僕のダンナさん (宝島社文庫 『日本ラブストーリー大賞』シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800201003

作品紹介・あらすじ

僕、田丸誠、30歳。工務店を経営する頑固で厳しいオトンと優しいオカン、気の強い妹とひょうひょうとしたおじいちゃんに囲まれて、ごくごく平凡な毎日を過ごしてきた。オトンは「早く結婚して家業を継ぐように」って言うけど、じつは僕には家族の誰にも言っていない秘密があった-。ベストセラー『さくら色 オカンの嫁入り』の著者が描く、温かくて切ない家族の物語。日本ラブストーリー大賞シリーズ。

感想・レビュー・書評

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  • 初めて読んだ咲乃さん作品。 『オカンの嫁入り』は映画にもなってるけど未読。 おとなしい主人公が大阪弁で紡ぐ優しい物語。

    自分はBL読みだけど、これはBLじゃないと思う。 昭和のホームドラマのような温かい家族に起こる大事件、長男が「僕の彼氏です」と恋人を紹介してのカミングアウト。
    誠と心さんの恋人同士としての描写もあるけれど、性的な表現よりも、人を好きになった時の「誰かを愛しいと思う気持ち」の描写が共感を生む。 年齢や性別を抜きにした、片想いの切なさや恋人と過ごす甘い時間を丁寧に書き表している。
    そこに「同性同士」という障害が立ちはだかる。 簡単には祝福されない関係に悩み、誰かとぶつかる度「もっと良い方法はなかったのか」と悩み、それでも一つひとつ乗り越えながら気持ちを強くしていく。

    個性的な家族と、大阪っぽい人情を笑いでくるむような周囲の人たちが愛しく描かれていて、読みながら何度も泣かされた。 フィクションならではの「最後はドラマみたいに上手くまとめるな~」という盛り上げ方さえも、嬉しくてニヤリとしてしまう読後感。
    人生には良いことばかりではないけと、こんな幸せがあってもイイよね。とホッコリさせてくれた作品。

  • おじいちゃんと猫のフォークが最高!
    BL小説だと敬遠せず、ぜひ読んで頂きたいです。
    ほっこりする、家族の話だと思います。

  • 一気に読めました。皆の気持ちに、ウンウン、と頷きつつ、読後もスッキリ。おじいちゃんの存在感抜群。お父さんの昔気質も可愛く思えてしまう。ラスト、「あ~良かった◎」でホッとして、5月の爽やかな風の様(上手く例えられない)本でした。

  • 僕のカミングアウトと妹の出来ちゃった婚。大工の頑固な父親との確執と確かにある家族の絆。ギクシャクしかけた家庭の雰囲気を絶妙のタイミングで救うおじいちゃん。ハンサムな年上の心さん、猿に似た岡本君など登場人物みんなが優しく素敵だ。でも最強はお祖父ちゃん。

  • これから先、誠と心さんが幸せでありますように。

    自分に嘘をついて生きてきた誠が家族にカミングアウトできたのは、妹の妊娠のこともあったけど個人的には心さんという存在が大きかったのかな、と。

    心さんの揺らがないところや落ち着きは誠にとってとても安心感があるのだろう。

    なんていったって“神さん(カミサン)”であり“ダンナさん”だもの。

    そんな心さんだって、仕事と恋愛、両方を掴める道に出会うまでいろいろ苦しみ、諦めることに慣れるしかなかったのだと思う。
    そんな彼にとっては誠が“神さん”なんだ。

    お似合いです。

  • 家族の描写はリアルで繊細で素敵だけど、心さんのことがあんまり書かれていなくて、ちょっと夢物語っぽいというか嘘くさいというか。もったいないなーという印象。

    お父さんが亭主関白で、お母さんはそれに献身的に尽くす人という設定が個人的に好きではないので心に響きにくかった。

  • BL系というよりもホームドラマ系❓
    変に盛り上がりも事件もあるわけではなく、淡々と誠の心情が綴られていく感じ。
    心さんサイドから見た物語も見てみたい。

  • 主人公の誠が家族に紹介するために家に招いた恋人は同じ男性の心さん。
    世間の目とか家族の反応とかと、心さんを好きで好きでどうしようもないという気持ちとの板挟みで苦しむ誠が健気で、何度も泣かされた。人を好きになる気持ちは一緒やのに、って台詞が沁みる。
    オトンからは平手打ち食らって口もきいて貰えず、家の中に気まずい空気が漂ってた中、オカンが「つらかったやろ、誰にも言えんと」って言ってくれるシーンに涙がぶわーって出てきて止まらなかった。
    そして何といってもおじいちゃんと猫のフォーク!物語のすべてを握っていたおじいちゃん。長生きしてやと思わずにはいられません。
    妹の実、実の彼氏のタケちゃん、しばいちゃうわよっが口癖のバーのママとか、みんないいキャラだった。オトンの不器用さもまた愛しい。
    地の文もやわらかい関西弁で書かれてて、人情味が溢れてて。シーンごとで誠のメンタルとシンクロするような雨とか水の描写が綺麗で印象的でした。
    正直秀良子さんの表紙絵にホイホイされてBL小説なのかなーと思って読んでみたんですが、それよりも、これは家族の物語でした。

  • 読んでいて苦しいお話だなぁと思った。
    家族愛が描かれていてその点はすごくうまいと思うけど、恋愛面では心という人がなんだかぽわんとしていて、何故誠がそこまで心に惚れているのかよく分からなかった。心の過去の出来事とか、そこまでいくとうそ臭すぎて……正直いらない。
    誠のオトンやオカンの気持ちなんかはもう分かるわぁ!と共感しっぱなし。おじいちゃんもいい味出してる。
    なんだかんだでちょいちょい泣けた。

  • 珍しい(のかな?)男同士の恋愛もの。
    こっち方面には明るくないが(^ ^;
    いわゆる「BL」ってのとは違う。と思う(^ ^;

    「頑固な大工」の父親が還暦を迎えて、
    おめでたムードの中、いつまでも結婚しない息子と娘が
    それぞれ「好きな人がいる」と言い出して。

    30歳になるその息子が連れてきた恋人が、
    男性だった...ということから始まる騒動。

    激怒する父親、唖然とする母と妹。
    まぁ、これはごく普通の反応なのでは。

    家族の無理解、理解を示してくれる人、
    言われなき誹謗中傷...
    「カミングアウト」した日から、
    主人公の生活は目まぐるしく変わっていく。

    それでも、主人公と恋人の出会いから
    お互いに惹かれ合っていく気持ち、
    周りの目が冷たい分、強くなる二人の絆と
    「少しでも長く一緒にいたい」という気持ちを、
    作者は丁寧に、いつもの柔らかい大阪弁で紡ぐ。

    二人の気持ちを読み進むうちに、
    「相手が同性だってだけで、普通の恋愛じゃん」
    ということに気がついてくる。

    ただし、主人公たちの現実はそう単純ではない。
    第二・第三の「事件」が持ち上がり、
    一家は大きな嵐に揉まれているような日々。

    それでも、100%理解は出来なくても、
    心の底から許せると言えないかも知れなくても、
    絆が全く切れてしまうということがない。
    あぁ、いい家族だなぁ...という印象。

    反対に、件の「恋人」は家族に恵まれず、
    それだからこそ主人公に惹かれていったのか。

    決して止めることの出来ない時の流れや、
    何かを選ぶと言うことは何かを捨てること、
    という人生の「あたりまえ」を、
    ここまで共感させられる作品に仕上げる
    作者の手腕はやはり並ではない。

    自分の「家族」というものについても
    思わず考えさせられるような一冊でした(- -

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