株式会社の終焉

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799319642

作品紹介・あらすじ

「より速く、より遠くに、より合理的に」から、「よりゆっくり、より近くに、より寛容に」に。これを株式会社に当てはめれば、減益計画で十分だということ。現金配当をやめること。過剰な内部留保金を国庫に戻すこと。『資本主義の終焉と歴史の危機』を継ぐ著者渾身の書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 間もなく、資本主義とそれを実現する株式会社の役割は、終焉を迎えることとなる。
    俄には信じられない主張であったが、本書を読むと納得できる。
    金利は既にゼロからマイナスに移行し、何処にも資金、資本を投入する余地が無いこと、即ち成長する見込みが無いことを表している。
    正に地球は有限であり、無限の空間、資源、市場を前提とした資本主義の役割は終えようとしているのだろう。

  • 株高、マイナス利子率は何を意味しているのか?: 政府のROE8%超要請 人件費削減に正当性はあるのか なぜ日本企業の売上高利益率は欧米企業と比べて低いのか なぜ消費者物価は上昇しないのか 株式会社とは何か: 企業組織の4つの特質とハイリスク・ハイリターン コペルニクス革命とウェストファリア体制 21世紀に株式会社の未来はあるのか: 成長、それ自体が収縮を生む ショック・ドクトリンと無産階級の増大 技術の奇蹟の信徒と技術進歩教の誕生 科学の時代の延長線上の技術の時代 21世紀の会社のあり方とは

  • 2021/08/13再読する

  • 株式会社という存在を通じて21世紀社会のあるべき姿を論じています。20世紀型の成長進歩の考え方から脱することができないことが現代の経済危機の本質であることを指摘、「進歩は近代が生み出した最大のイデオロギー」という著者の言葉が印象的でした。

  • 資本が過剰に累積した日本では、これ以上の潜在成長率の底上げは困難で、永劫の成長を目的とする株式会社という仕組みがすでに立ち行かなくなっている、とするのが著者の視点と理解しました。

    一方、グローバルな競争にさらされている日本企業は海外の市場での売り上げが既に過半を超えている会社が相当数あることから、縮小していく国内事業に割り当てる資源を、海外事業により一層振り向けることとなる、という視点もあります。
    こうした企業は、持ち株会社をより資本市場の厚い国(米国、英国、香港など)に移し、日本国内事業を子会社化して事業の縮小を図っていくのではないでしょうか?

    著者の前著「資本主義の終焉と歴史の危機」も読ませて頂きましたが、グローバリズムは一国の中に周辺と中心を発生させ、格差拡大を助長するという点は確かにあります。世界経済におけるシェアが縮小していく日本と日本企業が、グローバルな市場での存在感を維持するためにはどうやって付加価値を高めていくか、その一方、国内事業の統合と最適化をどう図っていくのかという課題が、本書の提起する問題とともに思い起こされました。

  • 読了。難しかった。本を買ったとき、今の社会が終わって、新しい素晴らしい社会が生まれるのではと期待したが、まだ先のようである。

  • ちょっと難しかったかなぁ。
    短期的に利益を追い求めるのではなく、ゆっくりのんびりと寛容にってことなんかな?

  • 『株式会社の終焉』というタイトルから、これからの法人(働くうえでの組織)のあり方について論じてくれるかと思ったが、「株式会社」の歴史についてと、政府の金融政策と税制をデータに基づいてまとめた内容が中心だった。

  • 勉強になりました。

  • 今日は水野和夫先生の「株式会社の終焉」。なかなかの力作ですが(お前が言うなよ~って怒られそう)、全部は紹介しきれませんので、最後の方をちょちょっと詳述します。

    まず1000兆円の国・地方の借金だが、ストックとしての800兆円にも及ぶ国債をこれ以上増やさないことだ。

    そのためには毎年のフローとしての国債発行額をゼロにするべきであるとする。それによって国債発行残高の増加に歯止めがかかるとのことだ。

    次に、2015年度には8.8兆円と歳出100兆円の8.8%を占めていた国債利払い費が、マイナス金利によって、近い将来ゼロになることが考えられることから、それによって節約できた8.8兆円を国債の償還と社会保障関連のサービスの充実に充てることだという。

