ビジネスパーソンのための近現代史の読み方

  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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  • Amazon.co.jp ・本 (479ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799321003

感想・レビュー・書評

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  • 近現代史について説明した一冊。

    特筆すべき内容はなかったものの、現代から遡るという視点が新鮮だった。

  • 国際情勢を知るには世界史を逆戻しで見ていくのが「なぜ?」という「知りたい欲求」を原動力に読み進められるので良い。これは世界史に詳しい人が日々のニュースを観ながらいつもやっていることである。一読の価値はある。

  • 本書は、ブリグジットやトランプ大統領誕生などの「2016年の衝撃」から、「アメリカ独立宣言」の1776年まで、240年間の世界の出来事を逆回しに辿った、近現代史。

    著者は、ここ240年間、世界を「英米アングロサクソン」が実質支配し続けてきた事を強調している。

    「新自由主義」=「第3次グローバリゼーション」は、サッチヤーの英国、レーガンの米国がフロンティアへ市場を拡大させるために取った国益重視策であり、もはや拡張すべきフロンティアが枯渇した現在、「グローバリゼーション」の弊害を是正するために英国は一斉に保護貿易主義へと舵を切った、との著者の見立てには、なるほどと思った。

    本書には、近現代史に纏わる面白い情報が詰まっているけれども、「逆回し」で語られているために歴史の流れが掴みづらくて、この点がちょっと残念。

  • 昨年(2017)末の大掃除の時に読みかけの本として発掘したものですが、面白い内容で掃除をそっちのけで最後まで読み通した本です。歴史が好きな私ですが、今までは戦国時代とか古代ローマの時代について読んでいましたが、最近では、高校時代の歴史の授業でカバーされなかった、近現代の歴史について興味を持つようになってきました。

    特に、タイトルにあるように、ビジネスパーソンのための~、というタイトルに惹かれて手に取りました。この本の特徴は、現在から始めて、現在を理解するために過去にさかのぼって解説する、というスタイルを取っています。

    この解説の仕方は、逆説の日本史シリーズで、井沢元彦氏が同様のスタイルで本を書いていて面白いなと思ったものです。同じような解説をされる、佐藤けんいち氏(この本の著者)の本に出合えて良かったと思います。

    以下は気になったポイントです。

    ・現在に対する関心から出発しなくては、歴史を知る意味はない、現在が過去を照らすからこそ、いまここにある現在から始めて、現在を理解するために重要な事項を過去にさかのぼって追跡するというアプローチが重要である、現在を知ることで過去が見えてくるのであり、過去の延長線上に現在の全てがあるわけではない(p23)

    ・2016年の英国と米国の衝撃(トランプ大統領、EU離脱)の背景には、経済的格差拡大への反発が底流にあったとみるべき、英国は共通ユーロを採用していなかったからこそ、可能である、離脱ドミノは起きにくいのではないか、英国の出発点は、中世以来、西欧を支配してきたカトリック世界からの離脱にある(p31、37、38)

    ・トランプ氏の勝利は、人民による既存の特権層に対する反乱という革命の側面と、経済グローバリゼーションに対する経済ナショナリズムの反撃という側面がある(p44)

    ・1979年にグローバリゼーションを始めた英国が、2016年に完了の旗振りをすることになった、米国も同様(p47)

    ・中央集権化を推進する日本は、国内全般を扱う内務省の制度は、フランスとドイツから、学校・警察制度はフランス、民法はフランス式から後にドイツ式、軍事の海軍はイギリス、陸軍はフランスからドイツ、医学はドイツ、大学を含めた高等教育はドイツ、鉄道土木技術はイギリス、ただし河川関連はオランダ、ビジネス関連は、イギリスと米国から(p59)

    ・第四次産業革命とは、すべてがインターネットで接続した、IoT(モノのインターネット)、製造業の未来に危機感を抱いていたドイツが主導、米国も独自に取り組み開始(p62)

    ・今回のグローバリゼーションは、三番目のモノ、これが始まったのは1980年前後、二番目は19世紀に英国が産業革命を背景に、一番目は15世紀以降に、ポルトガルとスペインが先行し、オランダが覇権国になったときまで(p85)

    ・過去のものと思い込んでいた、ナショナリズム・極右政党が、今反って猛威を振るい始めているのは、市場経済をスムーズに制御するための国家と制度的枠組みが機能不全に陥っているから、その背景には、人々の不安・恐れの感情がある(p92)

    ・地政学とは、地球全体を前提にして国際政治を見るものの見方のこと、政治経済を含めた一国の生存条件は、地理的な条件によって決定される。時間としての歴史と、空間としての地理は、じつは不可分の関係にある(p95)

    ・日米戦争の本質は太平洋の覇権と中国市場をめぐる衝突であったが、現在においても日米中の三角関係の構造は同じ、生存圏としての経済圏を拡大しようとした、後発資本主義国の軍事的チャレンジが第二次世界大戦を招いている(p102、212)

    ・ソ連がアフガン侵攻に踏み切ったのは、地政学的特性にある、アフガニスタンで発生した紛争は、アジア地域・ユーラシア大陸の西に位置する西欧まで影響がおよぶ、アフガニスタンは東洋と西洋の境界線である(p160)

    ・米国は英国のように植民地をもたず、自由主義と資本主義という、価値観にもとづく同盟関係を軸にして、ソ連を盟主とした東側と対立した(p173)

