「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない (ディスカヴァー携書)

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
3.70
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本棚登録 : 4209
感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799330838

感想・レビュー・書評

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  • 「休日は何されてますか?」

    最近、会社の事情で色んな人と関わる機会が増え、この質問がよくされるようになりました。
    正直、私はこの質問の受け答えがメチャクチャ苦手です。なぜなら、この回答って必ず「趣味」とか「推し」の話に繋がってしまうから。

    私は趣味でクラフトビールをよく飲むのですが、この回答をすると必ず「何が違うの?」、「コスパ悪くない?」という質問を受け、毎回言葉に詰まってました。というのも、味の違いを言葉で説明する技術が足りず、好きなのに伝わらないということが多かったからです。

    そんな背景もあって、本書のタイトルに興味を持ち、手に取るに至りました。本書は文章力改善のいわゆるハウツー本でありながらも、「推し」という身近なものを題材としたことで、誰でも馴染みやすい作品になっていると感じました。

    肝心の内容については、本書内で確認していただきたいのですが、終始口語体の柔らかい口調で書かれているだけでなく、具体例もあるうえ、話のプロットも理路整然としていて説得力のある本だなという印象を受けました。

    とりあえず本作を参考に書き出しだけ頑張って書いてみたのですが、文章力のハウツー本にレビュー書くのは少し照れ臭い感じがします…笑

  • 表現がやさしく文章も馴染みやすくサクサク読める1冊。

    ただ、サクサク読める理由は内容は繰り返しが多めだったことにも由来しそうではあった。
    あと視点が偏っているように感じるところもあり、納得できる部分と腑に落ちない主張が混在していた。(ただこれは多かれ少なかれどんな著書にも言えると思うけど)

    本書を読んで文章が上手くなるかと聞かれたら疑問ですが、頭の中から自分の言葉を抽出する工程がシンプルで覚えやすく記されてます。

    内容は全6章で構成されているけど、個人的には5・6章だけでよかったかな。
    あとは太字を追うだけで間に合いそう。

    ブクログ新書の上位にあがっていたので期待してしまったのもあるせいと、『推し語り』という面をあまり意識せず手にしたがため、自分の責任もあるが少し物足りなさを感じた。

    それはそうとして、後半で参考として阿部公彦さんのジェーンオースティンの『説得』を書評した文章があげられていた。それが真似できるとは思わないけどとてもよかった。『説得』読みたくなった。

    ここまで書いてなんだか批判的な内容が多くなってしまったけど、感想がボヤボヤしてしまった時に、1本線を引いてアウトラインを固めてくれる教えはとても参考になりました。

  • SNSで発信が溢れている今だからこそ、自分の言葉で好きを言語化することの大切さに気がつかされました。
    ふいに見てしまった他人の感想や意見について「自分もそうかもしれない」と共感したり、「私が伝えたいことはこれかもしれない」と自分の意見を見つけたかのような気持ちになって嬉しくなる時もあります。
    ですが、他人の言葉によって自分の気持ちを言葉にできたと思い込んでしまうと、せっかく自分の中に生まれたオリジナルの気持ちが消えてしまうのだと思いました。
    他人の使っている言葉を乱用するのはとても危険なことなんですね。

  • クリシェという言葉を初めて知った。ありきたりな台詞や言葉。ネガティブな意味合いがある。原義は印刷版、または写真のネガのことらしい。オリジナリティがない言葉は感動しないということか。ありきたりな言葉を使っていると思考が停止する。確かにと納得。この本には自分の好きを見つめ直す方法が書いてあった。自分の気持ちに立ち返らないと自分の言葉にもならない。とにかく細分化して言語化することから始めようと思った。自分の好きの解像度も上がるだろう。

  • 何かしらのもやもやを感じたとき、SNSで誰かの意見を見たくなる。それそれ、と思ったり、いやそれはどうだろう、と思ったりしているうちに時間が溶けて、何をしていたのか分からなくなる。自分が感じていたのはなんだったんだろう…となる。
    この本に書かれている「自分の言葉を持とう」「他人の言葉と距離をとろう」というのはすごく大事だし、そのとおりだと思う。

