に読みやすい。

全473件中 1 - 10件を表示

「学力」の経済学のその他の作品

「学力」の経済学 Kindle版 「学力」の経済学 中室牧子

中室牧子の作品

「学力」の経済学を本棚に登録しているひと

ツイートする