天皇とは何か (宝島社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800205186

感想・レビュー・書評

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  • 逆説の日本史で有名な井沢氏と、新興宗教の研究で知られる宗教学者の島田氏の対談本。と言っても、編集者があまりうまくないからなのか、途中まで対談というより対談の名を借りた解説本になってしまっている。あと、途中からは島田氏が井沢仮説に対して相槌をうつだけの役割になっていて微妙。
    ただ、天皇の起源や卑弥呼についての井沢仮説自体は面白いし、天皇制が日本に民主主義が根付く下地になんったという考えはなるほどと思わせるところがある。
    今後の天皇制という部分でも書かれている通り、天皇制は宮家の基本的人権を犠牲にすることで成り立っている。それをどれだけの日本人が受け止めているのかは、かなり疑問。その意味で、個人的には天皇制の廃止もしくは今後の在り方を考えるのは重要なことのように思える。
    この本で指摘されている通り、日本人は色々と曖昧さを好む傾向にあった。天皇の出自についてもそうだし、仏教とのかかわりについてもそうだ。今現在、一般の人が考える天皇だって、曖昧模糊とした漠然としたものだろう。外人に天皇って何って聞かれて即座に答えられる人は少ないんじゃないか? そんなことを考えながら、「天皇がいなくても日本人はやっていける」という話を、よく行く飲み屋のママ(推定60代)にしたら、「それはない」と一蹴された。天皇制については世代間の認識の差もかなり大きいんだろうなあ。

  • わざわざ本にする必要あったのかという程度の本。井沢と島田の茶飲み話のような浅い内容。ほとんど井沢のかつての著書にあるような話を、島田と繰り返しているだけ。天皇家の秘部と、しかしながら、それを容認・熟成してきた日本の歴史を、別の視点から語ってほしかった。

  • ●天皇家は一応私的な財産を持っていると言うことにはなっていますが、自由にできる財産がほとんどありません。しかしイギリスの王室は王子にして莫大な財産を持っており自由に使うことができる。ちなみに昭和天皇は18億。
    ●男性天皇や皇子の娘の皇女が即位して女性天皇。皇女の子が即位すると女系天皇。
    ●君が代は天皇陛下を称える歌ではない。君が天皇を指しているのであれば、タイトルは「君が御代」になるはず。君が代ならタメ口になってしまう。

  • 前半はとくに新しい内容ではなく、天皇についてその歴史からおさらいする感じ。
    後半、現在の天皇(制)についてとこれから維持していく困難さ、その解決策として話題になった女系天皇についてなど、あらためて切実な問題なんだと感じた。
    国民がみんな「なんとなくどうにかなるんだろうと思ってしまっている」というところに納得。

  • 何気に初井沢(対談本だけど)。内容としては軽めで、第3章までの歴史的な話題については既知の事項がほとんどだったが、今後の天皇家の在り方について展望した第4章は興味深かった。(日本の「家庭」モデルとしての)近代的な一夫一妻的家庭を営む中で、正統性の担保として(男系)血統の保持を要求されることの困難さについては、確かにもう少し目が向けられてもいいのではないかと感じた。

  • ずっと思っている、「天皇」というものが連綿と存続しているのはなぜなのだろう、その権威の源ってなんだろうという疑問。まだよく分からないけれど、絶対神をもたない日本人だからこその存在なのだろうか、と考えつつ、読んだ。

  • 天皇という漠然とした存在、かつ日本一忙しくてプライベートがない存在について、宗教学者と作家の対談形式で話を勧めている。日本人にとっての天皇という概念を、日本人のアイデンティティの根幹と表現したのは言い得て妙。否定する人もいるかも知れないが、本書を読むことで大半の日本人にとっての天皇という概念がそういったものであることを再認識させられた。皇室賛成とか反対とか偏った視点ではなくフラットに整理されているので理解しやすい。

  •  一神教以前の世界、神の血を引いているから「尊い」天皇。日本人の血縁信仰、そして怨霊に対する怖れ。鎮魂。自分たちの正統性の保証としての天皇……と、今までの天皇分析の総ざらいのような内容で、一時間くらいで読める。さほどスリリングな対談でもない。
     あと、このままいくと間違いなく天皇家はなくなるので、旧宮家をどうするのか、いい加減、計画を練らないといけないのでは。
     また、この天皇という「血」に対する信仰は、「差別」ではあるのだが、そこに「空気」がまざる。つまり、小泉の息子とか、天皇家とか、さすがええとこの息子さんはええよね、という血に対する素朴な褒め方は、何はともあれまずまず立派になっている奴にいうことばであって、そいつの実力がわるければ「あそこのええとこの息子さん、あかんわ」と、一気に見下されるので、ほんとうに「血」だけだろうかとも思う。また、血について、たとえば部落の人がいるとして、いまのごく普通の人権教育を受けてきた人が、「私部落だから」といわれて、「え! けがらわしい」となるだろうか。そんなことを酒の席でいったら、ぶん殴られるどころか、私なんかはそいつと絶交するか朝まで問いただし続ける。
     私たちの行動とは「差別は絶対反対でバカバカしいが、天皇という機能が、高貴とか、ええとことか、賞とか、日本の代表としての晩餐会出席とか、そういうあこがれの世界を演出してくれているし、その天皇とは国民の総意であるので、しっかりとつながっている。すてきやん」という都合によってできているものなので、小谷野敦氏が「でも貴族ってなんかすてきじゃない? というおばさんにはいくら差別だと説こうが無理なのだ」というようなことを書いていたが、それはそうなのだ。
    なのでこの「すてきやん」と思える世界の天皇がいることによって、政治が、経済が、これからやっていけるのか。やっていくのならば、どんなふうにうまいことやっていくのか。それを考えるための、ほんの入り口の部分がこの本だと思う。

  • 非常に面白かった。対談形式で読みやすく、天皇家の歴史と権威性について多く語られていた。


    なぜ武力を捨て、なおも天皇が存続してきたのか。日本人のメンタリティ、主に争いを好まない曖昧さと協調性が重要であり、武力によって簒奪がなされなかった理由を歴史学、宗教学の両面から捉えた良書である。

  • 象徴って何?とか思いつつも、あまり深く考えることなく必要だろうと思ってたけど確かに不思議な存在かも。神武天皇から2000年以上続き、どの時代にも違和感なく途絶えることもなくって言うのは改めて見るとすごい。
    しかし男系男子ルールのままここまできて、途絶える危機をむかえてるけど、ルールを変えても皇室に外から入るハードルは相当高いと思う。

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著者プロフィール

1954年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念。独自の歴史観からテーマに斬り込む作品で多くのファンをつかむ。著書は『逆説の日本史』シリーズ(小学館)、『英傑の日本史』『動乱の日本史』シリーズ、『天皇の日本史』、『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』『お金の日本史 近現代編』(いずれもKADOKAWA)など多数。

「2023年 『絶対に民主化しない中国の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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