    「好きという感情の輪郭を、自分でなぞって確認しておく。いつか好きじゃなくなって も「ああ、たしかにこの時期、私はこういうものが好きだったな」と思い出せるようにしておく。 」
    好きを言語化しておけば、いつでも取り出せる。
    好きだったことは覚えていていいのだ。
    忘れなくていい。
    大切に持っていていい。
    恥じなくていい。
    それは自分の一部だから。
    などと考えて、ちょっとほっとした。

  • 本を読んだ後、映画を観た後、推しの作品に触れた後、この気持ちを感想として残したい!という欲求は常にありつつも、なかなかに面倒くさく結局他の人の感想を読んであたかも自分の気持ちが言語化されたように錯覚し満足してしまうことはよくある。
    ただそれはハリボテの満足に過ぎない。
    周りの言うことに惑わされず、まずは自分の考えや感情を言語化してみることが大切。
    自分だけが読む感想ならばそれだけで十分だが、たくさんの人の目につくブログや推しへのファンレターなど、誰かに読んでもらうことを前提としているのなら、さらにそこから工夫で包まねばならない。
    初見でも理解できるようなわかりやすさを心がけることが大切。

    感想を書く上で重要なのは語彙力でも文章力でもなく妄想力。
    「この作品はなぜこれを題材にしているのか」「なぜこんな展開なのか」「あの作品と似ている気がしたがなぜそう感じたのか」など 湧いた感情を逃さずできるだけ言語化し深掘りしていく。
    それができて初めてクリシェに翻弄されない自分オリジナルの文章が完成する。

  • 感想を言語化する方法が分かる。言語化とは、細分化のこと。感想を書くことが好きになりそう。

    ・文章の上手さは文才ではない。感動が脳内ですぐに言語に変換されないのは当たり前のこと。
    ・自分の言葉で、自分の好きなものを語る-それによって、自分が自分に対して信頼できる「好き」を作ることができる。
    ・ 「好き」は簡単に揺らぐもの。「好き」を言葉で保存する。

  • Amazonの紹介より
    あなたの「推し」はなんですか?
    お気に入りのアニメ、本、漫画、映画。
    応援しているアイドル、声優、バンド、YouTuber。
    大好きな舞台、コンサート、ライブ。あるいは、スポーツや釣りなどの趣味も、推しに入るかもしれません。
    本書は、アイドルと宝塚をこよなく愛する著者が、書評家として長年培ってきた文章技術を「推し語り」に役立つようにまとめた1冊です。
    SNS発信・ブログ・ファンレター・友人とのおしゃべり・音声配信などの発信方法ごとに、自分だけの言葉で感想を伝える技術を教えます。

    ここでは特別に、少しだけそのコツをお教えします!
    コツ① 自分の感情を一番大切にする
    コツ② 妄想をこねくり回して、感想を生みだす
    コツ③ よかったところを細分化するだけで、あなただけの言葉になる
    これって一体、どういうことなんでしょう…? 
    本書を読めば、特別な才能や技術がなくても、あなたの感動を自分の言葉で語れるようになります。


    前作「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」もそうでしたが、まずタイトルがキャッチ―だなと思いました。タイトルを見た瞬間、心の中でモヤモヤした疑問をもしかしたら解決してくれるかもしれないということで、私もそうですが、どのような内容なのか興味を惹かれたので購入しました。

    内容としては、自分の好きな「推し」の魅力をどのように周囲に伝えたら、心に響くのか?
    「良かった」「ヤバかった」という一言では、何が良かったのか?どの辺りがヤバかったのか?周りからしたら、「?」です。
    その辺りを段階的にわかりやすく解説してくれます。