    そして、国債管理庁を設立して、国際資金繰りのショートが起きないようにすることが大事であるという。これは日銀が適任だと水野先生は主張する。

    また銀行(メガバンク、地銀)の預金1363兆円の53.3%が貸し出しで、残りの5割弱が国債などの有価証券投資であり、預金に占める国債保有と日銀預け金(市中銀行の日銀への預金)の合計の割合は37.9%となっており、異次元の金融緩和を始めた直前の2013年(35.4%)と比べても大して変わってない。

    これは預金取扱金融機関が日銀に国債を売却して受け取った分を、日銀に預けているからである。

    この結果、2015年度末で、預金取扱金融機関の日銀預け金は267.1兆円と、2011年の2011年の31.5兆円と比べて235.6兆円増加している。

    つまり、預金取扱金融機関1363.2兆円の預金のおよそ4割が、国債とリンクしているといっていい。

    これでは預金者がいくら預金を各金融機関に1000万円ずつ分散させても、その預け先である国内金融機関がどこの国債に投資しているのであれば、それは預金者が国債のリスクを負っているとの同義だ。

    会社が倒産すると、株価が基本ゼロになるので、株主はリスクを負っているといわれていた。しかし、株式は証券市場で自由に売買できるので(公開企業を前提とする)、売却することで、リスクを回避することができる。

    もちろん、倒産した株主を購入した人はリスクを被る。2015年に倒産した企業の負債総額は2.04兆円だった。日本の株式会社の株主資本は598.5兆円なので、比率にすればリスクが顕在化するのは、わずか0.3%である。リーマンショックの時でもその値は2%台半ばだった。

    それに対して、預金者が間接的に保有する国債は預金の4割に相当する506.5兆円と巨額で、圧倒的に預金者の方がリスクを負っていることになる。

    これには次の仮定をする。

    「株主のリターン>預金者のリターン」となっているので、預金者のリスクを株主のリスクより低くすべきだと考える(A1)
    「預金者のリスク>株主のリスク」なので預金金利を株主のリターンよりも高くすべきと考える(A2)

    A1のケースの場合、国の借金を減らしていく政策をとり、かつ、日本の潜在成長率を高めていくことだ。

    しかし、現在のようにROE(株主資本利益率)が8%弱のときに、預金金利を3%まで引き上げるには、潜在成長率もおよそ3%に高める必要が出てくる。これは、通常、資本コストは5%と言われているために、ROE8%から5%を引いた3%がリスクを負わない人が受け取るリターンとなるからだ。

    次にA2のケースは、預金金利を株主のリターンより高くすることで、正常な関係に戻そうとするというものである。しかし、預金金利をROE(≒8%)以上にするのは、常識的に考えて無理がある。

    次に、もう一つには現実を認めようとするケース(B)である。
    預金者はハイリスク・ローリターンで我慢しろ、株主はハイリターン・ローリスクで当たり前だとするケースだ。

    この考え方は「国民国家」の時代が終わり、「資本の帝国」の時代に変貌したと認識すれば正当化される。「国民国家」の時代には、預金者はローリスク・ローリターン、株主はハイリスク・ハイリターンが正常だったが「国民国家」の時代に正常だったことは、「資本の帝国」の時代には異常になるからだ。

    「資本の帝国」とは一級市民の株主と二級市民の預金者からなる階級社会だ。国民は平等であるという近代の理念に反するという点で、「資本の帝国」は「反近代」であって、反動勢力なのだ。

    とこのように、本書の一部を紹介してきたが、上記に続いて、「株式会社の終焉」について、水野先生の議論が展開されている。興味を持った方はぜひ本書を手に取って欲しい。

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著者プロフィール

1953年愛媛県生まれ。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。博士(経済学)。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)を歴任。現在、法政大学法学部教授。専門は、現代日本経済論。著書に『正義の政治経済学』古川元久との共著(朝日新書 2021)、『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書 2017)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書 2014)他

「2021年 『談 no.121』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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