NHKスペシャル 生活保護3兆円の衝撃 (宝島SUGOI文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800212955

作品紹介・あらすじ

生活保護には2009年のリーマンショック以後、大量に流れ込んできた層が存在する。「働く力があるのに生活保護に頼る」層だ。もちろん、生活保護を本当に必要としている人たちはいる。しかし、取材班の目の前には、働く力がありながら働いていない人たちの姿が現れた…悲鳴を上げる自立支援の現場から巨額の生活保護費を狙う貧困ビジネス、闇社会の実態まで、受給者に密着して大きな反響を呼んだ番組の書籍化。改訂文庫版。

感想・レビュー・書評

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  • リーマンショックから半年、厚生労働省から一通の通知が発出される。これを受け、働く世代も実質的に生活保護に受け入れることを認めることとなる。以降働く世代の受給者は増え続け過去最高を更新し続けている。貧困ビジネスの暗躍、生活保護受給者を陥れる闇社会など、生活保護をめぐる問題は山積だが、最たる元凶は働ける人が受給し続けているということ。実にやるせない現実がルポルタージュ形式で綴られる。生活保護を受ける生活を続けていくうち確実に働く意欲は減衰していく現実。働きたいという気持ちさえも生活保護を受ける中で損なわれていく。セーフティーネットの脆弱性と緊急事態に場当たり的な対応しかできなかった政府。生活保護制度そのものが自立への意欲を損なわせる制度設計。課題をあげればきりもなければ果てもない。処方箋だけは全く見えない。これが日本の実相。進撃の巨人にでも襲われなければ真剣に将来を考えないのか、この国の人は。

  • 生活保護の実態が、良く分かる。國の最重要課題のひとつである。

  • 2013(底本2012)年刊行。

    ① 生活保護費と最低賃金との逆転現象。
     確かに問題ではあるが、そもそも最低賃金の低さこそが議論されるべきなのではないかとの疑問が強く残る。
     しかも、その最低賃金法を守らないブラックの存在は勿論、そもそも最低賃金が最低限の生活を保障しない、できない現実。
     8時間労働、週休2日が正しいとすれば、
      800×8×22=約14万円。
     そして、時給1500円でデモの起きる米国と、時給800円程度で満足させられてしまう日本。
    というような、より根本的な労働に関する雇用主の倫理欠如、日本の労働者の過剰な従順ぶりなどは書かれない。

    ② 所謂、闇社会(グレーを含む)が食い物にする保護受給者と保護制度。
     例えば、生活保護における医療扶助を詐取する病院、あるいは転売目的でなされる抗精神薬を生活保護費・医療扶助で入手する問題点には言及がある。これは保護受給者の利得になっているのではなく、その背後で隠れてコントロールする人物・組織の問題だ。
     それゆえ、これらの問題を内部告発する保護受給者の存在には意義と意味があり、この点も言及される。

    ③ 統計上は見えないホームレスの実。
    ④ 就業支援や職業訓練と現実のミスマッチ。
    など、内容はまずまずで悪くはない。
     また、実例紹介という観点でも読了の意味がないではない。

     しかしながら、派遣切りや最低賃金法の問題、労働時間の問題など、突っ込み不足の印象は拭いされない。
     そもそも最低賃金法に近い時給水準は、短時間労働・不定期労働という不安定な職種に相当しがちだ。雇用の途上における労働条件の変更が事実上不可能で、転職のための準備すらままならない雇用環境、今この時の生計のために長時間労働が必要とされるという問題意識は、余り感じ取れなかった。

     逆説的に、現行最低賃金法のレベルは、長期の安定雇用と不即不離で意味をなすもの(意味をなしてきたもの)ということが感得できそう。そういう一書である。

  • この実態はなかなか重たいです。。この後、生活保護世帯はどんどん増えていくことが予想されますし、これは日本人国民世帯の生活を圧迫することになっていくでしょうね。

  • 面白いが、暗澹たる気分になってくる。

  •  タイトルは衝撃的なのに、結局なにが言いたいのか分からない本になってる。

     生活保護費に制度上の問題(貧困の罠)と呼ばれるものがあるのがテーマなのか、それともそれを食い物にする業者が跋扈しているのがテーマなのか。
     または、生活保護を受給来る人に問題があると言いたいのか(本書では否定されているが、明らかにその趣旨であるだろう箇所がある)。

     生活保護に問題があるのだ、といいたいのは分かる。が、その問題は何か?

     生活保護の目的とは、保護に至るようになった人間をいかにして再起させるのか?また、再起が不能になった人の尊厳をいかに守るのか。

     ということなのだから、問題があるとしたら目的との不一致に決まっている。
     どのあたりが不一致なのか?という視点で統一して書いていればもっと伝わりやすい本になっていたたろう。


     衝撃的なタイトルから入った企画なのだろう。だから、日本の総人口と保護の比率の推移をかんがえないという致命的欠点まで犯している

     読む価値はないとは思わない。
     すくなくとも、貧困ビジネスや医療と生活保護の関わりなどは読むに値する。

     が、先に述べたようにだからなに?という本になっているのが問題なのだ。

     貧困ビジネス業者の悪行を叩きたいのか、貧困ビジネス業者が生活保護者の再起に致命的な影響を与えていると書きたいのか?

     この本の趣旨なら後者で書くべきだが、本の内容は前者だ。
     そして、時折後者でかかれる項目がある。

     このような内容の本には視点の統一が求められることが理解できる本ではある。

  •  大阪市の生活保護受給者と貧困ビジネスに関するルポ。弱者を狙った貧困ビジネスの実態について参考になった。

  •  リーマンショック以後ニュース等でもよく取り上げられていた生活保護制度。知っているようで知らない内容がたくさんあった。
     生活保護制度のみにとどまらず、社会福祉制度の在り方、働くこと、生きていくことについて考えさせられた。

  • まさしく日本の病巣の一つである。
    リーマンショックのセーフティネットの拡充のため、一課長の通知が、生活保護受給者の激増を招き、それを悪用する貧困ビジネスを生み出す。
    生活保護が受給者の働く意欲を失わせて、国民全体に思い負担を課している。
    働く意欲のない人は冷たく切り捨てるのがいいのか、それとも辛抱強く自立支援をしていくのがいいのか?気の長い話である。
    国民負担には限界があるし、最低賃金で一生懸命働いている人たちとの不公平感もあるだろう。
    どうすればいいのか、すぐには結論は出ないが、貧しい人や貧しい人を助けるための制度を食い物にする貧困ビジネスは許せない。

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