    自分の言葉で伝えることや細分化によって具体的に伝わることなど、よくよく考えてみると基本的なことだとは思っても、なかなか思うようにいきません。

    あえて言葉にし、知り合いに話すかのように語りかけることで、自分もできるんじゃないか、より良い文章を提供できるんじゃないかとサポートしてくれます。

    伝えるまでのステップを反復しながら、スムーズに教えてくれるので、記憶としてはスーッと頭に入ってきました。

    ただし、この本はあくまでも、SNSで色んな人に伝えた
    い人用に書かれています。生身の相手がいると、言葉のキャッチボールがリアルタイムででき、自分の気づかなかった部分も補填できるので、不特定多数に伝える人ようかなと思いました。

    さらに三宅さんの若干「圧」も感じられました。優しい言葉ではあるものの、「こうだよね」「やってみたらいいじゃん」といったニュアンスも含まれている要素が伝わるようで、グイグイと読者を攻めている感覚がありました。

    多くの人が伝えることで、同じ思いをもった人と繋がることができますし、三宅さん自身多くの人の「発言」を読みたいという思いもあるように感じました。
    また、その裏側では、誹謗中傷といったSNSでの社会問題を少しでも無くなればよいという思いもあるように感じました。

    三宅さんの考えとしては、共感する部分もあれば、疑問に感じる部分もありました。
    多方面からの観点ではなく、一つの観点として考えを貫いているので、当然共感できない部分も出てしまいますが、言えることは、まずはやってみることが大事かと思いました。

    頭の中だけで考えても、それが周囲に伝わるわけでもないですし、やってみないと始まりません。
    なかなか周りに影響されずに伝えることは大変ですが、やってみることで、色んな発見もありますし、新たな「自分」を発見できるかもしれません。

    自分の言葉だけで伝えるだけでなく、客観的に判断されることで、ダメな所もあれば、より良く自分を魅せられる可能性もあるので、その大切さを学びました。

  • 著者が想定する読者では自分はなかったようです。
    読み始めてすぐ、あ、違うなと思いました。
    名前をどこかで見かけたことがあるなと思ったら、なぜ働いていると〜の著者でした。
    前著で抱いた違和感が、この本でより如実となり、気が合わないということがわかりました。

    私は、小学生の頃から文章を書くことが好きで、授業の作文も、夏休みの読書感想文の課題も、高校の小論文も、大学のレポートもあまり苦ではありませんでした。特に好きなのが制限文字数が多い課題。短くまとめるのが苦手でした。
    授業などで書かされるものだけでなく、中1の頃から映画の感想を手書きでノートに何ページも書く映画日記をつけ始め、今はFilmarksのアプリに移りましたがずっと続けています。
    SNS依存で他人の言葉、入手したニュース、情報で人と会話してる気がして危機感を覚えてからはできるだけ本の感想も自分の言葉で語れるようになろうと感想を書くことにしています。

    そんな自分にはこの本に書いてあることはやや当たり前であったり、もしくは薄っぺらく一面的で終始苛々を覚えながら読みました。

    全く感想を書くことに慣れていない人の一助にはなるだろうと思いますが、ここまで言われなければ書けないのか?というのがひとつの驚きでした。
    嫌味に聞こえるかもしれませんが、本当にそう思ったのです。

    あとがきを読んで、より苛立ちとなったというか著者と分かり合えないなと思ったのは、人が傷つく言葉を使わない方が良いとわかってて本編で言及しなかったことです。

    推しの魅力を広めたい その一面だけで粗雑な文章の書き方指南だったように思えます。

    私は、自分のためだけに感想を書いています。
    感想を書くことでお金をもらうわけでも注目を集めるわけでもフォロワーを稼ぎたいわけでも閲覧数を増やしたいわけでも友達を増やしたいわけでもありません。
    あえていうのならば、自分が好きなアーティストやアイドル、映画、漫画、本etc、それに関わる人たちの利益に少しでもなるように、の気持ちでいます。
    感想SNSでない、XなどのSNSでは、話題にしてますよ、というポーズで使用しています。
    使う語彙についても、私はわかる人にだけ分かれば良いというスタンスで、いわば足切りのつもりで専門用語や引用などを書いています。