    ・アルカーイダが力を失った後は、イスラーム国が浮上、17世紀以来支配的となった西欧中心の、ウェストファリア体制に揺さぶりをかけている(p187)

    ・スエズ動乱(1956年)を機に、大英帝国が終わり、もとの小さな島国に戻った(p205)

    ・ドーズ案では、現地通貨のマルクでの支払いが可能であったが、ヤング案(1929)では、賠償金が大幅に減額されたものの支払い条件が相手国外貨の支払いとなり、ドイツ経済に厳しい状況となった(p216)

    ・ナチス党が政権をとった1933年から大戦開始の1939年のわずか6年で高度成長を実現したのは、軍事生産にたずさわる労働者の生産性が向上したから、そのカギはドイツが全面的に採用した、テイラー・システム(科学的管理法)にある(p223)

    ・ドイツにおいて、毒ガス開発の指揮をとったのが、毒ガス博士の、ハーバー氏でノーベル化学賞を受賞している、受賞理由は、大戦前に発見して技術として確立した、「空中窒素固定法」である、これにより化学肥料の量産が可能となり、世界の食糧問題が根本的に解決された(p231)

    ・19世紀の大英帝国を支えていたのが植民地のインド、これはフランスにとってのインドシナ(ベトナム)、オランダにとっての東インド(インドネシア)のように切っても切れない関係として位置づけられていた(p294)

    ・英国は、間接統治と分割統治をした、間接統治は二重支配体制、基本的に海岸に近い大都市を戦略拠点として押さえ、拠点と拠点を線で結んで面として統治、できるだけ内陸に深入りしない、少数で多数を統治するために、マハラジャ(藩王)という既存の現地支配勢力を抱き込んだ、軍隊も将校は英国人だが、下士官と兵はインド人によって編成された、分割統治とは、統治対象を様々な属性によって分断し、お互いがそれをけん制し合うことで反抗する勢力が育たないようにする(p303、304)

    ・英国の金融覇権は、産業革命が直接的な原因ではなく、産業革命の前に起きた「商業革命」こそが原因であった、植民地を巻き込んだ世界的な貿易量の急増と、取引商品の多様化が、決済通貨としての英ポンドの国際的評価を向上させ、英国の金融力の地位を不動のものとした(p311)

    ・蒸気船にはデメリットがあり、燃料としての石炭を大量に必要とする、長距離ルートで蒸気船を運行するにはルート上に補給基地が必要となる、7つの海を支配できたのは、世界の軍艦用石炭の供給を事実上独占していたから(p317)

    ・英国は茶葉の調達を中国からの輸入に依存していたが、貿易不均衡を解消するために、インド産のアヘンをかませた三角貿易を行っただけでなく、最高級のチャノキのタネ、苗を中国内陸部から盗みだし、インド植民地北部の、アッサム・ダージリン・セイロンに移植するというミッションも実行された(p327)

    ・第一次大英帝国において、アフリカから労働力として黒人奴隷がカリブ海・北米植民地へ連れてこられたが、アメリカ独立後(第二次大英帝国)は、労働力の供給源は、植民地インドと半植民地の中国に求められた。1830年代に英国で奴隷制が廃止された理由のひとつ、インド人と中国人が移民として大量に移動となった(p332)

    ・1929年の昭和天皇への、ガーター勲章叙勲以来、誰一人として、非キリスト教徒には与えられていない、日本の皇室は英国王室の価値体系において別格、1941年から30年間は認められなかったが(p348)

    ・19世紀後半において世界は3グループに類別、1)市民革命と産業革命を達成:英国、フランス、米国、2)半周辺国:市民革命挫折、産業革命は達成:ドイツ、イタリア、ロシア、日本、東欧など、3)両方未完、インド・中国、アフリカ、ラテンアメリカ等、半周辺国はいずれも70-80年で破たんしている、(p356、357)

    ・小国が分立していたドイツでは、統一通貨がなく、両替商が必要とされていた、両替商が金貸し、さらには財務アドバイザー、そして投資銀行へと進化を遂げた(p364)

    ・長期統計によると、1820年頃に世界経済史上の大断絶がある、持続的な経済成長が人類に富と繁栄をもたらしたのは、産業革命以降のことであると、経済統計により明らかになった(p369)

    ・技術的な発明だけではカネを生まない、製品市場が存在しなければ技術は普及しない、技術開発だけではなく、資金調達、経営管理を行う事業家との組み合わせが必要、イノベーションとマーケティングとの組み合わせが富を生み出す、当時の製造業にはそれほど多くの資本が必要とされなかったため、有限責任の株式会社はあまり人気なかった、株式会社制度をフル活用したのは、独立後の米国・ドイツ・日本であった(p371、372)

    ・英国政府は、国内の産業保護のために、保護関税を導入、インドからの綿製品の輸入に対して、キャラコには67.5%の関税、英国産の綿布は、2.5%でインドにいれている(p378)

    ・ラグビーは上流階級を中心としたスポーツ、サッカーは労働者階級のスポーツ(p384)

    ・フランス革命のなか、マリー・アントワネットをはじめ、ギロチンで斬首された血の滴る生首から、ワックスで型どりして、リアルな蝋人形を作っていた若い女性が、マダム・タッソーである(p420)

    ・米国植民地軍は、かなりの苦戦を強いられていたが、英国の覇権に反発する、フランス王国・スペイン帝国が植民地側にたって参戦、ロシアも武装中立同盟により英国は孤立化した(p435)

    2018年1月21日作成

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