    自分の気持ちに嘘をつきたくないから、このやり方でいます。
    多くの人に見てもらいたい気持ちがどんどん膨れ上がって承認欲求になった時バズり構文とか、誰かを想定して言葉を書き換えたり、自分の気持ちを捻じ曲げて歪にして書き記すことはしたくないと思っています。

    この本に書いてあることをそっくりそのまま真似しても、そんなに効果は出ないんじゃないかなあ?と思ってしまいます。なんでもいいからとにかく分量をこなすのが良いと思います。

    書き方のコツのビフォーアフターもピンときませんでしたし、最果タヒさんの感想も良いと思えませんでした。
    三浦しをんさんはエッセイを何冊か読んでいてとても好きです。阿部公彦さんの書評もとても良かったです。
    著者が書かれる書評には軽薄さを感じました。
    ナウシカを元祖理系女子って…私は侮辱されたかと思いました。
    矮小化するような語彙選びに、この人は作品に対する愛があるのか?と自分自身のスタンスから離れているため疑問に思ってしまいました。著者の中ではきっと、愛があるのでしょうが私からはそう思えません。

    また、断定にも、疑問を抱きました。
    文章を書くのは恥ずかしいと言いきっています。
    私はそう思っていません。
    文章を書くことはとても尊く楽しいものだと思っています。この行為を行った過去の人たちのおかげで、様々な文化が残されて受け継がれてきました。だから自分も残していきたいと思っています、人間の思考を。

    昨今の「推し」にまつわる動きはついていけないものも多いです。
    若年層がお金を注ぎ込んで何枚もCDやグッズを買うのは不思議です。愛の形というには、行き過ぎた行いではないかと思っています。
    推しの良さを薦めたい、ファンを増やしたいとか、自分よりも推しにウェイトが置くのではなく、貴方の好きに自信を持って欲しいし、貴方だけの感性、感想を聞かせて欲しいと思います。
    いつだって、主語も主体も貴方であってほしい。
    推し活動に振り回されないでいてほしい。

    ただ、著者と一致していたことはあり、
    自分も自分の感想がまとまるまでは他人の感想は見ません。
    他人の思考や評価に影響を受けたくないからです。
    これをただ単純に感想の範囲とだけ思わないで欲しい気がします。
    思考力が侵略される可能性もあるかも?と思うからです。政治とか生きる力とかですかね。
    自分の頭で自分の意見を持つこと、全部に繋がると思います。軽く見ずに、貴方だけの脳と思考と言葉を磨き続けていって欲しいです。

  • 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の著者による、言語化能力について語られた書籍。この著者は、本のタイトルをつけるのが抜群にうまい。(編集者さんや出版社さんが決めたのかもしれないが)
    全国民総評論家と言われて久しい昨今において、自分の言葉で物事を語ることが難しくなった。ネットを開くだけで誰かの感想、批評にすぐ晒されるからだ。できる限り誰かの意見を見ず、まず自分はどう思ったのかを言語化しようというのが肝。自分のこれまでの体験を通して、触れたエンタメの何が自分の琴線に触れたのかを明確に言葉にすることで、ちゃんと自分の「好き」を自覚できるようになる。不確かな時代だからこそ、せめて自分はどう思ったのかをちゃんと言葉にして認識しなければならないのだ。

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著者プロフィール

文芸評論家。京都市立芸術大学非常勤講師。
1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院博士前期課程修了(専門は萬葉集)。京都天狼院書店元店長。IT企業勤務を経て独立。著作に『人生を狂わす名著50』、『妄想とツッコミでよむ万葉集』、『妄想古文』、『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』、『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない——自分の言葉でつくるオタク文章術』、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』など多数。
X(旧Twitter): @m3_myk
Youtube:@KahoMiyake

「2024年 『30日de源氏物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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